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エンタメ 書評

【ブックレビュー】キアズマ(著:近藤 史恵)

更新日:

【作品情報】
 作品名:キアズマ
 著者:近藤 史恵
 ページ数:301ページ
 ジャンル:エンタメ
 出版社:新潮社

 おススメ度 : ★★★★★★★★★☆
 青春スポーツ度 : ★★★★★★★★★☆
 こういう人におススメ! : 青春スポーツものが好き

 

■作品について

「サクリファイス」、「エデン」、「サヴァイヴ」と続いたシリーズ第4弾。
今回はこれまでのプロチームの話ではなく、大学の自転車部を舞台とした物語へと変わる。
新光大の新入生岸田正樹は、ひょんなことから大学の自転車部に入部することになってしまう。
今まで特に興味もなければ、そもそも部に所属するつもりもなかった正樹は、一年限りという約束で入部するのだが、才能が目覚めてめきめき実力をつけて強くなると、自転車の魅力にはまっていく。
だけど、正樹には中学時代にスポーツで辛い目に遭った過去がある。
同じようにスポーツで人を傷つけたり、自分が傷ついたりしたくない。
それでも正樹は走り続けることを選ぶのか?

<関連レビュー>
■サクリファイス
■エデン
■サヴァイヴ
■スティグマータ

■良かった点

シリーズではありますが、話は全く変わって大学の自転車部の話になります。
そして本作、今までのシリーズの中で最もスポーツ小説として読みやすく、清々しい作品に仕上がっています。

なんたって、
・主人公はロードレースの経験ゼロの素人
・自転車部員と揉めてなぜか入部することに
・素人だったけれど、今まで50キロはある”トモス”と呼ばれるバイクを自転車のようにこいで使用していたせいで脚力があった
・めきめきと実力をつけて先輩達に追いつき、追い越していく

なんてゆう展開。
あれこれ、どこかで見たことある? あ、そう、「弱虫ペダル」じゃん!
真似とかではないとは思うが、初心者や弱者が強くなっていくっていうのはスポーツものの王道ですからね、読んでいて盛り上がってこないわけがない。

だけど物語を面白くしているのは脇役が光っているから。
ヤンキーのように柄が悪いけれど、実は思いやりがあって誰よりもレースに賭けている櫻井。
怪我を負い、当分の間走れなくなったが自転車部の為に動いてバランサーの役割を果たす部長の村上。
特に櫻井がいるからこそ正樹も強くなり、走りたくなっており、櫻井の方が強烈に心に残る。

また単に成長するだけでなく、中学時代に負った心の傷や痛み、それとともに自転車とどう向き合うか。
そういう心の成長も描かれた、まさに青春スポーツ小説。

前作までよりも、読むのは間違いなく入りやすい。
ラストも良い感じ。

■ここが改善できるともっとよかったかも?

自分は経験ないからわかりませんが、初心者が本当にここまでの速度で強くなれるものでしょうか?
あまりに出来すぎじゃないかと思わなくもないけれど、エンタメ作品として読んでしまえば良いでしょう。

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