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ノーマルCP マリア様がみてる 三奈子

【マリみてSS(三奈子×祐麒)】私の親友はちょっとヘン

更新日:

 

~ 私の親友はちょっとヘン ~

 

 

 私の名前は山辺奈都(ナツ)、高校一年生。
 容姿が際立ってとびぬけているわけではないし、頭が物凄くいいわけではないし、運動神経が素晴らしいってわけでもない、どこにでもいるごく普通の女子高校生。あえて言うならば、性格がどこかおっとりのんびりしているというか、悪く言うとぼーっとしてどこか抜けているらしい。
「奈都はね、これから伸びるわよ。無意識に男を惑わす天然小悪魔系になるわね」
 とは、私のお母さんの言であるけれど、自分の愛娘を小悪魔にしたいのだろうか。とゆうか、既にアラフォーなお母さんの方がよっぽど小悪魔めいていると思うのだけれども。
「奈都、あんたはお母さんみたいになっちゃだめよ」
 といつも厳しく言いつけてくるのは亜紀お姉ちゃん。
 亜紀お姉ちゃんと私は腹違いの姉妹になるけれど、私自身はそんなこと意識したことがないくらい亜紀お姉ちゃんのことが好きだし、お姉ちゃんも私のことを気にかけてくれているし可愛がってくれている。歳が離れているというのも大きいのだろうけれど、お姉ちゃんが言うには。
「いや、あのお母さんから生まれたのにこんな可愛くて素直な子が育つなんてね。これで、もしあのお母さんみたいだったら、絶対に可愛がってなんかいなかったよ」
 ということらしい。
 きっと冗談だとは思うけど。だってお母さんと亜紀お姉ちゃん、確かにしょっちゅう口喧嘩をしているけれど、その時のお母さんは物凄く楽しそうだから。
「うふふ、そう見える? 昔っから、そういう子が大好きなのよねぇ。奈都も、そろそろ反抗期迎えないの?」
 自分の母親だけれども、この辺は変な人だなぁと思う。娘の反抗期を心待ちにしているなんて、おかしいのではなかろうか。
 でも、そういうところは別に内々の話だしさほど気にすることはない。問題なのは、他にある。
 お母さんは私という高校生の娘がいるアラフォーだけど、見た目だけなら三十代前半で通用するし、まだまだ若い。私が小さいころにお父さんは行方不明(なんでも、海外の化石発掘現場で事故にあったとか)になり、それからずっと独身を貫いているけれど、一人でい続ける必要はない。
 既に失踪宣告もなされているし、私も既に高校生となって手がかかる年齢でもない。お父さんのことが大好きな亜紀お姉ちゃんは、内心では嫌がるかもしれないけれど、だからといってお母さんが新しい幸せを掴むことを拒絶まではしないはずだ。ずっと女手一人で私とお姉ちゃんのことを育ててくれて、苦労した……はず?

