【作品情報】
作品名:ドゥームズデイ・ブック(下)
著者:コニー・ウィリス
ページ数:528
ジャンル:SF
出版社:早川書房
おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
重く切ない度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : 深くて重いテーマを好む
オックスフォード大学の女子学生、キヴリンは中世へ到着するなり病に倒れてしまった。
時間遡行を担当した技術者は正体不明の病に倒れ、キブリンが無事に到着したのか分からない状態に。
どうにかキブリンの無事を確認しようと奔走するダンワージーだが、病が蔓延して自由に動くことが出来ない。
中世に残されたキヴリンはどうなるのか。
ダンワージーはキヴリンを助け出せるのか?
関連レビュー
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【ブックレビュー】ドゥームズデイ・ブック(上)(著:コニー・ウィリス)
【作品情報】 作品名:ドゥームズデイ・ブック(上) 著者:コニー・ウィリス ページ数:544 ジャンル:SF 出版社:早川書房 おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆ 混沌度 : ★★★★ ...
いやー。
読み終わって、「すごいな」と思いましたね。
上巻、下巻とも同じような長さで、展開としても劇的にというより淡々と進むのだが、読み進める速度は下巻の方が一気だった。
何が凄いって、結局、キヴリンは何も出来ないし、何も影響を与えていないということ。
歴史に干渉できないのは時間旅行の前提ではある。
でも実際にキヴリンは過去に行き、現場に直面をしている。
目の前で悲劇が起きている。
懸命に、現代の知識などを用いて状況を改善しようと試みるキヴリンなのだが、何も変わることのない世界。
正直、絶望したくなるような展開がずっとキヴリンを襲い続ける。
読んでいくのが辛くなるくらいだが、だというのに読む手が止まらない。
キヴリンによって何か変わるのではないか、少しでも良い方向にいくのではないか、そんな期待を抱きながら読み進める。
そして、結果に読み手も色を失っていく。
ご都合主義など入る余地はない。
タイムトラベルものの定番というのは、時間を戻ってやり直すことで悲劇を回避することでしょう。
でも、そんな都合の良いことなど起きない。
とにかく、破滅に向かっていくキヴリンのいる中世がとんでもない。
一方で、現代の方はどこかコミカルにすら感じてしまう部分もある。
もちろん、新たなウィルスによって患者、死者はどんどん増えていくのだが、お約束のように展開してく。
見つかることのない学長、つながらない電話、トイレットペーパーの不足に嘆くフィンチ、女たらしのウィリアム。
懸命に奔走すればするほど、空回りするダンワージー。
ラスト、全てを見届けたキヴリンは果たしてどのような心持ちだったのだろうか。
自ら行きたいと手を挙げて到着して、自分の目で見た中世の世界の現実。
凄い切ない終わり方に、どこか呆然ともしてしまう。
これは是非、手に取って読んでみて欲しい作品だなと思った。
重いけれど、もうこればかりは仕方ない。
物語としては確かに長いし、全部通して一冊で書けそうではあるけれど、それをこの量で読ませるように仕上げたのは作者の力量なのでしょう。
ドゥームズデイ・ブック(下)【電子書籍】[ コニー ウィリス ] 価格:864円 |