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【マリみてSS(加東景)】加東景の狂宴

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~ 加東景の狂宴 ~

 

 

 景は街に出ていた。
 特にこれといった用事があるわけではないが、色々と見ようと思えば見るものはある。一人暮らしで生活にそれほど余裕があるというわけではないから、大抵は見て終わるだけなのだが、いずれ購入したいなと思うものについては脳内のメモ帳に記録しておく。
 そんな散策をしているときだった。
「あれー、景じゃない?」
「ん?」
 突然、自分の名前を呼ばれて振り返る。
「あ、やっぱり景だ。あんた変わらないわねー」
「わー、久しぶりだねー」
 近寄ってくるのは、三人の女子大生らしき集団。どの顔にも、どこか見覚えがあると思ったら、高校時代の友人たちだった。
 すぐに分からなかったのは、三人とも高校時代と比べて化粧したり髪の毛を染めたりと、見た目が結構変わっていたから。
「元気だった?いま何してるの?」
「普通に大学生しているわよ。一年、留年しちゃったけど」
「えー、景が留年?!何やってたの、落ちこぼれる景とは思えないけれど」
「あー、ま、ちょっとね」
 言葉を濁す。
 せっかく久しぶりに再会したというのに、わざわざ父の話を出すこともないと考えたからだ。
「そっちこそ、今は何をやっているの?」
 そのまましばらく、昔話に花を咲かせていると。

「……あれっ?」
 ちょっと離れた場所から、またどこかで聞いたことのある声が耳に入ってきた。ふと、首をそちらに向けてみると。
「あ、やっぱり」
 景の姿を認めて、小走りに駆け寄ってくる小さな二つの影。
「ごきげんよう、景さま」
「景さま、ごきげんよう」
「あら、祐巳ちゃんに志摩子ちゃん」
 可愛らしい笑顔を向けてくる、ツインテールとふわふわ巻き毛の女の子。荷物を抱えて、二人で一緒に買い物か、はたまた遊びにでも出かけていたのだろうか。
「景さまは、お買い物ですか?」
「特にそういうわけではないけれど」
「こんなところで景さまと会えるなんて、びっくりしました」
「ホント、奇遇ね」
 と、ほのぼのと会話をしていると、ツンツンと肘をつつかれた。
 そうだ、昔の友人と一緒に立ち話をしていたのだった。あまり放っておくわけにはいかない。景は軽く友人たちに謝った。
 しかし、友人たちはなぜか訝しげな表情をして景の方を見ている。

「……あの、さ、景。その子たちとは、どのような関係?」
「え?」
「そんな『景さま』なんて『さま』付けで名前を呼ばせて……」
「え、え……いやちょっと待って、なんか変な勘違いしていない?」
 確かに、いくら目上の人だといっても『さま』付けして呼ぶことなど、普通であればなかなかありえないかもしれない。しかし、彼女たちはリリアン生なのだ。彼女たちにしてみれば、年上の人間に対し『さま』を付けて呼ぶことはごく普通なわけで。
「あ、ひょっとして皆様、景さまのご友人ですか?」
「はじめまして、景さまにはいつもお世話になっております」
 礼儀正しくお辞儀をする二人。
 礼儀正しいのは良いことだけれど、この場合はその礼儀正しさが逆効果のようで。
「えと……あなた達、景とは……その、一体どのような関係で?」
「え? ええと、私たちのお姉さまです」

「「「お姉さまっ?!」」」

 揃えて声をあげる友人三人。
「やややっぱり景! あなた、こんな可愛らしい年下の女の子に手をだして?!」
「高校時代からガチ怪しいとは思っていたけれど、ついに?!」
「ちょっと待って、著しい誤解だからっ!ていうか、高校時代からってどうゆうこと?!」
「え、どうして誤解だなんて言われるのですか、景さま?」
「いや、でもっ、あのね」
 そんな悲しそうな瞳で見つめられても困ってしまう。そりゃ確かに、リリアン生の祐巳ちゃん、志摩子ちゃんから見たら景は『お姉さま:』なのであろうけれど、それは下手をすると別の意味にも取られるわけで。
「うわー、こんな美少女、よく見つけたわね」
 友人の一人が、志摩子ちゃんの美貌に目を丸くしている。そして無意識にであろうか、引き寄せられるように手が志摩子ちゃんの方に伸びる。
「あの、申し訳ありません」
 指が触れる寸前、身をよじるようにしてかわす志摩子ちゃん。そして、神に祈るかのように胸の前で手を組み、瞳を閉じる。
「……私、身も、心も、捧げておりますので」
「み、身も体も景に?!」
「体だけか!! それに捧げられていないから!!」
「そ、そんな! 私のこの気持ちを信じてくださらないのですか?!」
「ちょっと景、酷いんじゃないの、こんな可愛い娘に手を出しといて」
「だから、まだ出してねえっっ!!!」
 と、今度は背後からまた妙な会話が聞こえてきた。
「……はい、私と景さまの出会い、それはある雨の日、私はあるショックな出来事に打ちひしがれ、ただ雨に濡れていました。そんな私を優しく温めてくださったのが景さまでした。景さまは、私を部屋まで連れ、私の服を脱がし……ええ、もちろん下着もです。シャワーを貸していただき、その後は……その、景さまの手で……心も身体も熱くしていただいて……」
「なるほどねぇ、弱っているところを助けて」
「そこで奪ったのね。やるわねえ、景」
「ちょっとそこ!何勝手なこと言っているの!祐巳ちゃんも妙な想像を湧き起こさせるような変な言い方しないのっ!!」
 なんだなんだこの展開は。
 景はただ、昔の友人と昔話を楽しんでいただけのはずなのに。

