書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(栞×祐麒)】幸先良し?

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~ 幸先良し? ~

 

 

 歓迎会は最初穏やかに、そしてあるところから一気に急展開を見せ始めた。
 メンバーの中でよく喋り場を盛り上げる役なのが美月で、冴香も同じように話すというかネタを提供してくれる。景は静かではあるが決して無口というわけではなく、話を振られれば応じるし、冷静なツッコミを入れてくることもしばしばある。そんな中で栞はあまり口を開くことはない。だからといって場をしらけさすとかすることはなく、穏やかに、自然体で場に溶けているという感じであった。
 ある意味バランスの取れた構成のように思えたが、その様相が変わったのは栞が座を離れてからのことである。
 祐麒にしてみれば、誰よりも栞のことが気になっていたし、聞きたいことはあったのだが、疲れたし明日からの新学期に備えたいと言われては無理強いは出来なかった。明日から新学期という点では祐麒も同じなのだが、主役ということで離してくれそうな雰囲気はなかった。
 というか、いつになったら逃げられるだろうかという恐ればかりが大きくなる。
「……え、何それ。しおりんとラブコメ的展開でも狙っているの?」
「いえ、そういうわけじゃないですよっ」
 食事の時にちらちらと栞を見ていたことを気付かれていたようで、それに関してしつこく尋ねられて昼間のことを話したら、そんな風にくらいつかれてしまった。それも、肩の痛みを癒してもらったとかそのあたりのことは言っても信じてもらえないだろうし、他の人に言いたいとも思わなかったので、栞との出会い的なことに集中して問い質されていた。
「砂浜で出会った美少女と下宿先でまさかの再会とか、あーもーそーですかって感じ」
 そう言いながら腕で祐麒の首を絞めつけてくるのは冴香。最初こそ落ち着いていたのだが、焼酎を飲みだしてから一気に単なる酔っ払いに成り下がり出していた。
「なーにー、福沢くんはしおりん狙っているわけ? 確かに可愛いよねしおりん」
「いえ、だからそうゆうわけでは……」
「いいわよねぇ、ラブってこのさー。でも何、この家にはこれだけ魅力的な女性陣がいるのに、年上の綺麗なおねーさんより、しおりんが良いの?」
「ですから山村さん……あの、助けてくれませんか?」
 先ほどからずっとこの調子で絡まれ、酒臭い息を吐きかけられ困り切っていた祐麒は、美月と景にヘルプの視線を向ける。
「えー? でも冴ちゃん、お酒飲んだらいつもこんなんだから、慣れておいた方がいいわよ?」
「同意」
 しかし、冷たく突き放されてしまう。
「私には良い男は全然寄ってこないし、それなのにしおりんには、可愛い男の子が尻尾を振ってきて、理不尽だと思わない?」
「そんなこと言われましても……ふわぁっ!?」
 耳に息を吹きかけられ、胸を指先でつつかれ、思わず変な声をあげてしまった。どんどんと冴香との密着度が高くなり、先ほどから柔らかな膨らみが押し付けられていて、なんか色々とやばい。
「冴ちゃん、かれこれ四年だっけ? 彼氏いないの。だからその手の話になるとムキになっちゃうから」
「失礼ですね美月さん、まだ三年ですっ。それに、み、美月さんだって旦那さんと別れてからもう……」
「あたしは今の生活を満喫しているし、冴ちゃんみたいに欲求不満じゃないから大丈夫」
「なんですかそれぇ……景ちゃんだって、彼氏いないんれしょぉ~?」
「今のところ欲しいとは思っていないですから……それより福沢くん」
「はい、なんですか?」
「冴香さん、大体こんな調子で大変なんで、貰ってくれないかしら? そうすれば私ももう少し落ち着いた生活が出来るし」
「いやいや加東さん、何言っているんですかそれ!?」
「なによ~、私じゃ不満なのかしらぁ?」
 そんな感じでつきあわされ、冴香がようやく潰れて寝た頃には、既に夜もかなり遅い時間になっていた。
 ジャージ姿のままだらしなく床に寝転がっている冴香を見て、祐麒はなんともいえないため息を吐き出した。悪い人ではないのだろうが、これだけ酒癖が悪いというのはちょっと頭が痛い。自分に被害が及ばないならともかく、どうやら今日だけで目を付けられてしまったようだ。
「初日からごめんねぇ、福沢くん。冴ちゃん、先週の合コンで嫌なことがあったみたいで、そのせいもあってちょっと荒れていた感じ」
 片付けをしながらフォローするように言う美月。景は既に部屋に戻っており、残っているのは三人だけになっている。
「冴ちゃん、こんな場所で寝ていたら風邪引くわよ……ほら起きて、部屋まで行くわよ」
 美月が冴香の肩を揺すって起こそうとするも、冴香はむにゃむにゃと寝言のようなものを口にするだけで、起きてくれそうもない。
「あの、良かったら俺、部屋まで運んでいきましょうか?」
「本当に? 助かるわー、さすが男の子。冴ちゃんの部屋は、二階の一番奥右手の部屋だから」
 冴香の背中に腕を回して上体を起こし、美月にも手伝ってもらってどうにかこうにか背負って立ち上がる。ほとんど意識がないようで、あまり真っ直ぐに立とうとすると後ろにひっくりかえってしまいそうになるので、腰を曲げて自分の背中の上に乗せて運ぶ感じでいかないといけないのがちょっと辛い。
 とはいえ、自ら名乗った手前、ここで弱音を吐くわけにはいかない。美月には一人で大丈夫だからといって二階に向かう。
 たいした距離ではないから平気だろうと思ったが、考えていたよりも重労働である。こうなると、背中に感じる柔らかさも何の慰めにもならない。
 階段をどうにか上りきり、廊下を進んで突き当たりの扉を開き、入口すぐにあるだろう電気のスイッチを探し当てて明かりをつける。
「う……」
 女性の部屋ということで緊張したが、脱ぎ散らかされた衣類に重ねられた雑誌類などで、室内は雑然としていて、想定していたイメージが崩される。
「とりあえず……ベッドに寝かせればいいか……」
 中に足を踏み入れ、ベッドの脇で背中の冴香をゆっくりと下ろしていくと、最後一気にずり落ちた冴香に引きずられるようにして祐麒も倒れ込んでしまった。
「うわっぷ!?」
 お約束のように冴香の胸の谷間に突っ込みそうになったが、どうにか腕をついて堪える。と、目の前に冴香の顔が迫る。冴香の腕が祐麒の首に回されたままなので、引き寄せられる形になっているのだ。
 いつの間に気が付いたのか、冴香と目があう。
「……私もしかして、送り狼されてる? やだ、私、年下とか考えていなかったけれど、こんなに激しく襲われたら……」
「ちょっ!? 俺はそんなことまったく」
 とんでもない誤解をしている冴香から逃げようとしたが、首を掴まれ思いがけないほど強い力で引き戻される。
 そして。
「――――ンがっ!?」
 勢い余って、ベッドの木枠に額からもろにぶつかった。目の前に星が飛び散ったような気がしたと思ったら、真っ暗になった。そのままぐらりと体が揺れて崩れ落ち。
「――きゃっ!?」
 今度は冴香の額に激突した。
「………………っ」
 自分の体から力が抜けていくのを感じながら、祐麒は意識を失った。

