書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(祐麒×志摩子)】ホワイトプリンセス・ロード <その4>

更新日:

~ ホワイトプリンセス・ロード ~
<その4>

 

 

 クリスマス・パーティの当日はとても良い天気だった。
 ホワイト・クリスマスにはなりそうもないけれど、晴れ渡った空から降り注ぐ冬の太陽は、とても心地よいものであった。
 私と祐麒さんは待ち合わせをして、学園に向かう前にまずは買い物をするためにショッピングセンターへと足を運んだ。パーティのために幾つか買い物をしていこうと、事前に二人で話し合ったのだ。
 前もってリサーチし、二人で決めていた品を購入しているうちに時間もやってきて、荷物を手に学園へと向かう。
「今日も寒いですね」
 日差しはあるけれど、空気は冷たい。
 コートに包んだ身を縮こまらせるようにして歩く。先ほど訪れたショッピングセンターも、今歩いている街中も、クリスマスのムードに満ち溢れている。赤と緑の色が目立つのは、この時期なら当たり前のこと。
「子供たち、喜んでくれるといいですね」
 学園の子たちは、それぞれが様々な事情を抱えているけれど、みんなとても明るくて良い子達ばかりのように思えた。自分たちの境遇を嘆くわけでなく、恨み事を口にするでもなく、前向きに毎日を生活している。とても、生き生きしている。まだほんの少し触れあっただけだというのに、なんとなく分かった。
「きっと喜んでくれますよ。なんたって藤堂さんですから」
「どうしてですか?」
「あ、いや……きっと俺だったら、嬉しいから」
 寒さに頬を赤く染めながら、祐麒さんが優しく笑う。
 当日になってまで不安を口にする私のことを励ましてくれる。こんな自分じゃ駄目だと思う反面、つい甘えそうになってしまう。
「そうですよね、喜んでくれますよね」
 自らを励ますように、口に出して言う。
 実際に言葉にすることで、本当に喜んでくれるに違いないと少しでも思えるようになるのは、誰かが言うように言葉に魂が宿っているからだろうか。
「やー、でもクリスマス・イブの日に、こんな風に藤堂さんとボランティアでのパーティに参加するなんて、ホント、思ってもいなかったですよ」
「それは、私も……」
 そこまで言いかけて、ハッとする。
 周囲に目を向けてみれば、家族連れ、友達同士といった人たちの中に、当然のように男女のカップルの姿がいくつも視界に飛び込んでくる。クリスマス・イブの日、休日ということであれば、恋人同士、夫婦、といった間でのデートが沢山行われていることは想像に難くない。
「あ、あの、もしかしてご迷惑でしたか?」
 急に不安になる。
 私自身、そのようなことに縁遠かったし、全く気にしていなかったけれど、本当は誰かと一緒に過ごそうと思っていたりしなかったのだろうかと。祐麒さんは優しいから、施設の子供たちのためのボランティアと聞いて、断れなかったのではないか。
 ご家族や、学友とのパーティが予定されていたけれど、こちらを優先してくれたなんてことはないだろうか。
 それとも、もしかしたら誰か女性と……
「……っ」
 急に、胸の奥から、針で刺されたような痛みが感じられた。
「藤堂さん、どうかしましたか?」
 少し心配そうな顔をして、祐麒さんが私のことを見つめてくる。
「いえ、なんでもないです。それより、祐麒さん」
 尋ねたいわけでもないのに、口を止めることが出来ない。
「あの、ひょっとしてご迷惑ではありませんでしたか? 今日のこと」
「は? なんでですか」
「クリスマス・イブに、私なんかと一緒にボランティア活動だなんて。本当なら、他にどなたかと約束があったりしたりは」
 自分で訊いておきながら、祐麒さんが何と答えるか少し緊張する。
「迷惑だなんて、そんなわけないじゃないですか。例え何か約束があったとしても、こちらを優先しますし」
「やっぱり、そうなんですか」
 まさか、予想した通りだったとは。
「え、ちょっと、なんで落ち込んでいるんですか藤堂さん?」
「だって、申し訳なくて」
 思っていた以上に、私自身がっかりしてしまったようで、祐麒さんに心配されてしまった。これから楽しいパーティにしようというのに、雰囲気を沈ませてはいけない。
「いや、よく聞いてくださいよ、約束があったとしても、って言っただけで、本当に約束があったわけじゃないですから」
「あ」
 確かに、そう言っていた。
 言葉を取りちがえ、勝手に勘違いして落ち込むなんて、凄く恥しい。顔が熱くなる。
「それに、ですよ」
 横をちらりと見ると、祐麒さんは鼻の頭をかきながら、声のトーンを落として、それでも私には聞こえるように言った。
「藤堂さんに誘われたなら、何をおいても優先させちゃいますから」
「はぁ。えと……それは」
「あ、急がないと遅れちゃいますよ」
「え、あ、もうこんな時間?」
 時計を見てみれば、約束の時間まであと少しだった。話しながら歩いていて、スピードが遅くなっていたのかもしれない。子供たちと約束をしているのに、遅刻してしまうなんてわけにはいかない。
「急ぎましょう、藤堂さん」
「はい」
 早足で歩きだす祐麒さんを、追いかける。
 先ほどの祐麒さんの言葉の意味が気になったけれど。
 しばらく前に浮かびあがっていた不安な気持ちは、なぜか消えていたから、私は軽い足取りで学園に向かって駆けだしていた。

