書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(由乃、祐麒他)】ぱられる15  来訪者

更新日:

~ ぱられる! ~

 

 「ぱられる15  来訪者 」 

 

 

 手に、何か柔らかいものが触れた。
 弾力があって、動かすと形を変え、包み込むようであり押し返すようであり吸いつくようであり、とにかく気持ちよくていつまででも触っていたくなるような代物であることに間違いはなかった。
 ああ、これはおっぱいだなと、理解する。
 うん、間違いない。この感触は、おっぱいだ。即ちこれはお約束という奴だ。由乃か令かどっちか分からないが、起こしに来たところを寝ぼけて掴んでしまったというところであろう。
 しかし待て、それにしてはちょっとおかしい。
 寝たままの状態で胸を掴んでいるということは、相手も同様に横になって寝ている体勢でないとおかしい。今までにも同様のアクシデントはあったが、由乃も令も、祐麒のことを起こそうと身を屈めている姿勢であることが殆どだった。
 いくら由乃がドジだといっても、祐麒の布団にもぐりこんで寝てしまう、なんてことはないはずだ。令にしても、それは同じ。
 そもそも、それ以前にこの胸だ。
 由乃の胸にしては、大きすぎる。由乃はこう、真っ平らとまではいかないが、本当にささやかな柔らかさしかなく、こんな手で『掴める』といったボリュームなど望みようもないはずだ。
 一方、令のだと考えてみると、今度は逆に物足りない。ボーイッシュな外見の令だが、実はプロポーションは良くて胸も大きい。そう、手に収めようとするとちょっとこぼれてしまうような、指が潜り込むような。だが、そこまでの大きさではない。
 由乃でも令でもないとしたら、一体だれなのだろうか。疑問を解消すべく、祐麒はより丹念に胸の感触を感じ取ろうとする。シャツ一枚にノーブラ。む、この周囲の柔らかさに反するように、ちょっと硬さを感じるぽっちりとしたものは……
「……ん、あっ……ん。祐麒、もうちょっとやさしく……ふぁ」
 甘ったるい声が耳に届く。
 由乃の声でも、令の声でもない。
 この頃になって、さすがに頭も少しずつ回転し始めてきて、ようやく『なんかこの事態やばくない?』という思いがこみ上げてきて、目を開いた。
 すると目の前には、うっすらと頬を桜色に紅潮させた女の子が、潤んだ瞳で切なそうに祐麒のことを見つめていて、甘い吐息を投げかけてきている。
 さすがに思考が停止する。このような状況は、想像外だった。
「え……ちょっと、え?」
「やっ……んあっ……はふぅ」
 体を離そうとしたが、腕枕状態になっていて、腕がしびれていて動かすことが出来ない。そうこうしている間にも、もう片方の手は動物的欲求に突き動かされているのか、飽くなき探究心を求めて未開の柔肌をまさぐっている。
「あ……祐麒、すごいことになってるね」
「えっ、あ、うわあっ!?」
 少女の視線が、祐麒の下半身に向けられていた。朝、そして今の状況と、元気いっぱいになりすぎる条件は十分すぎている。
「お、男の子だもんね、いつのまにこんなに」
 恥しそうにしながらも、ちらちらと下腹部を見つめる少女。だが、そんな状態を見られている祐麒の方が恥しい。
「あ、あの、えーと、ど、どうすればいい?」
「ど、どうするって、何が?」
 少女に問われるも、何のことを言っているのかも分からず、ただ戸惑う。
 顔を赤くしながら、少女は小さな声で言う。
「だから……て、手で、とか、してあげた方が、いいのかな?」
 少女の言葉が、頭の中でぐるぐる回る。
 手でって、何が手で!?
 いやいやちょっと待て、朝起きたら可愛い女の子が同じベッドの中で眠っていて、その女の子の胸を揉んで、さらに女に子に手でって、何がどうすればそんなことになるのか。
「だ、駄目だって、ちょ、まずいって! そもそも君はいったい」
「でも、苦しそう……」
 少女の手が、おずおずと伸びてくる。
 駄目だ駄目だ駄目だ、そんなことをしては駄目だ。初めて会った男のベッドの潜り込み、あまつさえ下の世話をしようなんて、どんな痴女だ。もう少し恥じらいというものを持て。とか思いつつ、少し期待している自分もいて自己嫌悪に陥りそうにもなる。
 ん、待て。
 本当に初めてこの少女と会ったのだろうか。
 そもそも、見ず知らずの少女が勝手に人の家に上がり込むことなんて、できるわけもないだろう。となると、両親の知り合いか何かなのか。
「――って、だから駄目だっつーの!」
 少女の手を避けるようにして、腰を引く。
 恥しそうにしながらも、逃げられたことが不満なのか、少女は怒ったような目をする。
「大体だな、こんなところ由乃にでも見られ……た……ら…………」
 さーっと、顔が青ざめるのが分かった。
 そうだ、あの短気で乱暴でがさつな由乃に見られでもしたら、どんな悲惨な目に会うか分からない。由乃だけではない、優しい令だって、祐麒がエッチなことをした時には、恥ずかしがりながら制裁を加えてくるのだ。
 二人が起こしに来る前に、今の状況を改善しなくてはならない。

