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ギャグ・その他 マリア様がみてる

【マリみてSS(色々)】パラレル オルタネイティヴ 8.望みと不安と

更新日:

 

~ パラレル オルタネイティヴ ~

 

8.望みと不安と

 

 

11月1日~

 

 訓練は連日、続けられている。
 A-01部隊も、ほぼ完成品となった新OSを搭載した機体での訓練を本日より開始し、新たな機動概念を体に叩きつけている真っ最中である。
 非常に繊細に反応する機体に、A-01の面々も当初は戸惑い、最初は歩くのも苦労するといったところだったが、そこはさすがに精鋭部隊でもある。すぐに操作に慣れ初め、そして新OSの恩恵を自らの身で実感するようになり始めている。
 飲み込みという点では、まだ戦術機操作に慣れ切っておらず変にクセのついていない茜や晴子といった新任達の方が、新たな概念を取り入れやすかったようだ。逆にみちるや水月といった、現在の戦術機に慣れている者の方が、従来の操縦に慣れているため意外と苦戦していた。
 そんな中で最も新OSを使いこなしているのは、築地だった。築地の戦術機の機動は、無軌道で、無鉄砲で、無茶苦茶に見えるけれど、キャンセルや先行入力を生かしてその時々の判断で動いているということが分かる。無駄が多いことも確かだが、まるで小動物のように動き回る様は、ある意味天性のものなのかもしれず、武や祐麒の機動よりも先が読めないかもしれない。
「くぅ~~っ、反応が鋭すぎよ、これっ!」
 水月の怒りとも悔しさともとれる声が聞こえてくる。相変わらず苦戦しているようであるが、おそらくそれも最初だけのこと。これまでに新OS換装前の機体で訓練を行ってきたが、水月の腕前はエースと呼ばれるに足るだけのものはあり、すぐに誰よりも使いこなせるようになるだろうと祐麒は思っていた。
 他のメンバーも多少のばらつきはあるが、順調に機体を動かせるようになっている。
 ある程度慣れたところで、二組に分かれて模擬戦闘を行ってみたが、どうしても従来の動きや戦術にとらわれてしまうところ、築地の破天荒な動きに目を奪われ水月が大破を受けるなんてことにもなった。
 その一事だけでも、A-01のメンバーにとって新OSの性能を実感するには充分だった。偶然の要素が多分にあったとはいえ、築地が一対一で水月に勝ってみせるなど以前までなら考えられないことだからだ。
「ふむ。今の内なら速瀬中尉でもボコボコにやっつけられる、今のうちに普段の恨みを晴らしてしまいましょう」
「宗像、アンタそんなことを考えていたの!?」
「……と、麻倉が言っていましたが、いかがいたしましょうか」
「ふふふ、締めたるわ」
「あ、あたし、そんなこと言ってませんっ!?」
 適度な緊張感をもって訓練は続く。
 祐麒は彼女達を均等に指導しようと思いつつも、どうしても祥子と乃梨子の二人に目が行きがちになってしまう。
 祥子も乃梨子も新OSには苦戦しながら確実に上達はしている。祥子の方が思考の柔軟性では劣るが、戦術機の操作といった点では上回るから結果としてほぼ同等レベルには至っている。贔屓をしてはいけないと分かっているが、どうしても心情的に二人に優先的に生き残って欲しいと思うのは仕方ない所だろう。例え、相手が祐麒のことを覚えてないとしても、である。
 彼女達が成長していくのを実感しつつ、果たしてこれだけでいいのだろうかと自問しながら日は過ぎてゆく。確かに、新OSを使いこなせれば生き残れる確率は随分と上がるだろうが、それだけでBETAを全滅させられるわけではない。やはり、ハイヴそのものを確実に壊滅させられる何かが必要になる。
 その鍵を握るのが『オルタネイティヴ4』なのだろうが、その研究はどうすれば上手くいくのか、それはまだ分かっていない。そもそもどのような計画かも夕呼からまだ教えてもらえてはいない状況で、このまま放置して進めばおそらく計画は挫折する。それをどうにかする必要があり、そのために祐麒や武は動いているのだが。
 悩んだところで時間が止まってくれるわけでもなく、ひたすら訓練に明け暮れる。
 武の方も、入院していたメンバーが復帰してようやく全員揃ったと気合いを入れている。この先、順調にいけば11月の後半に総合戦技演習があるはずだが、少しでも早めてさっさと戦術機訓練に移行させるつもりだと武は息巻いていた。

