書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

マリア様の愛読書

マリア様がみてる 由乃

【マリみてSS(由乃×祐麒)】熱帯夜

更新日:

~ 熱帯夜 ~

 

 由乃と祐麒が正式にお付き合いし始めてから、一週間が経ちました。

 

「ううっ、我ながらヘタレだわ……」
 由乃は頭を抱えていた。
 親友の弟と付き合っているということを、当の親友に告げるということが、まさかこんなにも恥ずかしいものだったとは思わなかった。
 同じクラスで、山百合会の活動も一緒で、話す機会などいくらでもあったのだが、なかなか切り出すことが出来なかったのだ。
(いや、クラスでも薔薇の館でも他の人がいたし……やっぱこういうことは、邪魔の入らないところで話さないとね)
 と、自分自身に言い訳をしているものの、いい加減にどうにかしたい。時間が過ぎれば過ぎるほど、事実を伝えたときに何となく気まずくなるのは分かっている。だからこそ、早く告げてさっぱりしたい。
 いつまでもグダグダしているのは自分らしくない、今日こそ祐巳に本当のことを伝えるべく登校してきたのだ、いつまでも頭を抱えている場合ではない。最近、そんな感じで由乃が落ち着かないので、蔦子や真美からも少し心配され始めている気がしている。
 授業終了後の休み時間、由乃は意を決して立ち上がり、祐巳の方へと歩み寄っていく。
「あのぅ、ゆ、祐巳さん」
「ん? 何、由乃さん」
 次の授業の準備をしていた祐巳が、声をかけてきた由乃に目を向ける。
 不自然にならないように深呼吸をし、精神を落ち着かせて口を開く。
「えと、実は、祐巳さんに伝えたいことがあって。今日のお昼、少し時間くれないかしら」
「うん、いいよ」
「そ、そう。それじゃあ、お願いね」
 それだけ言うと、回れ右して由乃は自席へと戻っていった。とてもじゃないが、祐巳の顔をあれ以上まともに見ていられなかったのだ。
 そんな由乃の様子を見て、クラスメイト達が密かにざわめきだす。
「……見た、今の?」
「ええ、とうとう由乃さん、決心したのかしら」
「え、どういうこと?」
「あんなに顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに、それでいて必死で真剣な様で祐巳さんを呼び出して告げることなんて、一つではないかしら」
「ええっ、そ、それってもしかして――こ、告白、とか!?」
「まあ、遅いくらいかもしれなかったですけれどね」
 周囲がそのようなことを話しているなんて、この時の由乃は気付く余裕もなかったのであった。

 

 そうしてお昼休みとなった。
 由乃は、約束をしていた温室の方へと足を向けながら、頭の中で何て言おうか色々と考えていた。伝えることなんて一つしかないのに、どうしてこんなにも余計なことを考え、恥ずかしさを覚えてしまうのか。
 言ってしまえばどうってことないはずなのだ。そう言い聞かせて、お弁当の袋を手にしたまま温室の中へと入っていく。同じクラスなのだから一緒に来ればよかったのだが、なんだか気恥ずかしくてわざわざ別行動しての待ち合わせで、祐巳は既に到着していた。
「それで由乃さん、お話しって?」
「え、あ、うん。実はね」
 この後お昼ごはんもあるので、ぐずぐずしていられない。とゆうか、告げた後に一緒にお弁当するって、気まずくなっていたら嫌だなあと今更ながら思うが、もう遅い。
 女は度胸、自分の性格にもあわない、祐巳を正面から見つめて口を開く。
「実は……私、お付き合いしている人がいるの」
「――え。えええっ。え、本当にっ!」
 驚く祐巳に、無言で頷く。恥ずかしいが、これはまだほんの序の口、この先が本番だ。
「へえ、そ、そうなんだ。誰と……って、聞いてもいいのかな?」
「うん……その~、え~と、ですね。実は、祐麒くん、と」
「――――ん?」
 首を傾げる祐巳。
 頼むから、そうやって訊きかえすようなことはしてほしくないが、一度口にしてしまえばもう同じこと、由乃は再び名前を告げた。

