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ノーマルCP マリア様がみてる

【マリみてSS(景×祐麒)】Yes,I’m your "Key" <エピローグ>

更新日:

 

~ Yes,I’m your "Key" ~
<エピローグ>

 

 

 12月24日、それはクリスマスイブと呼ばれる日である。
 クリスマス当日よりもよほど盛り上がり、カップルはイチャイチャし、家族や仲間でのパーティがあちこちで繰り広げられる。
 そんな日にも関わらず、祐麒は学校に来ていた。それも、リリアン女子大に。
 リリアン女子大キャンパス内はといえば、休みの期間で且つクリスマスイブだというのに、学生の姿がそこそこ見られた。
 部活動やサークル活動をしているのか、図書館に勉強でもしにきているのか、それともゼミか何かあるのか、あるいは待ち合わせをしているだけでこれからクリスマスの街に遊びに繰り出すのか。
「…………で?」
 寒そうに身を震わせながら、眠そうな目で聖が尋ねてきた。
「えーと、このたび私と祐麒クンは、正式にお付き合いすることにしましたので、そのご報告を」
 隣に並ぶ景が、わずかに照れた仕種で告げると、より一層呆れたように聖は白い息を吐き出した。
「なんでわざわざ、休みの日に呼び出してまで私に言う必要あるの?」
「それはほら、その辺、ちゃんとしておきたいかなって。佐藤さんにも色々と迷惑をかけたみたいだし」
「別にそんなこともないけど。で、何、頑なだったカトーさんを、祐麒はどうやって落としたの?」
 にやにやと、そんなことを尋ねてくる。なんだかんだ言いつつも、興味はあるようだ。
「落としたって……まあそうね、一言で言うなれば」
 と、ちらりと景は祐麒を見た。
「あ、ちょっと加東さん、アレは言わないでくださいよ、恥ずかしいですから」
「え、なんで、いいじゃない」
 慌てる祐麒を横目に、くすくすと笑う景。
「一言で言うなら、祐麒クンの鍵が頑なだった私をこじ開けたくれた、ってところかしら」
「ほほぉ~う、なるほどなるほど、祐麒もヤるねぇ」
 景の言葉を耳にして、途端にニヤつき始める聖。
「さ、佐藤さん、絶対に変な風に意味とらえているでしょう!?」
「えー、いやいや」
 心底、楽しそうに景と祐麒を見ている聖。
「変な意味?」
「えー、別にそんなことないよ。要は、祐麒がカトーさんの穴に挿入して開かせて、祐麒のモノにしたってことなんでしょう?」
「は――――な、ななな、何言っているのよ!?」
 聖の言葉を聞き、少し間を置いてどうやら理解したらしい景が、顔を赤くして怒鳴る。
「あたしがデートをセッティングしたのも無駄じゃなかったんだ、グッジョブよ祐麒」
 にひひ、と笑いながら祐麒の肩を抱き、頬を寄せてくる聖。
「で、カトーさんはベッドの上ではどんな感じ……アイテテテテテ!?」
 祐麒にひっついているのと反対側の頬っぺたが思い切り引っ張られ、聖の顔が歪む。能面のような顔をした景が、容赦なくつまんで、祐麒から聖を引きはがす。そして聖の体を肩で押しのけるようにして、祐麒との間に入り込む。
「いったぁ~、な、何すんのいきなり……て」
 頬をおさえ、涙目の聖。
 そこに、何人かの学生が近くを通りかかった。

「あれ、何、高校生?」
「わ、可愛い~~」
「お姉さんたちと遊ぶぅ?」
 などと祐麒のことを見て楽しげに笑い、手を振りながら前を歩いていく。つられるようにして祐麒も手を振り返すと、女の子たちはまた楽しそうに笑い、賑やかに去っていく。
「……痛っ!? 痛い痛い痛いっ、かかか加東さんっ!!!?」
 絶叫する祐麒。
 見ると、ハイヒールで思い切り体重をかけて祐麒の足を踏みつけ、更にセーターの下に入り込んだ手が祐麒の脇腹を力いっぱいつねりあげていた。
 そして、眼鏡の下の目が恐ろしい。
 表情そのものはクールなのだが、氷点下を感じさせるクールさだ。
 聖が、少し引き攣ったように景を見ている。
「も、もしかして、嫉妬?」
「私のことを好きだと言ったのに、他の女の子にデレデレする方が悪いでしょう」
「ご、ご、ごめんなさい」
 ようやく景の手と足が離れ、安堵の息をつく祐麒。
「祐麒~~、頑張れよ」
「はは、だ、大丈夫ですよ。俺は加東さん一筋ですから」
 懸命に笑ってみせる祐麒、なかなかに健気である。
「とにかく、あんまり下世話な想像はしないで頂戴。大体、私、まだ男の人とそんなこと出来ると思えないもの」
「ん、どゆこと?」
「ああ……ちょっとトラウマがあってね、私、男の人が苦手なのよ。正確に言うと、こう、私のことを女として求めてこられると、駄目で」
 景は簡単に自身のトラウマについて説明した。それだけ、聖に対しても心を許しているということなのかもしれない。
 その話を聞いて、聖はちょっと考え込む。
「それって、男に迫られるのが駄目ってこと?」
「まあ、そうね。だから祐麒クンには悪いけれど、そういうのは当分の間」
「じゃあ、逆は?」
「ん?」
「祐麒は何もせず、カトーさんの方からするのだったら、どう?」
 聖の言葉に、きょとんとする景。
 そして祐麒に顔を向け、僅かに首を傾げて考え、唸る。

