書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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ノーマルCP マリア様がみてる 乃梨子

【マリみてSS(乃梨子×祐麒)】あいあい

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~ あいあい ~

 

 

 雨が降ると体感温度が一気に下がるように感じた。ただでさえ、年末が近づいてきたここ数日、一気に本格的な冬の寒さが襲ってきているのだから。今日一日はもつだろうと言っていた天気予報もあてにならないものだ。
 間もなく学期末で学校も終了し冬休みになるということで、なんとなく皆の気もぬけて集中力に欠けている。クリスマス、お正月というイベントが間近に控えているせいもあるだろう。
「まったく、皆して浮かれちゃって……」
 リリアンのお嬢様といえども女子高校生であることに変わりはないわけで、イベント事になれば普通に浮かれ、楽しむくらいのことはする。だから別にそんなことでいちいち刺々しくなる必要もないのだが、なんとなく乃梨子自身は気分が上がってこないのだ。
 女子高とはいえ頑張っている子は頑張っているわけで、中には彼氏とクリスマスデートでしゃれ込むなんて子もいるようで。肝心の乃梨子はといえば当然、特別に用事があるわけでもなく、のんびりと過ごすくらいしか予定はない。そう、別に祐麒から誘われているわけでもないのだから。

「…………って、な、なんであの人が出てくるのよっ!?」

 気の迷いを消そうと、手のひらで頬をぺしぺしと叩く。
 あんな奴のことなんて何とも思っていないし、そもそも誰に対しても愛想が良いし、むっつりスケベそうだし。
「だから、別に全然関係ないし」
 わざわざ口に出して確認する。
 うん、問題ない。
 問題ないとなれば、さっさと用事を済ませて帰ってしまおうと、乃梨子は目的の店に向かって買い物を済ませて外に出る。雨は相変わらず降っており、やれやれと思いながら傘を開いて歩き出す。
 歩きながら、何気なく周囲を見回す。
 大体、この曜日のこの時間、楽しみにしている週刊誌を立ち読みし、ついでにぶらぶらするために学校帰りにこの辺をよくふらついていると、前に言っていた。
 別に、会おうとかそんなことを思っているわけじゃないし、乃梨子が今日やってきたのだってあくまでたまたまなわけで、ただ、もし本当にいるのならば言っていたことが真実だったと分かるわけで、いざという時に何かの役に立つかもしれない、なんて思いはある。
 とはいえ、この寒い中を無駄に歩き続けるつもりもなく、見つけたところでどうしようということもないわけで、そろそろ帰るかと無駄な寄り道を終えて駅に向かう。
「…………あ、あれってもしかして」
 傘をさしており後姿で、ちょっと横を向いたときに顔が見えただけだが、おそらく間違いはないだろう。
「本当に、いるなんてね」
 雨が降っているのに来ているということは、話の信ぴょう性も高そうだ。
 さて、後ろからこっそり近づいて驚かせてやろうか、なんて思いかけたところで動きが止まる。

