【作品情報】
作品名:サクリファイス
著者:近藤 史恵
ページ数:245ページ
ジャンル:エンタメ
出版社:新潮社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
意外とミステリー感 : ★★★★★★☆☆☆☆
こういう人におススメ! : スポーツものとミステリが適度に好き
自転車のロードレースを舞台とした作品。
主人公は大学を卒業したばかりでチームに所属したばかりの新人。
高校時代までは陸上で全国に行けるほどの実力を持ちながら、勝利を求められるプレッシャーが重かった。そんなとき、ロードレースをテレビで観て、ただ勝つだけではない魅力にひきこまれて競技自転車の世界に足を踏み入れることになる。
この世界ではエースを勝たせるためにチームの皆が力を出す。特に「アシスト」は自分の足を潰してもエースのため、チームのために走り続ける。例え自分自身が下位に落ちても、エースが勝てばそれは自分の勝利でもある。
そんな世界が、役割が主人公には心地よい。
だけどきれいごとばかりではない世界。勝利への執着心、向上心、憎み、羨望、さまざまな思いは交錯する。
日本ではマイナーな競技も、ヨーロッパでは人気のスポーツでありレベルも高い。そんな本場ヨーロッパのチームに移籍の可能性が出て来た時、レースでは何が起きたのか・・・
<関連レビュー>
■エデン
■サヴァイヴ
■キアズマ
■スティグマータ
競技自転車といえば漫画「弱虫ペダル」で一気に人気というか、知名度が上がったのではないでしょうか。
かくいう私も競技自転車の知識は「弱虫ペダル」を読んでのものしかありません。そのため、この作品で描かれるレースの内容や、チームの状況、言動などが、経験者の方などからすると納得しかねる部分があるというのは、言われて初めてそういうものなのかと分かったくらいです。
でも本格スポーツものではなく、競技自転車の世界を舞台としたエンタメ小説として読めば面白く一気に最後まで読み進めることが出来ました。
アシストとしてエースの為に働く姿は、まさに縁の下の力持ちというか、陰の功労者というか、こういうのは日本人的にも好きな人は多いのではないでしょうか。
自分が勝つためではない、誰かのために一生懸命に走るというのが良い。
一方で本格スポーツものでないのは確かで、ちょっとしたミステリーが最後に発生する。
レースの最中に発生した事故。
それはなぜ、起きたのか。
誰のせいなのか。
憎悪や、嫉妬や、羨望、そういったものが色々と絡んでいて、意外な事実に主人公は衝撃を受けるわけですが。
爽やかスポーツものと思わせておいて、微妙に後味悪い系の作品だったとは、そこがまた意表をつかれて良かったかも。
突っ込まれて読んでみると、確かに色々と不自然な点があると思いました(苦笑)
そういった意味では競技自転車に対する取材や調査が甘かったのかもしれないし、それをミステリの伏線に使ったのも変なのかもしれませんが、エンタメ作品として気にせず読めば良いと思います。個人的には。
★関連リンク
「エデン」
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