「福沢~」
 気怠い声に振り向くと、声に合わせたかのように気怠い歩調で歩いてくる江利子の姿が見えた。
「江利子先生」
「だから、私はあなたの先生じゃないってのに」
「はは、すみません、どうしても」
 ここにいる江利子は元の世界にいた江利子ほどに気さくではないが、それでもどこか話しやすい雰囲気を持っていた。それはおそらく、江利子自身が祐麒に対して興味を持っているからだろう。
「だって、あんな訳のわかんないこと思いつくんだもの、相当の変人よね」
 とは、以前に提案した装備を作りながら江利子が放った一言。
「できそうですか?」
「ん~、どうかしらね~、正直なところ相当に難しいわね。強度やバランスもあるし、戦術機自体にもダメージは発生するでしょうし、まだまだ課題は多いから」
 はふぅ、とダルそうな息を吐き出して髪の毛を無造作にかきあげる江利子。
「あの、無理しなくていいですよ? 俺だって、実戦で本当に有効か分からずに提案したんで」
 さすがに『面白そうだから』という理由を告げるのは憚られ、控え目に言ったのだが、それを聞いて逆に江利子は目を輝かせた。
「何言ってるの、絶対に作ってみせるわよ、こんな面白いモノ! わざわざ引き抜かれてやって来たって甲斐があるものよ、あんなアホみたいな装備を発案できる人間がいるなんて、世の中分からないものよね」
 本気で楽しそうに目をキラキラ輝かせている。
 なんでもできてしまう優秀さゆえに、大抵のことには本気になれなかったはずの江利子だが、この世界では絶望的な状況が逆に彼女のやる気を引き起こしているらしい。確かに、今の世界は一人の天才がどうこうしたところで簡単に情勢をひっくり返せるようなものではないだろうが。
 しかし、こうもマッドサイエンティストっぷりが嵌るとそれはそれで怖く、祐麒はさっさと江利子の前から逃げようとした。
「とーこーろーでー福沢?」
「は、はい?」
 去る前に肩を掴まれ歩みを止められる。
「どう、A01メンバーの中で誰が好みなの、っつか誰に手ぇ出したの?」
「はぁ!? そ、そんなことしてませんよっ」
「はぁ? それこそありえないでしょ、あんだけのメンバーに囲まれて、もう2、3人とはヤッてんでしょ? ヤッてないとしたら、アンタ不能?」
「ち、違いますっ! そんなことしてる暇ないですし、大体、そういうことで部隊の和が乱れでもしたらどうするんですか」
「真面目ねぇ……じゃあ、私とする? 私とだったらそういう心配いらないし、私もストレス発散したいし」
 言いながら江利子は背後から抱きつくようにして、その豊満な胸をグイグイと押し付けてくる。
 からかわれているだけなのか本気なのか判断がつかないが、どうやらこの世界の江利子は随分と開けっぴろげであることは確かなようだ。
 江利子の手が体の前にまわり、胸のあたりをさすってくる。熱い吐息が首筋をくすぐり、柔らかな感触がこれでもかと伝わってくる。このままでは前傾姿勢になるのも時間の問題と危機感を抱いたその時。
「――何をしているんですか、鳥居少佐、福沢大尉」
 クールな声が聞こえて顔をあげると。
「むっ……宗像中尉!」
 どこか硬い表情で見つめてきている美冴がいた。
「あら宗像、どうしたの……って、ああ、嫉妬?」
「そんなんじゃありません」
「確か福沢のタイプが宗像だっだのよね、あー、だから焼きもちか、可愛いわね」
「だから、別にそんなのではありません。ただ、ここは公共の場ですから、基地内の風紀を考えると」
「あらあら、『気持ち良ければ何でもいい』っていう宗像とは思えない台詞ね」
「それとこれとは……」
「あぁ、なんなら私は宗像が一緒でもいいわよ、三人でする? あ、風間も一緒に四人で楽しみましょうか?」
 よく見ると美冴の後ろに祷子も立っており、そちらにも視線を向けて江利子は妖艶な微笑みを浮かべる。
 美冴、祷子、ともにさっと頬に朱が差し、何か言おうと口を開こうとして。
「――なんてね、冗談よ。それじゃあね~」
 不意に密着していた肌が離れたかと思うと、手をひらひらと振って江利子は廊下を滑るように歩いて去って行ってしまった。
 残されたのは、呆気にとられている三人。
「え、えーと、宗像中尉」
 とりあえず何か言わねばと思う祐麒だが、何を言えばよいのか分からない。美冴も同様のようだったが、それでもどうにか平静な口調で言ってきた。
「福沢大尉、とにかく、そういうことをするなら誰にも見られないような場でして下さい。祷子、行こう」
 厳しい表情をして祐麒とすれ違う美冴、そして後に続く祷子。
 二人の気配が完全に消えてしばらくしたところで、ようやく祐麒は体から力を抜いてその場にしゃがみ込んだ。
「あぁもう、なんでこんなに余計なことで疲れなくちゃいけないんだよ……」
 女性だけの部隊、一癖も二癖もある隊員たち、加えて江利子の登場だ。場が掻き回されない方がおかしい。
 BETAとの戦いは予断を許さず余裕などないはずなのに、人間というのは厄介なものだと弱々しい息を吐き出す祐麒であった。

