書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(三奈子×祐麒)】オレンジ・ミステリー その1

更新日:

 

~ オレンジ・ミステリー その1 ~

<番外編:絆ちゃんの時間旅行!>

 

 

 私の名前は福沢絆、現在17歳でぴちぴちの高校二年生。自分で自分のことを自慢するつもりはないけれど、結構な高スペックを誇る女子高校生だと思う。
 成績は悪くなく、というかむしろ良い方で高校入試ではトップだったらしく新入生代表なんかやらされて、一年の時も二年の今も試験の結果は学年トップ、そして二年生の今は生徒会長を務めている。
 中学時代から続けている陸上では短距離で県大会まで出場、残念ながら足首を痛めて全国大会までは行けなかったけれど。とはいえそれ以上の素質はないようで、生徒会活動が忙しいことからも、そろそろ潮時かなあ、なんても思い始めている。
 家事全般も得意。料理は中学の頃から本格的に始めたけれど、食べてくれる人が喜ぶのが嬉しくて腕を磨き、今ではかなりの腕になっていると思う。掃除、洗濯、裁縫も一通りこなす。単に、やればできるというものではなく、日常的に家でもやっているというところがポイント。
 容姿は、国民的美少女とは言えないけれど、悪くはないと思っている。ちょっと細くて吊り目がちではあるけれど、目つきが悪いとかに見られることはない。髪の毛は生まれつきちょっとだけブラウンが入っているような感じで、今は肩からちょっと出るくらいのストレートにしている。
 性格だって、悪くはないと思う。聖人君子だなんて言うつもりはないけれど、共働きで家をあけがちな母親に変わって家事を取り仕切り、二人の妹の面倒を見てきているくらいだし。
 身長は164センチ。体重はヒミツ。スリーサイズはもっとヒミツ。
 好きな食べ物はカラスミとクリームあんみつ、趣味は料理と読書、特技は料理とハイキック、嫌いなものはお化け。
 うん、大丈夫、ほら自分のことをこれだけ客観的に言えるし覚えているということは、私は何もおかしくないということだ。
 改めてそう結論付けたところで、閉じていた目をゆっくりと開いて周囲の様子を窺ってみる。

「…………」

 変わっていない。
 見たことがあるようで、どこか違う光景。
「な、なぜ、こんな場所に」
 呆然と呟きながら遠くを見れば、晴れた空の下に広がる街並みが目に入る。全く覚えていないのだが、ふと気が付くと私は今の場所、どこぞの学校らしき屋上に一人で立ちすくんでいた。
 屋上のフェンスから見下ろしてみれば、女子生徒たちの姿が見えた。明らかに、私が今身に付けている制服とは異なるから、違う学校だということが分かる。というか、見覚えのあるその制服は、私の記憶違いでなければ母親が通っていたリリアン女学園のものと思われた。
 リリアンに通っていない私がなぜ、リリアンの校舎の屋上などにいるのか、全く記憶になかった。
 逃げ出そうとも考えたが、今の制服では明らかに浮いてしまうし、かといって脱ぐわけにもいかないので、屋上でひたすら授業が終わるまで待ち続けた。暖かな風の吹く季節で良かったと思う。
 幸い、既に時刻は午後だったらしく、物凄く待たされることはなく授業が終わり、生徒達がぞろぞろと校舎から吐き出されていくのが見えた。しばらくして人の流れが少なくなったところで、私は意を決して屋上から校舎内へと身を滑らせた。本当はもうちょっと待った方が安全だったのだろうけれど、生理現象も襲ってきてちょっと我慢が出来なくなっていたのだ。

 

 無事に用を足した後は、素早く階段を降りていった。部活動でまだ残っている生徒も沢山いたようだが、とにかく無視して突っ切った。女は度胸だ。
 とはいいつつも、なるべく見つからないようにこそこそと、人目を避けるように移動していた結果。