「こらーっ、祐麒、いつまで寝ているの! 遅刻しちゃうじゃない」

「うえええええっ、やばいやばいやばいっ!!」
 どうこうする前に、外の方からそんな声が聞こえてきた。続けて、階段を駆け上ってくる足音。複数の足音が聞こえるということは、令も一緒ということだ。もはや、一刻の猶予もない。
「と、とにかく離れてくれっ!」
「え? っていわれても、祐麒が私の胸、離してくれないから……」
「えっ」
 そうだった。
 あまりに揉み心地が気持ちよくて、吸いついて離れなかったのだ。
「うわ、ご、ごめんっ……て、ぎゃあっ!!」
「ちょっと、それ、酷くない?」
 いきなり悲鳴をあげたのは、少女の指が祐麒の大事な所に到達して、ほんの少し、触れたからだ。
 そして。
「祐麒っ、さっさと起きなさい――――」
「おはよう、祐麒くん。今日もいい天気っ……」
 勢いよく開かれた扉から室内に入ってきた、由乃と令。
 ベッドの上の痴態を見て、二人の動きが止まる。
「いや、由乃、令ちゃん、これは違うんだぞ? 別に俺はやましいことなど何も」
 少女を腕枕し、抱き合いつつ胸を揉んでいる状況では、説得力など何もあったものではないが。
「……ゆ、ゆっ、祐麒の……」
「祐麒くんのっ…………」
 ゆらりと、由乃と令の背後に炎のオーラが浮かびあがる。
 あ、これ来る、ヤバイ、今までで最大級のが。
 無駄と分かりつつも、なんとか逃れようと足掻く。
「だから待て! これはそう、俺を貶めようとしている秘密組織の謀略だ! 俺に落ち度はまったくないのだ!」
「えー、こんなに立派にしておいて?」
 少女の指先が、祐麒の股間をさす。
「よ、余計なことを言うなッ、って、うわ待て由乃、ちょ、令ちゃ――」
 最後まで口にすることはできなかった。
「こんの、変態エロ狸ーーーーーーーーーっ!!!!!」
「え、えっち、不潔っ! ここここんなのだめーーーーーーーーーっ!!!!!」
 由乃と令、タイミングのバッチリ合った二人の鉄拳が飛んできて。
「バルディオーーーーーーーーーーーッス!!!!!!!」
 祐麒は星になった。

 