 そういえばお母さんが苦労している姿ってみたことないなあ。なんか、いつも要領よくやっているし、実家はそれなりにお金持ちで三人のお兄さんも裕福で(ちなみにこの三人のお兄さん、私にとっての伯父さんたちとお祖父ちゃんは、私に劇甘で、お母さんは呆れ果てている)、だからそんな風に見えない。また、苦労していたとしても、それを見せるような人ではないのがうちのお母さんだ。
 話しが逸れてしまったが、お母さんが新しい恋人を見つけたなら、私は快く祝福するし、なんならしばらくお姉ちゃんの部屋に居候しようかくらいは考えていた。
 そのお母さんに気になる男性がいるというのを知ったのは、最近の事だった。実は結構前からだったらしいけれど、私はぼんやりしているしその手の事には疎いので全く気が付いていなかった。
 この前、お姉ちゃんが家に戻って三人で食事をしている時、お姉ちゃんが詰め寄ったことをきっかけに知ったのだ。
「お姉ちゃん、そんなに反対しなくてもいいじゃない。むしろ私は、遅すぎるくらいだと思っているよ。お母さん独身なんだし、好きな人を見つけて再婚してほしいなって私は思うけれど」
 お姉ちゃんがお土産に持ってきてくれた特製ミルフィーユカツレツを頬張りながら首を傾げると、お姉ちゃんはキッと眦をあげ、お母さんに向かって指を突き付ける。
「別に、あたしだって誰かと再婚するのを反対するわけじゃないわよっ、そりゃ、お父さんが死んだってまだ信じているわけじゃないけれど、もう十年以上経っているわけだし……でもね、それも相手によるでしょ!?」
「お母さんが、そんな変な人を選ぶわけないじゃん」
「そんなことない、奈都はこの人のことを分かっていないのよ。大体、高校生の時にお父さんを好きになるような変人なんだから」
 酷い言い方だ、お母さんに対しても、お父さんに対しても。
 だけどお母さんは、楽しそうに私達のことを見ている。
 うん、確かに変人であることは娘の私も否定しないけれど。
「――お姉ちゃんは知っている人なんだ、その相手の人。そんなに変な人なの?」
「変な人の訳ないでしょ!!」
 うーん、だとしたらお姉ちゃんは何を怒っているのだろう。変な人が相手じゃないならば、問題ないのに。
「大有りよ、大問題よ。だってこの人、祐麒さんのこと狙っているんだから!」
「――――」
 さすがにこの発言には衝撃を受けた。
「祐麒さんって」
「そうよ」
「お姉ちゃんがずっと片思いしている?」
「っっ。だあああああああっ!? そ、そ、そんなこと言わなくていいから! てゆーか違うし、別に」
 顔面を紅潮させて憤然とするお姉ちゃん。
 お母さんは堪らなくなったのか、とうとうお腹を抱えて爆笑し始めた。うーん、この辺のお母さんのセンスが全く分からない。

「うわ……でも確かに、祐麒さんかぁ……」
 祐麒さん、っていうのは、亜紀お姉ちゃんが中学受験の時に家庭教師で教わっていたという人で、お姉ちゃんの初恋の人らしい。そして、今もなお想いつづけているとかいないとか。
 いや、それが問題というか、祐麒さんって既に結婚していて奥さんとはラブラブ大の仲良しで、子供が既に三人いて、そのうち長女は私と同い年なわけで。
「さすがにそれはまずいんじゃないかなぁ、お母さん」
「ふふっ、そうかしら? 大丈夫、相手の家庭を壊すような無粋なまねはしないから」
「いやいやっ、不倫を誘っている時点で駄目だから!」
 お姉ちゃんが激しく突っかかる。
 いや、正直なところ大問題だけれども、私はちょっと違うんじゃないかなぁと思う。
 何がって、お母さんは確かにハチャメチャなところがあって、障害があるほど燃えるというか、一筋縄ではいかないことの方が好きだという性格だけれども、だからといって平気でよそ様の幸せな家庭を壊すようなことをする人ではない。
 ならばなぜ、そんなことをしているかといえば。

(…………楽しんでいるんだろうなぁ、絶対に)

 内心で呟く。
 祐麒さんは女難の相が昔からあると、前に教えてくれたことがある。大学生時代には祐麒さんの奥様を含めた美人の先輩たちをかこっての一大ハーレムを築いていたと周囲から事実認定されていたらしいし(噂ではない! なぜならハーレムの美女達本人が言っているのだから)、他にも色々とあったらしい。
 確かに、今でも若々しくて素敵だから、結婚していても好きになる女性が多いのも頷ける。そして実際、好きになっている女性が多いのだが、その誰もが思い込みが激しいというか、反応が激しいというか、そういう人たちなのだ。
 好きだったのは昔のこと、初恋の良い思い出だとお姉ちゃんは言っているけれど、態度を見る限り今でも引きずっているのは明らかだ。そろそろいい年だけど、お姉ちゃんの浮いた話ってあまり聞いたことないし、付き合っている人とかいるのかなぁ。もしかしたらまだ処女だったりするんじゃないかなぁ。
 それに祐麒さんの奥さん。これまた若々しくて綺麗な人で、いつ見ても祐麒さんとラブラブイチャイチャしていて、三人の娘さんがいてなお、今も恋人気分にしか見えない。そんなだから、祐麒さんが他の女性と何かあるなんて知ったら激しく焼きもちをやき、過剰反応することは目に見えている。
 そういった反応を見るのが楽しくて仕方ないのだろう、お母さんは。そういう人だ。
 だって本気で狙っているなら、絶対に周囲に知らせるようなことしないだろうし、お母さんだったら周囲の人が気付かないうちに奪い取るくらい出来る気がする。
 亜紀お姉ちゃんに気付かれている時点で、本気ではないだろう。
 ちらりとお母さんの方を見ると、目があった。お母さんはくすりと口の端を上げて笑みを浮かべ、お姉ちゃんに気付かれないよう私に向けてウィンクしてきた。
 私の母――江利子お母さんは、そういう人だ。