「…………迷った」
 誤解のないように言っておくと、私は別に方向音痴でもないし、地図が読めないわけでもないし、道を覚えられないわけでもない。ただ、初めて入った学校で、構造も分からず他の人に見つからないように彷徨うように移動していれば、迷うのも致し方ないはず。更に付け加えれば、私はこの辺の勘や運といったものはあまり強くないのだ。
 周囲に人の姿が見えないのは良いけれど、さて、これからどうしようかと思案に耽る。
 ただ、此処に至るまでに分かったこともある。現況を把握するために、なるべく色々なものに注意していた結果、どうやらここは『過去の世界』らしいということ。
 ええ、馬鹿らしいとは自分でも思うけれど、だって仕方ないじゃない。ゴミ箱に捨ててあった新聞、そして『りりあんかわら版』、教室の黒板に書かれていた内容や掲示板に張り出されていた掲示物、そのどれらを見ても同じ日付が書かれているのだから。特に新聞については、私もよく知らないことが、これでもかというくらいに書かれていて、いくらなんでもそれが全て作り物とは思えなかった。
 そして、今の時代がいつだかを理解して分かったこと。それは、私のお母さんが今この学園に所属しているということだ。
 やばい。お母さんは私の天敵なのだ。

 いや、これも誤解のないように言っておくが、別に母のことが嫌いなわけではない。むしろ好きだし、仲だって良い。でも、それでも天敵なのだ。あの、人を振り回す勝手さ、いい年なのに若々しい見た目と肌つや、素晴らしいスタイル、何より父とイチャイチャべたべたラブラブなのが実に腹立たしい。
 年頃の娘たちを前にしても、平気で抱きついてスキンシップして、甘えて甘えさせて、い、一緒にお風呂に入って、目の前でき、き、キスまでしやがりまする。わ、私だってお父さんとはほっぺにチュウくらいしかしたことないってのに! お風呂は一緒に入るけどね!
 ……別に、ファザコンではない。親に対して親愛の情を向けるのは当然のことだしね。妹たちや友人達は、変態だとか異常だとか言うけれど、彼女達は恥ずかしくて言えないだけなのだろう、そう思いたい。
 てゆうか、そんなお母さんが女子高校生である時代に来たとは、あの母が女子高校生だなんて……なんか、今とあまり変わらないかも。それはそれで、無性に悔しいが。
「…………ねえねえ」
「は? なんですか、一体」
「あなた、どうしたの? うちの学園の子じゃないよね、見学か何か? あ、それとも部活とか何かの交流かな。生徒会では特に予定はなかったはずだし」
「それは……って、うひょう!?」
 一人、思考に没頭していたせいで接近する人の気配に気が付かなかった。私は集中力の高さも自慢の一つだが、えてしてこういった欠点にもなりうる。
 さて、どうやって言い訳したものかと、声をかけてきた人の方を振り返る。
「――って、祐巳ちゃん!?」
「ふえっ? た、確かに私は福沢祐巳ですけれど……」
 そこには、目を丸くして立ち尽くす少女の姿が。
「うわっ、祐巳ちゃん、かっわいぃ~~~! わか~~~い!!」
 私が知っている祐巳ちゃんは、お父さんのお姉さんとしての祐巳ちゃんで、小さいころからとてもお世話になっていた。何せ両親が二人でラブラブ旅行に出かける間、祐巳ちゃんのお家にお世話になっていたのだから。
 祐巳ちゃんは今(私の時間軸の世界)でも若々しくて可愛いけれど、女子高校生の祐巳ちゃんは当たり前だけどそれ以上に若くて可愛い。そして、一目で祐巳ちゃんだと分かるのが凄い。今と違ってツインテールだけど、それも非常によく似合っている。私にとって祐巳ちゃんは、伯母さんというよりは年の離れたお姉さんという感じなのだ。
「あの……私たち会ったこと、ある?」
「はうぅっ、しまった!?」
 若くて可愛い祐巳ちゃんに興奮しすぎて、祐巳ちゃんが引いている!?
 当たり前だけれど、今の祐巳ちゃんが私のことを知っているわけがない。何せ私が生まれてくるのは、ええと……6、7年ほど後のはずなのだから。
「え、ええとですね、私は……」
 咄嗟にどう説明したらよいか言葉が出ず、しどろもどろになっていると。
「あれー、何しているの祐巳さん?」
「そちらの方は、どなたかしら」
 またまた新たな人の出現に、私は飛び上がりそうになる。
「あ、由乃さん、志摩子さん」
「うおっ! 由乃さんに志摩子さん!? マジで、若っ!?」