 

11月8日

 

 朝、目が覚めた後、大事なことを思い出した祐麒は、朝食をとる時間も惜しんで夕呼の部屋へと向かっていた。
「――――よう、祐麒か」
 ところが夕呼の執務室には先客がいた。
「武?」
「どうしたの、福沢まで血相を変えてやってきて」
 ちらりと武を見れば実に真剣な表情をしており、その顔を見て確信した。武も祐麒も同じことを考えてやって来たのだということを。二人は頷き合い、どちらからともなく口を開いた。
「……新潟にBETAが上陸する?」
 頬杖をつき、怪訝そうな表情で見返してくる夕呼。
 やはり、武と祐麒が進言した内容は同じであった。
 前の世界の記憶が確かならば、あと数日後にBETAが新潟に上陸するはず。BETAの動きに関しては予知、予測することは不可能事であり、そのBETAの動きを日時と場所のピンポイントで当てることができれば、祐麒や武が一度経験してきた世界であることの有力な証明になる。
 それに何より、あらかじめ分かっているのであれば迎撃態勢を敷くこともたやすく、被害を最小限に抑えることが可能になるはずなのだ。だから祐麒は、こうして夕呼のもとへとやって来た。
「で、それを証明する手立ては?」
 あくまで冷静な瞳で見つめ返してくる夕呼に、思わず怯みそうになる。
「白銀と福沢、アンタ達二人の夢とも幻ともいえない話を信じろというの? 無茶を言わないでちょうだい」
「でも夕呼先生、放置していたら確実にBETAはやってきて、無駄な被害が出ることになるんですよ!? 前回の時は、なんとか撃退することができたけれど、来ると分かっていればもっと楽に勝てるはずなんだ」
「だから、どうやって軍を動かすっていうの? あたしだけなら、アンタ達の話しに乗ってやってもいいけれど、軍隊を動かすってのはそんな簡単な事じゃないのよ」
 言われてみれば当たり前のこと、祐麒と武はBETAが来ると分かっているが、他の人間はたわごととしか聞かないだろう。夕呼に話せばどうにかなると勝手に思い込んでいたが、夕呼だってそこまで権力を持っているわけがない。
「それじゃあ、まざまざと指を咥えて見ているしかないってのかよ……!」
 拳を握りしめ、身を震わせる武。
 気持ちは祐麒だって同じである。
 未来を知っていれば歴史を変えられるなんて思っても、一兵士が出来ることなどたかが知れているのだ。人を動かすには、ただの兵士でいるだけでは駄目なのだ。力を得ないことには、世界など変えられない。
 結局、失意のまま訓練へと戻る武と祐麒だったが、事態が変わったのは夕方になってからだった。迎えに来た霞とともに夕呼の執務室に入ると、夕呼は一心不乱にキーボードを叩いていた。声をかけても気付かず、仕方なく二十分ほど待ったところで肩をほぐした夕呼の視線が動き、ようやく祐麒が室内にいることを認めた。
「ああ、来たわね福沢。あんたと白銀が今朝、言っていたことは本当なんでしょうね」
 くるりと椅子ごと振り返り、待たせたなんて思いは全くないのだろう、前置きもなく告げてきた。
「え? ええ、まあおそらく。この世界が、前と同じならば」
「何よ、急に自信がなくなったの? まあいいわ、アンタの望み、聞いてあげる」
「え、それって」
「新潟、行かせてあげるわ」
 朝との変わりように、さすがに訝しがっていると。
「行きたくないの? それならそれでも構わないけれど」
「いえ、そうじゃなくて、なんで俺が行くんですか?」
