【作品情報】
作品名:少女が最後に見た蛍
著者:天祢涼
ページ数:288
ジャンル:ミステリ―
出版社:文藝春秋
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
読んで辛くなる度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : 少年少女が抱える社会問題に興味あり
神奈川県警生活安全課の仲田蛍(なかたほたる)は、中学時代の同級生・来栖楓(くるす・かえで)と思いがけず再会する。
来栖は当時、桐山蛍子(きりやま・けいこ)という同級生をいじめており、仲田は蛍子を楓から守ろうと手を尽くしていた。
しかし、いじめを終わらせることはできず、かえって桐山を傷つけてしまい、最後は自殺してしまったのだった。
事の次第を聞いた捜査一課の真壁は、自死の背後に仲田も知らない真相があるのではと感じて調べ始めると、意外な事実が浮かび上がり―
仲田シリーズ第4弾は短編集。
少年少女が抱える問題。
ネグレクトやいじめ等、どう考えても読んで気持ちよくなれるわけではない題材なんだけど、つい読んでしまう。
本作は短篇連作となっており、またこの中で色々な問題・課題を抱えた子供や家庭を描いていく。
その中でもやはり印象に強く残ったのは表題作だろう。
これは仲田の少女時代に起きた問題と現在をリンクさせて描いている。
かつて、仲田に何があったのか。
警察官となり、少年少女たちに寄り添うようになったのは自分自身の過去に影響しているのか。
そういったことも分かっていく。
そして分かると同時に、これまたその事件は切ないというか悲しいというか。
他に行きつく先はなかったのか。
他の選択肢を選ぶことは出来なかったのか。
大人になれば、もっと色々と考えることができる。
あるいは割り切ることも出来る。
だけど子供の世界だけだと、自分が見えている世界が全てになってしまい、冷静にもなれない。
いや、それは大人でも同じかもしれない。
当事者でなければ幾らでも冷静でいられるんですよね。
精神が落ち込んでいる時に読んでは駄目なシリーズですね。
どうしたって後味が良くなるわけではない。
それでも、きっとこういうことは色々なところで発生しているのも事実なんですよね。
現実感があるのが辛い。