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マリア様がみてる 百合CP

【マリみてSS(笙子×克美×乃梨子)】ちゅっちゅ

更新日:

~ ちゅっちゅ ~

 

 

 乃梨子ちゃん、そしてお姉ちゃんとキスした翌日。
 あたしは乃梨子ちゃんのことをまともに見ることができなかった。
 一応、ちらちらと様子は伺っていたけれど、乃梨子ちゃんは昨日のことなど全くなかっかのように正常運転、表情も態度も変わらなければ、あたしのことを気にする素振りを見せることもない。
 あたしの方がこんなにも意識しているのに、なんだか悔しい。

 ちなみに、お姉ちゃんとは朝の時間が違ったので顔を合わせずに学校に来られたので、それは有難い。
 乃梨子ちゃんとお姉ちゃん、二人とのキスを思い出すと、今でもドキドキする。
 だけど、二人に対するドキドキは微妙に違うような気もして、でもどこが違うのか明確に言えなくて困惑する。
 放課後、乃梨子ちゃんとのキスは、シチュエーションに関するドキドキで。
 夜、お姉ちゃんとのキスは、キスすることそのものにドキドキしたような。
 でも、それだけとも言い切れないような。

 いずれにしても、キス初心者マークのあたしとしてはよくわからないことに違いはなく、むしろ今は、この先にどのように二人に接してよいかの方が切実な問題かもしれない。とゆうか、なんだか事実だけ考えると、あたしって浮気者? 二股がけ? 別に、つきあっているとかそういうわけじゃないけれど。
 そんな風に一日中もやもやしていたあたしを見かねてか、放課後、日出実ちゃんが遊びに行こうと誘ってくれた。
 制服のまま寄り道して誰かに見つかるとまずい、でも家に帰ってから出直すのでは、日出実ちゃんとは方角が違って面倒くさい。だから、途中の駅で私服に着替えてしまう。
 実はこういう遊びの時用に、学校のロッカーに着替えを置いてあるのだ。前に同じことをしているので、日出実ちゃんも仲間だ。

 着替えて向かった先は、まずはなんといってもカラオケ。もやもやを吹っ飛ばすには、思い切り好きな歌を歌いまくるのがあたしにとっては特効薬。日出実ちゃんは、以前はあまりカラオケは好きじゃなかったみたいだけど、あたしにしょっちゅう連れられて行くようになってからは、好きになってくれたみたい。ただ、あたし以外の人とはあんまり行かないみたいだし、行っても遠慮してしまうということで、仲良しのあたしの前でだけいろいろ歌ってくれるみたい。なんか、特別みたいで嬉しくなる。
 ずっとカラオケでも別にいいんだけど、色々なことがしたかったので、カラオケ屋の近くのゲームセンターに行ってUFOキャッチャーや音楽ゲームを楽しむ。ダンスゲームは胸が揺れてちょっと苦手だけど、楽しくて好き。UFOキャッチャーはあんまり上手じゃないけれど、あたしが欲しがっていた縫いぐるみを日出実ちゃんが取ってプレゼントしてくれた。さすが日出実ちゃん、超LOVEです。お礼に何かあたしもあげたかったけれど、結局全然取れなくて逆に慰められてしまった。

