【作品情報】
作品名:ミモザの告白3
著者:八目迷
ページ数:350
ジャンル:エンタメ
出版社:小学館
おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
痛いけれど、読み進めたくなる度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : ジェンダー問題を真剣に扱ったラノベを読みたい
文化祭を終えてから咲馬たちは平穏な学校生活を送っていた。
最初はクラスメイトに避けられがちだった汐も、今ではすっかり馴染んでいる。
汐がクラスの人気者に返り咲く日も近い――そう思った矢先。
咲馬たちの教室に、かつて汐が所属していた男子陸上部の能井風助が訪れる。
「勝負しろ。俺が勝ったら、男子陸上部に戻ってきてもらう」
長距離走者として汐のライバル的存在だった能井は、汐に勝負を挑む。
ブランクのある汐には不利な条件。
だが汐は、その勝負に乗ってしまう。
一方、クラスの問題児・西園アリサが、世良慈と衝突する。
挑発を繰り返す世良に、怒りを募らせる西園。
溜め込んだ鬱憤は理性を浸食し、やがて彼女は思いも寄らない凶行に走る。
「舐めんな、クズ野郎」
大切なものを守るために。
あるいは何かを勝ち取るために。
彼ら彼女らは、ぶつかり合う。
暴走する感情の行き着く先はーー。
さあ、3巻。
格好良くて人気のあった汐が女子として学校生活を送ることに、周囲も徐々になれてきた頃。
だからといって、全てが簡単に進むわけではない。
特に、「男子の汐」に対して強い執着、強い思いを抱いていた人ほど、その思いは反転しやすくなる。
それが、陸上部の能井、そして汐に好意を寄せていた西園アリサの二人。
汐と咲馬、そして夏希という三角関係の話はこの巻ではやや静かにしておいて、3巻で描かれるのは汐と、能井とアリサとの関係性の決着。
男子陸上部に是が非でも戻ってきてもらいたい熊井は、汐に勝負を持ちかける。
勝負を受けて勝ったところで汐にとっては何も益はなく、むしろ負けた場合のリスクだけがある勝負。
だというのに、意外とカッとしやすい汐は売り言葉に買い言葉といった感じで勝負を受けてしまう。
不安に思う咲馬は、汐の練習につきあって見守る。
この練習のところだけじゃないけれど、汐と咲馬の関係性は実に奇妙な形で続き、危うさを孕んでいる。
咲馬のことが好きな汐。
汐のことは嫌いじゃないし勿論好きだけど、それは友人としての思いである咲馬。
一方で、女の子としての汐に関しても思いが変わってくるというか、拒絶もせずだからといって汐の想いを完全に受けられるわけでもなく。
汐に迫られて(?)、ちょっとアレな感じになったりもして。
そういう二人のこともありつつ、本当の主役は表紙も飾っているアリサ。
実に強烈で、気が強くて、我がままで、自分の思いに真っすぐで。
汐とのことでクラス内で孤立しているアリサに関わってくるのが世良。
ある意味で、ここまでやるかという感じのアリサの行動は、実はちょっとスカッとしたり。
いや、それくらい世良がなんか受け入れられないんですけどね。
アリサや能井、世良だけでなく、真島や椎名といったキャラクター達も、今まで見せなかった素顔を見せたりして。
当たり前だけど、良いだけの奴、悪いだけの奴、善意しかないキャラ、悪意しかないキャラ、なんていないわけで。
その笑顔や、泣き顔や、怒った顔の下には、様々な顔があることを見せつけてくれる。
ひとまず、能井とアリサに関してはひと段落着いたので、あとは汐と夏希、そして咲馬の関係性だろうか。
世良がここにまた関わってくるのか。
最後まで見届けたいですね。
世良はもっとぶちのめしても良いと思った。