【作品情報】
作品名:予告状ブラック・オア・ホワイト (ご近所専門探偵物語)
著者:市井 豊
ページ数:303
ジャンル:ミステリー
出版社:東京創元社
おススメ度 : ★★★★★★☆☆☆☆
川崎への地域密着度度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : 川崎近辺に住んでいたミステリーが好きな人
川崎で探偵業を営む九条清春。
かつては素人探偵として全国をまたにかけて事件を解決してきたが、それに嫌気がさして今は地元密着型のご近所探偵として仕事をしている。
そこに秘書として遣わされたのは、真面目さが取り柄の会社員、渡会透子。
ものぐさでやる気を見せない九条に対し、真面目に依頼を受けてどうにか九条に仕事をさせようとする透子。
凸凹な二人が織り成す連作ミステリー。
いわゆる「日常の謎」を取り扱っているわけですが、そもそも地域密着型でその手のことを専門にする探偵というのも珍しい。
九条が興味を示すのは、ご近所さんがちょっと困っているような謎。
そんな謎がそうそうあるはずもなく、なかなかやる気を見せない。
そこに、九条の祖父から依頼されてやってきた、真面目で仕事人間の透子。
ものぐさ人間とのコンビは物珍しいものではないが、安定感はある。
■予告状ブラック・オア・ホワイト
表題作。
ブラック・オア・ホワイトとは、作品内のアイドルユニットの名前。
そのアイドル事務所に届いた謎の予告状を見て驚いた社長から、アイドルの護衛を頼まれたわけだが、その予告状の真実とは。
謎そのものよりも、アイドルの女の子(ブラックの方)が魅力的に思えた。
■嘘つきの町
柔道のオリンピック代表選手を輩出し、盛り上がる川崎。
だけど当の選手はプレッシャーからか実力を発揮できず、残念な結果に終わってしまった。
その選手を励まそうと、ライバルの男がやってきたのだが、町の様子がおかしくて・・・・? という話。
謎そのものは比較的わかりやすい。
読み終えた後は、ちょっと心が温かくなる。
収録されている作品の中では一番好きかも。
全体的に謎どうこうよりも、その謎の裏にある人の思いとか気持ちとか、そういうものにフォーカスをあてている。
そういう方向の作品の方が好きという方におすすめ。
真面目な透子だけど、脳内で九条をしばいている妄想をする姿はなかなか良い。
ラゾーナ、多摩川花火大会、商店街、などなど、まさに地元探偵という感じなので、川崎近辺に在住の方、あるいは住んでいたことがある方は、地元が出ているという意味でも楽しめるかと。
心が温まるような話が続いていただけに、最後の話がちょっと違う方向だったので、期待していた人はがっかりするかも。
でも、良いことばかりじゃないのが人間だとも改めて思わせてくれる・・・かも。