「それは……試してみる」
「え、ちょっと、加東さん?」
「動かないで祐麒クン。それと、変な気持ちも持たないように」
「は、はいっ」
 真剣な表情で見つめられ、頷くしかない祐麒。
 直立不動の祐麒の腕を掴み、難しそうな顔をして見つめてきて、やがて何かを決意したかのように頷き、動きを見せる。
 軽く背伸びをするようにして顔を近づけてくると、そっと、祐麒の頬に唇を寄せた。ひんやりとした感触が頬に押し付けられるのを感じる。
「…………大丈夫だ」
 ゆっくりと離れながら、呟く景。
「なるほど、迫られるのは駄目だけど、私から迫るのは大丈夫なのね」
「つまり、祐麒がマグロでカトーさんが色々と祐麒にしてあげる分には平気だと」
「それはまだ分からないわ。今は頬っぺたにキスだけだけど、もっと違うことになるとどうかしら」
「じゃあ、試してみるしかないんじゃない?」
「そうね、実際にするとなると、ただ寝てもらっているだけじゃあ駄目だものね。手か口で状態を作り上げないと……う、そ、それは出来るかしら」
「そうしたら、穴の方から挿入にいかないと駄目ね」
「そういうことになるけれど……」
「今夜あたり、やってみたら? クリスマスイブだし、クリスマスプレゼントは私の大事なもの、なんていいじゃない」
「それはちょっと乙女すぎやしないかしら」
「あ、あの、あの、佐藤さん、加東さんっ!」
 顔を真っ赤にした祐麒が、暴走し出す二人の会話に割って入る。
「何よ、いきなりどうしたの祐麒クン、変な顔して……っ!?」
 そこでようやく、自分がどのような内容の会話をしていたのか理解したのか、景の顔がさーっと赤みを増していく。

「な、な、なな、なんてこと言わせるのよっ!?」
「お、俺ですか!? 俺のせいですか!?」
「忘れなさい、さっきまでの私の言ったことは全て忘れなさい」
「わ、わ、忘れます、忘れないけれど忘れます、っていうか意識が……」
 首を絞められ、次第に意識がぼやけていく。
「あっはははは、その様子なら大丈夫そうだね」
 二人の様子を見て、聖がお腹を抱えて大笑いし出した。
 祐麒の首を絞める手を緩め、赤くなった顔で聖の方を向く景。どうにか意識を取り戻し、ぜいぜいと呼吸をする祐麒。
「末永くお幸せに~っ、と。あと、今夜はせいぜい楽しんでくださいなっと」
 ぶんぶんと手を振り、無邪気且つ邪気のある笑顔を見せるという器用な真似をして見せ、聖は二人から離れて歩き出す。
「あ、ちょっと佐藤さん」
「素敵なプレゼントだったよ、じゃあね~」
 止めるのも待たず、去ってしまった。
 祐麒を掴んでいた手を離し、景は吐息を漏らす。
「せっかく、佐藤さんの誕生日プレゼントも用意していたのにね」
「仕方ないですよ、また明日にでも渡しましょう。それより今日は、加東さんとの初デートを俺的には楽しみたいです」
「そうね……って、あ、さ、さっきのはまだナシよ? いきなり今日、そんななんて無理だから、あの、大丈夫だと思ったらその時はちゃんと、頑張ってやってみるから、もうちょっと待って」
「あ、はい、だ、大丈夫です。俺ならいくらでも待てますから」
「……でも、それまで祐麒クン、どうするの?」
「え、何がですか?」
「だ、だから、男の人って溜まるものなんでしょう? そういうとき……まさか、私以外の女の人で」
「そんなことするわけないじゃないですか!?」
「じゃあ……も、もしかして一人で?」
「いや……あの」
 なんで、こんなことを訊かれなければならないのだろうか。答えに困る。
「私という彼女がいるにもかかわらず、一人で処理されるっていうのも、なんか手に負けたようで悔しいし」
「あ、あの~、か、加東さん?」
「よしんば、私のことを考えながらしているのだとしても、妄想の私に現実の私が負けていることになるの? それはそれで私の存在って……」
 真剣に悩んでいる景を見て、さすがに少し呆れる。確かに、嫉妬強くて独占欲が強いと言っていたが、まさかここまでとは思ってもいなかった。
「……よし、分かりました」
 やがて何か納得したのか頷くと、祐麒を睨みつけるようにして見つめてくる。