 

 学園内の居間は、子供たち手作りの装飾がなされていた。折り紙や画用紙などで作られた様々な飾りは、とてもほのぼのとしていて、温かくて、見ているだけで頬が緩んでしまうよう。
 今もまだ飾り付けは終わっていないようで、賑やかに、楽しそうに、子供たちは手を動かしている。
「こっ、こんにちは、藤堂さんっ」
「あら、こんにちは、壮太君」
 子供たちを眺めていると、キッチンの方から壮太君が姿を見せてきた。
 この前はラフな格好だったけれど、今日はシャツにネクタイ、スラックスという格好。どうやら、学校の制服みたいだ。
「今日は、学校だったの?」
「いえ、そういうわけでは、いやっ、実はそうで」
 なぜか、しどろもどろの壮太君に、首を傾げる。
「と、とにかく、今日はわざわざありがとうございます」
 腰を直角に曲げてお辞儀をしてくる。こういうのはなんだろう、体育会系というのだろうか。
「私たちの方こそ、今日はよろしくお願いします。みんなと一緒に楽しく過ごすことが出来ればと思っています」
 私も改めて頭を下げて挨拶をする。
 壮太君はどこか落ち着かない様子で、目線が左右にきょろきょろと動く。
「あの、と、藤堂さん、良ければ、今日」
「あ、おねえちゃんだーっ!」
「わーーっ」
 何か言いかけた壮太君の声を遮るようにして、私たちの姿を見つけた子達が駆け寄ってくる。
 ゆかちゃん、かなちゃん、雪絵ちゃん。
 前回訪れた時に少しお話して仲良くなれたかなと思ったけれど、こんな風に笑顔で嬉しそうに出迎えてくれると、本当に嬉しい。
「一緒にあそぼー」
「駄目だよ、一緒に飾りつけをするんだから」
「えーっ」
 賑やかでおしゃまな女の子達の頭を、自然と撫でる。
「ふふ、実はね、これからお料理を作るのよ」
「あ、じゃあ私も手伝う」
「わたしもーっ」
 元気よく手をあげる雪絵ちゃん達。
「こら、アンタ達、あんまりはしゃいで藤堂さんの邪魔するんじゃないわよ」
 と、そこへ姿を現したのは和葉ちゃん。
 薄杢グレーのボーダー柄ニットチュニックに、ふんわりとしたシルエットのレースキュロット、そしてレギンスと、とても可愛らしいコーディネート。やっぱりお年頃の女の子、身内のパーティとはいえ、お洒落にも気をつかっているのだろう。
 よく似合っているし、非常に可愛いと思うのだけれど、なんだろう、どこかで何かが引っ掛かる。
「なんだ和葉、珍しく色気づいてそんな似合いもしない格好して」
「うっさいな、壮太こそ何それ、どうせロクな服ないからって制服にしたんでしょ。何着たってどーせ大して変わりはしないのに」
「よ、余計なお世話だっつーの」
 顔を合わせるなり、壮太君と和葉ちゃんは、何やら小競り合い。子供たちがのほほんとしているところを見ると、いつものことなのだろう。喧嘩するほど仲が良いともいうし。
 壮太君と言い合いを終えた和葉ちゃんと、目があう。軽く頭を下げて挨拶すると、和葉ちゃんはぶすっとした表情で、ごくわずかに顎を動かした。
「へーっ、結構大きなツリーだな」