「別にアンタ個人を行かせるわけじゃないわ、ヴァルキリーズとして行かせるのよ」
「それにしても、朝はあんなにアッサリと駄目だししていましたよね」
「そりゃ、言われていきなりなんでもかんでも出来るわけないでしょ。今日の間にいくつか働きかけて、近くで実機演習を行う方向でねじ込んだのよ。これで本当にBETAが現れたら素早く防衛線を敷くことができるし、福沢たちの言うことの信頼性も高まる。外れたとして、演習を行うことはマイナスにならないでしょ。福沢も含めて初めてのヴァルキリーズの出撃ということで」
 夕呼は実に簡潔に話してくれたが、おそらく実際にはもっと多くの思惑や政治的判断、駆け引きなどが行われていたのだろう。それでも、こうして出来うる限りの対策をとってくれていることに、改めて感謝の思いが浮かんでくる。物事を簡単に決めつけてはいけないと、自分自身を戒める。
 ヴァルキリーズが出撃することになったのは想定外だが、それでも新OSを搭載した戦術機ならば不安はかなり減じることができるだろう。ヴァルキリーズの面々も、既に新OSでの各種行動、戦闘について問題ないレベルにまで上がってきている。
「何言ってるの、今回の出撃は現OSよ」
「……え? なんでですか」
「まだ新OSを実機に入れての調整、訓練も行っていないから物理的に無理。それに、新OSはもっと違う場で、違う形で見せるからよ」
 夕呼の言うことはもっともだったが、完全に新OSに慣れきっており、新OSで出撃するものだとばかり思っていただけに、ショックだった。となると、旧OSでBETAと対峙しなければならず、新OSに慣れた体で上手く扱えるだろうかと不安になってくる。
「今回出撃するのは、ヴァルキリーズだけですか?」
「白銀のことを聞いているの? 白銀達はまだ訓練兵なのよ、出せるわけないでしょう」
 武の援護も期待できないということだ。
 だが、その程度のことはたいしたことではなかった。
「今のヴァルキリーズの面子で出撃するのは初めてだから、うまいことやりなさいよ」
「え? それって、俺が入って初めてってことでは……」
「涼宮妹達の新任少尉は、配属されてまだ間もない。今回が、初の実戦よ」
 夕呼のこの一言が、今回の出撃の難度を祐麒に悟らせる。
「…………『死の八分』…………」
 シミュレータでの訓練と、本物のBETAを前にしての実戦では、訳が違う。特に初めて戦場に立つ衛士にとっては、例えどれだけ優秀な者でもほとんど成果をあげることなど出来ず、生きて帰ることこそが成果といえる。
 茜、晴子、多恵、麻倉、高原、そして祥子と乃梨子。
 メンバーの半数以上が初めての戦場ということになる。
 いや、祐麒だってこの世界に置いては初めて生の戦場に身を晒すことになるのだ。脳裏をよぎるのは前の世界で、目の前でBETAに喰われていき、救うことの出来なかった数々の戦友たち。
「マジかよ……」
 思わず、正直に呻いてしまう。
「マジよマジ、大マジ。福沢アンタね、世界を救いたいんなら、これくらいちゃちゃっとやっちゃいなさいよ」
 気楽に言ってくれるものであるが、夕呼が裏で苦心して無理くりにねじ込んでくれたのも確かであろう。これに応えなければ、男じゃない。
「そうですね、分かりました、ちゃっちゃとやっつけて戻ってきますよ。誰一人、犠牲を出さずに」
 戦争である限り、一人の犠牲者も出さないなんてことは不可能だ。だが、自分のごく近くの、ヴァルキリーズの面々だけは必ず全員、生きて返させることを心に誓う。
