【作品情報】
作品名:コールミー・バイ・ノーネーム
著者:斜線堂 有紀
ページ数:240
ジャンル:エンタメ
出版社:講談社
おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
百合小説としての面白い度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : 深く入り込んでいくような百合が好き
女子大生の良次愛は、深夜のゴミ捨て場に打ち捨てられていた美女、古橋琴葉を拾う。
不思議な魅力を放つ琴葉に魅入られていく愛。
愛は琴葉と友達になりたいと思うが、琴葉が持ちかけて来たのは恋人になること。
さらに、自分の本当の名前を当てられたら友達になるという。
こうして愛と琴葉の不思議な関係が始まっていく。
百合であり青春ものでありミステリーでもある。
その中で本作の魅力はキャラクターではなかろうか。
古橋琴葉、誰もが認めるほどの美しさを持ち、性格的にも奔放で掴みどころがない。
大学で色々な男と寝ては別れてを繰り返し、評判はよくない。
だけど、その魅力に魅入られていく。
一方で愛はある意味まともであり、まともでありながらどこか外れている。
ゴミ捨て場にいた女を拾い、友達になりたいと願い、そのために恋人になる。
恋人同士で何をしたら良いのかを真面目に考え、デートをして、関係を深めていく。
読んでいくほどにキャラクター性が面白くなっていき、惹かれていく。
作品の中の登場人物が惹かれていくのが琴葉なら、読者が惹かれていくのは愛ではないだろうか。
琴葉は冒頭から終わりまで、ある意味、読んでいて印象のそう変わらないキャラクター。
だけど愛は、読んでいく中で、「え、こんなキャラだったの」と思い、色々と受け取り方が変わっていく。
だからこそ面白い。
琴葉の過去。
本当の名前に込められた呪い。
いやこれ、こんな名前をつけられたら本当に呪いですよ。
こんな名前、意味を知るような年齢になったら変えたいと思うのはごく当然でしょう。
百合ということで、愛が琴葉に惹かれていく。
だけどそれ以上に、琴葉が愛という存在に惹かれ、救われていく作品のようにも読める。
特に同性愛者というわけではなかった愛が、どんどん落ちていく。
でもそれは堕ちるというわけではなく、ただ自然と、純粋に、琴葉という存在に惹かれて深みに分け入っていくという感じ。
そう、落ちるのではなく、先が見えないけれども奥に自ら歩を進めていく。
だからだろうか、強く、美しい関係に感じられる。
真っ直ぐな愛。
掴みどころのない琴葉。
そんな二人だからこそ、かっちりとあったのかもしれない。
二人の未来が幸せであると信じたい。
初読みの作家さんですが、百合ということで手を出してみたところ正解でした。
エロを求めたらいけませんよ。