「ひょっとして景、一年留年したのって、まさか……」
「……調教?」
「奴隷?」
「人聞きの悪いことを言うなっ!!勝手に想像逞しくするなっ!!」
「そうです!調教とか奴隷とか、景さまはそんな酷い方じゃありません。私たちは、好きで景さまの下にいるのです!」
「余計に誤解を生むような発言っ?!」
「景、あんたってば……」
「だから、信じるなっ!!」
 景は、あっさりと信じている友人の一人の手首をつかみ、もう一方の手で肩をつかんで引き寄せ、睨みつけた。
 至近距離で向き合い、説き伏せるように口を開く。
「――いい?私と彼女たちは別に変な、いかがわしい関係じゃないの。変な妄想して、盛り上がるな」
「―――は、はい」
 素直に頷く。
 と、思ったら。
「わ、分かりました……景さま」
「なぬぅっ?!!!」
「え、や、やだ、私ったらどうして……で、でも、景に抱きしめられ、その瞳で見つめられたら胸はドキドキ頭はクラクラ、や、やだ、女同士なのになんで?!こ、これが留年の一年で鍛え上げられた景の魔力?!」
 顔を赤くして、独り言のようにぶつぶつと言っている。
「ず、ずるいです景さまっ!今夜は私を抱いてくださると」
「ちょっと祐巳さん、今夜は私の夜伽の番よ」
「誰が決めた?!」
「きゃあああああっ!!」
「ええい、今度は何よっ」
 いきなりの悲鳴に振り返れば。
 なぜか知らないが、友人の一人が変な男にナンパされていた。それもかなり強引なやり口で、無理やり腕をつかんで連れて行こうとしている。
 一連のやり取りで苛々が最高潮になりつつあった景は、つかつかと二人の方に歩み寄り、無造作に男の手を振り払った。
「あ、なんだこのメガネ女。何しやがん」
「やかましい、人の女に手ぇ出すなっ!!!」
「ふぐぁっ!!!!」
 友人の腰を抱くようにして引き寄せると、秘かに習っていた通信八極拳の崩撃雲身双虎掌を男に問答無用でお見舞いする。男は吹っ飛んで道に転がり、気を失ったのか動かなくなった。
「ったく、ナンパなんて振り払いなさいよ」
「……け、けい?や、やばいよ、景かっこいい。てか私、景の女?やば、惚れそう?!」
「言葉のアヤよ、惚れるな!」
 慌てて突き飛ばすように身を離す。
 三人はそっと身を寄せ合って、景の方を何か恐ろしげに、それでいてどこか上気した顔で見つめている。
「大丈夫、朝子?」
「あ、危なかった。あと一分、いや三十秒、腕に抱かれていたら落ちていたかも」
「あの指と目は凶器ね」
 勝手なことを言い合っている。
 ちなみに景の右腕には祐巳ちゃん、左腕には志摩子ちゃんがしっかりとしがみついている。左腕の方は押し付けられる弾力がなんとも気持ちよい。ないと思っていたが、右腕の方にもそれなりの感触があって、意外と堪能する。
「景おねえさまーーーーっ」
 さらに、どこからか景の名を呼ぶ可愛らしい声が響き渡る。
「今度はなにっ??」
 と、身体の向きを変えた景に、すさまじい勢いで抱きついてきた小柄な人影。両腕をおさえつけられていた景は、身動きできずに正面で受け止める。
「おねえさま、おねえさまぁんっ」
「ちょ、やめて、そんなぐりぐりしないでっ……」
 その少女は、抱きついて景の胸に顔を埋め、激しく擦り付けてくる。
「あ、ずるい、私も」
「私もー」
 祐巳ちゃんと志摩子ちゃんまで、競うようにぐりぐり。
 くすぐったさと、そこはかとない気持ちよさを堪え、ようやくのことで三人の攻撃から退避すると、目の前にいたのは見覚えのある女の子。

