書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(色々)】パラレル オルタネイティヴ 9.出撃・新潟防衛線

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~ パラレル オルタネイティヴ ~

 

intermission.白銀武-01

 

 

 白銀武は確かな手応えと不安を両手に抱えながら日々を送っていた。確かな手応えとはもちろん、BETAの脅威からこの世界を救うための方策のこと。新OSの開発や新たな武器の開発、仲間たちの早い成長に、そしてなんといっても祐麒という存在。不安はといえば、本当にこのままで世界を救うことが出来るのだろうかというものだが、元来が楽天的で前向きな武のため、普段はそこまで不安になることはない。だが、ふとしたときにやはり思ってしまうのだ、あの未来を避けることが出来るのかと。
 前の世界のような結末は本当にもうごめんだった。武自身は、当初は別世界であることを理解できず、軍に入ってからも皆の足を引っ張ってばかりで何もできないまま「あの日」を迎え、オルタネイティヴ5が発動された。
 地球に残された武達の小隊の面々は、その後BETAとの戦いに臨み、「死の八分」を潜り抜けてBETAとの戦いに明け暮れた。鍛えられ、さらに個々が特定方面で特異な才能を持った小隊のメンバーはBETAとの戦いでも活躍し、微力ながらも人類を護るため奮戦した。
 だが、BETAの最大の脅威は尽きることなきその量である。対して武達は、機体が損傷すれば修理が必要でその必要なパーツも技師も減る一方だし、衛士が死ねばその補充はそう簡単にできるものではない。
 1小隊でできることなどたかがしれているし、その出来ることだって、様々な支援があってこそ力を発揮できるというもの。支援が少なくなっていくと自分達でどうにかしなければならず、やることは増える。様々なしわ寄せが押して出撃の回数が増え、休める時間は減るばかり。疲労が回復せずに溜まっていけば、やがて集中力を欠き判断力も落ちる。
 そうして一人が犠牲となると、そこからはずるずると一人、また一人と生命を失っていった。前線に復帰して奮闘していたまりもも死に、とうとう残されたのは武一人。
 護るものを失った武は徐々に戦意を失い、惰性に近い形で戦い続けていた。それでも身についた戦闘技能、そして死にたくないという人としての本能により戦果をあげてはいたが。

 それでも戦い続けているうちに当然のように訪れた死、そして新たなる目覚め。
 オルタネイティヴ5が発動されて以降の記憶は靄が掛かったようにぼんやりとしていたが、それでも記憶が、そして鍛えられた肉体が前の世界から継続していることを知り、今度こそやってやろうと思った。
 だが、どうすればよいのか。前と同じ事をしていても駄目だというのは明らかだが、大幅に違うことをして歴史が大きく変わってしまってもまずい気がする。指針としては、必要なときに行動を変化させてよりよい方向へと導いていくこととした。必要なときとはいつなのか、よい方向とはどっちなのか、その辺の正解は分からないので、自分の考えと勘に頼らざるを得ないところではあるが。
 そんな武の考えであったが、それもこの世界でリスタートしてすぐに変えさせられることとなる。
 それが祐麒の存在である。
 まさか武と同じように時間を遡ってやり直しをしている人物がいるなど、想像の範疇外だった。祐麒という新たな因子を得て、新OSの開発や訓練内容の変更など、前の世界では出来なかったことを色々と出来てはいるが、逆に言えば大きく変わってしまっているわけでもある。武が出会ったこともない新たな人物も出現しているし、現時点で大筋は変わっていないとはいえこの先どうなるのか全く予測はつかなくなってしまった。
 だが、ここまできたらむしろ考えを大きく変えたほうが良いのかもしれないとも思うようになっていた。滅亡する世界を救うのだから、これくらいの変化がないとうまい方向には転がっていかないのではないかと。
 実際、祐麒がいることによって二人は分担して事に当たることができてもいる。武は冥夜達訓練生を鍛え上げ、祐麒は新兵器開発と練成をすることで未来に備える。もちろん、オルタネイティヴ4を完成させることが絶対条件なのだが、武にとっては自分の大事な仲間が死んでしまっては負けにも等しいのだ。だから、皆が生き残るための力をつけることに精力を注げるのは願ったりである。
 祐麒がいるおかげで補い合うことも出来るし、夕呼に対して説得力を増すことも出来る。それに祐麒であれば武との二機連携も出来る。逆も然り。前の世界では、まりもが死んだ後は武と連携できる腕の持ち主が身近におらず、単機での活動を余儀なくされたが、祐麒なら全く問題ない。
 戦術的な優位、勝利というものも戦略を立てる上での要素になってくるし、自分を、味方を生き残らせるためには重要である。能力的なものに加えて、同じような立場にあることで精神的にも余裕が持てるだろう。
 その祐麒が、この世界においてまず武に先んじて新潟へのBETA上陸防衛線を築くため実戦の戦場へと出る。おまけに同じ戦場には柏木晴子や涼宮茜なども出るという。
 前の世界では出会うことの出来なかった彼女達、もしかしたらこれから向かう戦いで命を落としていたのかもしれないが、今回は違う。祐麒がいるならば、むざむざと死なせるようなことはないだろう。

