【作品情報】
作品名:ゆえに、警官は見護る
著者:日明 恩
ページ数:504
ジャンル:ミステリー
出版社:双葉社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
やりきれない事件度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : 派手さはなくとも読ませるものが好き
新宿署の留置管理課に異動となった武本は、新宿で喧嘩をして留置場に来た男・柏木のことが気になっていた。
一方、重ねられたタイヤの中に立たされて人が燃やされているという事件が発生する。
同様な事件が立て続けに発生し、警察は全力で犯人を追うもなかなか見つからない。
そこに応援にやってきた潮崎とそのお目付け役の宇佐見、そして正木。
潮崎が来れば当然、大人しくしているわけもなく、事件は大きく動き出す?
武本&潮崎のコンビが活躍するシリーズ第4弾。
しかし、武本は新宿署の留置管理課に異動となり、事件の捜査に関わることは出来なくなっている。
潮崎とコンビを組んで動かせなくなったことで新たに登場したのがまた変人の宇佐見、そして体育会系女子の正木。
無口で武骨な武本とは異なり、宇佐見は論理的に相手を論破していく堅物というか変人。
でも、だからこそ変人の潮崎とも見事にマッチする。
屁理屈ともとれる理論武装は、ごもっともなことを言いつつ、聞いている方は腹が立つ。
でも、そんな相手ともうまくやっちゃうのが潮崎ならでは。
事件の方は、遺体の連続放火ということだが、なかなか捜査が進展していかないのを、潮崎が独自の理論をもとにヒントとなることを見つけてくるのはさすがというか、らしいというか。
よくも、その論理で辿り着いていくよなぁという感じ。
事件を追いかけていくと、その裏にひそむものが分かってきて何ともやりきれなくなる。
大震災で地盤の液状化の被害を受けた地域は、家が傾き、生活していくには厳しい状況となる。
しかし、不動産会社や国に責任があるわけではなく、ただただやるせなさが募っていく被害者達の辛さ、哀しさ。
犯人たちのやりきれない思いというのが伝わってくる。
アクションがない分、色々な人の心の内とか思いとか、そういう部分に焦点を当てて来たのだろう。
重くなんとも言えない事件なのだが、潮崎というキャラクターと、宇佐見のキャラクターが、そういうことをあまり感じさせず読ませてくれる。
良い味を出していただけに、次の話があればまた宇佐見も出てくることだろう。
・・・・新作、次を出すのであれば、今度は間隔を短くしてほしいですね。
新キャラの宇佐見も良い味は出していたけれど、やはり武本と潮崎が組まないと物足りないですね。
今作の活躍を経て、武本がまた刑事課に戻ってコンビを再び組んでくれるとよいですね。
武本には迷惑かもしれませんが。
価格:1,555円 |