書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

マリア様の愛読書

ノーマルCP マリア様がみてる 真紀

【マリみてSS(真紀×祐麒)】私の分

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~ 私の分 ~

 

 

 真紀と祐麒、学校では基本的に教師と生徒であり、親しげな態度というものは決して見せようとしないことに変わりはないのだが、それでも変わってきたところがある。
「ふーっ、今日も一日勉強お疲れ。さーて帰るか。ユキチは?」
「今日も部活」
「頑張るよなぁお前も。三年生だっていうのに」
 部活動だって手を抜いていない。A級になり、真紀と付き合い始めたからといってやめてしまったら、今まで何だったのかということになる。それに、競技そのものを既に好きになっており、大学生になっても続けたいと思っている。名人戦、なんてのは夢かもしれないけれど、どこまで強くなれるかは試していきたい。
 友人たちと途中まで一緒に歩くその途中、前方に真紀の姿見えた。2,3人の女子生徒に囲まれて何か話している。残念だけど、話しかけるわけにはいかないと思っていると。
 真紀の顔が少し祐麒の方に向けられ、一瞬だけ目が合う。恐らく気が付いてくれただろう、今はそれだけで満足しなければいけないと思いつつも、もう一度真紀の方に目を向けると。
 やはり同じようにこちらに意識を向けた真紀が、片目をパチリとつむってみせた。
 ドキッとする。
 小林やアリスは話をしていて気が付いていないようで、また女子生徒たちは位置的に気が付かない。それを分かっていたからこそだろうが、今までの真紀なら決してやってこないようなコミュニケーションに嬉しくなる。
 付き合い始めた直後でもしてくれなかったのに変化が見えたのは、やはり男女としての仲になったからだろうか。
 そう考えると、どうしても先日の初めての時のことを思い出してしまう。
「どうしたユキチ。なんかやけに嬉しそうだな」
 どんな顔をしていたのか、小林に突っ込まれる。
「え、そうか?」
「気持ち悪いな、ニヤニヤするな」
 言われたところでどうしようもないが、あまり度が過ぎると疑われてしまう。太腿をつねって口の端が緩んでしまうのを堪える。

 また、他にこんなこともあった。
 同じようにある日の放課後、その日は用事があって部活動には参加せずに帰宅する予定だった。友人たちと連れ立ち、下駄箱に向かって歩いていると、やはり真紀の姿が見えた。隣には友人がいたし、やはり話しかけるわけにもいかない。そのまま歩いて下駄箱に向かっていきつつ、やはり気になってちらりと顔をそちらに向けてみると。
 その瞬間を狙ったかのように、真紀が軽く手をあげて小さく振ってみせたのだ。思わず茫然とした祐麒をよそに、真紀は悠然とその場を去って行く。誰にも見られてはいなかったと思うが、祐麒はつい周囲を見回してしまった。
「――どうしたユキチ、帰らないのか?」
「あ、すまん、今行く」
 ウィンクとは異なり、手を振るということは周囲から明らかに動きが見えてしまうわけで、それだけリスクが高い。そんなアクションを真紀がとってくれたことが嬉しいのだ。
「なんだよユキチ、変な顔して」
「そ、そうか?」
「ああ……何かあったのか?」
「いや別に。ほら行こうぜ」
 変に怪しまれるわけにもいかないので、本当なら喜びを爆発させたいところなのだが我慢する。
「……ん、メール?」
 歩き出したところで携帯がメールを着信したことを伝えてきた。携帯を取り出してメールを見てみると。