「あ、アルバイトちゃん」
 色々なところでアルバイトをしている女の子だ……って、景は喫茶店でアルバイトしているところしか見たことがないが。
 今日は、何やら露出度の高い服装をしている。肩を大きく出して、胸元も大きくあいていて景の上からの目線だとほんのりと谷間が見えて目の保養となる。スカートもミニスカートで、ブーツ。一体、何のアルバイトなのか。怪しげな店の勧誘ではあるまいか。
「あ、今日はそこのイベントホールでのスタッフのバイトなんです。ちょっとしたキャンギャルみたいな感じなんですけど、どうですかこの衣装、せくしーですか?」
「え、あー、うん、そうね」
「喜んでください、アルバイトが終わったら、この衣装もいただけるんです!そしたら、おねえさまだけのキャンギャルになりますから、いつでも好きなように脱がせてください!」
「だから、脱がさないから!」
「え、そんな、じゃあやっぱり、ミニスカポリスの方が好みでしたかっ?!」
「やっぱり?!」
「ミニスカポリス?!」
「け、景、あんたってば!!」
「だからちがーーーーうっ!!」
 なんでこう、次から次へとタイミング悪く現れてはタイミングの悪いことを言ってくるのだろうか。
 旧友たちは、このとおり完全に誤解してしまっている。
「景、あなたこんな可愛い子にいかがわしいバイトさせてお金稼がせて貢がせているの?それだけにとどまらず、コスチュームプレイでなりきりプレイ?」
「なんでそういう方向に誤解する?なにゆえっ!?」
 三人の女の子(一人はキャンギャル風)に囲まれた景を、旧友たちは異形のモノでも見るかのように、少し距離を置いて様子を窺っている。
 というか、往来のせいか旧友たちだけでなく、行き交う人々からも好奇の目で見られている。
「……聞きました奥様、女の子を侍らせて、働かせて、貢がせているそうよ」
「しかも変な格好を強要して淫らな遊戯に耽っているとか」
「耽ってない!!」
 と、手を振り回して激しく否定したところ、手が志摩子ちゃんにあたってしまい、志摩子ちゃんは持っていた紙袋を落っことしてしまった。
「あ、ご、ごめん」
 謝りながら、地面に目を向けると。
 落ちた紙袋の中身が道にぶちまけられていた。

 ロープ(縄)。
 蝋燭。
 手錠。
 猫耳と尻尾。
 鞭。
 メイド服。
 あやしげな物体X。

 固まった。
 その場に居合わせた者全員が、地面にばら撒かれたそれらの品々を見て固まった。
「あらあら、大変。すみません、景さま」
「ああ志摩子さん、なくしたらお仕置きされちゃうわよ。お使いの品なのに」
 しゃがみこんで、拾い集める志摩子ちゃんと祐巳ちゃんは、景の視線をはばかるようにしている。
 ちょっと待て、もはやいい訳する気力も沸き起こってこないが、周囲の人間は明らかに、景が志摩子ちゃん、祐巳ちゃんにそれらのブツを買いに行かせたと思っている。そんな目で景のことを見つめている。
「景、やっぱりそうだったのね……」
「ご、ごめん、私たちもう行くわ。もう邪魔しないから」
「お幸せに」
 景が何かを言う前に、三人は素早くこの場から逃げ去ってしまった。周囲にいた人々も、散っていく。
「あ……はは……てゆうか二人とも、なんでそんなものを?!」
 脱力しそうになりながらも問いかけると、二人は邪気のない笑顔で口をそろえる。
「はい、今度、山百合会主催のちょっとしたパーティーで余興をやる予定で」
「由乃さんたらマジックに凝っちゃって、今度は手錠とロープで縄抜けをするって張り切っちゃって」
「志摩子さんは、鞭を使って遠くに置かれた蝋燭の炎を消すという荒技を見せるんです」
「ついでに、ただやってもつまらないから仮装しようと」
「ちっとも面白くないから!てゆうか、今の説明の中に入っていなかったソレは何?!」
 景は、志摩子ちゃんの華奢で可憐な手の中におさめられている、美少女には可憐な美少女には似つかわしくない物体Xを指差した。
「これは」
 と、何か言いかけたところでいきなりその物体が奇妙に蠢いた。
「あ、志摩子さん、スイッチ入れちゃってるよ」
「あらいやだわ、どうやったら止まるのかしら」
 怪しい動きをする物体Xを手にした美少女という、ある意味で凄まじい光景。
「ジーザス!!!」
 景は十字をきった。
 謎の物体Xはとりあえず置いておくとして、あの品々を見て、誰一人として先ほど二人が述べたような使い方をするなど想像しないだろう。想像したのはきっと。
「おねえさま、猫耳としっぽの方がお好みだったんですか?あ、私、ちょっと怖いですけどお姉さまがお望みなら、鞭でも蝋燭でもロープでも手錠でもなんでもこいです!」
「違うってばよアルバイトちゃん!」
 景の目の前には、キャンギャル姿の女の子と、ロープと蝋燭と手錠と鞭と猫耳&しっぽとメイド服と変な動きをしている物体を両手に抱えた志摩子ちゃんと祐巳ちゃんがいて、景のことを見つめている。
「ふ……ふふ」
 もはや、笑うしかない。
 さらば、青春の光。

 

 そして、そんな黄昏ている景と、三人の少女を少し離れた電信柱の影から覗き見ている人影が一つ。
「ゆ、祐巳ちゃんに志摩子ったら、あんな、あんな鞭や蝋燭で景さんと……く、悔しいっ、私だって……!!」
 ハンカチを噛み締めて、身をよじる蓉子であった。

 どこからどう見ても、異常かつ平凡な加東景の日常の一コマなのであった。

 

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