【作品情報】
作品名:罪と祈り
著者:貫井徳郎
ページ数:472
ジャンル:エンタメ、ミステリー
出版社:実業之日本社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
救われない物語度 : ★★★★★★★★★☆
こういう人におススメ! : 現在と過去を行き来して真実に到達する物語が好き
亮輔の父で元警察官の辰司が隅田川で死体で発見される。
当初は事故と思われたが、側頭部に殴られた痕がみつかった。
真面目な父親が人から殺されるような恨みや過去があったのか。
亮輔はその疑問から、父親について実はよく知らないことを思い知らされ、父の過去を調べるようになる。
幼馴染みである刑事の賢剛とともに事件を、そして父の過去を追いかけるうちに、賢剛の父親の自殺に繋がりがあるのではないかと疑いを覚え始める。
やがて見えてくる真実とは?
元警察官の父親が死んだ。
真面目で尊敬できる父親だと信じていたが、事故ではなく殺人事件の様相を呈したことで、父親の過去に何かあったのではないかと父の過去を追いかけ始める亮輔。
そこで見えてくるのは、幼馴染であり親友である賢剛の父親の自殺。
賢剛の父・智士の自殺を機に父の様子が変わったということを聞き、そこに何かあるのかと考える。
そこから見えて来たのが、過去に発生した未解決の幼児誘拐事件。
現在の事件と過去の事件が交錯して真実が見えてくる。
この手法自体は決して珍しいものではないけれど、話が進むにつれてどんどん引き込まれていくのはさすが貫井さん。
それだけのものを書き込んでいる。
現在の章では亮輔と賢剛が。
そして過去の章では二人の父親である辰司と智士が。
それぞれの視点で交互に物語が描かれていき、何が起きたのか分かる。
過去はまさにバブルの時代。
その時代だからこそ起きた熱狂。
人を狂わせるものはいつもお金か。そして、犠牲になる人がいて、どうにもできない現実があって。
バブルではない今でも、違う観点では同じようなことがあるのだろう。
そういう時に何を思い、行動するか。
狂った時代だったからこそ、二人の父親はあのような行動に出てしまったのか。
どう考えても幸せな結末など訪れるはずもない物語。
救いのないラストは、貫井さんらしい。
色々と突っ込まれていますが、やはり事件の動機。
そこまでするほどの動機なのかと、冷静な読み手としてそう思うのは当然のこと。
一方で、何かに突き動かされて流されてしまったのではないか、とも思える。