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はやて×ブレード

【はやて×ブレードSS(玲×紅愛)】純な二人

更新日:

 

~ 純な二人 ~

 

 

 日曜日、普段の玲であれば学園内でトレーニングなどに精を出すところだが、久しぶりに街に繰り出していた。生活用品などはいつもまとめて購入しているのだが、今日の主目的もその買い物である。玲は特にこだわりがあるわけではないので、大体は適当に購入している。紗枝などに言わせれば、女の子なんだからもっと色々とお洒落なんかにも気を遣わないと駄目だとかということだが、剣待生の身とすれば、そこまで気にかける必要はないと思う。日常生活は制服で過ごすわけだし、寮内やトレーニング中は動きやすい格好であればよいのだから。
 駅前まで出て、いつも通っているショッピングモールの方に足を向けようとしたところで、少々騒がしい声が耳に届いた。
 どうやら、ナンパ目的で声をかけてきた男に対して女の方が拒絶しているが、しつこく男がつきまとっていて、声が大きくなっているようだった。よくあることだと聞き流して歩き出す玲だったが、不意に、腕を引っ張られた。
「玲、遅いじゃないっ」
「え?」
 見ると、なぜか紅愛が玲の腕にしがみついてきていた。
「本当、時間にルーズなんだから。ごめんなさいね、そういうわけなので」
 と、紅愛は玲の腕に手をまわしたまま、見知らぬ男に手を振っている。
「なんだよ、男がいるならさっさと言えっての」
 髪の毛を茶色にした今風の軽そうな男が、聞こえるように文句を口にして舌打ちする。
「おい、紅愛」
「いいから、しばらくこのままでいてよ」
 声をひそめてくる紅愛。
 どうやら、ナンパされていたのは紅愛のようで、都合よく玲を見かけたので利用してきたらしい。
 しかし、少しばかり不満もある。確かにパーカにジーンズという格好ではあるが、玲はれっきとした女なわけで、彼氏だと思われるのはいかがなものか。
「いいじゃない、玲はそれだけの面を持っているわけだから」
「あまり嬉しくはないな……」
 ばりばりと頭をかく。
「でも、助かっちゃった。あいつ、しつこいんだもん。ねえ、助けてもらったお礼に何かおごってあげるわよ」
「別に、そんなのいいけれど。何もしてないし」
「まあまあ。それより玲は何しに来たの?」
「単に買い物だけど」
「じゃあ、一緒に行きましょう。私も色々と買いたいものがあるし」
 なぜか分からないが、なし崩し的に紅愛と買い物をすることになってしまったが、そこまできて玲はようやく、隣の紅愛を意識し始めた。
 ちらりと、横目で紅愛を見る。
 オフホワイトのシャツの上にブラックのカーディガンを合わせ、ボトムスは三段ティアードのミニスカート。おしゃれに気を遣う紅愛らしく、可愛いコーディネートに思わず目を奪われる。
 そして何より、先ほどから腕に感じる感触は、間違いなく胸のふくらみ。ナンパ男を誤魔化すために腕を組んできたはずだが、そのままの流れでなのか、単に紅愛が忘れているだけか分からないが、ずっと腕を組んだまま歩いているのだ。ぷにぷにとした弾力を腕に感じる度、玲の心臓が激しく脈打つ。
「で、玲は何を買いに来たの?」
「えっ。あ、ああ、シャツとか下着とか、生活用品を」