「――くそっ、遅刻するじゃねーかっ!!」
 家を飛び出し、走り出す。
「祐麒が悪いんでしょ?」
「ゆゆゆ祐麒くんの、えっち……」
 由乃も令も、いまだに機嫌が悪いが、それでも待ってくれていただけありがたいのかもしれない。
 星になり意識を失った祐麒が目を覚ますと、一緒に寝ていた少女の姿はなくなっていた。由乃と令が騒いでいる間に姿を消してしまったらしく、本当に存在していたのかと不思議に思うが手の平に残る感触は鮮明に思い出せる。
 色々と疑問はあったが、時間を見れば遅刻ギリギリで、両親に問いかける間もなく家を出てきた。おかげで、格好はぐちゃぐちゃだし、朝飯も食べておらず力が入らない。
「自業自得」
「そうだよっ」
 普段は祐麒をフォローしてくれる令も、今日ばかりは頬を膨らませている。
「お、女の子を部屋に連れ込んで、あ、あんなことしてっ……サイテーだよっ!」
「だから、何もしてないってば」
「……胸、揉んでた」
「あ……あれは、寝ぼけていただけだ」
「祐麒くんの、えっち……」
「令ちゃんまで」
 左右両側から非難の目を向けられ、身を縮ませる。
 当分の間、言われそうだが、祐麒だっていまだに分かっていないのだ。
「ちょっと祐麒、聞いているの?」
「ああもうっ、そんなことより急がないと遅刻する、走るぞっ!」
「ええーーっ!?」
 由乃の抗議の声を無視するようにして、走り出す。実際、走らないと間に合いそうもなかった。
 令と由乃も分かっているのか、すぐに後を追って走り始めた。
 しかし、学校が近くなったところで、もともと体力のない由乃が限界を迎えつつあった。
「ちょ、ま、待ってよーっ!」
「待ってたら、遅刻しちまうだろうがっ」
「な、なんだよーっ、大体、ゆ、祐麒のせいじゃないのさっ」
「俺が起きるまで待っていたのは由乃だろう。遅刻が嫌なら、無視して行けばよかったんだ。じゃあな、先行くぞ」
「ちょっと、ま、待ってよ、待ちなさい、待ってったら、待ってよーーーーーぅっ」
 へろへろになっている由乃の声が、遠ざかる。
「祐麒くん、それはちょっと」
 体力なら祐麒以上にある令が、非難めいた目で祐麒のことを見つめてくる。
 目で窘められて、足を止める。
 色々とあったとはいえ、由乃と令は祐麒の意識が戻るまで待ってくれていたことは確かだ。殴った負い目もあったのだろうが、心配だってしてくれたのだろう。
 頭をかき、息を吐き出す。
「……仕方ないな、ほら、行くぞ」
 ようやく追い付いてきた由乃に手をさしのばす。
「え、な、何よ、はあっはっ、はっ、ちょっ……きゃあっ!?」
 息も切れ切れの由乃の手を握る。
 顔をあげてきた由乃の頬が赤いのは、走って息があがっているからだろう。
「ちょちょっ、ちょっと待って、足が、転ぶ、転んじゃうっ!」
「踏ん張れ!」
 由乃の手を握ったまま、由乃を引っ張って走り出す。疲労している由乃は、もつれそうになる足を必死に動かしてついていく。お下げが揺れる。
 そうして走っていると、不意に、空いている腕をつつかれた。
「……私も」
 見ると、隣を走る令が手を伸ばしてきていた。
「え? でも令ちゃんは余裕じゃ」
「だって……ずるい」
 口を尖らす令。
 何がずるいというのだろうか。確かに由乃は引っ張られているかもしれないが、元々の体力が無いのできついことに変わりはないはずだ。一方で令は、ほとんど顔色を変えていない。
「ご、ご飯食べたから、お腹が痛くなっちゃったの! いいから、引っ張って」
「あ、ああ……そういうことか。意外とドジだな、令ちゃんも」
「祐麒くんのせいでしょうっ」
 拗ねる令の手を握る。肩掛けのバッグなので、幸いにして両手を使うことが出来たから。そのまま祐麒は、二人を引っ張って学校まで走った。
 もちろん、『重い』などという言葉を口にするのは自殺行為なので、しなかった。

 