「凄いだろーっ、学園で代々、つかわれているんだ」
 祐麒さんは、ツリーを見て男の子と話をしている。見れば、確かにかなり大きなツリーが、居間の中で存在感を示すように立っている。ところどころに傷みは見えるけれど、大事に毎年使われてきたというのが分かる。
 ただ、大きいツリーに対して小さい子が飾りをつけているせいか、まだ完全には飾りつけが終わっていない。
「違う違う、にーちゃんも一緒に飾りつけやりたいだろうと思って、残しといてあげてるんだって」
「よーし、そんじゃあ見事なツリーに仕立て上げるか、いっちょ」
 子供たちのノリにあわせて、祐麒さんも盛り上げる。子供たちと一緒にツリーに向かう姿を見つめていると。
「ちょ、ちょっと待って。男の子達だけじゃ、ごちゃごちゃと飾りつけるだけで綺麗なものになんてならないわよ」
 和葉ちゃんが、歩きかけた祐麒さん達の背中に声をかけた。
「ちゃんと綺麗な飾りつけになるよう、わ、私も一緒にやるから」
 どこか不機嫌そうな表情で、でも決して怒っていたりするわけじゃない顔をして、そんなことを言った。
 胸が、熱くなる。
 祐麒さんを見る。
 最初、驚いたような感じだったけれど、すぐにいつも通りの穏やかな顔になる。
「オッケー、それじゃあ和葉ちゃんの指示に従ってやろうか。よろしく、和葉先生」
 軽い調子で祐麒さんが応じる。
 ほんのりと、顔の赤みが強くなる和葉ちゃん。
「ふ、ふん、せっかくのツリーをぐちゃぐちゃにされたらたまったものじゃないから、だから」
「えーっ、かずはがせんせーなの? なんでー」
「てか、和葉に美的センスあるのかーっ?」
「こら、うっさいアンタら!」
 からかってくる子供たちに手をあげかけて、ふと祐麒さんの視線に気がついたのか、和葉ちゃんは恥しそうに振りあげた腕を慌てて下ろした。
「とにかく、せっかくのパーティにツリーがなくちゃ始まらない。皆でやろう」
 改めてツリーに向かおうとする祐麒さんが、ちらと私の方に顔を向けた。
 その瞬間。
「壮太君、お料理するの、良かったら手伝ってくれないかしら」
 私は祐麒さんを避けるように顔を背け、代わりに壮太君に話しかけていた。
「は、はいっ、もちろん喜んでっ。鰹節を削ったり、胡麻を潰したり、力仕事なら任せてください」
 元気よく返事をしてくれる壮太君を連れて、キッチンに入る。
 なぜ、祐麒さんから逃げるようにしてしまったのか、自分で自分の行動が良く分からなかった。考える前に、勝手に体が反応して動いてしまったのだ。
 頭に浮かぶのは、祐麒さんを見る和葉ちゃんの表情。
 思い出すと、ちくりと胸が痛む。
「藤堂さん、どうかしたんすか?」
「……いいえ、なんでもないわ。さ、頑張りましょう、今日は沢山、お料理を作らないといけないから、壮太君にも沢山、働いてもらいますから」
 努めて明るい調子で口に出す。
 楽しいクリスマス・パーティにしないといけない。子供達に楽しんでもらわないといけない。
 だというのに、何故だろう。
 私の心は、ざわざわと波立っていた。