 

「――な、なんなのあの人っ! 私のお父さんに色目使うなんて!!」
 そしてもう一人、過剰反応する人がいる。
「落ち着いて絆ちゃん、ただの冗談だって」
 私の親友、絆ちゃん。
 絆ちゃんも、祐麒さんのことが大好きな一人だ。そう書くと、とんでもない年上趣味、おじ様趣味なのかと思うかもしれないけれどそうではない。なぜなら祐麒さんは、絆ちゃんの実のお父さんだから。即ち絆ちゃんは、極度のファザコンなのだ。極度というか重度というか病的というか、むしろ変態だ。だって、今でもお父さんと一緒にお風呂入っているとかいうし、口には出さないけれど、絶対にお父さんと初体験したいと思っているに違いないから。保育園の時からの付き合いである私には分かる。
 高校の入学式の場で、祐麒さんを巡って祐麒さんの奥さんである三奈子さん、そしてお母さんが痴話喧嘩を繰り広げるという前代未聞の出来事があり、私と絆ちゃんは羞恥で身を縮こまらせながらどうにか親を学園から出し、疲れた心と体を癒すためにこうして帰宅途中に寄り道をしている場でのこと。
「私のお父さんを……お母さんだけでなく、あんなライバルまで……うぐぐぐ」
 ファストフードのテーブルを握力で破壊しかねない勢いである。
 福沢絆ちゃんは、眉目秀麗、頭脳明晰(何せ新入生総代、即ち学年ナンバーワンの成績をずっと昔から誇っている)、運動神経抜群(中学時代は陸上部で全国大会まであと一歩のところだった)、スタイル抜群(体も手足も細く長くて私は物凄く羨ましいけれど、絆ちゃん的には私のおっぱいが羨ましいらしい)、三姉妹の長女だから面倒見がよく気が利くし、両親が共働きだから小さいころから料理・洗濯・炊事をこなし、私からしてみれば完璧超人としか思えないようなスペックを兼ね備えている。
 ただし、極度のファザコンが時に言動をおかしくしている上に、問題のご両親が毎年恒例のように学園で問題を起こすというか、騒ぎになる――授業参観や文化祭、運動会などにやってきては全校生徒にラブラブシーンを見せつけるから――ので、優等生なんだけど変な人扱いされることも多い。
「いいえ、あれは冗談の目じゃなかったわ。あの泥棒猫め……」
 人の親をつかまえて、『泥棒猫』とは言ったものだ。しかも、祐麒さんは別に自分の恋人でもないのに。
「…………あ、ち、違うのよっ?」
 すると私の視線に気が付いたのか、慌てたように絆ちゃんは首を振る。
「私は別に、お、お父さんのことを父親として大切に思っているから、そう言ったまでだからね」
 うん、どうやら違う方向にとらえたらしい。
 少なくとも昔からの親友である私には、恋愛感情に似たファザコンであることはバレバレなのに、絆ちゃんはこうして体面を気にして言い繕ってくるのだ。
「ナッちゃんのお母さん、美人で色気がむんむんだもんね。あれが未亡人の色気ってやつなのか、生まれ持ってのものなのか……くそう、私ももう少し胸があれば……」
 歯噛みする絆ちゃんだけど、正直、絆ちゃんの心配は無用だ。だって祐麒さん、どこからどう見たって奥さんである三奈子さんのことしか眼中にないし。絆ちゃんのことは大切に思っているけれど、娘としてしか見ていないことも、客観的な立場にいる私からは良くわかる。
 一緒にお風呂に入っているというのも、娘としてしか見ていない証拠だといえよう。いくら絆ちゃんの胸がつるぺたとはいえ(ごめん、でも事実なのだ。本当に絆ちゃんの胸はまっ平というか洗濯板というかなの)、年頃の女の子と一緒にお風呂なんて一般的な父親ならしないのではないだろうか。
 そういった意味では、祐麒さんもちょっとずれている。前に、本当に一緒にお風呂に入っているのか、ちょこっとだけ聞いたことがあるけれど、下の二人の娘さん(亜優ちゃんと由香利ちゃん)は小学校の高学年くらいから一緒にお風呂に入ってくれなくなって寂しいけれど、絆ちゃんが一緒入ってくれて嬉しいと言っていたから、本当に父親として慕われているだけだと思っているようだった。
 ちなみに絆ちゃん、恥ずかしくてお父さんのあそこは見られないらしい。いや、ほんとーーーーに、どうでもいいことだけど。
 まあ、私は幼いころにお父さんがいなくなってしまったから、お父さんとお風呂に入るというのがどんな感じなのか、良くわからないけれど。