『なんで私が手を振ったのに無視するの?』

 という一文が真紀から送られてきていた。
「っ!?」
 慌てて返信する。
『無視じゃないですよ、隣に友人がいたから出来なかっただけです』
『そんなの知らない。友達の隙をついて出来るでしょう』
『でも、一瞬のことだったし』
『ふぅん……』
 え、何これ、本気で真紀は怒っているのだろうかと焦り変な汗が額に浮かんでくる。すると、祐麒が更なる返信をする前に真紀からさらにメールが届いた。
『――なんてウソ、びっくりした?』
「~~~~~~っっ!!」
 大きく息を吐き出してその場にしゃがみ込む。
「おいおいどうしたんだよ、さっきから急にメールし始めたと思ったら。何かトラブルか」
「……いや、まあ違うけど合っているような」
「変な奴だな、誰からのメールだよ」
「家族だよ、ちょっと急いで帰らないといけないから、先に行くわ」
 覗き込んで来ようとする小林に対し、素早く携帯をしまって足を速める。何か言ってくる友人に背を向けたままさらに駆け足に近い速さで進みながら、再びメールを読む。
『びっくりした?』ではない、本気で慌てていたのだ。
「まったく……」
 などと口にしながらも満更ではない。
 こんな冗談をやり取りできる間柄になったというのもあるし、意外と本気で思っているかもしれないと考えると嬉しくもなる。今までのことを考えても、実は焼きもち焼きで独占欲が強いのかと思える節が真紀にはあり、それだけ祐麒のことを真剣に思ってくれているのだろうとも取れるし。
 もうすぐ夏休み、部活に受験勉強に色々と大変ではあるけれど、きっと真紀と過ごす時間も増やすことが出来るはずで楽しみになる。どこに誘おうか、でもあまりお金を使う所だと厳しいな、などと浮かれて夏休みまでの日を数える。

「――福沢くん、今年の夏休みは合宿をしようと思うんだけれど、どうかしら」
 環に相談されたのは、夏休みの部活動のことだった。
「私達三年生は受験勉強もあるじゃない? でも、下級生のためにも部活動に全く出ないというわけにもいかないから、それなら短期間で集中的に練習をした方が良いかなって」
 夏休み、『競技かるた部』の三年生の部活動参加は基本的に本人たちの任意となる。環の言う通り、受験勉強もあるから毎日練習に参加するのも大変なのでそういう制度にしてある。とはいえ、他の三年が参加すると欠席しづらいなどもあるので、現実的には三年生が参加する日を事前調整しているのだが。
 それでも練習参加日が少なくなるのは間違いなく、今の部は三年の環と祐麒が主力であり、下級生たちの実力を上げるには二人の練習参加が必要と思える。だからこそ、環は合宿を提案してきたのだろう。
「うん、いいんじゃないかな。その方が力もつきそうだし」
「そうだよね、うん、それじゃあ先生にも申し入れするね」
「え……ちょ、ちょっと待って」
 さっそく職員室に向かおうかという勢いの環を呼び止める。
「合宿って、学校でするんだっけ?」
「いえ、学校ではなく、西園寺さんがお家に使用していない部屋が幾つかあるから、合宿するなら使って欲しいと言われたので」
 さすが元・お嬢様学校、空いている部屋が幾つかあるなんて普通に言う生徒がいるのだ。
「だ、だったら、わざわざ先生に申し入れする必要ないんじゃない? 学校に何かしてもらうわけじゃないし」
「でも、正式な部活動だからちゃんとお伝えしないと」
 環に正論を言われては黙るしかないが、祐麒としては真紀に知られない方が良いかなと思ったのだ。部の構成は男3人に対して女が8人の、完全なる女所帯であり、泊りがけの合宿と聞いたら真紀がどう思うだろうか。
 もっとも、ここで言わずにいても部員の誰かから伝わる可能性が高いから、きちんと言っておく方が正解なのだが。逆に真紀に伝えずにいたら、何かやましいことがあるのではないかと疑われるところである。
「――ふぅん、合宿ね。分かりました」
 職員室に訪れて説明すると、真紀はあっさりと承諾した。かるた部の部員は皆真面目に取り組んでいるし、信頼もしているのだろう。環の横に並んで真紀を見つめている間、実はドキドキしていた祐麒だが、特にこれといった反応を見せない真紀にホッとする。
「ありがとうございます。それでは、失礼いたします」
 一礼して職員室の出口に向かおうとする環にならい、祐麒も真紀に背を向けた瞬間。
 真紀の靴の硬い爪先が、祐麒の足首近くを蹴りあげた。ちょうどくるぶしに当たり、強い痛みが襲ってくる。
「――――っ!」
「どうかしたの、福沢くん」
 遅れた祐麒に気が付き、少し先で立ち止まって首を傾げる環。
「いや、なんでもないよ」
 痛みを顔に出さないようにして、環に追いつく。後ろから冷たい視線を感じる様な気がするが、振り向くわけにもいかずそのまま職員室を出ると、ようやく緊張感から解放されてほっと息を吐き出す。
「やっぱり職員室ってなんか緊張するね」
 祐麒の様子を違う風に受け取ってくれた環が苦笑してくれたので、祐麒もあわせて軽く笑みを浮かべるが、内心では冷や汗ものであった。
 尚、
『――まあ、部活動に関しては真面目にやっていると信じているし、それだけ人数がいれば逆に何か起きるとは思わないけれど』
 とは、後々の真紀の弁であるのだが、合宿の話をした後しばらくは、学校で顔を会わせる度に不機嫌そうな表情を見せられていた。学内ではなかなか二人きりになれないからメールを送るのだが、戻ってくるのは『私は別に何も言っていないけれど?』などとつれない返事ばかり
 機嫌を取ろうにも、プレゼントできるようなお金はないし、気の利いた言葉も出てこない。
『別にプレゼントもお世辞もいらないから、学校内で他の女の子ばかり見るのをやめること』
「みていないですよ!」
『見ている。特に夏服になってから』
 夏服といってもリリアンの女子の場合、長袖から半袖になって生地が夏物に変わるだけ、他の学校のように白いブラウスで下着が透ける、なんてことはないのだ。
『半袖になって、女の子の二の腕と脇をよく見ている』
 汗がだらりと流れる。
 確かに、手を上げた時にちらりと覗いて見える腋のラインにはドキドキさせられる、ちょっとした腋フェチであることは確かかもしれないが、なんでそれを真紀が知っているのか。
 いや、でも祐麒だって若い男。そういうのに目がつい向けられても仕方ないではないか。と自分では思うものの、さすがにそれを真紀には言えない。
 どこかで聞いたことがある、"釣った魚に餌をやる"とはこのことか。言葉はともかく、餌をどうこうする先立つものがないのだ。
 そう、悩んでいると。
『釣った魚を大事にしてくれたら、お返しにイイコトがあるかもよ?』
 なんていう、ふざけているのだか本気なのだか分からないメール。
"お返し"、"イイコト"って、なんだ。
 餌を目の前にぶら下げられて操られているのは、むしろ自分ではないか。そう思うものの、それが決して嫌と言うわけではないことも確かであった。