「よーっし、じゃあ、次はプリクラ撮ろう!」
 日出実ちゃんの手を掴んで、コーナーへレッツゴー。
「ちょ、ちょっと引っ張らないでよ笙子さん」
「あー、また言った。もう、学校を出たら"さん"付けはやめようねって約束したのに」
「あ、ごめん。でもメールでならともかく、実際に"しょこたん"って呼ぶのは、ちょっと恥ずかしいね」
「あたしと日出実ちゃんの仲でしょ。ほら、どれにしよっか」
 たくさんのマシンの中から、これはというものを選んで撮影する。
「ねえねえ日出実ちゃん、ほらもっとくっついて」
「はいはい、これでいい?」
 なんだかんだいって付き合ってくれる日出実ちゃんが、あたしは大好きだ。そんな親愛の気持ちを込めて、日出実ちゃんの頬っぺたにちゅーをする。
「きゃっ? わ、もう、しょこたんったら」
「えへへっ」
 うまいこと撮影のタイミングにあわせてちゅーすることが出来たので、撮影された画像を見て満足そうに笑う。
「今後は日出実ちゃんがちゅーして、ね」
「えー、でも」
「いいじゃん、ほらー、ねっ?」
「んもー、しようがないなぁ」
 あたしが頬を向けていると、ちょっと恥ずかしそうにしながらも日出実ちゃんは「ちゅっ」と唇を押し付けてくれた。
「あー、まだ離さないで、ほら撮影のタイミングまで。あ、せっかくだからポーズとろ」
 さっきのあたしは目をつむってしまっていたけれど、今回は日出実ちゃんがあたしの頬っぺたにちゅーしながらも、二人ともカメラ目線でピースサイン。
「うぅ~、しょこたんの頬っぺた、ぷにぷにで気持ちよかった~」
「日出実ちゃんだって、柔らかかったよー」
 二人して落書きをして、完成した写真を見てキャーキャーと言い合う。
 出来上がった写真は満足のいくもので、携帯にもとりこんで日出実ちゃんとのラブラブ画像として友達にも見せられるようにしておこう。どっちも良いけれど、やっぱり日出実ちゃんがあたしの頬っぺたにチューしてくれているほうが、真面目な日出実ちゃんが弾けている感があって良いし、二人ともバッチリカメラ目線で可愛く撮れているからおすすめ。
 こうして、日出実ちゃんの頬にキスするのであれば、下手に意識することなんてないのになぁと思う。

「…………そうだ」
「どうしたの、行かないの?」
「ちょっと待って日出実ちゃん、もう一回やろーよ」
「え、まだ撮るの?」
「じゃあ、今度は違う機械で。ね、ほら」
 日出実ちゃんを強引に引っ張って、他のマシンに行く。
「もう一回、ちゅーの写真撮りたいんだ」
「また? さっき撮ったばかりじゃない」
「違うの、今度は頬っぺたじゃなくて、お口同士のちゅーで」
「え……ええっ!?」
「今時、アイドルの子達もやってたりするじゃん。お友達同士のキスだし、女の子同士だし、大丈夫だって」
 驚く日出実ちゃんに、慌てて言い訳する。
「う~~んと」
 そうはいいつつ、日出実ちゃんは顔を赤くして困った様子を見せている。やっぱり無茶があっただろうか。だからといって、乃梨子ちゃんやお姉ちゃんのキスと違うか試したいから、なんて言うのは躊躇われるわけで。
 やっぱ無理か、そう思ったとき。

「……もう、しようがないなぁ。一回だけだよ?」
 もじもじとしながらも、日出実ちゃんはそう言って頷いてくれた。
「え、いいの?」
「う、うん。まぁ、しょこたんとだったらいいかなって……あ、し、親友だからだよ?」
「うんっ! わーい、日出実ちゃんだーいすきっ!」
 ぎゅっと抱き着く。
「ほら、それじゃあ早く撮っちゃお」
 お金を入れていざ、撮影開始である。
「そ、それじゃ、どんな感じでいく?」
「どんな感じって言われても、キスでしょ? あ、撮影始まっちゃう」
「うわ、えと、それじゃ……」
 お互いにどうしても最初は照れが入り、タイミングを失敗して歯と歯がぶつかってしまったけれど、逆にこれで緊張がとれた。
 2枚目はあたしが日出実ちゃんの肩をつかんでキスしてあげる感じでうまくいった。
「んっ……」
 ちゅ、と唇を重ねると、ふんわりとした日出実ちゃんの唇の感触が伝わってきた。

 次は日出実ちゃんがあたしにキスしてくれる形で。あたしの首の後ろに手を回して顔を引き寄せられると、そのまま唇を奪われる。
「やっぱり、ちょっと恥ずかしいね」
 口を離した後、照れ笑いを浮かべながら言う日出実。
「最後の一枚は、もっとラブラブに撮ろう!」
「え、えぇ、これ以上どうやって?」
「もっとこう、お互いに密着してエロスな感じで……」
 さっきまでは体が離れている状態で顔を近づけてキスしていたけれど、今度は日出実ちゃんのほっそりとした腰に手を置いて抱き寄せる。
「わ、わ、しょこたんったら」
 言いながらも、日出実ちゃんもノッてきたのかあたしの背中に腕をまわしてきた。胸がぎゅっと押し付け合われ、スカートから伸びた足同士も触れ合い、柔らかな日出実ちゃんの体が気持ち良い。
「な、なんかこれ、えっちくない?」
「しょこたんが撮ろうって言ったんじゃない」
「そうだけど、改めて考えると恥ずかしいね」
「それこそ今さらでしょ……ちゅっ」
「んっ」
 日出実ちゃんに上唇をついばまれた。言いだしっぺなのになんだか主導権を奪われているように感じて悔しいけれど、こうしてちゅーされていると心地よくて任せたくなる。だからちゅーの方は任せて、あたしはセクハラ攻撃に出た。つまり、日出実ちゃんのお尻を触って揉んでやった。
「うきゃっ!? こ、こら、しょこたん、えっち!」
「あぁ、残念、やーらかかったのにぃ」
 さすがに驚いたのか、日出実ちゃんはぱっと体を離してお尻を手で隠す。だけど、そんなことをしても既に日出実ちゃんのお尻の感触は両手にしっかりと残っているのだ。