「ふぅん。あ、それじゃあ私、いいお店知っているからそこ行かない?」
 ブランドなどには特にこだわりのない玲は、頷くだけで紅愛にひかれていく。そして連れていかれた場所は、下着の店。
 もちろん、玲だって下着くらい買いに来るのだが。
「あ、これ可愛い。ねえ玲、どう?」
 と、嬉々としてブラジャーを手に取って見せてくる紅愛を目にしていると、なぜだか無性に恥ずかしい気がしてくる。
 それに、先ほど感じた紅愛の胸の感触が蘇ってくる。あの感触からすると、これくらいだろうかと、頭の中で紅愛の姿が描かれる。そしてそれは、今、紅愛が手にしているブラジャーを身に付けた姿で。
 さらに、紅愛はセットのショーツも手に取って眺めている。脳裏に浮かんだ紅愛もまた、そのショーツを穿いた格好となる。
「紅愛って結構、スタイルいいよな……」
「ん、何? 何か言った?」
「あああ、いやっ、なんでもねえ」
 思わず口に出してしまっていたようで、あわてて誤魔化す。まさか、頭の中で紅愛の下着姿を想像していたなんて、言えるわけもない。
「ちょっと私、試着してくるからバッグ持っててくれる?」
「ん、ああ」
 バッグを受け取ると、紅愛は試着室に消えていく。自分用の下着でも探せばいいのだが、どうにも紅愛のことが気になって仕方がない。
 なんとなくうろうろしていると、店員が近付いてきた。下着選びに困っているようにでも見えたのだろうか、放っておいて欲しいので、どう断ろうかと考えていると。
「いいですね、彼女とお買い物ですか?」
「へ? え、そんな、紅愛とは別にっ」
 思わぬ言葉に赤面していると。
「大丈夫ですよ、最近では男性の方も女性と一緒に下着を選ぶことも多いですから」
 にこやかに、店員が諭すように言ってくる。
 一瞬の空白時間の後、玲は、自分が男だと思われていることに気がついた。そして、紅愛の付き添いで下着売り場に訪れたと思われているのだ。
「あ、あのなあ、こう見えてもあたしは」
 と、言いかけたところで。
「きゃあっ!」
 紅愛の悲鳴が、試着室の中から響いてきた。
 咄嗟に玲の体は動き、素早く試着室の中に顔を覗きこませる。
「どうした、紅愛っ」
「え、あ、ごめんなさい。ただ、虫がいたから……」
 驚いている紅愛。
 その上半身は肌も露わになって、先ほど手にしていたブラジャーで胸が包まれている。程よく盛り上がったバストをアクアブルーの爽やかな布が覆い、肌の白さを浮き上がらせている。
 剣待生とはいえ、剣の腕はたいしたことなく、知恵と策略で勝ち進んできた紅愛の体は、しなやかで、肩も腰も細い。
「……な、何よ、まじまじと見て。そんなに、変?」
 紅愛が少し拗ねたように、口をとがらせて腕で胸を隠す。しかし、腕で胸を寄せるような格好となり、余計に谷間が強調されていることに、紅愛は気が付いていない。
「いや……そんなことはない、と、思う」
 まったく気の利いた台詞を言うことのできない玲。何を口にすればいいのか、語彙が頭の中から消えてしまったかのようで、ただ赤面しつつ紅愛の肢体に見とれてしまう。
「ちょっと、着替えるから。いつまで覗いているつもり?」
「ああ、わ、悪い」
 紅愛に怒られて、ようやく試着室から出て息をつく。すると、横で先ほどの店員が、笑顔で玲のことを見ていた。
 またしても意味なく、玲は真っ赤になるのであった。

