【作品情報】
作品名:名探偵の証明
著者:市川 哲也
ページ数:297
ジャンル:ミステリー
出版社:東京創元社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
真犯人の切なさ度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : ミステリー要素を持ったドラマが好き
かつて、数々の事件を解決した名探偵。
時が経ち、既に老齢に達したその名探偵は引退寸前だった。
現在、世間を賑わせているのは若い女の子のアイドル探偵。
老探偵は、再起をかけてアイドル探偵・蜜柑花子と事件解決に臨む。
鮎川哲也賞を受賞した本作。
タイトル的に本格推理ものを想像していたのだが、それは悪い意味ではなく大きく裏切られた。
事件に挑むのは、かつて名声をほしいままにした探偵、屋鋪啓次郎。
過去の事件で怪我を負い、その怪我がもとで引退寸前、開店休業状態の探偵業をしている。
このまま朽ち果てていく前に、再起をかけて勝負をかけるのが、アイドル探偵・蜜柑花子との推理。
招待された屋敷で発生した密室殺人事件で、屋鋪と蜜柑の推理対決が行われるのかと思いきや、そうではない。
蜜柑は探偵・屋敷を尊敬している大ファンであり、勝負するような雰囲気にはならない。
また、その事件の謎自体も大がかかりなものではなく、他の作品で読んだことあるようなもの。
どんな風に展開していくのかと思いきや、本作は本格推理ではなく、あくまで「探偵」を描いたものだった。
それも、老いた探偵の再起を目指した人間ドラマである。
だから事件のトリックとかそういうものには主がおかれていない。
かつての名探偵・屋敷がどのような思いを抱いて事件に挑んでいるのか。
現代の探偵・蜜柑にどのような思いを抱くか。
そして旧来の相棒である警察官、武富との関係。
そういったものが描かれていき、最後はなんともいえない切なさというか、そういうのを感じさせた。
真犯人の動機、感情、鬱屈。
なんか、ちょっとそこは新鮮に感じた。
あまりそういう話を読んでいなかったのかもしれない。
謎解き、ミステリーを期待すると裏切られるが、ドラマとして読むとなかなか楽しませてくれた。
たまにはこういう作品があっても良い。
謎は大雑把。
そして屋敷も蜜柑も、本作だけでは「名探偵」感がないのがなんとも。
ミステリーを期待して読まないように。