 

 

 目が覚めた時、やけに明るいなと思ったら、外から日が差してきているのに加えて部屋の電気が点いているからだと気が付いた。
 うっかり消し忘れて寝てしまったのだろうかと、寝起きのはっきりしない頭で考えていると、ズキズキと額が痛むことに顔を顰める。その痛みでようやく、昨夜のことを思いだした。どうやらあの後、気を失ってそのまま寝てしまったのだと気が付く。着ている服も昨日のままだし、変なことはなかったようだと思っていると、下半身が涼しいことに気が付く。
「…………って、何してんですか山村さんっ!?」
 見れば、冴香によってズボンが脱がされており、そして今まさにトランクスにも手をかけられようとしていた。
「だって、朝起きたら福沢くんと寝ていて……てゆうことは、昨夜、したってことでしょう? でも全然覚えてなくて、久しぶりなのにそれじゃあ勿体ないから……」
「勿体ないってそういうことじゃ……って、言いながらパンツ脱がそうとしないでくださいっ、ちょっ」
「年下は考えていなかったけれど、ここまで強引にされて、女としてちょっと嬉しい気持ちもあるし、それに福沢くんもそんなこと言いながら、こんなにしちゃっているじゃない」
「これは朝の生理現象ですから、ちょ、やめっ」
 人の話を聞こうとせず、トランクス越しに指を這わせ、さらに顔を近づけてきて口を開き、舌を出す冴香。
 やばい、なんでこんなところで変なピンチに陥っているのだ。女性ばかりの借宿、警戒されるならともかく、まさか自分が貞操の危機に陥るとは。
「久しぶり…………いただきまぁ~す」
 もはやこれまでかと思ったその時。
「冴ちゃん、そろそろ起きないといけないんじゃ……」
 扉が開き、姿を見せた美月が室内の様子を目にして動きを止める。同時に、冴香の動きも止まる。
「あ、あのっ、美月さん違うんです! 別に何もしていませんからオレっ!」
 言い訳する祐麒をよそに、美月は無言でつかつかとベッドに歩み寄ってくると、冴香の脳天にチョップを叩き落した。
「アイタっ!? って、ちょっ、酷いじゃないですか美月さんっ」
「いい加減シャキッとしなさい、もう朝なんだから。福沢くんも、ここはいいから部屋に戻って支度してきなさい。今日から学校でしょう?」
「は、はい……それじゃあお言葉に甘えて…………あの、本当に俺」
「分かっているわよ、それより、パンツのまま部屋から出て行かないようにね」
 言われて、慌てて脱がされていたズボンを穿いて冴香の部屋から逃げるように出て自分にあてがわれた部屋へと戻る。幸い、他の住人には誰にも見られないで済んだようだが、初日から自室で寝られないとは思いもよらなかった。
 部屋で新しいシャツに袖を通し、制服のズボンを穿き、洗面所で身だしなみを整えてから居間に入ると、驚くべき光景が目に入って来た。
「――――おはよう」
「あ、お、おはようございます」
 景が先に席についていた。それ自体はおかしなことでもなんでもないのだが、景の格好に目を見張る。
「――何か用事でも?」
 じっと見ていたせいだろう、景から問いかけられてしまった祐麒は、つい思っていたことを口に出していた。
「あの、加東さん、その服は」
「ん? 制服だけど、これがどうかしたのかしら」
 白いブラウス、首元には鮮やかなブルーのタイ、そしてチェックのスカート。
「え……加東さん、高校生だったんですか」
「……それは、どういう意味かしら?」
 にっこりと笑顔を向けてくる景だったが、瞬間、眼鏡の下の瞳がギラリと光ったように感じられた。
「あ、いえ、加東さん凄く大人っぽいですから、てっきり俺」
「なるほど、私は老けていて、高校生になど見えないと。まるで女子高校生のコスプレをしているようだと言いたいわけね」
「ちっ、違います! ほら、あの、昨夜加東さん、お酒を飲んでいたじゃないですか! だからてっきりそうなのかと思っていたんです!」