 

「ちょっと、いったいどういう風の吹きまわしなのよ?」
「う、うるさいな。いいだろ、別に」
「大体、玲は何も買っていないじゃない」
 手にした袋を見て、紅愛はまだぶつぶつと文句を言っている。というのも、紅愛の下着を玲が購入してプレゼントしたからだ。
 店員に恋人同士だと誤解された揚句、プレゼントですか、いいですねー、なんて尋ねられて思わず頷いてしまったものだから、玲としても引くに引けなくなったというか。
「玲の好みじゃなかった?」
「そ、そんなことないよ。でも、確かにあたしにあんまり可愛らしいのは似合わないだろ?」
 自分が可愛い女なんかじゃないことは分かっている。だから、別に自分を卑下するわけでもなく口にしただけなのだが。
「玲はスタイルいいし、似あうと思うわよ。今度、紅愛セレクトでプレゼントしてあげようか?」
「だから、いいってば」
 そっけなく返事をしてしまう。
 どうしてか、ここのところ紅愛の前だとうまく行動ができない。以前は、紅愛のことなんて何とも思っていなかったのに、いつからこんなことになってしまったのか。
「で、次はどこへ行くの?」
「え、別に決めてないけれど」
「ちょっと、しっかりしてよね。紗枝とデートするときも、そんな感じなの?」
「ば、馬鹿っ、何いってんだよ。あたしと紗枝はそんなんじゃないって!!」
 紅愛に紗枝とのことを聞かれて、玲は自分でも驚くくらい大きく強い声で否定をしていた。紅愛も、びっくりしたように目を丸くしている。
 だが、事実である。
 紗枝とは刃友であり、付き合いも長いが、そういった関係ではない。そしてそのことを、紅愛に誤解されたくなかったのだ。
「そ、そんなにムキになること、ないじゃない」
「悪い」
 なんとなく、微妙な雰囲気になる。
 慣れていない状況に戸惑う。こんなとき、何を言えばいいのか、どうすればいいのか、玲は知らなかった。
「もう……」
 小さくため息をつき、紅愛は呆れたような感じで玲から離れていく。追うべきかどうか迷っているうちに、角を曲がって紅愛の姿が消える。
 おさまりの悪い髪の毛を掻きながら、玲もまた大きなため息を吐き出す。
 と、その瞬間。
「きゃああっ!?」
 紅愛が消えて行った角の方から、小さいけれど間違いなく紅愛の悲鳴が聞こえてきた。一瞬、体が固まった玲だったが、すぐに紅愛を追って角を曲がる。
 少し薄暗い裏道といった感じの奥の方で、二つの影が絡み合っている。一人は紅愛で、もう一人は先ほどのナンパ野郎らしき男だった。
 嫌がる紅愛の手首をつかみ、身体の自由を奪おうとしている。紅愛の体術はたいしたことないし、腕力もなく、抵抗しきれないように見える。
 男のもう片方の手が動く。
「やっ……助けて、玲っ……!!」
 男の手が紅愛の胸を掴むのを見て、紅愛の悲鳴を耳にして、玲の中で何かが切れた。
「あたしの紅愛に何してやがんだ、手前っ!!」
 叫ぶとともに全速力で駆けこみ、男めがけて手刀を放つ。怒りで力が入ったためか、首筋をめがけた手刀は角度がずれて男の肩に食い込む。顔をしかめる男だったが、すぐに反撃の拳をふるってくる。
 身を屈めて拳を避けると、玲は膝蹴りを男の股間に放つ。声もなく股間をおさえて前かがみになった男の首筋に、今度こそ間違いなく手刀を打ち込むと、男は目を向いてそのまま地面に倒れた。
「くそ野郎が」
 手をはたき、いまいましく倒れた男を見下ろす。
「紅愛、大丈夫か?」
 視線を転じると、紅愛は無言でうなずいた。男につかまれたのか衣服が少し乱れ、シャツの襟周りが伸びて鎖骨が見えていた。近づいて、乱れた服を直してやる。
「あ、ありがと、一応、礼は言っておく。あんな男、私一人でもどうにかなったけど」
 シャツの襟に手をあてながら、強がるように言う紅愛。
「なんだよ、あたしの名を呼んで助けを求めたくせに」
「あれは、玲と一緒にいたから、つい。それより何よ、玲こそあんあこと言って。いつから私は玲のものになったのよ」
「あ、あれは、あたしだってつい」
 勢いとしかいいようがない。
 紅愛の身に危険が迫り、男の汚らしい手が紅愛に触れるのを見て、叫ばずにはいられなかったのだが、思い出してみれば相当に恥ずかしいことを口にしたと今更ながらに思い赤面する。
「……でも、まあ、今日は二度も助けてもらったし。今日くらいは、玲のものになってあげても、いいけれど」
 玲から視線をそらしながら、少し小さな声で言う紅愛。
「え?」
 思いがけない言葉を耳にして、玲の思考が止まる。
 見下ろせば、紅愛はわずかに頬を赤くして、照れたように横を向いている。しかし、時折、気になるのか玲の方に目だけを動かして向け、目があうとまたすぐに視線を外す。
 すぐ触れ合えるような距離に紅愛がいて、男は地面で気を失っていて、薄暗い裏道には他に人が侵入してくるような気配も見えない。
 先ほどの紅愛の言葉の真意は何なのか、紅愛に対してどのように行動に出たらいいのか、頭の中でぐるぐると様々な思い、考えが回り出し、玲はテンパってしまった。
 ちらちらと玲の様子を見ていた紅愛だったが、玲が完全に彫像のように固まって動かなくなってしまったのを見て、呆れたようにため息をついた。
 そして。
 不意に紅愛の手が玲の首に伸びたかと思うと、身を寄せてきた紅愛が背伸びをしながら、そっと、優しく、唇を押し付けてきた。
 柔らかく、しっとりとした感触を唇に受けて、玲の体は一瞬だけ痙攣した。
 ただ、押しつけられるだけの不器用なキスは、ほんの三秒ほど。
 ゆっくりと、紅愛の体が離れていく。
「……か、勘違いしないでよね。あくまで、助けてもらったお礼なんだからっ」
 頬を朱に染めた紅愛は、それだけ言うと背中を向けてそそくさと小走りにこの場から去っていってしまった。
 玲は、呆然と消えゆく紅愛の後姿を見つめるのみであった。

 