 

「おーい、祐麒くーん」
 リリアン内で祐麒に対して元気よく声をかけてくる女子は桂しかいない。ぱたぱたと駆け足に近い早足でやってくると、にこにこと笑顔を向けてくる。
「どうしたの桂さん、何かよいことでもあったの?」
「ん、なんで?」
「いや、楽しそうだから」
「楽しくないよー、だってお勉強の話だから」
 そう言うものの、やはり楽しそうに見えるのは桂だからなのだろうか。
「勉強?」
「そうそう、夏休みの補講あるじゃない、祐麒くんは出席するのかなーと思って」
「ああ、補講か……」
 それは別に試験の結果が悪かった、成績の悪かった生徒が受けさせられるようなものではなく、受験などに向けて夏休みの初めのころに学校が生徒のために開いてくれ、参加は生徒からの申し込みによる。
 夏休みにわざわざ勉強をとも思うが、予備校などと違って無料で勉強を教えてくれるわけで、真面目なリリアンの生徒達は結構な人数が補講を受けていた。もちろん祐麒は昨年まで受けてなどいない。
「あたしも去年までは受けていなかったんだけど、今年は受験もあるし、受けておこうかなって。どうせ午後から部活もあるし、ね」
「そっか……で、それでお仲間を増やそうと?」
「そーゆーこと、どうかな、かな?」
「それなら女子の友達を誘えばいいのに」
「あー、せっかくあたしみたいに可愛い女の子からのお誘いなのに、そうゆうこと言っているとモテないよー」
 ケラケラと笑いながら気さくに腕をパシパシ叩いてくる桂。三年になるまでにそれだけの関係を築き上げてきたといえば聞こえは良いが、実際のところは桂に甘えるばかりで頭が上げられない。もちろん、そんなこと気にしないというか、そんな風に思ってもいないのもまた桂の良いところだが。
「そうだね、今年は俺も受けようかな」
 考えてみれば補講という名のもと学校に通え、真紀と顔を会わせることも出来るではないか。部活が少なくなる分、補講で埋め合わせが出来ると思えば丁度良い。
「オッケイ、これで決まりだね。あたしが部活休みの日は、帰りにアイスでも食べに行こうか?」
「寄り道になっちゃうよ、俺はいいけれど」
「あたしだって高校生活最後の夏休み、男の子と学校帰りに甘い時間があっても良いと思わない?」
 さんざ桂に世話になっている身としては断るのも憚られる。
「オーケイ、付き合うよ」
「わーい、やったー!」
 万歳して喜ぶ桂。
 その横を通り過ぎてゆく真紀。
「――――――!?」
 いつの間にいたのか、いつからいたのか、ただ偶然通りかかっただけなのか分からないが、歩いてゆく背中からはなんともいえないオーラが立ち上っているように祐麒には感じられた。
「それじゃあ、いつにしようか」
「あ、えと、桂さん」
「待ってね、確か部活が休みの日は……」
 そうこうしている間にも真紀の姿は遠ざかってゆく。桂を放置して追いかけたかったが、それでは行動が不審だし桂にも失礼である。桂と最低限のやり取りをかわした後で真紀の後を追いかけるが、走れば目立ってしまうので急ぎ足で追う。
 ようやく真紀の姿をとらえたが、真紀は速度を緩めることなく廊下の角を曲がって先に進んでゆく。曲がる際に、ちらりと祐麒の方に目を向けたので追いかけていることには気づいているはずなのに、足を止めようとするどころか速度をキープしたまま行ってしまう。カツカツカツとヒールの音を響かせ、リズミカルに思える足取りで。
 やはり、やきもちやきなのか、嬉しいけれど大変でもあると思いつつ追いかける。
「――鹿取先生っ」
 近づき、生徒が周囲に少ないことを確認してから声をかける。
 真紀は立ち止まり、振り返る。
「どうしたんですか、福沢くん」
「え……あ、ええと」
 追いかけるだけで何も理由を用意してこなかった祐麒は、教師の顔で尋ねられて返答できずにまごつく。
「特に用事がないなら、先生急ぐので行きますね」
 とりつくしまもないとはこのことか。ぷいと顔を背けて歩き出し、再び祐麒は慌てて後を追う。
「先生、違うんですよさっきのは。前にも話した通り、桂さんとは友達で、色々とお世話になっているからお礼もかねて……」
 他の生徒から距離があることを確認し小さな声で真紀に訴えかけるが、真紀は止まることなく進み階段に達し、階下に足を向ける。