「ああ……お酒……まあ……」
 どうやら納得してくれたようで、ほっと胸を撫で下ろす。
「――でも、まあ確かに、本来ならもう女子高生じゃないのよね。私、事情があって一年留年しているから」
「そうなんですか……」
 さすがにそれ以上を口にすることは出来ず、祐麒も腰を下ろす。昨日にあったばかりで、どんな事情かなど尋ねてよいほど親しい間柄ではないのだから。
「――おはようございます」
 口数の多くない景と二人きりでどうしようかと思っていると、タイミングよく助けの声が入った。
「あ、おはようございますっ」
 栞の声に、振り返って元気よく挨拶を返すと、そこには景と同じ制服に身を包んだ栞の姿があった。
 ゆっくりと居間の自分のポジションに座ると、穏やかな表情で祐麒に問いかけてくる。
「歓迎会では途中で退席してしまってごめんなさい。昨夜は、ゆっくり休むことが出来ましたか?」
「あ、は、はいっ。大丈夫です、問題ありません」
「そう。良かった」
 本当はとんでもないことになっていたのだが、それを栞に話す必要はないし知られたくもなかった。
「福沢くんの制服……景さんや私と同じ学校なんですね」
「そうなんですか? なんか、知っている人がいると安心します」
 見ず知らずの場所で再スタートを切ろうと言っても、正直なところ不安がある。多少なりとも知り合いがいるというのは、心強い。
「何かあったら、遠慮なく質問してください。私達で分かることなら教えますから、ねえ、景さん?」
「そうね」
 ちらりと祐麒を見て、ごく僅かに顎を引いて同意を示して見せる景。感情の起伏は少なく表情も変わらないが、決して冷たい人ではないのだなと、会ってまだ一日と経っていないけれどなんとなく分かって来た。
「景さんは三年生、私は二年生で同じ学年ではないけれど、それでも同じ学校であることに変わりないから」
 栞は一個上、景は二個上――留年しているということだから年齢としては三つ上になるというわけだ。
「はい、朝ご飯はしっかり食べること。我が家はご飯がメインだからね」
 美月が朝食を用意して並べてくれる。そのメニューは言葉通り、白米に味噌汁、焼き魚におひたしに納豆と、日本の食卓というものである。実家にいた時も和食だったから全く違和感はない。パンでは練習にもなかなか力が入らないから、そんなことをつい考えてしまい、慌てて頭を振る。
「……どうかしたの、福沢くん。何か嫌いなものでもあるのかしら」
「あ、いえ、とんでもないです。俺も朝は和食派ですから!」
 栞に心配そうに尋ねられ、そう答える。せっかく新しい生活が始まったのに、いきなり昔のことを思いだして暗くなっては意味がない。「いただきます」と声に出し、勢いよく食べ始める。
「――――ううっ、遅れちゃう、行ってきます!!」
 食べている最中、廊下を慌ただしく走る足音とともに、冴香の声が響く。
「ちょっと冴ちゃん、朝ご飯は?」
「ごめんなさい美月さんっ、今日は早く行かなくちゃいけなかったんです。今でももう遅刻なのに、また怒られちゃうっ!」
 バタバタと玄関の方に向かっていく冴香の足音に、美月は肩をすくめてみせる。
「冴ちゃんは、いつもあんな感じ。かなりのうっかり屋で、景ちゃんやしおりんの方がよっぽど落ち着いているのよねー」
「はあ、そうみたいですね」
 何せ「あんなこと」があった直後である、祐麒としても返答に困るというか、景や、特に栞に知られたくないので言葉を濁す。
 景や栞を見ても特に様子は変わらず、確かに日常茶飯事のことのようだが、あれで社会人としてきちんと仕事をしていけているのだろうかと、余計なお世話かもしれないが不安になる。
「それじゃあ、そろそろ行きましょうか。学校まで案内するわ」