「絆ちゃんはお父さんのことになると、思い込みが強すぎだよぅ。それ以外は本当にパーフェクト美少女なのにね」
「そ、そんなことないよ」
「えー、でも中学時代だけでも、何人の男の子に告白されたっけ? 良さそうな人もいたのに、ぜーんぶ断っちゃうんだもん。誰かと付き合ってみれば、相手の良さだって分かるかもしれないのに」
「そんなの、試しに付き合ってみるなんて相手にも失礼じゃない。ま、そもそも付き合いたいと思うほど良いと思える人がいなかったけど」
 絆はそう言うけれど、告白してきた男子の中には野球部のエース、サッカー部のキャプテン、生徒会長といった肩書を持つ名だたる男子に、他にも容姿に優れて女子人気上位の子とか、とにかく学園カースト上位が沢山いたと思うのだけど、比較対象が祐麒さんなのだろうから勝てるわけがない。先入観もあるし、土俵だって違いすぎる。
「そーゆうナッちゃんこそ、どうなのよ。なんたって天使の癒し系、胸も大きいし絶対にモテるし」
「えーっ、私もてたことなんてないよ。絆ちゃんと違って告白されたこともないし」
「男たちは見る目ないよ。私が男子だったら、絶対にナッちゃんを離さないね。でも、告白されなくても、気になる男子とかはいなかったの?」
「うーん、私、あんまそうゆうのよく分かんなくて。多分まだ子供なんだね」
「いや、魅力的な男子がいないから仕方ないよ」
 絆ちゃんの手厳しさにかかったら、魅力的な同世代男子など皆無だ。
「そうなのかな。まあ、もしも素敵な男の子が見つからなかったら、私、絆ちゃんのお嫁さんになりたいな」
「うん、その時は私が貰ってあげるから安心して。あ、でも私もウェディングドレス着たいから、二人ともお嫁さんね」
 これは何年も前から言っている冗談だけど、現実的に絆ちゃんだったら仕事も家事もパーフェクト、性格も良くて格好良し、言うこと無しなのだ。冗談ではあるけれど、それも悪くないなー、なんて思う私がいることも事実。
 絆ちゃんとお喋りしていると時間が経つのなんてあっという間だ、そろそろ家に帰らないといけない頃合いになってきた。
「えー、もうそんな時間? そうだナッちゃん今日うちにおいでよ、それで泊まっていって夜通しお喋りしようよ」
「そんな、いきなり」
「いいじゃん、付き合ってよー、ダメ?」
 と、上目づかいに潤んだ瞳で見つめてくる絆ちゃんに、私の胸はキュンとなる。ずるいなー、こういう弱いところを私にだけ見せてくれるのは嬉しいけれど、断れなくなっちゃうんだよね。確かに明日はお休みだけれども。
 手を繋がれ、逆らうのもどうかという感じでそのまま結局は絆ちゃんのお家に向かう。
 すると、そこにはなぜか。
「――あれっ、お母さん?」
「あら、奈都じゃない」
 絆ちゃんのお家のリビングのソファに腰を下ろし、優雅に手を振ってみせてくるのは間違いなくお母さん。
「ナッちゃん、いらっしゃーい」
 キッチンから顔を覗かせた絆ちゃんのお母さん、三奈子さんが笑顔で迎えてくれるのはいつものこと。
「な……なんで、この……え、江利子さんが家にいるのよっ」
 途端に眉を吊り上げる絆ちゃん、"この人"と言うのだけはどうにか堪えたようだけれど。
「なんでって、話しているうちに一緒にお茶でもどうかってなって」
「そ、そう……」
 あれほど激しく言い合っていたというのに、こうしてあっさりと和解してしまう(?)のは、三奈子さんの人柄のお蔭なのだろうか。また、それを見越してお母さんも絡んでいるのだろうと私は思っている。