「だ、だから、祐麒くんと付き合い始めたのっ!」
 そう、先ほどより強めに、大きめの声で伝えると。
「へ……へえええええっ?? 祐麒とっ!? 本当にっ」
 更に大きな声で驚く祐巳。
 ようやく告げることが出来てほっとしたが、恥ずかしいことに変わりはなく、首のあたりまで熱くなっている。
「いつからっ」
「い、一週間くらい前から」
「そ、そうなんだぁ~」
「ごめんね、本当はすぐに言うべきだったんだろうけれど、私も恥ずかしくて、なかなか言えなくて」
 恥ずかしいが、それでも吐き出したお蔭で随分と気持ちは軽くなっていた。
「あ、ううん、それはいいんだけど。そっかー、あー、だから祐麒、ここんところ様子が変だったんだ」
「変、だったの?」
「うん、やたら機嫌が良くて、一人でにやにやしたりして、ちょっと気持ち悪いくらいだったけれど、由乃さんとお付き合いし始めて、嬉しくて仕方なかったんだ」
「はぅっ」
 由乃自身の行動ではないのに、なんだか物凄く恥ずかしくて、照れて、それでいて嬉しくもある。祐麒がそんなに喜んでいるという事実に。だが同時に、そんなあからさまにバレテしまっていることがちょっと怖い。自分自身も、知らないうちに態度に出てしまっていて、令やクラスメイトとかに気が付かれているのではないかと思えて。
 とりあえず重要事項は伝えたので、温室を出て薔薇の館へと行くことにした。お昼も食べないといけないし、話題も少し変えたい気もする。

 しかし、いざ薔薇の館に到着してみると、こういう日に限って由乃と祐巳以外のメンバーは来ていなかった。二人きりとなると当然、先ほど話した祐麒とのことが話題になるのは流れ的に仕方ないところか。由乃は、自分の読みの甘さを認識した。
 いつごろから好きになったのかとか、どっちから告白したのかとか、祐巳とてやはり女の子、そんなことを訊かれて由乃も赤面しつつ小さな声で答える。嬉しいから自慢したくもあるのだが、親友なのに相手が付き合っている彼氏の姉ということで、そこまではっちゃけることもできないというもどかしさ。
 打ち明けて気が楽になったのは良いけれど、なんというか非常にむず痒い。
「それでさ、由乃さん」
 正面に座っている祐巳が、更に尋ねてくる。果たして今度は何を訊かれるのか、内心で身構える。
「も、もうチューとかしたの?」
「ぶっふーーーーーーーーーー!!?」
 噴いた。
 水筒に入れていた麦茶を飲んでいたところでそんな質問を受け、口に含んでいた麦茶を見事な毒切り殺法のごとく噴出した。
「……よ、由乃さん……」
「あ、ご、ごめんっ」
 真正面から思いっきり麦茶の毒切りをかぶってしまった祐巳が、なんとも言えない表情で見つめてきて、慌てて頭を下げてハンカチを取り出す。
「うぅ、酷いよう……」
「だ、だって祐巳さんがいきなり、変なこと言うからっ」
 祐巳の顔を拭いながら言い訳するが、祐巳はによによと笑いながら再び攻撃を開始してくる。
「え~、なんで? つきあっているんだから、そういうことするのか、気になるじゃない」
「でも、祐麒くんだよ? 祐巳さんの弟だよ? 弟とのそういう話、聞きたい?」
「いやいや、私は『由乃さんの』話を聞きたいから」
「ぐっ……」
 なんという意地悪。いや、仮に由乃が逆の立場だったらやっぱり聞きたいだろうが、聞かれる方の身になってみるとなんともはや。
「し、してないわよそんな、大体、まだ付き合い始めて一週間よ」
「付き合い始めてからはそうかもしれないけれど、ずっと前から知っていたわけだし、一緒に遊びに行ったりもしていて仲良かったじゃない」
「だ、だからって付き合い始めて一週間でいきなりはないでしょう」
「由乃さんって、意外と純情、純愛なんだ?」
「意外って何よー、見た目通りでしょう?」
「あはは、照れてる由乃さん、かわいー」
 なんだかまるで年上の余裕、みたいな感じで温かい目で見られているようで、恥ずかしさが倍増する。