 食事を終えて最後の身支度を整え、栞と景とともに学校へと向かう。外に出ると、ほんのりと潮の香りが漂ってくるのは、やはり海の近い街だからだろう。理由もなく気分が良くなり、伸びをして大きく息を吸う。
 そんな祐麒を見て栞がくすりと笑い、なんだか恥ずかしくなって手をおろす。
「そう思えるのも最初のうちよ。髪の毛はすぐべたべたになるし、砂が混じってくるから汚れやすいし」
 冷静に口にする景に、なるほどと頷く。海が近いなんて素敵なロケーションと思われそうだが、近いなら近いで苦労することも多いようだ。
「確かに景さんの言う通りだけど、それでも私は海に近いこの街、好きですよ」
 穏やかに言う栞の横顔を見て、心臓がドクンと一際大きく脈動したように感じる。
「――どうかしたの、福沢くん?」
「い、いえっ、なんでもないですっ。新しい街ですから、目新しくて」
「ふふ、そうよね。私も最初はそう思ったわ」
 どうやら栞を見ていたことには気づかれなかったようで、ほっと息を吐き出す祐麒だったが。
「………………」
 景が横目で見つめてきていて、しかも最後に口の端を軽く上げて笑ったように感じて、心の内を読まれてしまっているようでちょっと怖い。
 景も栞も多弁ではないのでさほど話すことはなかったが、居心地が悪いわけでもなく、のんびりと歩いて三十分弱で学校が目に入って来た。このくらいの距離なら徒歩で全く問題ないし、雨などで天候のよくないときはバスもあって困ることはなさそうだった。
 周囲にも生徒の数が多くなり、なんとなく二人から少し距離をとって後ろをついて歩いていく。二人とも美人だし、彼氏なんかがいたら困るだろうし、そうでなくても男と一緒に居ることを喜ばない輩も多そうだったから。
「一年生はこの校舎の三階ね。クラスは分かっている?」
「はい、大丈夫です、三組です」
「そう。それじゃあ、私はこっちだから」
 下駄箱で別れてそれぞれの学年、クラスへと向かう。祐麒も階段を上って1-3の教室を目指していく。実は入学式と始業式は既に終わっている。諸々の事情があって引っ越しが遅れてしまったせいだが、幸いなことに通う高校の始業式と入学式は同日に行われており、且つ週末の金曜日だったので、その日だけ休んでしまったことで済んでおり出遅れはさほどではない。とはいえ、知り合いも全くいないわけなので、出席番号順で指定された席に腰を下ろして大人しく待つことにする。
「おはよっ!」
 しかし、いきなり隣に座っていた生徒から元気よく声をかけられて、大人しく待つことは出来なくなった。
「あ、うん、おはよう」
「隣の席になったのもきっと何かの縁、これからよろしくねっ」
 ショートカットの良く似合う元気な女の子は桂といった。
「ねえねえ、福沢くんはどこの中学校から来たの?」
「いや、実は引っ越してきたばかりで、前は全然違う所にいたんだ」
「へえ、そうなんだ。全然違う所って何、東北や北海道の方とか?」
「なんでいきなりそんな北の方にいくの?」
「だって全然違う所っていうから。あ、じゃあ沖縄の方?」
「今度は南過ぎでしょ」
 なかなか賑やかで騒がしく感じそうだが、カラっと明るくうざいというような悪感情を覚えることはない。むしろ、初めての街、知る人のいない教室で気さくに声をかけてくれるのは有難かったし、一人で鬱々としないで済みそうでもあった。
「そっか、東京から来たんだぁ。じゃあ、今度東京に行ったときは案内してね?」
「うん、いいよ」
 返事をしてから、これはまさかデートに誘われたのだろうかと思ったが、桂は顔見知りらしき女子生徒の方に向き直って話をしており、そんな色気のあるものではなく社交辞令だったようだ。まあ、いくらなんでも会った直後にそれはないだろう。
 不安の大きかった高校生活だったが、知り合った先輩、気さくなクラスメイトと、幸先が良いなと思う祐麒なのであった。