「――どうした、武?」
 夜のグラウンドに一人佇んでいると、後ろから声をかけられた。
「ん? ああ、冥夜か。いや、別に」
 同じ訓練生として練磨している御剣冥夜が、夜の自主訓練のためにやってきたようだ。
「そうか。しかし、お主は本当に不思議な男だな。本来なら私達と同じ訓練生などという立場にいるべきではないのではないか?」
「それを言うなら冥夜、お前たちだって同じなんだぜ。さっさと実機訓練に入れるように頑張ってこうぜ」
「ああ、無論だ。言われるまでもない」
 武が入ったことにより、冥夜達の力もぐんぐんと上がっているし、前回の世界で生じた問題課題も早め早めに解決できている。この分なら総合戦技演習を早めに実施しても問題なく卒業できるだろう。そこからが本当の勝負だ。
 良い方向への変化は確実に訪れている。それを加速させてゆくのだ。
 皆となら、祐麒となら、きっと出来るはず。
 この世界にやってきた初日、武は確実に聞いたと感じたのだ。
 夕呼の部屋に現れた祐麒に、変化の足音というものを。

 

9.出撃・新潟防衛線

 

 

11月11日

 

 果たして夕呼がどのような手練手管を使ったのかは分からないが、祐麒を含むA-01部隊は新潟へと送り出されていた。名目上は帝国軍と合同の実弾防衛演習とのことだが、そうでないことを知っているのは祐麒と部隊長である伊隅みちるの二名だけであろう。
 他のメンバーについては、それぞれがどのような思いを持っているかは分からないが、表面上は大人しくしている。
『演習っていうけれど、これってなんなのかしらねー。福沢ぁ、アンタ何か知っているんじゃないの?』
「速瀬中尉、俺だって上からの命令でやってきているだけですよ」
 動物的勘だろうか、水月が突然の指令に疑問を抱いて質問してくるが、事実を口にするわけにもいかず適当に誤魔化す。
 水月を始め、宗像らの専任については大きな不安はないが、やはり晴子達そして祥子や乃梨子といった実戦経験のない者達のことが心配である。彼女達は今回の演習が嘘だなどと思っておらず、緊張感の中にも余裕というか油断のようなものが感じられ、特に不安に駆られる。
 実践を知ったうえでの余裕なら良いが、実践を知らない身での余裕は単に心構えが出来ていないだけとも捉えられる。いくら優秀でも、初めての実戦ではその実力の一割だって出せるかはあやしいものなのだ、それは祐麒も身を持って知っている。
 誰一人死なせない。
 口で言うだけなら簡単なことだが、戦場において実践するのは困難この上ない。近くにいるならまだしも、作戦行動で離れてしまったり、乱戦の中で見失ったりしてしまえば手の出しようもなくなる。そうならないよう部隊の行動をある程度コントロールしていく必要もあるが、部隊長でもない祐麒にそのような権限はない。ただ幸いなことに、ある程度の自由な行動は許されているため、戦況に応じて臨機応変に対処してゆくことはできる。むしろ、それしか出来ないというべきか。
 問題が他にもあるとすれば、戦術機に搭載されているOSが旧OSということだろう。今まで、シミュレータで新OSでの機動に慣れてしまっており、そのつもりで動かそうとすると痛い目にあいかねないから細心の注意を払う必要がある。隊員達も、祐麒ほどの期間ではないが新OSに馴染んでいるため、警戒させる必要がある。