「じゃさ、祐麒から告白してきたってことだけど、何て告白されたの?」
「え、な、なんでそんなこと聞くのよ」
「やっぱ気になるじゃない、男の子ってどんなふうに告白するのか、その言葉を聞いて由乃さんがどう思ったのか」
「はうぅ」
「それに、ふふっ、祐麒がどんな顔して恥ずかしい台詞を言ったのか、いざという時のために持っておこうかと」
「ちょ、ちょっと祐巳さん!?」
「あはは、嘘嘘、ごめん、誰にも言わないから、ね」
 思わず立ち上がった由乃を見て、慌てて手を振る祐巳。
 なんといういじめっ子、いや単に好奇心旺盛なだけか。
「それで由乃さん」
「ええぇ~~っ、まだ訊くのーーっ??」
 結局、昼休みの間他の誰も薔薇の館にやってくることもなく、ずっと祐巳から尋問され続ける由乃であった。

 予鈴を耳にして、ようやく祐巳の執拗な攻めから逃れるようにして教室へと戻る。まさか祐巳がここまで恋愛ごとに興味を示すとは思いもしなかったのだ。
「あ、遅れちゃうよ、由乃さん」
「え? うわ、急がないと」
 教室への道すがらも話しながら歩いていたため、思いのほか時間がかかっていた。祐巳に引っ張られ、教室へと戻ってくると。
 ざわざわとしていた教室がちょっとばかり静かになり、中に入ってきた二人に視線が集中する。
「……どうだったのかしら、お二人」
「うまくいったのかしら……あ、でも見て、仲良く手を繋いで」
「きゃっ、素敵!」
 ざわめく教室内。
 そこで、祐巳と手を繋いでいたことに気が付き、慌てて離す。
「まあ、初々しいですわね」
「素敵なカップルが生まれましたね」
 周囲の雰囲気に気圧されながら、自席へと戻る。
「なんか、みんな浮ついていない?」
「あら、それは由乃さんの方ではなくて? どうやらうまくいったようね」
 蔦子が眼鏡をきらりんと光らせながらやってきて、すぐ背後には真美が興奮した面持ちで立っている。
「大丈夫です、由乃さん。私はお姉さまと違って、ゴシップ記事のようなものは書きませんから安心してください!」
「? はあ……そ、そう。ありがとう」
 意味も分からず、戸惑いながらもお礼を告げると、蔦子も真美も何やらにやにやと笑いながら自分の席へと戻っていく。
「なんなのかしら?」
 首を傾げる由乃が事実を知るのは、しばらく先のことなのであった。

 

 最近では走ることにも随分と慣れた。
 体力はまだまだ人並みかそれ以下かもしれないが、ろくに運動できなかった頃に比べてみれば、走れるだけでも嬉しい。しかも、走る先に待っているのは。
「由乃さん、走ってきたの? げ、元気だね」
「あはは、ごめんね、待たせちゃった?」
 祐麒が笑って迎えてくれた。
「急いで来たんだけれど、ごめん」
「いや、そんなに待ってないし。それに由乃さんの私服、見られて嬉しいし」
「な、何よ、恥ずかしいこと言っちゃって」
 寄り道禁止なので、家に帰って着替えてからこうして改めて外に出てきたのだ。家が学校から近いから、さほど時間がかかるわけではないが、単に着替えれば終わりといかないのが乙女である。
 セーラー風のパーカにバルーンショートパンツ、二ーハイソックスはちょっと狙って穿いてきている。
「私だけ私服で、なんかごめんね」
「いや、むしろ俺だけ制服で申し訳ない」
「でも、詰襟じゃないから大丈夫だよ」
 とっくに夏服になって、今はシャツにズボンという姿だから暑苦しいわけでもない。適度に着崩せば、カジュアルっぽく見えなくもないか。
 この前は病院デートだったので、今日は改めて街へと繰り出すことになっていた。とはいえ、学校が終わってからで且つ門限もあるのでたいした時間は一緒に居られないのだが、それでも、付き合い始めたのだし、こうして少しでも一緒にいる時間を作ることが大事だと思えた。
 並んで隣を歩くと、今でもまだドキドキする。付き合う前は、ここまで緊張したりしなかったのに、不思議なものだ。
「あ、そうだ。あのね、今日、話したから。祐巳さんに私たちのこと」
「そ、そう。どうだった、祐巳のやつ、何か言っていた?」
「え? あ~、うん、色々と訊かれた」
 思い出して苦笑いする。
「祐麒くんも今日、帰ったら覚悟しておいたほうがいいよ?」
「ええっ、何ソレ、祐巳のやつそんなに変なこと訊いてきたの?」
「変っていうか……まあ、色々よ、色々。あ、でも変なこと答えちゃ駄目だからね、祐麒くん!?」
「変なことって、例えばどんなこと?」
 質問を返されて、思い出すのは祐巳からの問いかけ。『ちゅーしたの?』、『告白の言葉は?』とか。
「……へ、変なことは、変なことよ!」
 また顔が熱くなりそうになって、足を速めて祐麒の前に出る。
「ちょっと待ってよ由乃さん」
「待ちません~~」
 他愛もない会話も、どこか輝いていると感じるのは恋している真っ最中だから、だろうか。そんな甘いことを考える自分自身に突っ込みを入れたくもなるが、自然と思ってしまうものは仕方がないではないか。