 

 その日の夜。
「ぷっ…………あ~~っはっはっはっ!!」
「ちょ、笑い事じゃないですよ、水月さんっ」
 賑やかなのは前回と変わらず美月と冴香だったが。
「なんで福沢くんが入る学校、教えてくれなかったんですかっ」
「え、言っておいたよ。ねえ、景ちゃん、しおりん?」
 美月に問われると、無言で頷く景と栞。
 冴香は言葉に詰まると、祐麒に目を向ける。
「ああもうっ、教室に入って出席を取り始めて福沢くんの姿を認めて目が合ったとき……どんだけ気まずかったと思うんですかっ」
 冴香の言う通りで、驚くことに祐麒のクラスの担任として教室に入って来たのが冴香だった。教室の中で祐麒は多くの生徒に埋もれてしまうから、冴香の方から即座に見つけることは難しかっただろうが、教師は一人だからすぐに分かる。祐麒だって教壇に冴香が立つ姿を見た時は驚いたものだった。あんなにだらしなかった冴香が、きっちりとしたスーツを着て教師らしく振る舞っていることに。
「そもそも、クラス決めの時に自分のクラスの生徒の名前くらいわかっていたでしょう」
「そうですけどっ、全員の氏名を暗記なんてしていませんし」
「でも、驚くのはともかくとして、なんで気まずかったのでしょうか」
 不思議そうに冴香を見つめて問いかけてきたのは栞だった。
 またしても冴香は言葉に詰まるが、横から美月が身を乗り出してきて答えを口にする。
「そりゃそうでしょう、だって冴香ちゃんたら教え子にフェ○しちゃったわけだから」
「み、未遂です! ちょっと握ってパンツの上から一舐めくらい――」
「え、なんですか、それ? ふぇ――」
「うわあああああああっ!! く、久保先輩はそんなこと言っちゃダメです、というか何もありませんでしたからっ、ホントに!」
 栞がとんでもないことを口にしようとしたのをどうにか防ぐ。清純なイメージを抱かせる栞に、汚らわしいことは似合わないと思ったから。そもそも、されていないし舐められてもいない……はず。
「あ~、でもどうせ気まずい思いしたのなら、あんな中途半端じゃなく食べちゃえば良かったかも……何せ三年ぶりの」
「いい加減に余計な変なこと言わないでください山村さんもっ! とっ、とにかく、久保先輩は気にしないでいいですから!」
「よくわからないけれど……分かったわ」
 祐麒の剣幕に気圧されたのかもしれないが、栞は素直に頷いてくれた。
「……で、実際どうだったの冴ちゃん。福沢くんのアレは」
「はい、それが実はかなりの逸物で……こう、ぐっと握った瞬間に入れたくなるほどの大きさで」
「だあああああああっ! もう、この人たちやだっ!!」
 実家ではもちろん、男子校であった中学でも味わうことのなかった大人の女性の下ネタ攻撃に、この先の生活に一抹の、いや多大な不安を覚える祐麒なのであった。

 

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