【作品情報】
作品名:誘拐屋のエチケット
著者:横関大
ページ数:304
ジャンル:ミステリー、エンタメ
出版社:講談社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
読後感の良さ度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : 短編連作が好き
田村健一は「誘拐屋」として裏稼業ではそれなりに名を知られた存在。
SNS炎上、不倫スキャンダル、借金・・・様々な事情で世間から身を隠す必要がある人、あるいは隠れているのを探し出す必要がある人を、依頼人の言う通りに「誘拐」して送り届けるのが仕事。
そんな田村は、新人誘拐屋の根本翼とコンビを組むことになる。
涙もろく人情に厚い翼は、誘拐相手にすぐ感情移入してしまい、余計な首を突っ込むことに。
必然、田村もなぜかそんな翼のせいでトラブルに巻き込まれてしまい・・・?
「誘拐屋」
実際にそういう仕事をしている人、いるんですかね。
いてもおかしくない気はしますよね。
特に今のご時世だと、昔と違ってSNSやらなんやら人の目も厳しく、身を隠すのも大変そうですから。
そんな「誘拐屋」を生業としている田村健一の元に、新人の誘拐屋である根本翼がやってくることから物語は動いていく。
翼は、裏稼業で仕事をするには向いてないと思えるほど人情家で、相手の境遇に同情してすぐに泣いてしまうような男。
誘拐される相手にも事情があり、その事業に道場しては勝手に首を突っ込んで余計な手間を負うことになる。
根本の教育係(?)として、また自分自身に被害が及ばないようにするため、田村としても翼を放ってはおけない。
仕方なく翼に付き合い、余計なトラブルに巻き込まれて・・・・
とはいうものの、横関さんの描く作品ですから生臭さ、泥臭さは感じさせません。
誘拐される人は、不倫とか、借金とか、SNSで炎上とか、耳にすると「あー」と思うようなものばかり。
だけど、なぜかどれもさっぱりしている。
色々な人を、田村と翼は誘拐しては必要な場所に送り届けていく。
そういう短編が6編続いた後、最後でそれまでの誘拐した事案が一つに収束していく。
誘拐した人にはそれぞれ、表向きとは別の理由があった!
ということで、横関さんお得意の手法で物語が最後に収斂する連作短編形式なのはやっぱり、なるほどといったところ。
読みやすさ、読後感の良さは、作者いつもの通りで安心。
気軽に、本を読み慣れていない人も手に取りやすい一冊。
最後に収束していくのは良いのですが、それまでの各短編は淡々と進むというか。
つまらないというわけではなく、大きな山谷がないので、ちょっと物足りなく感じるかも。