【作品情報】
作品名:タイムボックス
著者:アンドリ・S.マグナソン
ページ数:384ページ
ジャンル:SF、ファンタジー
出版社:NHK出版
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
考えさせられる度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : 寓話好き
世界の始まりの国、パンゲア。
ここで王様は、娘を中に入った人の時間を止める魔法の箱に入れ、永遠の美しさを保とうとする。
だが、それは現代へと続く呪いでもあった。
アイスランド発、SFファンタジー
おとぎ話でありつつ、同時に示唆的な物語でもある。
物語は、現代と過去をいったりきたりしつつ進められていく。
いずれにも共通するのは時間を止めることの出来る「タイムボックス」
これは、中に入った人だけ、時間を止めることが出来る。
パンゲア国の姫、オブシディアナ姫はその美しさゆえに父である国王に「タイムボックス」に入れられ、美しさを保とうとされるのだが、それは決して本人の望む人生ではない。
王様は、良い事だけを姫に見せたくて、それ以外の時はずっと姫の時を止める。
だけど、人生は良いことばかりではない。様々なことがあってこそであるし、目が覚める度に何年も経っていて、果たしてそれは姫に取って幸せと言えるのか。
作中でも言っているが、晴れの日には晴れの日の良さが、雨の日には雨の日にしか感じられない良さがあるのだ。
一方で現代。
経済不況をやりすごすため「タイムボックス」に入っていく人々。
でも、それによって誰もいなくなり、逆に世界はどんどん崩壊していってしまう。
「タイムボックス」は誰でも手に入り、誰でも時間を止められてしまう、ってのがミソですね。
時間を示唆した文学といえば、ミヒャエル・エンデの「モモ」が名作だが、同じ時間を扱っていてもまるで違う。
「モモ」は、効率化ばかりに目がいって大事なことを見失っては意味がない、ということを言っている。
今の世の中の働き方改革ですね、これは。
一方で本作は、嫌なことをやり過ごす、というもの。
いやー、これはこれでというか、むしろこっちの方が身につまされる。
逃げたいと思うことはよくあるし、時が通り過ぎてくれるのを祈るような気持ちの時、ありますからね。
でも、そんなことをしても根本的な解決にはならない。分かっているのに、やってしまう。
人は弱いから逃げてしまう。
おとぎ話でありながら、現代の問題などに切り込んだ、そんな作品。
児童文学なので、それゆえ逆に読み辛く感じるところもある。
あと、内容的に仕方ないが、ファンタジーだけどワクワクする胸躍るような物語ではない。
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