 紅愛の唇の感触を思い出し、悶々と眠れない夜を過ごした翌日。学校の中庭で紅愛の姿を見つけた。
 昨日の今日ということでどう接したら良いか分からないが、紅愛の方も玲の姿を認めたようで、無視するのも憚られる。
「よ、よう」
 とりあえず軽く手を挙げて声をかけてみたのだが。紅愛はなぜか冷たい目を向けてくる。わずかにたじろぎつつも、負けずに再度、口を開く。
「えーと、昨日は色々とサンキューな」
 しかし、相変わらず紅愛の視線は氷のよう。いったい、どうしたのかと思っていると。
「玲の馬鹿」
 と、一言だけ残して足早に去っていってしまった。
 呆気にとられていると。
「あらら、ちょっと玲、いったい紅愛に何をしたのよ」
 どこからやってきたのか、紗枝が横に立って首をかしげていた。
「紅愛、怒ってたなー」
 紗枝だけでなく、みのりまでいた。
「玲、もしかして紅愛にやらしいことでもしたのかー?」
「あー、それはないわよ、みのり。玲にそんなこと出来る甲斐性ないもの」
「あ、それもそうか」
「な、なんなんだよ、おまえら」
 何気に失礼なことを言われて、さすがに頭にくるが、それ以上に今の紅愛の態度が気になる。本当に、何か変なことでもしたのかと考えるが、そもそも昨日別れて以来、初めて顔を合わせるのだ。キスのことなら、そもそも紅愛の方からしてきたわけで、玲が怒られる筋合いはないはずである。
「ほら、話してみなさいよ。どうせ玲のことなんだから、このあとグダグダになることは分かっているんだから」
「そうそう、玲はヘタレだかんな」
 二人に口々に言われてへこみそうになるが、どうにか堪える。しかし興味津々の二人からは逃れられそうもなく、仕方なく昨日の経緯を話して聞かせる。もちろん、キスされたことは伏せてであるが。
 簡単に説明し終えると。
「それは、玲が悪いわね」
「そうだなー」
 二人が納得したように頷き合う。
「な、なんでだよ。あたしのどこに非があるってんだよ」
 訳が分からず問い返すと、紗枝はゆるゆると首を振り、これ見よがしにため息をついてみせる。
「本当に玲はニブちんだな」
 みのりに言われると、ちょっと頭にくる。食べることばかり考えていて、他のことには興味なさそうな顔をしているみのりに、何が分かるというのだろうか。
「なあ、紅愛に昨日買ってやった下着って、水色のやつか?」
「あ、ああ、そうだけど」
「じゃあ、間違いないな。昨日、夜に遊びにいったときに身に着けていた」
「あーららぁ」
 紗枝とみのりが、じと目で見てくる。
「だから、はっきり言えって!」
 じれて、大きな声を出すと。
「だからぁ、よく考えなさいって。玲が下着をプレゼントして、男に襲われているところを助けて、紅愛は昨夜、買ってもらった下着を身に着けていたわけでしょう? それで、玲は昨日、紅愛に何て言われたんだっけ?」
「何って……」
 腕を組み、思い出す。
 確か紅愛は、「今日くらいは玲のものになってもいい」なんてことを口走っていた。
「…………っ!?」
 叫びそうになり、慌てて口元をおさえる。
「ようやく、理解したみたいね。あーあ、紅愛かわいそう。きっと昨日、ずっと待っていたんでしょうね、誰かさんが訪れてくるのを。どうりで目が赤いと思ったわぁ」
「え、だって、待てよ。そんなことって、ちょっと」
「下着をプレゼントされたら、そういうことだって思うよなぁ」
「いや、あたしは別にそういうつもりじゃ」
「この際、玲はどうでもいいの。重要なのは、紅愛がどう思ったかでしょう」
 顔が熱くなる。
 お腹が熱くなる。
「くっ……紅愛!」
 すでに消えてしまった紅愛の姿を求めて、玲は走りだしていた。

 

 そうして残されたのは、紗枝とみのり。玲が走り去っていく姿を見送り、どちらからともなく顔を見合わせる。
「みのりはいいの? 紅愛のことが好きなんじゃないの?」
「んー、でも、あたしは紅愛が幸せになってくれたら、それが一番だから。そーゆー紗枝こそどうなんだ?」
「そうねえ、玲があんなんだから、玲がちゃんと誰かさんを捕まえない限りは自分のことなんてとても、とても」
「ふーん」
 校舎に目を向ける。
 互いの不器用な刃友が、いつになったら幸せになるのか、想いを馳せながら。

 

「紅愛、待ってくれってば」

「知らない、近寄らないでよ馬鹿っ」

 

 不器用な二人の距離は、少しずつ、縮まってゆく。

 

おしまい

 

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