 祐麒は一人ではなかった。
 友人と遊びに来ているわけでもない。
 なぜなら、祐麒が持っている傘の下、そして祐麒のすぐ隣にリリアンではない学校の制服姿の女子がいる。いわゆる、相合傘の状態だ。
 乃梨子は無言で少しずつ近づいてゆき、そして気が付いた。
 確か、西園寺ゆかりと名乗っていた女子だった。
「はぁ……っ? な、何よ、あいつったら……」
 なぜかムカッとして、乃梨子は更に近づいて様子をうかがう。幸い、雨の音が気配を消してくれているし、傘によって自分自身を隠すこともたやすく、気付かれそうもない。
 ちらちらと見える横顔から、ゆかりが頬を朱に染めつつも笑顔で楽しそうなのは分かる。祐麒の表情はよく見えないが、傘をゆかりの方に倒して濡れないように気づかい、その代わりに祐麒の外側の肩が濡れているのが分かる。一丁前に、紳士ぶっているようだ。
 ぐっと近くまで寄っていくが、さすがに声が聞こえるまでには至らないのが、乃梨子をもやもやとさせる。
 そもそも、こんな雨が明らかに降りそうな日なのに、西園寺ゆかりは傘も持っていなかったのか。と、よくよくゆかりを見てみると傘らしきものを手にしているのが目に入ったが、どうもその傘はいびつな形に歪んでいる。真ん中あたりからぐにゃりと湾曲しているような感じだ。
「…………まさか、強風で傘がこんなことになるなんて思いも……」
 その時、雨が弱まったのと風向きによって、更に乃梨子がかなり接近していたこともあり声が聞こえてきた。まあ、ゆかりが浮かれているのか、声が大きかったのもあるが。
(――――って、はぁ!? 何が強風よ、そんなの明らかに手でひん曲げているじゃない! そこまでして相合傘したいの? あいつもあいつよ、なんでそんな手にホイホイ引っかかって傘に入れてるのよっ、あ、あの女、ちょっと腕が触れて恥じらったりして、わざとらしい!)
 傘の下から射るような視線を前方の二人に注ぎ続ける乃梨子。
 このまま、二人を相合傘で歩かせていくわけにもいかない、どう邪魔をしてくれようか。
「……って、な、なんで私がそんなこと気にしなくちゃいけないのよっ!」
 別に祐麒とは単なる知り合いで何の関係もないのだ。祐麒が誰と一緒に歩こうが、誰と相合傘をしようが、気にする理由など何もない。
「あ、いやいや、でもほら、悪い女につかまって後で泣きを見るのは、さすがに可愛そうだし? なんだかんだいって祐巳さまの弟だし、ここで見なかったことにするのは信義にもとるというか。偶然とはいえ見つけてしまったからには……って、あ、ちょ、待っ!」
 乃梨子が一人でブツブツぐちぐちと思い悩んでいる間に、祐麒とゆかりの二人は信号を渡って道路の向こうに行ってしまっていた。慌てて追いかけようとしたものの既に信号は赤に変わっており、車が乃梨子と二人の間を遮るように走り抜けてゆく。
「ああ、しまった……」
 やきもきとしながら道路の向こうに目を向けるが、様々な傘に紛れ、やがて信号が青に変わるころには完全に見失ってしまっていた。
「くっ……ガッデム!」
 らしからぬ言葉を吐き捨て、非常にムカムカした気持ちのまま乃梨子は帰途についた。

 

 翌日になっても乃梨子の機嫌は良くなかった。
 机に頬杖をつき、むすっとしているとクラスメイト達も剣呑ならざる雰囲気を察するのか、近寄ってこようとしない。
 ただ、何事にも例外はある。
 恐れを知らぬ凸凹コンビが乃梨子の机に近づいてくる。
「乃梨子さん、今日は随分と機嫌が悪そうね」
「本当、そんな顔をしていては誰も近寄れませんよ?」
 可南子と瞳子が机の前に立ち、話しかけてくるのを見上げる。
「ちょっと寝不足なだけ、放っといてよ」
「本当に、寝不足なだけ?」
「彼氏とうまくいっていない、とかじゃありませんの?」
「っ…………その手には乗らないから。大体、彼氏なんて、いないし」
 瞳子のブラフに一瞬イラッとしたけれど、落ち着いて冷静に応じる。この程度のことで動揺して変な答えをしてしまうほどうっかりしていない。
「またまたそんなこと言って。どうせクリスマスには二人でしっぽりするんでしょう」
「ちょっと可南子さん、下品ですわよ」
「何よ、痛いじゃない、やめてよ」
 瞳子が可南子のわき腹を肘でつつくと、可南子はさして痛くもなさそうな顔をしながらも体を捩り、瞳子の腕を押し返す。なんだか、目の前でイチャイチャされているようでムカついてくる。
「別に、あの人と私は何も関係ないから」
 ふいと横を向き、それで話を終りにしようとしたのだが。
「あら、あの人とは誰でしょうか? 私は別に、どなたの名前も出していませんが」
「別に言わなくても、ごく自然に思い浮かぶ人がいるということでしょ?」
「っ! そんなの、会話の流れというか、言葉のあやでしょ」
 ここで怒っては相手の思う壺、冷静に受け流す。
「そうですか。それならば、私達で誘ってしまいましょうか?」
「そうね、それは良いアイディアかも」
「ふん、好きにすればいいでしょ」
「……あらら、拗ねちゃって。よっぽど腹に据えかねることでもあったのかしら」
「もしかして浮気でもされちゃったんですか?」
「別に、アイツが誰と相合傘していようと私には関係ないし」
「――――なるほど、ご機嫌斜めの理由はそれだったと」
「乃梨子さんという方がいながら、他の女性と一つ傘の下とは、確かに褒められたことではありませんわね」
「あ、しまっ――」
 また余計なことを口にしそうになり、慌てて口を閉じるが時すでに遅く、目の前の二人はニヤニヤとして乃梨子のことを見ている。
「……まだ、何か用でも?」
「いいえ、別に」
「乃梨子さん、今日も降水確率は50%です。私に傘を貸していただければ、乃梨子さんも同じように」
「あーあーうるさい、用がないならさっさとどっかに行ってよっ」
 机を手のひらで叩いて睨みつけると、ようやく瞳子と可南子は去って行ったが、可南子の席で二人してひそひそと話しているのが気になる。どうせろくでもないことに決まっているのだ。

