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エンタメ 書評

【ブックレビュー】タスキメシ(著:額賀 澪)

更新日:

【作品情報】
 作品名:タスキメシ
 著者:額賀 澪
 ページ数:301
 ジャンル:エンタメ
 出版社:小学館

 おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
 料理美味そう度 : ★★★★★★★★☆☆
 こういう人におススメ! : 青春スポーツものが好き

 

■作品について

陸上の長距離選手として将来を嘱望されていた早馬だったが、膝に怪我を負ってリハビリ中だった。
高校最後の大会には間に合わないかもしれない。このまま陸上を続けるのか。
揺れる早馬は、担任教師のはからいで料理研究部の都と出会い、料理にはまっていく。
早馬を追いかける弟の春馬、部活の仲間で良いライバルでもある助川、周囲との温度差を感じながら、やがて早馬は陸上に戻ることを諦め引退を決意するのだが。

駅伝と料理。
熱く、ちょっと切ない青春スポーツ小説。

■良かった点

まずですね、作品内で描かれている料理が美味しそうですね!
アスパラはね、確かに新鮮なやつは、ただフライパンで炒めただけで美味しいですよね!
スポーツには料理、栄養管理など大事ですから、スポーツ×料理はアリ。
だけど、料理をメインにした作品ではなく、料理はあくまでスパイスです。
この作品の本質は、陸上の長距離に賭けてきた青年の挫折、ほろ苦い思いを描いたものであり、そんな彼と周囲の人間の物語。
1学年下の弟との兄弟の関係を描いたものであり、同学年の友の思い、料理研究部の都の思い。
それぞれがそれぞれの思いを抱え、早馬という男を中心としながら揺れ動き、葛藤し、それでも進んでいく。
そういう姿を描いた青春スポーツものだ。

綺麗なことばかりではない。
嫉妬であったり、格好つけたい思いだったり、怖いと思う気持ちだったり。
青春スポーツものだけど、熱血スポ根というよりは、人と人の関わりを描き、そうした中で登場人物は心が成長し、それぞれの思いを胸に進んでいく物語。
過剰に燃え上がるわけではないし、奇跡が起きるわけではない。
だからといって悲壮感に溢れているほどでもない。
スポーツをするものなら、きっと多くの人が経験するような道。
それを装飾華美にならず、かといって平坦過ぎない文章が読みやすい。

最後、ハッピーエンドかどうかは分からないけれど、早馬が下した決断は良かったのだと思う。
本人がそう言っているのだから、きっとそうなのだ。
ほろ苦いけれど、爽やかな読後感。

良いですね。
特に早馬と春馬の兄弟関係。二人とも互いのことが大好きなんだなぁ。

■ここが改善できるともっとよかったかも?

視点が変わるのは別に悪くないけれど、色々と変わりすぎというのはあるかもしれない。
あと、実際に走るシーンは少ないので、そこで盛り上がることが無いのはちょっと寂しい。
スポーツより、青春・心の動きに重きを置いたからなんでしょうけど。

 

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