【作品情報】
作品名:毒島刑事最後の事件
著者:中山七里
ページ数:344
ジャンル:ミステリー
出版社:幻冬舎
おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
毒島の心理攻撃の辛辣度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : 心理的に追い詰めていくミステリー好き
刑事・毒島は警視庁随一の検挙率を誇るが、出世には興味がない。
一を話せば二十を返す饒舌で、仲間内でも煙たがられている。
そんな異色の名刑事が、今日も巧みな心理戦で犯人を追い詰める。
大手町の連続殺人、出版社の連続爆破、女性を狙った硫酸攻撃…。
捜査の中で見え隠れする“教授”とは一体何者なのか?
前作では「作家刑事」として事件に関与していた毒島の刑事時代を描いた作品。
それも、刑事をやめるきっかけとなった最後の事件について。
作品内では複数の事件を解決しつつ、その裏にいる各事件の犯人を唆した真犯人を見つけていく連作になっている。
発生する事件は、大手町の連続殺人、出版社の連続爆破、女性を狙った硫酸攻撃、など。
実行犯はいずれも人生が自分の思ったようにいっていない人たち。
学生時代は優秀で、そのまま輝かしい社会人生活、未来が待っていると思っていたのに現実は違っていた。
承認欲求が高く、自己評価が高く、自分の掲げる理想という幻想にしがみついているような人たち。
現実の事件でも、こんな感じなのかなぁという風にも感じられる。
彼らのことを、毒島が容赦なく言葉の刃でぶった切っていく。
あんな風に言われたら頭に血が上って言い返しちゃうんだろうなぁ。
読んでいるこちらだって、そう思ってしまいますもの(苦笑)
とにかく心理的に追い詰めていくのがね。
思わず犯人に同情しそうになってしまうくらい、小憎たらしいのが毒島の毒舌であり、追い詰め方。
真犯人は裏から手を引いているわけで、実行犯たちに対して殺人教唆をしているわけだが、そうと思わせない心理操作。
そんなん簡単にできるのかとも思うが、そういう相手を選んでやっているというのも、なんかありそうだなと思ってしまう。
自分の身近にいないからわからないけど(いたら嫌だけど)、いそうだなぁとも思える。
まだ新人だった犬養が登場して、毒島の下で働いているもちょっと面白い。
活躍するってわけじゃないんですけどね。
犯人たちがそろいもそろって、毒島の言葉で簡単に動揺しすぎというか、馬脚を現し過ぎとも感じられる。
一つ一つが短いから、どうしてもそうなってしまうのかもしれないが。
心理戦にならず、毒島の一方的な心理的圧殺にしか見えないから、それが読み手にどう感じ取られるか。