 両親が旅行中、祐巳ちゃんの家にお世話になっている時に、この二人はよく遊びに来ていたのである程度の面識はある。
 由乃さんはとにかく、『この人、白くてほっそー!!』という印象だ。なんか、昔は心臓が弱くて運動ができなくて、病気が治って運動をするようになった後も、筋肉なんかは全然つかないままだったらしい。ただ、ぱっと見は細くて白くてひ弱そうなんだけど、実際の由乃さんは明るくて強気でとても生命力に溢れている人だ。
 志摩子さんは由乃さんと比べると、とても穏やかでぽわぽわしている人だ。そして物凄く美人で、おまけに服を着ていると分からないけれど、脱ぐと凄いんです、な人。一緒にお風呂に入れてもらったこともあるから知っている。柔和に見えるけれど、芯はしっかりしていて、私が小さいころに悪いことをすると、穏やかな雰囲気のまま怒られた。滅茶苦茶怖かった。
「え、何、誰この子。志摩子さんの知り合い?」
「いえ、初めて会うと思うけれど……」
 って、私の馬鹿! 祐巳ちゃんと同じ失敗を繰り返しているし。
 眉をひそめている由乃さん、首を傾げている志摩子さんを見て、私は頭を抱えたくなった。普段はここまでドジはしないのに、相当に気が動転しているようだ。
「あ、あの、三人ともとっても有名だから。ほら、えーと、あれ、『薔薇族』だし!」
 前に聞いたことある。
 そんなんで有名になって嬉しいのかと思ったけれど、腐女子というのは結構な昔からいる歴史あるものだというし、私の友人でも好きな子いるし、私も最近すすめられてBL本を読んだこともあるし。あ、でも私は駄目でしたよ、生理的に。
「それを言うなら、『薔薇さま』じゃないかしら」
「でも、志摩子さんはともかく、私と由乃さんは違うけど」
「ってか、変な誤解しないでよ、そういうのが好きなのは令ちゃんだけだからっ!」
 どうも、何か間違えたようだ。お母さんに教えてもらったはずなんだけど、おかしいなぁ。
「貴女、その制服……月光館学園の方かしら?」
「えっ!? 月光館って、あの偏差値No.1のエリート校じゃない」
「そんな凄い学校の人が、うちに何の用なのかなぁ?」
 ウチの学校、そんなに凄いところだっけ。確かに上位には入ると思うけれど、ナンバーワンってほどでは……って、この時代だとそうだったのか。ってことは、最近になって落ちぶれてきたのかしら。いや、確か少子化に伴い、門戸を広くして勉学だけでなく芸術やスポーツにも力をかけるようになったから、その辺で学校の方向性が変わったせいのはず。
「え、ええと、ちょっとした学校見学的な? みたいな?」
 あうう、自分で口にしていて馬鹿みたいだ。もっと賢いはずなのに、この辺の咄嗟のアドリブが弱いところも私の弱点なんだよなぁ。こういうとき、お母さんの図太さが羨ましくなる。
「ふぅん……でも、一人でこんなところまで?」
 由乃さんが疑惑の目を向けてきている。そりゃそうだよなぁ。
「あ、それより、私達も急がないと」
「そうね、この方はどうしましょうか」
「とりあえず一緒に来てもらえば? 一人きりにするわけにもいかないだろうし」
 何やら三人は所用がある模様。私のことなんて放っておいて、そちらに注力してくださいと言い出いけれど、そうもいかないんだろうなぁ。
 迷惑をかけてもいけないと思い、大人しく三人についていくことにする。
「そういえば貴女、お名前は?」
「あ、はい、福沢絆っていいます。高校二年生です」
「へー、私も福沢だよ、同じだね」
 アウチ、しまった! うっかり本名を口走ってしまった。まあ、名字が同じくらいは問題ないだろう、そこまで珍しいというわけでもないし。
 自己紹介を簡単に行い、とりとめもない話をしながら歩いて向かう先は、どうやら学園の正門らしかった。これはラッキー、出口まで送ってもらうような形になったわけだ。正門に到着したら、何か理由をつけておさらばさせていただこう。
「それにしても、こんな三人で迎えに行くことなかったのに」
「別にいいじゃない、たまには」
「そうよ、こんな美少女三人で出迎えなんて、喜ばれるわよ。あ、今なら四人か」
 なぜ、私まで人数に含めるのか。由乃さんらしいといえば、らしいけれど。