 

 もやもやとした気持ちを抱えたままお昼休みになり、荒んだ心を癒すためにも志摩子と一緒にランチをすることにした。
 寒いし外で食べるというわけにもいかなかったので、薔薇の館でランチタイム。寒いせいか、他に山百合会メンバーは誰の姿もなかった。
 二人きりでほっこりと穏やかな昼食を得て、苛々していた気持ちも安らいだ。さすが志摩子、癒しの効果が抜群だと自然と頬も緩みそうになる。
「どうしたの乃梨子、にこにこして」
「え、そう? そんなことないけれど。と、そうだ志摩子さん、クリスマスのことで話があるんだけど」
 気分も良くなったことで、今までと少し違った話題を出す。近づいたクリスマス、志摩子と一緒に過ごすのも楽しそうだと思い声をかけてみる。志摩子の実家はお寺だが、だからといってそこまで堅苦しくはないらしく、クリスマスを一緒に楽しんだところで問題はないはず。
「クリスマス? ああ、そうね、楽しみよね」
「うん、そうそう」
 上品に微笑みながら頷く志摩子に、さすが妹の気持ちがよく分かっていると嬉しくなる。
「乃梨子は祐麒さんと過ごすのでしょう? 大丈夫、邪魔するようなことはしないから」
「本当、ありがとう……って、え?」
 当然、一緒に過ごしましょうと言われるとばかり思っていた乃梨子は、勢いづいて頷き感謝を示そうとして、固まる。
「まあ、そんなに楽しみにしていたなんて……ちょっと妬けるわね」
「えっ、ちょ、ちょっと待って志摩子さん!?」
 とんでもない誤解をされているようで、慌てて訂正しようとする乃梨子だが。
「そんなに驚かなくても、乃梨子から祐麒さんを取ろうなんて思っていないから大丈夫よ。ふふ、焦る乃梨子も新鮮ね」
「そ、そうじゃなくて、私が言いたいのはそんなことじゃないの。私が一緒に過ごしたいと思っているのは」
「ああ、もしかして祐巳さんや由乃さんのことを心配しているの? 任せて、私が責任をもって乃梨子のその日は開けてあげるから」
「いや、だからそうじゃないの志摩子さん。だって私は」
「年次が下だから遠慮しているのね。でも姉である私がいるから」
「し、志摩子さん」
「姉らしいことをさせて頂戴。ね?」
 邪気のない、純粋な厚意の言葉を天使のスマイルとともに投げかけられ、思わず抗弁の言葉が出なくなってしまう乃梨子。
 その一瞬が命取り。

「あ、予鈴だわ、そろそろ戻りましょうか」
 いつもは比較的ゆっくりとしている志摩子だが、予鈴を耳にして珍しくてきぱきと片付けをしていく。一方の乃梨子は動揺もあったし、紙パックの紅茶がまだ残っていたので慌てて飲み干そうとして噎せたりして、片付けにも手間取る。
 志摩子を追いかけていくものの、結局は誤解を解くことが出来ないまま午後の授業が始まってしまった。
 このままではまずい、変に話が広まる前に志摩子を捕まえて説明をしなければならない。幸い、志摩子と祐巳たちのクラスは違う。放課後になってすぐに志摩子のもとに行けば間に合うかもしれない。
 やきもきと午後の授業が終わるのを待ち、さっさと志摩子のクラスに行こうと思ったが掃除当番で足止めを食らい、それでも急ぎ足で向かう。