「もーっ、セクハラで訴えるからね」
「いいじゃない、あたしと日出実ちゃんの仲なんだしー」
 じゃれ合いながら、二人して落書きしてラブラブなキスプリが完成した。
 画像を見ながら改めて思い返してみると、日出実ちゃんとのキスは、そりゃあ最初は照れ臭かったけれど、その後は楽しくできた。乃梨子ちゃんとキスした時のドキドキや、お姉ちゃんにキスされた後のようなドキドキは、不思議なことに感じなかった。
「うぅ……なんか恥ずかしいね。これ、誰にも見せたら駄目だからね、しょこたん」
「うん、あたしと日出実ちゃんだけの秘密だね……うへへ、この秘密をばらされたくなかったら、あたしの言うことを聞くのだ」
「そういう変態さんのマネしたらダメ。せっかく可愛いしょこたんなんだから」
「あははっ、でも、日出実ちゃんがキスプリをOKしてくれるとは思わなかったなぁ。もしかして日出実ちゃん、既にキス経験が豊富とか?」
「そっ、そんなことないない! 相手がしょこたんだったからだよー」
「えへへっ、あたしも、日出実ちゃんとだったらもっとちゅっちゅしたいなぁ」
「――んもうっ、そんな甘えて…………可愛いんだから、しょこたんは! ん~~っ」
 日出実ちゃんの腕にしがみついて甘えると、日出実ちゃんは目を輝かせて、いきなりあたしの頬を両手で挟んでキスしてきた。しかも今は、プリクラ撮影中でもないというのに。もしかして日出実ちゃんは、キス大好きっ娘なのだろうか。
 でもやっぱり、プリクラじゃないとしても日出実ちゃんとのキスはお姉ちゃん、乃梨子ちゃんとのキスと違う。キスしていると胸がほこほこと温かくなって、なんだか嬉しくなっちゃうような感じ。

 その後、ファストフードでお喋りしてから駅に戻って制服に着替えて日出実ちゃんと別れて帰宅。
 夕食を終えてから自室に戻ると、改めて今日のプリクラ写真を眺めてみる。
 あたしが日出実ちゃんにキスしている写真、日出実ちゃんがあたしにキスしている写真、どれも可愛く撮れていると思う。仲の良い友達同士が、仲良くキスしている写真だと見えるけれど、それとも他の人が見たらあたしと日出実ちゃんが恋人同士のように見えたりするのだろうか。
「日出実ちゃんの唇、柔らかかったな」
 頬杖をつき、思い出しながら息を漏らす。
 同じキスのはずなのに、どうして全然違う風に感じられるのだろう。やっぱり、相手に対する気持ちの差だろうか。

 日出実ちゃんはとっても大切なお友達。親友。

 お姉ちゃんは、お姉ちゃん。

 昔は嫌いだったけれど、今は、よくわかんない。まだ苦手な気持ちも残っているけれど、昔みたいに嫌ではない。
 乃梨子ちゃんはクラスメイト。お友達というほど仲良くないけれど、以前に比べれば距離は近くなったと思う。
「――笙子、お風呂入っちゃいなさい」
「はーい」
 お母さんに言われて、お風呂に入ることにする。
 お風呂に入っている間も考えるけれど、結論なんて出るわけもなく。変に考え過ぎちゃって、のぼせそうになって慌てて出る。
 髪の毛を拭きながら、洗面所の鏡に映るあたしを見る。
 自分の唇を改めて見てみると、お姉ちゃんや日出実ちゃんと比べると、ぷっくりとした唇ような気がする。
 この唇が乃梨子ちゃん、お姉ちゃん、日出実ちゃん、三人の唇と触れ合ったのだと思い、人差し指でつとなぞる。あたりまえだけど、特にどうこう感じるものはない。
 唇と唇が触れ合う、そうすることで全く違ったものになるのは不思議な気がした。