 そうこうしているうちに、正門が間近に迫ってきた。見ると、正門の前には華やかな女子校にはそぐわない、学ランの男子が何人か集まっているのが分かった。
 何やら好きな女の子の出待ちでもしているのだろうか。いや、女子高の前でそんなことをしていたら叩き出されるだろう。守衛さんだっているわけだし、何も言われないところを見ると、彼らが祐巳ちゃんたちの出迎えの相手なのか。
 彼女たちの言葉ではないが、確かにこれだけの可愛い女の子三人に出迎えられたら、男の子は嬉しいだろうなと思う。
 更に近づくと、相手方もこちらに気が付いたようで姿勢を正すのが見えた。女子高ということで、正式な客とはいえジロジロと校内を見るなんて失礼な真似はできなかったのだろう。でなければ、とっくに見つけられているはずである。
「すみません、お待たせしてしまいましたか」
「いえ、とんでもないです。我々が早く来すぎてしまっただけで」
 志摩子さんがお上品に頭を下げると、眼鏡をかけた男の子が如才なく受け答えをする。眼鏡男子か、私は別に興味ないけれど、なかなか女子受けしそうな感じである。
 それに対して、後ろに控えているメンバーは見た目もゴツイ体育会系男子、女の子みたいに可愛らしい子、そして謎のツインズ。これなら眼鏡クンが一番モテるだろうなぁ、なんて下世話なことを考えてしまう私。
「――あれ、そちらは」
 眼鏡クンが私に気が付いた。
「ああ、こちらは月光館の――」
 志摩子さんが紹介してくれようと話し出したところ、私の目はツインズの後ろから顔を覗かせたもう一人の男子に釘付けになった。
 高校生男子にしては童顔であろうか、ちょっとくせっ毛を気にしながら、くりっとした目を向けてくるその人は。
「うわっ……お父さん、若っ! 今でも若いけれど、ヤバ、ちょ、超可愛いっ!!」
 間違いなく、父である福沢祐麒の若かりし姿であった。例え高校生の姿になろうとも、私が見間違えるはずがない。高校生時代のアルバムは何度も見せてもらったし、そのうちお気に入りの何枚かは手元にも持っているし、何より全身から放たれるオーラとでもいうものが、お父さんであることを物語っている。ふふん、これはきっともっとも身近な私だからこそ嗅ぎ分けることができるはず。
「え? ちょ、福沢さん、どうし……」
 由乃さんの声など耳に入らず、私は抑えきれない衝動のままに動き出していた。
「ん? 何かあった……のおぉっ!?」
「お父さん、可愛いっ!!」
「うぇっ!!!???」
 私は駆け出し、その勢いのままお父さんの首っ玉に抱きついた。
 そして。

「ん~~~~~っ!」

「「「「「!!!!????」」」」」

 抱きついたまま、ほっぺにチュウ。
 おおう、お肌がすべすべだ。今のお父さんも若いけれど、さすがに肌はここまでつるつるのすべすべではない。
 ああくそっ、これで胸がお母さんみたいにあったら良かったんだけど、悲しいかなAAのサイズでは、『あててんのよ』もできやしない。まったく、妹の亜優と由香利は順調に育って、由香利も小学生のくせにブラなんて生意気だっつの、私なんて高2の今ですら『ブラなんて必要なの?』とか言われているのにっ。
「……お、お、おいユキチっ! おまっ、ど、どういうことだ!?」
「その美少女とはどんな関係なんだ、おい!?」
「ちょっと貴女、な、何しているのよっ!」
 ふと気が付くと、喧々諤々の大騒ぎになっていた。
 祐巳ちゃんたち三人、あと学ラン軍団だけでなく、帰宅途中の生徒や部活中で外にいた生徒達も騒いでいる。
「……え、あれ?」
「あ、あの……キミ、だ、誰?」
 ふと見れば、戸惑いを見せる若かりしお父さん。

 …………って、しまったああああああ!?

