【作品情報】
作品名:その可能性はすでに考えた
著者:井上 真偽
ページ数:256
ジャンル:ミステリー
出版社:講談社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
正統派ロジック度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : ちょっと風変わりなミステリーを読んでみたい
過去に発生したカルト教団の集団自殺事件。
その中で唯一、生き残った少女が、事件の謎を解くために訪れたのが探偵・上笠丞。
少女が覚えているのは、カルト教団で一緒に暮らした少年が首を斬りおとされながらも少女を抱きかかえて運んで助けた、というもの。
そんな奇蹟のようなことが本当にあるのか。
上笠丞は奇蹟を証明するため、全てのトリック・可能性が不可能であることを証明する。
なるほどなるほど。
こういう趣向でしたか。
不可解に思える事件、奇蹟が起きたとしか思えない事件。
そんな事件が奇蹟であることを証明したいという風変わりな探偵。
そのため、事件解決につながると思われる可能性、トリックを全て否定することで奇跡を証明しようというもの。
こういう探偵はさすがに今まで読んだことがない。
またトリックや推理も、あくまで可能性である。
偶然でも、100回に1回しか起こり得なくても、もしかしたら起きるかもしれないコト。
そんなのは奇蹟でもなんでもないので、トリックを考える側はあらゆる「可能性」があればなんでもよい。
但し、それを否定するには明確な論拠が必要。
端から分の悪い立場に置かれるわけだが、それを真っ向から受けて否定している上笠。
これはメフィスト賞っぽい(実際に受賞したのはこの前の作品とのことだけど)
それだけに、ロジックがものをいうわけである。
無茶苦茶なロジックでは読み手を納得させることはできないわけで、そういう点では本作はロジカルになっていた、と思う。
ただ、理屈、論理なので、事件の前提条件をきっちり読み込んでおかないと、ついていけなくなるかも。
相手の推理、探偵の否定、そのいずれも色々な条件を突き合わせて出てくるものだから。
- 探偵は青い髪に真紅のコート
- 相棒は中国人の美女・フーリン
- 次々と現れる、推理バトルを繰り広げる論客
用意された内容は完全にラノベであるが、推理自体は本格。
このラノベっぽさを許容できるかは読み手次第だろうが、推理はミステリー好きにも受け入れられるのではなかろうか。
どうやらシリーズのようですが、探偵とフーリンは当然として、論客として登場したもう一人の中国美女リーシーもメインキャラクターとして続けて出るのですかね。
本作はこういう作風なので、良いのではないでしょうか。
ラノベっぽいので、フーリンのビジュアルが見たくなります。