「ふぅ……喉乾いたー」
 お風呂に入り過ぎていたせいで体は熱く、喉の渇きも強くなっていたあたしは、キッチンに行って冷蔵庫から清涼飲料水を取り出してコップに注ぐと、一気に飲み干した。水分が体中に染みわたる気がして心地よい。
「笙子、お姉ちゃんにお風呂入るよう言ってきてくれる?」
「うん、分かった」
 グラスを流しに置くと、二階に向かうべくリビングから出て階段に足をかける。
 すると、呼びに行くまでもなくちょうどお姉ちゃんが二階から降りて来ようとするところだった。
「お姉ちゃん、お風呂空いたよ」
「うん、これから入る」
 狭い階段、あたしは上る前に止まってお姉ちゃんが降りるのを待つ。
「――ねえ、笙子」
「ん、何?」
 すれ違ったお姉ちゃんに呼ばれ、振り返る。
 すると。

「――っ!?」
 お姉ちゃんの顔が間近に迫っていて、「あ」と思う間もなくキスされていた。しかも、舌を差し込んできて、あたしの舌をぺろりと舐められた。
「――――っっっ」
 びくっ、と反応して震えるあたし。
 お姉ちゃんの顔が、そっと離れる。
「え……え、えっ、ちょっ、なななっ、何お姉ちゃん、どうしたのいきなりっ!?」
「――別に。この前は笙子からしてほしいって言ってきたじゃない」
「だ、だ、だからって……」
「だからよ」
 それだけ言って、お姉ちゃんはスタスタと歩いて洗面所に行ってしまった。
 あたしは訳が分からず、とりあえず顔が真っ赤になっているのは分かっていたからそのままリビングにも戻れず、自分の部屋に逃げ込む。

「え、え、お姉ちゃん、なんで……いきなり?」
 そりゃ、ちょっと甘えてキスを求めちゃったりもして、それにお姉ちゃんも答えてくれたけれど。それは単に、妹のわがままにつきあってくれただけで。それなのに今は、お姉ちゃんの方からいきなりキスしてきた。
 パニックになりそうな頭を抱えたあたしの視界の隅に、机の上に置かれたプリクラ写真が入った。
「……あれ?」
 違和感を覚える。
 お風呂に入るため部屋を出る際と、プリクラ写真の位置が微妙にずれている気がしたのだ。出る前は携帯と重なるような位置にあったはずが、ちょっと離れている。窓は空いておらず風でずれたとも思えない。それとも、部屋の扉をあけた時の気圧差? いやいや、それも変だろう。
「――――まさか?」
 お姉ちゃんは、二階から降りてきた。
 お姉ちゃんがあたしの部屋に入って写真を見た可能性は? あたしは結構がさつで、部屋の扉を開けっ放し、電気もつけっぱなし出てしまうことがある。お風呂に入る時も、そうだったような気がする。
 でも、お姉ちゃんがこの写真、日出実ちゃんとのキス写真を見たからといって、どうしてお姉ちゃんまでキスするのか。
 あたしと日出実ちゃんがあまりにラブラブで仲良さそうで羨ましくなり、つられて自分もキスしたいと思ったとか? それはあのお姉ちゃんからしてなさそうだ。
 となると、他に何がある。

「……やきもち、とか? いやいや、お姉ちゃんに限ってまさか、ねぇ?」
 自分で言いながら笑い飛ばす。
 だって、あのお姉ちゃんだよ?
 それでも。
「もし本当に、やきもちだったら……」
 そう考えると。
 う、やばい、ちょっと嬉しいかも。
 あのお姉ちゃんが、あたしに焼きもちやいてくれるなんて。
 それにしても。
 指で、唇にふれる。
 今でも先ほどの余韻で体も顔も熱く、胸だってドキドキしているのに、思い出したら余計に心臓の動きが速くなった。
 日出実ちゃんとキスした後とは、やっぱり全然違う。
 まだ濡れている髪の毛も気にせずベッドに転がり、悶々とのたうつ。
「うぅ~~~~っ」
 シーツをギュっとつかみ、唸り。
「お姉ちゃんの、馬鹿」
 と、あたしは本気で思ってもいないことを口にしたのであった。

 

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