「お母さん、今日はナッちゃんお泊まりしていっていいよね?」
「もちろん、大歓迎よ。それじゃあ、江利子さんも一緒に食べて行く?」
「あら、良いのかしら? 遠慮なくお邪魔させていただこうかしら」
「……少しは遠慮しなさいっての」
 ぼそりと、口を尖らせて不満そうに呟く絆ちゃん。
「あ、亜優ちゃんと由香利ちゃんはまだ学校だっけ? 二人とも久しぶりにお話ししたいなーっ」
「え、ああうん、そうかも」
 絆ちゃんの機嫌が悪くなるのを防ぐべく話題を変えると、ちょうどタイミング良く玄関が開いて由香利ちゃんの声が聞こえてきた。
「ただいまーっと、あれ、お客さん?」
「私、迎えに行ってくるね」
 くるりと踵を返して玄関に向かおうとする私。由香利ちゃんが帰ってきたのは実に丁度良い、由香利ちゃんは末っ子だけどしっかり者だし、空気を読むのがうまい。頭に血が上ると周囲が見えなくなる絆ちゃん、のんびり屋で天然の亜優ちゃんという二人の姉を持ったせいなのかもしれない。
「お帰りなさい、由香利ちゃ――むぐっ」
 廊下に飛び出た私だったけれど、いきなり何かに正面衝突してしまった。
「……危ないよ、家の中で勢いよく走ったら」
「あ……すいません」
 絆ちゃんのお父さん、祐麒さんだった。
 うわ、恥ずかしい、思い切りぶつかっていってしまったよ。
「まあ、奈都ったら意外と大胆ね。そんな積極的な子だったなんて……お母さんも、うかうかしていられないわね」

 ――――は?

「ちょ、ちょっとナッちゃん、まさかナッちゃんまで」
 いやいやちょっと絆ちゃん、落ち着いて。ただのアクシデントなのに。
「祐麒くん、奈都の胸はどうかしら? 私にはまだ及ばないけれど、既にEカップで将来有望なんだけど」
 確かに勢いよくぶつかっておっぱい押し付けちゃったけれど……って祐麒さん、ここで顔赤くしたらまずいからっ!
「わ、私だってEカップくらいあるし、ナッちゃんに負けてませんから!!」
 ってなんで三奈子さんがここで張り合ってくるの!?
「あら、三奈子さんEなの? そう……でも絆ちゃんは…………」
 お母さんも、なんでそこでわざわざ絆ちゃんの真っ平な胸を見ながら残念そうにため息をついたりするの!?
「……っ、こ、この、色情魔! お父さんも、鼻の下伸ばさないのーー!!」
「いや、のばしてなんかないって!」
 あっという間にリビング内が喧々諤々の大騒ぎになる。
「あー、もーっ」
 がっくりと肩を落としていると。
「奈都さん、お久しぶりです。でも、わざわざ騒動の種を持ち込んでこないでくださいよーっ」
 近づいてきた由香利ちゃんが、サイドポニーを揺らしながらちょっと恨みのこもった目を向けてくる。
「ごめんね由香利ちゃん、なんとかならないかなぁ」
「こうなったら、あたしでも無理ですー。収まるまで時間かかりそうだから、あたしの部屋で映画でも観てません? ロメロ監督のゾンビコレクション、買ったんですよ」
「え、うそ、うわー、観たい観たいっ!」
 ホラー映画の大嫌いな絆ちゃんとは絶対に一緒には観ることのできない作品だ。私は喜んで由香利ちゃんの後についていった。
「もーっ、お母さんやめてよ!! お父さんも、でれでれしなーーーーい!!」
 リビングから聞こえてくる絆ちゃんの叫びを申し訳ないと思いつつも聞き流し、私は由香利ちゃんと楽しくビデオ鑑賞したのであった。だって、毎回毎回つきあっていたら、こっちが疲れちゃってとてもじゃないけれど、身がもたないから。

 

「……ところで奈都さん、Eカップって本当!? うわ、これすごいふかふかだー! もっと触っていい、ね、ほりゃー!」
「あーん、ちょ、由香利ちゃんダメだってば……あっ……らめぇ~~~~っ!」

 

 

おしまい

 

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