「――先生ってば!」
 とうとう我慢できなくなって少し大きめの声で呼ぶと、ようやく足を止めてくれた。振り返り、一段、二段と階段を上って祐麒に近づいてくる。下からキツい目で見上げてくるのが怖かったが、逃げ出したりはしない。
「――どうしたんですか、桂さんとデートの打ち合わせをしなくて良いのですか?」
「ちょっと、だからそれは違うって言っているじゃないですか、それにその口調」
「教師ですから」
「…………すみませんでした、俺が軽率でした、その、桂さんとのことは」
 言いたいことはあったけれど、ここは頭を下げる。実際、真紀がいながら桂と二人で学校帰りにアイスを食べに行く約束をしてしまったのだ。あくまで仲の良い友達としてであり、それ以上ではないといっても恋人以外の女生徒二人きりで出かけることに変わりない。
 ついこの前、メールで釘を刺されたというのに、これでは真紀のことを軽んじていると思われてしまっても仕方ない。そんなことないと幾ら言葉で言い繕おうが、行動で示さなければ意味がない。
「……本当に悪いと思っているのかしら」
 手にした定規でぺちぺちと手の平を叩きながら真紀。なぜ、そんなものを手にしているのか。
「そ、それはもちろん」
「じゃあ、後ろを向いて、目を瞑りなさい」
「え……あの、もしかしてその定規で」
「早く」
「は、はいっ!」
 真紀の迫力に押され、くるりと反対を向いて目を閉じる。あの定規でお尻を叩かれたらさぞ痛いだろうなあ、でも真紀にだったら叩かれても――などと少しばかり変態じみたことを考えていると。
「――っっ!!」
 バチン! と鈍い音が響く。
 本当に定規でお尻を叩かれた。それも絶妙な力加減というべきか、そこまで大きな音は響かせず、それでいて強烈な痛みが臀部に与えられている。
「何、叩かれて嬉しそうにしているの。変態なの?」
「し、してないですよ、って、また痛い!?」
 もう一回、叩かれた。
 いや、確かに普段は温厚で優しそうな真紀がややSッ気を見せている姿はそそられるものがあるが、痛いのは確かで嬉しそうにはしていない。はず。
 そしてまたしても定規を振り上げる真紀。
「次が最後よ。目を閉じて」
「な、なんで三回も」
「文句でも?」
「ありません、はい!」
 ギュっと目を瞑り、尻に力を入れて痛みに備える。
 いや、むしろ力を抜いた方が痛みは少ないだろうか。
 などと考えている間に、次の衝撃がきた。
「――――っ!?」
 驚きに、目を見開く。
 目の前に、目を瞑った真紀の顔があり、唇が唇によって塞がれていた。
「――――ぇ、えっ」
 びっくりして後ろに顔を引くと、バランスを崩して体が後ろに反る。危ないと体勢を立て直そうとしたところ、真紀の手がタイを掴んで今度は前方に強く引っ張られ、そのまま再び唇が奪われる。
「…………」
 ゆっくりと離れてゆく唇の感触を名残惜しく感じながら、真紀を見つめる。ちらりと見れば、脱いだヒールを後ろ手に持ち、ストッキングに包まれた足で階段に立っている。わざわざ足音を聞かれないようにしたのだろう。
「…………え、あ」
「2回は、環さんと桂さんにデレデレしていた分」
 言葉もなく、ただ立ち尽くす祐麒を見て、真紀はしれっと言う。
「え、と、じゃあ、今の3回目は?」
 そう、問い返すと。
「……それは、私の分」
 と、ちょっと目をそらしながら言う真紀。
「――唇、ばれないように気を付けて」
「え…………っ!?」
 唇に触れてみると指に紅い色が付着し、慌てて手で口もとを隠す。ごしごし擦ったところで広がってしまうだけだろうし、口紅の落とし方なんて知らないから困ってしまう。幸い、授業は全て終わったのであとは帰るだけというのが救いだが。
(てゆうか、それが狙いか? これ以上、誰かと接触せずさっさと帰すための)
 これでは部活動はおろか、誰かと喋ることだってままならない。とはいえ、それだけでキスなどという大胆な行為に及ぶだろうか、まだ生徒だって多く残っている学園内で。いや、祐麒としては嬉しい事ではあるのだが、これでは祐麒の方が心臓に悪い。
「それより今は、こっちの方か……」
 結局祐麒は、手で口を隠したままこっそり帰宅するしかなかった。

