【作品情報】
作品名:命の砦
著者:五十嵐貴久
ページ数:363
ジャンル:エンタメ
出版社:祥伝社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
読んでいて熱くなれる度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : パニックものが好きな人
大勢の人で賑わうクリスマスイブの新宿。
通称“ギンイチ”こと銀座第一消防署の消防士・神谷夏美は恋人や同僚らが待つ店へと急いでいた。
ところが、新宿地下街・サンズロードで火災発生との通報が入り、ギンイチにも特命出場の指令が出る。
夏美らは管轄の消防署とともに消火作業を開始するが、地下街は延焼が拡大し人々は大パニック。
出入り口は黒煙で封鎖され、負傷者が続出する。
さらに地下街の特設ブースに陳列された電化製品にマグネシウムが含まれていることが判明。
マグネシウムに火が燃え移り爆発すれば新宿駅近辺は壊滅、何万人もの死傷者が出る。
新宿壊滅を阻止するため、決死の作戦を敢行する消防士たち。
女性消防士、神谷夏美シリーズの第三弾にして完結編。
- 高層ビル火災(タワーリングインフェルノ)
- 豪華客船火災(ポセイドン・アドベンチャー)
ときたわけで、三部作の最後は当然、空港火災(大空港)の、パニック映画の三大砦の最後の一本がくるかと思ったら、新宿地下街だった。
あまりなじみのない場所よりも、現実的に多くの人が行きかう場所を選んだのか。
実際、新宿に限った話ではないけれど都心の大都市は多くの路線が行き交い、地下街も拡張され、迷宮の様相を呈しているのは間違いないところ。
そんな場所で大火災が起きたら・・・というところを描いたのだろう。
時はクリスマスイブ、混雑もピークを迎える新宿で大火災があったらと考えると恐ろしくなる。
もちろん、ただの火災であれば防火、防災設備であるとかマニュアルもしっかりしているはずで、ここまで大事になるわけもない。
今作では、テロ的な形で、複数個所で同時に火災が発生、さらに防火を妨げるような仕掛けもされており、それ故にどんどんと被害が広がっていく形になっている。
作者は、実際にこんなことが起きる可能性はないと言っているし、実際にそうなのだろうけれども、それでももしかしたらと思わせるものがある。
地下は確かに厄介でしょう。
出入口は狭く、中の通路も色々と限られていて、様々な店には燃えたら危険なものが置かれていたりもするでしょう。
そのような条件下で奮闘する消防士たち。
圧倒的な強さを誇る火勢を前に、消防士たちといえども出来ることは限られる。
それでも、誰かに感謝されるためではなく、何か見返りを求めるわけでもなく、火があるから消防士達はそこに向かう。
自分達のプライドと、意志にかけて、魂を燃やす。
その姿には、やはり読んでいても響いてくるものがある。
決して仲間を見捨てない、消防士だけがわかる絆。
だからこそ、最前線で戦える。
そういう姿を見せられると、やはり熱くなる。
奇をてらうこと無く、王道的に展開していくのだけど、こういう作品はそれで良いと思う。
五十嵐さんの読みやすい筆致と物語展開で、ラストまで一気です。
村田さん、あんた、そこまでやっちゃダメでしょう、もうちょっと冷静にできなかったのか。
そして三部作の最終作なのですが、ラストというかラストの後に夏美がどうなるのか、読者に委ねられる形になっていて。
これはこれでアリなのでしょうけれど、モヤッとするから書いて欲しかったなー。