【作品情報】
作品名:145gの孤独
著者:伊岡 瞬
ページ数:397
ジャンル:ミステリー
出版社:角川書店
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
ちょっとラストにびっくりさせられる度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : 挫折と再生の物語とか好き
プロ野球選手として活躍していた倉沢は、ある試合で危険球を投じたことから一転して今までのような活躍が出来なくなり引退することとなった。
引退後に行った商売はなんでも屋。
そのなんでも屋の仕事の中で新たに発生したのが「付き添い」の仕事。
倉沢の元には奇妙な仕事が幾つも入ってくる。
依頼の裏を探るうちにたどりつ真実とは。
主人公の倉沢がいくつかの依頼を受けて仕事をこなす連作短編集の形を取っている。
元プロ野球選手だが、危険球を投じたことが起因で引退し、燻っている状態からやがて再生しようかという姿を描いていく物語でもある。
実際、プロで主力としてバリバリ活躍していた選手が突然、その道を断たれたらどうなるのだろうか。
いや、スポーツ選手に限らない。
色々な方面で活躍している人、生きがいをもって活動していた人が、ふとしたことがきっかけで好きだったことが出来なくなってしまったら、夢を断たれてしまったら。
それはきっと、誰にでも可能性はあるのだろう。
そして、誰にもその人の気持ちなど分からないし、気軽に「頑張れ」などと口に出すことも出来ない。
そうしてプロ野球選手の道を失った倉沢が第二の人生として始めたなんでも屋では、意外な力を見せていく。
思慮深く、観察眼もある。
奇妙な依頼者の裏側に潜む何かを探り当てていくのは、なかなかたいしたもの。
それも、きちんと作中に伏線が描かれていて、倉沢がきっちり回収してゆくので読んでいてすっきりしていく。
だけど、仕事をしながらも倉沢の心の中には決して消えない傷が残されている。
傷から目をそらし、逃げることを選んだとしても、人は弱いものだから一方的に責めるのは難しいかもしれない。
でも、それはそれで周囲の人間を傷つけもする。
描かれている仕事、依頼内容の裏にある事実は、容赦なく倉沢を痛めつけるようなものである。
都合の良いことはそうそう起きない。
皆が幸せな結末になどならない。
それでも人は生きていかなければならないわけで、そういう姿を描きたかったのかもしれない。
読みやすくスピーディに読み切れる。
なんというかな。
倉沢の抱えているものというかは途中で分かるのだけれど、あの言動は傍から見ているとムカつくと思うなぁ。
読んでいて好きになれなかった。
でも他の人の感想を見ると、軽妙だとか洒落が効いているとかいうのも多く、自分の感覚が違うのかなと思ったりもした。