「おい、みんな……」
『演習とはいえ、帝国軍には負けていられないわ。私達の実力を見せてあげるんだから』
『ちょっと茜、気負いすぎ。大体、私達だけで演習するわけじゃないし、スタンドプレイは全体を乱すことにもなるんだからね』
『分かってるわよ、千里。でも、その中でもヴァルキリーズの存在感を』
『あ、もしかして茜ったら、誰かさんに良い所を見せたいとか思ってるんじゃない?』
『はぁ? ちょっと晴子、変なこと言わないでよ。誰があんな奴』
『あれ、私は"誰かさん"としか言ってないけれど、誰か思い浮かべるような人がいたって言うこと?』
『うええぇっ!? あ、茜ちゃんっ、そんな人がいるだか!?』
 しかし、突如として始まってしまった女子のお喋りになかなか入っていくきっかけをつかめないでいる。
 緊張感が和らいで力が抜けるならば良いが、ここは引き締めるところだ。女子のお喋りがどうだとか言っている場合ではない。
「みんな、いい加減に――」
 しかし、言いかけた祐麒の言葉を掻き消すような通信が入る。
『こちらCP、帝国軍より緊急入電です!』
 遥から、緊張感を伴った声が発せられる。
 来たか、と祐麒は内心で身構える。
 先ほどまでお喋りに興じていたメンバーも、黙ってはいるがどこか落ち着かない感じがしているのが伝わってくる。遥の声がそれだけ切羽詰まったものだということを、誰もが感じていたからだ。
『―――ヴァルキリー01よりCP、何が起きた?』
『―――CPよりA-01部隊へ、0618時、佐渡島ハイヴより旅団規模のBETA群の南下を確認。偵察衛星、海底ソナー双方で確認されたようです』
 誰かが息をのむのが伝わってきた。
『嘘……』
『――え、演習じゃあ、ないの?』
 そのような声も聞こえてきた。
 恐らく、声を発していない者、表情に出さない者も内心は似たようなものだろう。本当の意味で落ち着いているのはみちるくらいだ。
『ヴァルキリー01よりCP。BETA群の予想上陸地点は?』
『CPよりヴァルキリー01、現況下での上陸予測地点は旧三条市北西部に位置する弥彦山付近です。しかし、現在第一海上防衛線に於いて帝国海軍駆逐艦隊が海底を進攻中のBETA群に対し、爆雷攻撃を実施している為、BETA群は旧三島郡から旧新潟市に掛けて分散すると予測されます』
 CPからの言葉を耳にして、祐麒の中から沸々と熱く沸き上がってくるものがある。いよいよ、訓練ではない真の実戦へ突入してゆくという緊張感と高揚感。BETAとの戦端を開き、おそらく勇敢に戦っているであろう帝国軍の姿を想起して、心の中のどこかにあったスイッチが押されるのを確かに感じた。
『BETA…………っっ!』
 何より、耳に届いた祥子の唸るような声に、部隊の仲間達の姿に、戦士としての心が蘇ってくる。
「ヴァルキリー13よりCP、帝国軍の動きは?」
『CPよりヴァルキリー13、帝国軍は警戒態勢にあった帝国本土防衛軍第12師団を主軸とし、海岸から2kmを中心に旧国道116号線に沿って展開中。同時に、即応体制にあった第14師団が応援に向かっています。また、第12師団の工兵大隊は海岸線から防衛線の間に地雷原を構築中です』
 遥の報告にあわせ、次々と帝国軍の配置、BETA群の観測データなどが網膜投影されてくる。祐麒はそれらの情報を即座に頭の中で整理し、今後の予測を立てる。
『ちょ、ちょっと、私達これからどうすればいいのっ?』
『そんなこと言われても、演習だと思っていたし』
 部隊の中に、思わずそんなことを口走ってしまう者もいる。まずは落ち着かせることが先決だが。
『ヴァルキリーズ01より各機へ。我々はこれより帝国軍防衛線の補強に回る。第12師団が持ちこたえられれば問題はないが、BETAの圧倒的な物量の前には押し切られる可能性も高い。第14師団よりも近くにいる我々がその穴を塞ぐ役目を担うことになる』
 するとタイミングよく、みちるより全員に対しての指令が飛んだ。この辺はさすが隊長というところで、声もいつもと変わりなく落ち着いており、どこか地に足が付かない感じだったメンバーの気が引き締まるのを、戦術機の中に居ながらにして祐麒は感じた。
 指令の内容も妥当なものだろう。この辺は事前に夕呼からある程度情報を渡されており、それを元に事前に幾つか案を練って来たものと思われる。
 祐麒としても、実弾演習ということで第12師団がすぐに展開できているのは非常に有り難かった。前はギリギリで防衛できたはずだが、これなら随分と余裕を持って迎撃することが出来る。それでも、みちるの言うとおりに充分とまでは言い難いが、そのために自分たちがいるのである。
 自分に課す使命は、可能な限り被害を少なくしてBETAの侵攻を防ぐこと、そしてA-01部隊のメンバーを誰一人欠けることなく生還させること。
『――新任のメンバーは初めての実戦になる。だが、戦場ではそんなこと誰も考慮してくれないし泣きごとを言っている暇もない。生き残るためには力を示せ。お前たちは"伊隅ヴァルキリーズ"の一員だ、無様な姿を晒すことは許さないし、無駄に死ぬことも許さない』
 厳しく引き締める言葉に、メンバー達が息をのむように感じられた。気が緩むよりかは良いだろうが、だとしても逆に力みすぎ肩に力が入っても普段通りの力を出すことはできない。
 初めて本物の戦いの場に出る彼女達にとって、普段通りの力を出すことだって難しいかもしれないが、少しでもその実力を発揮できるようにはしてやりたい。
「……大丈夫ですよ隊長、俺がいる限り誰も死なせませんから」
『ほう、随分と大きな事を言うじゃないか。貴様が全員を守るというのか?』
「そうですよ、何せ皆、俺にとっては……」
『――そうだよね、皆大事なハーレム候補だって言ってたもんね、福沢くん』
 突然、みちるとの会話に横から入ってきた声。
 一瞬の間の後。

