【作品情報】
作品名:オリンピックの身代金(下)
著者:奥田 英朗
ページ数:432
ジャンル:エンタメ
出版社:講談社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
読む手が止まらない度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : スリルとサスペンスに満ちたエンタメ作品を読みたい
要求金額は八千万円。
人質は東京オリンピックだ――
五輪開催を妨害すると宣言していた連続爆破事件の犯人、東大生・島崎国男が動き出した。
国家の名誉と警察の威信をかけ、島崎逮捕に死力を尽くす捜査陣。
息詰まる攻防の末、開会式当日の国立競技場を舞台に、最後の闘いが始まった!
いよいよ本格的に動き出す島崎国男。
東京オリンピック開催など、底辺で働く人たちを人柱にしたものでしかない。
そうして東京オリンピックの妨害を目指す。
この下巻に入って一気に、テロを企み逃げる犯罪者vs追いかける警察
という構造でスピーディに、事件が展開していく。
追うもの、追われるもの、それぞれが知恵を活かし、人脈を活かし、運を味方につけ、走り回る。
現代は情報化でSNSなども発展して色々と逃げるのも大変だとは思うが、逆に逃亡者側からしたら情報が入らないという欠点もある。
当時に日本の状況、東京オリンピック開催という状況を活かした逃亡劇であり、追跡劇でもある。
東京オリンピックは何事もなく無事に開催されているわけで、国男の企みが失敗に終わるのは分かっている。
だというのに、読み手とすると、なんとか国男に頑張ってもらいたいと思う心理にもなるのが不思議なところ。
ただの悪逆な犯罪者でもなければ、愉快犯でもない。
今の日本に違和を覚えて、何か行動をしなければと思い、自分の命に無頓着。
そんな国男だから、なのだろうか。
だからといってテロが許されるものではないし、犯罪を許容するものではない。
スリの村田を仲間にして、警察の手をかいくぐり、いよいよオリンピック開催当日。
どのような形で失敗するのか、国男と村田はどういう結末を迎えるのか。
それが気になって、読む手が止まらなくなるのが下巻。
誰に気づかれることもなく終わった反逆。
うーん、読ませてくれた。
主人公の考えに共感できるかといえばそういうわけではなく、むしろなぜそんな行動にはしってしまったのかと思う。
それでも、読ませられるんだな。