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ファンタジー 書評

【ブックレビュー】月の影 影の海 上・下(著:小野不由美)

更新日:

【作品情報】
 作品名:月の影 影の海 上・下
 著者:小野不由美
 ページ数:上巻:278、下巻:267
 ジャンル:ファンタジー
 出版社:新潮社

 おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
 とりあえず読め度 : ★★★★★★★★★☆
 こういう人におススメ! : 生きるとは何か知りたい

 

■作品について

ごく普通の女子高校生として暮らしていた陽子。悩みは、髪の毛が生まれつき赤く、黒く染めろと言われること。
そんな陽子の前にある日、ケイキと名乗る金髪の男が現れる。
しかしケイキの登場につられるように現れた謎の生物に襲われ、やがて陽子は異界へと連れ去られる。
一人、異界を彷徨い、人に裏切られ、ボロボロになっていく陽子の行きつく先は?

骨太なファンタジーの開幕。

■良かった点

今さら的な十二国記ですが、ここはあえて。
何度となく読んだ作品です。

もとは少女小説のレーベルで出版されていますが、一般の小説としても非常にクオリティの高いシリーズです。
人とは何か、国とは何か、王とは何か。
シリーズを通して、そういうことをずっと問いかけられている。

この一作目は、陽子が慶国に行くまでのことが描かれるわけだが、前半部分である上巻は読むのが辛くなるような展開がひたすらに続いていく。
学校では目立たず大人しい陽子が、いきなりやってきたケイキは陽子のことを主だという。
そして襲い掛かってくる謎の魔物、わけもわからず逃げる陽子は異国に彷徨いこみ、しかもケイキも誰もいない状態。
ようやく助けてくれる人がいたかと思うも、裏切られる。
誰も信じられなくなり、一人で荒野をさまよい、ぼろぼろになっていく陽子の姿は痛々しい。
特に、どんどん人を信じられなくなっていくのがなんとも。

しかし、この前振りがあったからこその後半。
楽俊との出会いで変わっていく陽子。この楽俊が実に良い味を出しており、また作品でも重要な役割を果たす。
シリーズのこの先でも、とある登場人物に大きな影響を与えており、楽俊がいたからこそ陽子の物語が幕を開けたと言っても過言ではないくらいのキャラ。

この作品の凄いと思えるところは、王の座を争う戦いでありながら、その戦いではなく、いかにして王の座につくのかまでを描いていること。
王になるべきなのか。
王になって何ができるのか。
普通の女子高校生だった陽子が、決断をすることを描いた物語。
全てはそのために書かれていた。

果たして陽子の決断は正しかったのかどうか。
それは、陽子のこの先の歩みでしか分からない。
ただ、陽子が作る国を見てみたい。そう、思わせてくれるのは確かなことである。

■ここが改善できるともっとよかったかも?

十二国記に文句とかないのですが(笑)
まあ、序盤は救いようがないので、そういうのを読むのが辛い人には辛いかも。

 

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