「わっ、と、乃梨子ちゃん」
 しかし、志摩子のクラスにたどり着く前に、教室から出てきた祐巳に見つかり呼び止められる。
「あ、祐巳さま、ごきげんよう」
 だが考えてみればこれもチャンス。志摩子と話す前に祐巳たちを止めることが出来れば、それはそれで次善の策になる。
「あの、祐巳さま」
「あ、うん分かってる。祐麒のことでしょ、志摩子さんに聞いたから」
「あああああ、なんでこういう時に限って素早いのよあの人は……」
 頭を抱える乃梨子を、不思議そうに見ている祐巳。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ、ちゃんとクリスマスには二人きりにしてあげるからさ」
「だから、そうじゃないんですってば。いいですか、聞いてください」
「う、うん……」
 乃梨子は祐巳の両肩を掴み、鬼気迫った目で詰め寄る。さすがに人の目が気になるので場所は移動したが、懇切丁寧に、すべては誤解であることを説明した。乃梨子らしく分かりやすい筋の通った説明であった。

 

「――――というわけです、分かりましたか?」
「ああ、うん、はい」
 きょとんとしつつも頷く祐巳に、一抹の不安を覚える。
「本当に、分かっていただけました?」
「分かった、祐麒には何も言わないし、余計なこともしない。これでいい?」
「はい、お願いします」
「じゃあ、志摩子さんにも言っておくね。ほら、お姉さまとして乃梨子ちゃんのためになんとかしてあげたいって、そんな風に思っているから」
「ああ、それは助かります。お願いします」
 ぺこりと頭を下げて頼む。
 どうにか分かってもらえたようでホッとする乃梨子。
 そんな乃梨子を見て、祐巳は思う。

(さすが乃梨子ちゃん、人にお膳立てされるのは嫌だから自分でどうにかしたいなんてね。ここは先輩として、姉として、そして……未来の義姉として温かく見守ってあげましょう……なんてね。祐麒、しっかりしなさいよー)

 もちろん、祐巳がそんな風に考えているとは知らないばかりか、祐麒との誤解を理解してもらえたと安心した乃梨子は、先ほどの鬼気迫った表情から穏やかな顔に戻っている。それがまた祐巳に、「そんなに嬉しいんだ」と斜め上に曲解されているとも知らず。
「それじゃあ私、先に薔薇の館に行ってますね」
「あ、ちょっと待って乃梨子ちゃん」
「はい?」
「今日は山百合会の仕事なくなったの。だから、今日は帰っていいよ」
「え、そうなんですか?」
 初耳の乃梨子だったが、わざわざ人手をなくすような嘘をつくとも思えないし、とりあえず納得することにした。
 一方で祐巳は。
(せっかく良い気分になったことだし、ここは乃梨子ちゃんのために時間を作ってあげようじゃない。うん、さすが私)
 と、自画自賛。
 そんなことなど気が付くはずもなく、乃梨子は学校を後にした。

 

 思いがけず早く学校を出ることが出来たので、なんとなく寄り道をしてみた。真面目で生粋のリリアン生徒ならやらないだろうが、乃梨子は真面目だけれど生粋のリリアン生ではなかったから、特にこれといった罪悪感はない。
 ふらふらと足が向いたのは、昨日もやってきた場所。
「…………って」
 つい、左右に目を走らせて誰かの姿を探してしまう自分に気が付き、否定するかのように首を振る。
 この辺に遊びに来ることが多いと聞いているし、時間だって丁度良いけれど、そうそう見つかるわけもない。というか、別に探す理由も必要性もない。
 乃梨子は一人、書店やレコードショップを覗いて見て歩く。
「しかし、今日も寒いな……あ」
 ほう、と吐き出された白い息が消えていくのを見ていると、額に冷たい滴があたった。雨が降り出してきたのだ。
 鞄から折り畳み傘を取り出し、空を見上げる。
 降り出した雨は徐々に量と勢いを増してきており、傘をささずに駅まで頑張れそうもなく、素直に傘を開くべく手をかける。
「て、うわ、結構強くなってきた?」
 早足の人、駆けて店に飛び込む人の姿なども見られ、乃梨子も急いで傘を開いて身を守ろうとすると。
「――――ふうっ、ラッキー、助かった!」
「うわぁっ!? て、ちょっ……ゆ、祐麒さん、なな、なんですかっ!?」
 いきなり乃梨子の隣に駆け込んできたのは祐麒だった。びっくりして目を丸くする乃梨子の前で、祐麒は悪びれずに苦笑いしている。
「いやー、いきなり雨が降り出してどうしようかと思ったら、二条さんの姿が見えたからつい」
「つい、じゃないですよ、びっくりしたじゃないですかっ」
「ごめん、ごめん」
 手刀を切って謝意を見せるが、本気で悪いと思っているようには見えない。
「今日の降水確率で、傘持ってきていないなんて」
「いやー、朝は降っていなかったじゃない。で、学校に置き傘があると思っていたんだけど、昨日それ人に貸しちゃってたの忘れててさ」
 笑いながら言う祐麒だが、その置き傘というのが昨日、西園寺ゆかりとの相合傘に使われ、そのまま西園寺ゆかりに貸されたのだということは容易に想像がついた。
「駅まででいいから、入れて行ってよ。あ、俺が傘は持つから」
「別に、結構です」
「いいからほら、貸してって」
「それくらい大丈夫……ぁ」
「あっ……と」

