【作品情報】
作品名:追想の探偵
著者:月村 了衛
ページ数:312ページ
ジャンル:ミステリー
出版社:双葉社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
冒頭から惹きこまれる度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : 設定が秀逸な作品が好き
特撮の世界を舞台に、特撮の雑誌に掲載をする人物を探して追う物語。
殺人もないし、犯罪もない。
それでも立派なミステリー。
「人捜しの神部」の異名をとる主人公は、追うべき人を探し当てることが出来るのか。
そしてまた、探し当てた先には何があるのか。
いわゆる「日常の謎」を題材としたミステリーも世には色々と出ていますが、これまたちょっと異色。
そもそもが、「特撮」という特殊な世界に限定していて、その中で雑誌に掲載するために人を探している。
女性主人公がわずかな情報から地道に追いかけ、少しずつ求め人に近づいていく様はまさにミステリー。
いや、帯にもあるがハードボイルドでもあるのか?
それは、過酷な条件の人探しを、「それが仕事ですから」の一言だけで背負い、地を這うようにして相手を見つけ出していくからこそ送られるものだろう。
何せ特撮隆盛期である、過去作品に関わった伝説の技術者や業界人。今やどこにいったのかも分からない人ばかり。
人に話を聞いたところで、一般の有名人ではないわけで、そう簡単に分かるはずもない。
そして業界人や関係者に話しを聞き、過去の特撮映像を見て、そうしたものを積み重ねていった先に完成される絵は、当初思い描いていたモノとは違うモノだったりして、それがまた読んでいて楽しませてくれる。
作品の中では当然のように特撮に関する薀蓄などが語られたりする。
ただ、そこまで深く濃いものではないので、楽しく読めると思う。
私は特撮マニアではありませんが、特撮好きの人からするとどうなんでしょうかね、この内容は。
ただ著者である月村さんは、アニメの脚本家として活躍されていたから、この辺の業界のことも詳しいのでしょうかね。
ミステリーとしてもきっちりとしており、尚且つ内容はハートウォーミングでもある。
人も死なない、傷つくこともない、読んだ後に清々しさの残る作品だ。
また、主人公である神部の仕事に対する向かい方、考え方、姿勢などは、「お仕事小説」というものも感じさせられる。
自分だったらここまでできるだろうか? 仕事は違うものの、今の自分の仕事でここまでできるか?
自問自答してみるのもよいだろう。
いやー、月村さんて、こういうのも書けるんですね。
大きな事件やアクションは当たり前だけどありません。月村作品だけにそういうのを期待していると違います。
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