 

(……ああ、駄目だなぁ私)
 祐麒にキスをした後、適当に校舎を歩いて職員室へと戻りながら考える。
 いや自分は悪くない、交際相手がすぐ傍にいるというのに他の女の子にうつつを抜かしている方が悪いのだ。別に、自分の教え子である女子高校生に対してライバル心だとか、焼きもちだとか、そんなことを考えているわけではなく、単に別の女に目移りしている祐麒が罪深いだけだ。
 だからといって学園内でキスをするなど危険な行為をしてしまうなんて。
 でも、付き合っているのに何もできないなんて我慢できないし、祐麒だって色々としたいくせに我慢していて、そのくせ真紀がキスしてあげると真っ赤になって動揺して、それでも嬉しそうにして。
(もう、可愛いんだから……あんな可愛いのが、私のものだなんて!!)
 思わず、頬が緩みそうになる。
 自分がまさか、こんなずっと年下の男の子、少年といっていいような男子に対してこのような思いを抱くようになるとは、数か月前には想像も出来なかった。
 ただ、今のところ祐麒は自分に夢中だと思うが、周囲には若くて可愛らしい女の子が沢山いるから油断はできない。
(……って、私は学園でなんてことを考えているのよ…………?)
 というか、冷静に考えれば行動だって物凄く恥ずかしい事ばかりしている。こうして毎度、祐麒に対して何かした後は一人で羞恥に頭を抱えている真紀なのであった

 

 

おしまい

 

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