 

「うおぉ、ちょ、なんてことをするんだっ!」
「容赦はしないって言ったっすよ」
 祐麒さんと壮太くんが見つめ合う。
 学園にいる子供達は多すぎて、さすがに全員で一度に遊ぶというのは難しく、幾つかの集団になって遊んでいるのだけれど、その中の一つで祐麒さんと壮太くんが向かい合っている。
 ボードゲームとカードゲームを組み合わせた様なそのゲームは、プレイヤーたちが競い合うような仕組みになっていて、意外と頭脳的なゲームだということが分かる。
「……じゃあ、私はこのカードを」
 次の順番がまわってきて、和葉ちゃんが手持ちのカードを出す。
「おーっ、ナイス、和葉ちゃん!」
「だあぁっ! てめ、何すんだ和葉っ!?」
 出されたカードは、壮太くんによって危機に落とされた祐麒さんを救うようなものであった。
「私はただ、自分が勝つための戦術をとっているだけだし。壮太になんか負けたくないし」
「和葉お前、媚びうろうとしてんのか?」
「はあ? 何、言っているのよアンタ」
「いやー、サンキュー和葉ちゃん。助かったよ」
「べ、別に、福沢さんを助けたわけなんかじゃないし」
 祐麒さんに笑いかけられて、ほんのりと頬を赤くしながら慌てて目をそらす和葉ちゃん。そんな和葉ちゃんや、和葉ちゃんに優しくする祐麒さんの姿を見ていると、気持ちが刺々しくなってくるのが分かる。
「えと、私はコレで」
 ダイスを振った後、私も手持ちのカードを切る。
「えーっ、ちょっと、藤堂さん、俺に恨みでも?」
 和葉ちゃんに助けられて安心していた祐麒さんの顔色が変わる。私の出したカードは、次の順番である祐麒さんにダメージを与えるような内容のもの。
「おおお、ナイスです藤堂さんっ」
「ごめんなさい、勝負事ですから、私も勝利を目指していまして」
 口調が素っ気ないものになる。自分が嫌な女になるのが分かるのに、なぜか止めることが出来ない。
「うーん、真剣勝負ですからね」
 祐麒さんは私の意地悪など特に気にした様子もなく、ゲームに集中している。せっかく意地悪したのに、さらりと流されたら流されたで、なんだか面白くない。だからといって本気で怒ってこられても困るのだけれど。
 中途半端な気持ちを抱えたまま、ふと、視線を感じて目を動かしてみると。私の方を見ている和葉ちゃんがいた。
「ど、どうかしたの、和葉ちゃん?」
「……別に」
 ぷいと、顔を背ける和葉ちゃん。
 和葉ちゃんのことは、素直に可愛いなぁと思える。
 まっすぐで、不器用で、素直じゃないけれど、素直に感情が表に出てしまっている。少しばかり、羨ましくも思ってしまったりする。
「次、和葉ちゃんの番だよ」
「あ、は、はいっ」
 だけど。
 そんな和葉ちゃんに優しく接する祐麒さんを見ていると、祐麒さんに対してはなんだかむかっとしてしまうのだ。
「しまこねーちゃん、頑張れーっ」
「そうたなんかやっつけちゃえ!」
 年少組の子達がいつの間にか私達の周りに何人か集まってきて、応援したり、茶化したりと、賑やかになる。
 盛り上がっているはずのパーティなのに、盛り上がり切れない私がいた。
 やがて和葉ちゃんの勝利によってゲームは終了した。私と壮太くんの攻撃を受けて、結局のところ祐麒さんは最下位になってしまった。ゲーム開始前のルールで、勝者は敗者に対して、何か好きなことを一つだけ命令することが出来る。和葉ちゃんはルールのことを忘れていたようで、いざ勝ったものの、何を命令すれば良いのか困っているようだった。
「かずはー、祐麒にいちゃんに彼氏になってもらうよう命令すればー?」
 すると、子供の中の一人、確か小学五年生の孝平くんが、ふざけたようにそんなことを言ってきた。
「そうでもしないと、かずは、一生彼氏なんてできそうもないしなー」
「あははは、それいいんじゃねー?」
「ちょっとアンタ達、和姉に失礼でしょーっ!?」
 調子に乗ってはやし立てる男子に、非難めいた口調の女子。周囲の子供達が冗談半分に騒ぎ立てる中、和葉ちゃんは。
「なっ、ななっ、何を言っているのよ!?」
 真っ赤になって、わたわたとしていた。
「き、決めたわ、命令すること」
 顔を赤くしたまま立ち上がって、誤魔化すように和葉ちゃんは口を開いた。
「ジュースの買い出しに、一緒にスーパーに行ってもらいます、荷物持ちとして」
「お、デートか、かずはーっ?」
「うっさいよアンタ達!」
 怒ったふりをして、照れを隠す和葉ちゃん。
 やっぱり、可愛いなと思う。
 それに引き換え。
「じゃあ、行きましょうか、お手柔らかに頼むよ和葉ちゃん?」
「この子達、すっごい飲むから、沢山買うし。途中でへばったりしたら、承知しないですからね」
「まいったな、それは」
 へらへらしているように見える祐麒さんに対しては、より一層、怒りにも似た黒い感情がこみあげてくる。
「それじゃあ私達は、ご飯の支度をしましょうか。皆も手伝ってくれるかしら?」
「はーいっ、てつだうーっ!」
「あたしも、お料理並べるっ」
「あたしも、あたしもっ」
 元気な子供達の手が、いっせいに上がる。
 下準備は既にしてあるので、後はあまり手間のかかることは残っていない。お皿を並べたり、盛り付けをしたり、手伝ってもらえることもある。
「お、俺も、手伝います」
「ありがとう、壮太くん。頼りにしています」
「は、はいっ、なんでも言ってくださいっ」
 外に出るため、コートを手に取っていた祐麒さんが、ちらりと私の方を見たけれど、すぐに和葉ちゃんが現れ、二人で一緒に出て行ってしまった。
 子供達に気づかれないよう、小さくため息をつく。
 わざと、祐麒さんに聞こえるように口に出して言った自分が、とても醜く感じられて。
「…………でも、祐麒さんがいけないんだもの」
 呟く私の声は。
 子供たちの騒ぎ声に紛れて、消えていった。

 

 

その5に続く

 

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