 祐麒の手が、傘の柄を握る乃梨子の手に触れた。
 たったそれだけのことなのに、乃梨子は必要以上に動揺して傘を持つのを祐麒に預けてしまった。
「そうそう、これくらいさせてよ」
 無言で祐麒を見ると、昨日と同じように乃梨子の方に傘を傾け、乃梨子が濡れてしまわないようにしてくれている。
「まあ……それなら合格点ですけど」
「ん? さすが手厳しいね、持たなかったら落第だったのかな」
 祐麒の左肩が、雨に濡れている。
 乃梨子は気が付かないふりをして歩を進める。
「……だ、大体、いきなりなんて、下手したらセクハラですよ」
「ごめん、でもわざとじゃないし、ちょっと手が触れただけで厳しくない?」
「そっちじゃなくて、相合傘の方ですっ」
「相合傘って……あ、ああ」
「…………っっ」
 言われて祐麒が微妙に照れを見せたが、余計なことを口にしてしまった乃梨子の方も顔を赤くして俯いてしまう。
 結局そのまま無言で駅まで歩く。

「傘、ありがとう。助かった」
「いえ、別に」
「それじゃあ、またね、二条さん」
 手を挙げ、改札の中に消えていく祐麒を、乃梨子は声もなく見送る。
「……まったく、ありがたいと思うなら、何かお礼の一つくらい気をきかせても良いものなのに」
 肩をすくめ、自分はさてこれからどうしようかと考える。一緒に帰っても良かったのだが、なんとなく残ってしまったのは気まずかったから。どこかで時間でも潰そうかと振り返ると。
「あぁ、今日も寒いというのに、お熱いですわねお二人は」
「ホント、相合傘かぁ……」
 ニヤニヤと笑って乃梨子を見つめている瞳子と可南子の姿。
「なっ……あ、あんた達!?」
「私達、別にたまたま帰り道の駅にいたらお二人を見ただけですよ?」
「そうそう、別に相合傘を見ようなんて思ってなかったし、ただの偶然だけど、ねぇ?」
 ニマニマと笑いながら話す二人に、カッと頬が熱くなる。
「ちっ……違う、あれは、祐麒さんが後ろから無理矢理に入ってきただけだし!」
「その割には乃梨子さん、嬉しそうな顔してますわ」
「照れなくてもいいのに」
「だから、ちが――」
 そこで更に。

「え、何、乃梨子、あんたバックから無理矢理に挿入されるのが好きなの!? 獣みたいに激しいのが好きで嬉しそうによがっていたなんて、やっぱ、真面目そうなやつほどエロくて性欲が激しいってのは本当なのか」
「光っ!? あんた、何、とんでもない勘違いしているのよっ!?」
 中学時代の友人が都合よく顔を見せ、一人で納得したように頷いている。
「まあ、一日でティッシュを何箱も使い切るような彼氏が相手だもんね」
「こら光、アンタ……」
「まあ、それはどういうことですの? 詳しく教えてくださいませんか?」
「実に興味深い発言……そこまで進んでいたとは乃梨子さん……」
「えー、何、あなたたち乃梨子の友達? いやー、それが乃梨子ったらさー」
「こらーーーっ、余計なことを喋るなっ!!」
「この焦りよう、どうやら事実のようですわね」
「色々な意味でヤルのね、乃梨子さん……」
 顔を赤らめながらも、興味津々の目で乃梨子を見つめる瞳子と可南子。そんな二人に近寄り、楽しそうに話し始める光。
「だから、ちがーーーーーうううう!!!」
 乃梨子がどう言おうが、周囲は確実に、色々なことを固めてゆくのであった。

 

おしまい

 

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