『はぁぁっ!? 福沢、アンタ何考えてんの!?』
『ハーレムって、そんなこと考えていたのこの変態!』
『確かに今の時代、若い男の方が少ないが。とはいえ、実際にやろうとするとそれなりに大変だろうな』
『え、え、はーれむって何ですか??』
 途端に、様々な非難、悲鳴、怒号が祐麒に対して浴びせられた。祐麒はただ、大切な仲間だと言おうとしたのだが。
「――か、柏木さんっ!? なんてこと言うんですかっ!」
『あははっ、ごめんごめん。そんなこと言ってた気がして』
「テキトーにテキトーなこと言わないでくださいよっ」
 文句を言いつつも、祐麒の発言に乗っかって初陣メンバーの肩の力を抜こうという晴子の意図は分かっていたから、本気ではない。自分一人が責められ役で損をしているような気がするが、部隊内では唯一の男子で異分子なのだからそれが丁度良いのだろうと思うことにした。
 しかし、晴子自身も初陣のはずなのに他のメンバーのことを気遣う余裕があるとは、なかなかのものであった。
『――よし、適度に力が抜けたところで、そろそろ切り替えろ』
 再びのみちるの声に、ぴたりと静けさを取り戻す。
『どうやら、私が下手な冗談を言って緊張をほぐす必要もなくなったようだな』
『え、隊長が冗談をですか? むしろ聞いてみたいです』
『却下だ、速瀬。さあ、準備をするぞ。情報を整理しろ。装備の点検を怠りなく行い、訓練でやってきたことを思い出してイメージしろ。そしてさっさとBETAを撃退して基地に戻れ……福沢のハーレムに入りたくばな』
 最後の言葉と共に、みちるはにやりと口の端を上げて笑みを見せた。
「ええっ、ちょっと、伊隅大尉まで!?」
『ぜぇ~~~~ったいに、お断りですからね!!』
『速瀬中尉……あまりムキになると、余計に怪しいですよ?』
 結局、祐麒で落とされてしまったがそれはそれで構わない。
 改めて、みちるの言葉通り装備を、状況を再確認する。
「……さて…………」
 そして、この世界に来て初めての対BETA迎撃戦が、幕を開ける。

 

次に続く

 

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