 そうこうしているうちに目的地に到着。
「うわ~~~、いっぱいある!」
 売り場に来て驚く。
 今日は、携帯電話を購入しに来たのだ。
 両親に話をして、部活動で出かけたりして遅くなることもあるし、連絡用に持っていたいと。さすがに祐麒のことを理由として口にすることは出来なかった。というか、まだ親に話していない。
「ふぅん、みんなスマートフォンになっているんだ」
 いまどきの女子高校生のくせに、携帯電話一つ持っていないというとなかなか信じてもらえないが、本当だから仕方がない。リリアンは携帯電話持ち込み不可だから学校内で困ることはないし、使わなければ使わないで特に不便があるわけでもない。令とはいつでも話が出来るし、友達とは学校で会えるから。
「しかし、やはりここは女子高校生として持っておくべきアイテムよね」
 実際、学校では使わずとも、家では普通に使っている子の方が圧倒的に多いのだ。
 様々なカラー、様々なデザインに目を奪われる。一応、事前にカタログなんかに目を通してはいるけれど、正直良く分からない。というか、今時どの機種を買ったところで機能的には全く問題なく、あとはデザインとかカラーの好み、あとは実際の操作性で決めれば問題なさそう。
 とゆうことで、幾つか気に入ったものを手に取って試してみる。可愛いのもいいけれど、シンプルで機能的なのも捨てがたい。
「祐麒くんは、どういうの使っているの?」
「俺? これ」
 ポケットから取り出して見せてくれたのは、もっとも有名な会社が出している機種だ。
「やっぱりこれ、いいの?」
「俺は使い慣れているってのもあるけれど、いいと思うよ」
「うーむ」
 腕を組んで考える。候補に浮かんでいるのは三つほどあり、その中には祐麒くんが持っている機種もある。
 ここはやはり。