 ついうっかり、普段と同じ、『お父さん、お帰りなさい』の感覚で抱きついてチュウをしてしまった。
 いやいや、誤解しないで。べ、別に私だって好きでやっているわけじゃなくて、ほら、お父さんが喜んでくれるからさ。だって、『ああ、もう亜優も由香利もしてくれなくなって、こうして父親ってのは避けられていくのか、寂しいもんだな』なんて言うからね、ホラ、お父さん想いの優しい長女としては、してあげないわけにはいかないじゃん。それに、いつもこんな風に激しいわけじゃないですよ、今日は若いお父さんを見てテンションがおかしくなってしまっただけで。
 それにさ、私達のために毎日働いて、疲れて帰ってくるんだから、癒してあげたいと思うわけよ。私だって、中学生の時はさすがに恥ずかしくて素直には出来なかったけれど、高校二年生となってその辺のわだかまりも捨てたといいますか、そういうことで。
 それはともかく、今の私とお父さんでは、単に同い年の高校生男子と女子なわけで、それがいきなり抱きついてキスなんてした日には、そりゃ誤解もされるってもの……べ、別に、それも良いかもなんて思ったりしていないから。
「あ、はは、ご、ごめんなさいっ」
 さすがに私も恥ずかしくて、赤面しながら離れる。顔だけではなく、全身が熱をもったように熱い。家でしているとはいえ、それだって他の家族に見えないようにやっているのだ……お母さんは除く。だってあの人、私がチュウしていると、『あ、絆ちゃんばっかりズルイ!』とか言って、反対のほっぺにチュウしてくるんだもん。
 て、そんなことは置いておいて、恥ずかしくて申し訳なくてお父さんを見てみると。

「…………びっくりした」
 あれ?
 思いのほか、反応が薄い。
 実際にお父さんになったお父さん(ややこしい)ならともかく、今は単なる男子高校生なわけで、そんなお年頃の男の子が美少女(私だ)に抱きつかれてキスしたら、もっとこう、慌てふためいたり、私のように照れて赤くなったり、気が動転したりするものではないだろうか。
 びっくりしすぎて固まっているのか? なんか、不満。
「――とにかく、早く中に行きましょう。ここにいつまでもいては、騒ぎが大きくなるだけだわ」
「そ、そうね、こんなところ"あの人"に見られでもしたら、またとんでもないことになりかねないし」
「もう引退したから平気じゃないの?」
「いや、これだけのスクープだったら、引退していても首を突っ込んでくるわよ、きっと」
「もう、とにかく由乃さんも祐巳さんも、早く。花寺の皆さまも――それから、絆さんも」
「え、わ、私は……うわっ!?」
 どさくさに紛れてドロンしたかったのだが、思いのほか志摩子さんの強い力に引っ張られて、再びリリアン学園内へと引きずり込まれる。そうだ、志摩子さんって意外と頑固で怖いんだよな。
「絆さん、何か言いましたか?」
「ひいいいいえっ、何もっ」
 ぶるりと身震いして、逆らわずに従う。志摩子さんとはそんなに接した機会ないんだけど、なんだか怖いのよね。
「……ふぅん、絆さん、っていうんだ」
「へっ?」
 名前を呼ばれて横を見れば、祐巳ちゃんたちに先導される形でついてきているお父さんがいた。
 正面から目と目があい、ドキっとする。
「ひゃいっ!? あ、えと、何か」
「…………いえ、その」
 何やら考えるように口ごもるお父さん。
「ほら祐麒、何やってんの、あんたはこっち」
「――ああ、うん」
 祐巳ちゃんに呼ばれ、お父さんは足を速めて先頭に追い付いた。
 若かりしお父さんの後ろ姿を眺めながら。

 ――なんか、とんでもないことになっちゃった?

 と、今さらながら思う私なのでした。

 

 ってか、ホントにこれからど~なっちゃうのっ!?

 

 

その2へつづく

 

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