「後は伊隅と話して決めて頂戴」
 すべて話し終えたとばかりに、すぐにデスクへと向き直る夕呼。既に、祐麒などこの部屋にいないかのごとく執務に戻っている。
「…………っと」
 手に温かな感触を受けて下を向くと、霞が心配そうな顔をして見上げてきていた。
「戦いに……行くんですか?」
 問いかけに、祐麒はしゃがみ込んで霞と目線をあわせ、にっこり笑う。
「大丈夫、俺は強いからね、無事に戻ってくるから」
 そう言い、霞の頭を撫でる。
 僅かに、霞の頬が赤くなる。
「福沢ってやっぱり、幼女趣味?」
「違いますよっ」
 これ以上、夕呼の執務室にいても仕方がないので外に出て自室に向かいながら考える。新OSも使用できない中、新人衛士ばかりの部隊でどのようにすれば生きて帰ることができるのか。
 簡単に答えが出てくるものではなかった。自室へと足を向けた祐麒だったが、途中で方向を変え、武の部屋を訪れた。武も気にしていたことだし、安心させるためにも伝えておこうと思ったのだ。もちろん、本来ならば秘匿事項ではあるのだが、武ならば余計なことを他人に口走ることもないだろう。
「――そっか、夕呼先生、なんだかんだで動いてくれたんだ」
 話しを伝えると、武は安堵したように大きく息を吐き出した。
「祐麒も出るってことか。死ぬなよ、おい」
「当たり前だろ、縁起でもないこと言うな」
 軽く拳をぶつけあい、互いに不敵に笑う。この男に対して無様な姿を見せられなという、そんな思いが先ほどまでの不安を凌駕する。
 伝えるべきことは伝え、辞去しようと立ち上がる祐麒だったが、武の声が呼び止める。
「なあ、祐麒。今まであえて聞かないようにしていたんだが、ヴァルキリーズにはどんな奴が所属しているんだ?」
 真剣な表情で問いかけてくる武を見て、考えていることを察する。戦場に出るということは、死と隣り合わせだ。武は今、平和な世界で友人だった連中とともに訓練兵として励んでいるが、クラスメイトや知り合いが他にいないわけがない。
 祐麒は再度、椅子に腰を下ろしてヴァルキリーズの面々を一人ずつ教える。
「…………そうか、柏木に涼宮……あいつらもやっぱり、こっちにいたのか」
 武が知っていたのは他に麻倉と高原と築地。特に晴子については同じクラスであり、他の四人よりかは親しかったようだ。
「俺が戦ってきた前の世界では、柏木たちの名前は聞かなかった。たまたま会わなかっただけかもしれないが……」
 言おうとしていることは分かる。そして、おそらくそちらの方が正しいのだろう。彼女達は、武に存在を知られることもなく死んでいったのだ。
「大丈夫だ武。柏木さん達は、必ず俺が誰一人欠けることなく生きて帰らせる」
 祐麒の言葉に、ハッと顔をあげる武。
「だから武は気にすることなく、さっさと総合戦技演習をクリアして、俺に仲間達を紹介してくれ」
 BETAの新潟上陸を無事に阻止できた後には、武たちは総合戦技演習に入ることになっている。前の世界より日程が早めなのは、早い所戦術機訓練に入り実戦突入したいからだ。
「……ああ、そうだな。会ったらお前、きっとびっくりするぞ」
「なんだ、そんなに美少女揃いなのか?」
 軽口を叩くと。
「いや……髪に…………」
「は?」
 武のその言葉を祐麒が理解するのは、まだしばらく先のことであった。

 

次に続く

 

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