「一人で処理する時は、私の見ている前でして頂戴」
「………………は、はああぁっ!!?」
「大体、私の見ていないところだったら、私以外の女の人を妄想していないとも限らないし。その点、私を前にしたら私のことしか考えられないでしょうし、もし違う女の人のことを考えていたら私も分かるだろうし、うん、やっぱりこれがベストね」
 いやいやいや、全然ベストじゃないし、反論しようとするのだが。
「何、文句でもあるのかしら?」
「え、いえ、その」
 怜悧な目で見られると、萎んでしまう。
「それに見ていれば、私も慣れるかもしれないし。あ、でも、私のことは想っても、私を襲ってきたら駄目よ? その時は噛み千切るから」
 景の一言に、背筋が寒くなる。
 ヤル。この目は必ず実行すると語っている。
「……これが嫌なら、あとは貞操帯をつけてもらうか」
「いえ、大丈夫です、最初の案でお願いします!」
 更にとんでもない案が口から飛び出してきて、慌てて阻止する。しかし、性欲の自己処理まで管理しようとするというのは、景の精神はどうなっているのか。そして祐麒は、そんなことに耐えられるのか。
 想像してみると、体がぞくぞくと震えた。アリかもしれない、なんて思ってしまっている自分に、もしかしてM体質なのだろうかと考える。
「大丈夫、慣れてきたら、私も手伝ってあげるから」
「え?」
 ぽつりと零した景に目を向けると、怒ったような表情をしつつも顔を赤くし、祐麒の様子をちらちらと窺っている。
 手伝う、ということはアレやコレやをしてくれるということだろうか。これまた想像して、たちまちのうちに漲ってくる。
「――――け、景さん!」
「え? やだ、名前で……ま、まあ別にいいけれど……って、え、ちょっと」
 辛抱たまらなくなり、景を抱きしめたくなり、祐麒は腕を広げた。
 そして、景の細い体をその腕の中に収めようとして。
「――っ、ひ、い、イヤぁぁーーーーーっ!!!!!?」
「もるぐっ!!!?」
 景のガゼルアッパーをもろにくらい、体が宙に浮く。
 弧を描くようにして地面に落下しながら見た十二月の空は、なぜか赤く見えた。

 

「……全くもう、急に盛るから」
「す、すみません」
 鼻血を噴きだし、脳震盪を起こした祐麒は今、大学のベンチで景の膝枕の上で横になっていた。
 おでこにあてられた景の手がひんやりとして、心地よい。
「男の人って、本当に見境ないわね。そんなんじゃ、私は一生、心を開かないわよ」
「申し訳ありません」
 本当に自分だけが悪かったのだろうかと思いつつ、逆らうことも出来ずに謝る。まあ、景の過去の話を祐麒は聞いていたわけで、そのうえで先ほどの行動に出てしまったところは確かに祐麒に非がある。
「……まだ、痛い?」
「いえ、大丈夫です」
 景の膝枕は、適度な硬さと温かさで祐麒の頭を支えていた。むらむらとしたいところだが、また景を怯えさせるだけになるし、頭もまだ少しクラクラしていたので大人しく目を閉じて休む。
 頭を撫でてくれる景の手もまた気持ち良い。
「私の嫉妬深さ、独占欲の強さ、分かった? 嫌になったりしない?」
「しないですよ、それくらい景さんも俺のことを思ってくれているんだ、って思いますから」
 興味を持たれないよりは、余程いい。無関心というのが一番、堪えるから。
 さすがに少しばかり引いたが、それでも惚れてしまった祐麒には抗えるわけもない。景の全てを受け入れたいと決意したのだから、嫌な部分も含めて景を好きになりたい。
「……寒くない?」
「大丈夫です」

 風が吹き、頬をくすぐる。
 いや、これは風ではない。何か細くてさらさらとしたものが、頬に触れているのだ。
 なんだろうと思って薄目を開けたところで、景の顔が覆いかぶさるようにして間近に迫っているのを視界にとらえた。
 次の瞬間。
 唇に、ひんやりとして柔らかい景の薄い唇が押し当てられていた。
「――――」
 離れていく唇、目に入る景の表情。
 照れたように、笑っている。
「良かった。キスしてあげるのは、大丈夫みたい」
「け、景さん……」
「なあに?」
「あ、あの、よく分からなかったのでもう一度お願い……できませんか?」
「……変な気起こしちゃ、ダメよ?」
「は、はい」
 ガチガチに緊張しながら、景のことを見上げる。
 景は垂れる髪の毛を手でかきあげて抑えると、再びゆっくりと顔を近づけてくる。
「んっ……」
 二度目のキス。
 ちゅっ、と小さな音を立てて。
 祐麒の頬を指でくすぐりながら、景は淡く笑う。
「大丈夫よ、確かに私、少し祐麒クンを縛っちゃうかもしれないけれど、私も祐麒クン以外を見ないから。私はもう、貴方だけの私だから、ね」
「景さん、俺は。俺の」
 告げようとした祐麒の言葉は。

 三度、景に口を塞がれて、外に出ることはなかった。

 

 

おしまい

 

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