「――決めた、やっぱり祐麒くんと同じのがいいかな……ふふっ」

 なんて、乙女なことにはならないんだな、やっぱり。
 祐麒の持っている機種を候補に入れたのは、祐麒が持っているからという理由だった。だが、実際に選ぶにあたって結局は自分の好み最優先で決めてしまった。
 パールピンクのカラーが気に入った、祐麒とは会社も異なるやつ。この辺、そういう選択をしたことをどう感じるだろうかと、ちょっとだけ思いもしたのだが。
「由乃さんらしいよ、それ選ぶんじゃないかなって思ってた」
 気になって訊いてみたら、そんな答えが返ってきた。
 由乃らしいとは、どういうことだろうか。初めから、祐麒と同じだからなんて理由で選ぶわけもないと思われていたのか。喜んでいいのやら悪いのやら、とにもかくにも由乃はそこまで乙女な気持ちを持っているわけではないのだから仕方ない。令なら、喜んで恋人と同じのを選びそうだが。
 迷って、その後に手続きをしているうちに時間が無くなり、今日はそれだけで別れて帰ってきた。
 親に買ってきた携帯を見せて、親の番号を登録して、にわかに携帯の話で盛り上がる。
「あら、『福沢』って、これ祐巳ちゃんのこと? やあねえ、お友達のこと名字だけなんて」
「あははっ、まだ使い慣れてなかったから。後で登録しなおすから」
 笑って誤魔化す。今日は祐巳と一緒に買い物に行ったことにしていたのだ。登録してあるのはもちろん、祐麒のアドレスだが、名字だけで登録しておいてとりあえず正解だった。
 部屋に戻り、適当にいじっていると、不意にメールを着信した。
「わ、きた、きた」
 送ってくる相手は一人しかいない。
 少しドキドキして確認すれば、当たり前だけれど祐麒からのメール。開いて本分を見てみると、今日の買い物のことが書かれていた。
 由乃も、慣れない指使いで返信すると、またすぐに祐麒からの返信が来た。
 そのメールを読み進め、最後の文に辿り着く。

『夏休み、受験勉強はあるけれど、良かったら色々と遊びに行こう』

 そうだ、もうすぐ夏休みなのだ。受験生とはいえ、恋人が出来て初めての夏。きっと、色々と楽しいことがあるに違いない。いや、楽しい日を二人で作るのだ。
 由乃はベッドの上で微笑みながら、返信した。
 そのまま仰向けに倒れ込み、天井を見上げながらメールの便利さを感じた。別れて、離ればなれになっているのに、こうしてコミュニケーションが出来るのだ。絵文字を使えば感情だって伝えられるし、これは楽しいかも。メール依存症になる、っていう人が出てくるのも分かる気がした。
 しばらく寝転がっていると、またしても着信。ごろりと体を反転させてうつぶせになり、枕元の携帯を取り上げてメールを開く。
「………………っ!?」
 読んで、絶句。
 楽しみに夏休みを待っている、というような文章の後、何行か空白が開けられた後に書かれていた一文。

『由乃さんと付き合うことが出来て、本当に嬉しいです。えと、メールでというのもなんですが、改めて、好きです』

「な、なななな、何考えてんのよーーーーっ!?」
 顔を赤くしながら、両足をばたばたさせて悶える。
 メールだから声は聞こえないし、顔も見えないけれど、その代わり文字は記録として残る。加えて、告白された時のことを思い出してしまい、顔だけでなく全身が熱を帯びたようになっていく。
 枕に半ば顔を埋め、もう一度液晶画面を見て。
「はぅぁ……」
 突っ伏す。
 顔を起こして文字を見る。
 目をそらす。ちらりと見る。赤面する。
「ああ、もうっ……」
 本当に馬鹿、いや嬉しいのだけれど、よくもまあこんなこっ恥ずかしいメールを送れるものだと嘆息する。どんな返信をしようか、ちょっと文句でも言うか、からかうか、むしろ笑ってしまうか。
 何度も書き直し、悩み、迷い、そして。
「こ、こんなの送れるか~~~~って、あ」
 指が滑り、送ってしまった。
「う……わ、うわっ、や、ちょ」
 慌てたところでもう遅い。
「うあぁ」
 ベッドでのたうつ。
 枕をぎゅっと抱きしめ、乱れた髪の毛を顔に張り付かせたまま、送ってしまったメールの内容を思い返し、羞恥に身悶える。
 送信トレイに残された、メールの記録。
 そこには、祐麒のメールにからかい半分の言葉で応じる内容があって。
 でも、そんな文章の最後にある一文には。

『……私も、大好きだよ』

 しかもご丁寧に、最後にはハートマークまで。
 恥ずかしい、恥ずかしすぎる。
 そうしてひとしきり一人で暴れ、疲れてぐったりとしながら腕で目を覆い隠し、呟く。

「…………あぁ、私、本当に祐麒くんのこと、好きなんだなぁ」

 この日の夜は比較的気温が低かったが、由乃の身には熱帯夜が降りかかったのであった。

 

 ――――ちなみに、もちろん祐麒も由乃からのメールを受け、甚大なるダメージを受けていた。

 

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