 走ったおかげで、チャイムが鳴る前に教室に到着することが出来た。由乃は今にも死にそうだったが。
「おはようお二人さん、今日は両手に花のラブラブ登校だったわね」
 出迎えてくれた蔦子は、さっそく軽口を叩きつけてくる。
 祐麒が、由乃と令の二人と手をつないで走って登校したところを見たのだろう。
「遅刻しそうだったから、さ」
「ふぅん」
 物言いたげな表情で、蔦子は机に突っ伏している由乃を見る。
「でも、いいじゃない。遅刻しそうになっても、お手手つないで引っ張ってくれる幼馴染がいてさぁ。私にはそんな相手、いないものね」
 くすくすと、眼鏡の奥で何とも言えない目つきをして見つめてくる蔦子。
「なんだよ、もし蔦子が遅刻しそうだったら、引っ張ってやろうか?」
 冗談半分に言いながら蔦子の方に手を伸ばすと、蔦子はギョッとしたように咄嗟に体を捻った。
「きゃあっ!」
 変な風に動いたのが悪かった。祐麒の手は、蔦子の手ではなくお尻に触れていた。なかなかに立派な肉付きをしたお尻だった。
「うおわっ、わ、悪いっ!!」
 慌てて万歳をするようにして手を離す。
「ば、馬鹿。祐麒くんのエッチ」
 てっきりぶん殴られるかと思ったが、蔦子は顔を赤くしながらスカートをおさえ、もじもじとしている。
「なんだよ祐麒、おまえとうとう、蔦子にも手を出したのか? 命知らずだな」
 小林が憎たらしいほど爽やかな笑みを浮かべて、肩を叩いてきた。
「だぁっ、違うって、変なこと言うなよっ」
「え、ふ、福沢君、そうなの!?」
「ちょっ、山口さんまで??」
 隣の席の真美が、顔を赤くして恥しそうにしながら、口を挟んできた。いつもは大人しく、自席で静かに本を読んでいるような真美だけに、ちょっと珍しかった。
「そうなんだよ山口さん、こいつ、本当に女に手が早くてさー」
「適当なこと言うなよ小林っ! 山口さん、こんな奴の言うこと信じなくていいから。俺の方が真実を言っているから」
「う、うん。ふ、福沢くんはそんな人じゃないですよね」
「おー、わかってくれるか、さすが山口さん!」
 珍しく援護を得て上機嫌になった祐麒は、真美に向けて笑いかける。真っ赤になって、うつむいてしまう真美。
 そんな風に、いつも通りに騒いでいるうちに鈴が鳴り、教室の前方の扉が開いた。
「――はいはい、みんな、席につきなさい」
 ざわついていた生徒達が、席に着いていく。
「あれ? 鳥居先生?」
 教室に入ってきたのは担任ではなく、なぜか江利子だった。
 クラス委員長が、担任教師はどうしたのかと当然の質問をする。
「ああ、熊谷先生が急病で入院されてね、私が臨時で受け持つことになったの……あ~、面倒くさい」
 物憂げな表情のまま、素直に心情を吐露する江利子。一方で、クラスの生徒の半数、すなわち男子は色めき立っていた。何せ江利子といえば学園を代表する四人の美人教師のうちの一人、しかも最も色気がある。今日だって、胸元の大胆に開いたブラウスで、谷間を見せつけるような感じだ。
「はい、静にー。えー、出席は……ま、いっか。そんなことより今日は転校生を紹介するから」
 江利子の言葉を聞いて、またもクラスメイト達がざわめきだす。転校生なんて珍しいからだろうけれど、祐麒はなんともいえない気持ちを抱いていた。
「それじゃ、入ってきて」
 ドアの向こうの転校生に声をかける江利子。合図に応えるようにドアが開き、一人の生徒が教室内に入ってきた。
 髪の毛を頭の両脇で縛った、いわゆるツインテールにした、どこかあどけない感じの顔をしている少女。
 思わず、首を捻る。
「それじゃ、自己紹介」
「はい。えっと、このたびこちらのクラスに転入することとなりました、祝部祐巳です。よろしくお願いします」
 ぺこり、と頭をさげる少女の顔を見て、思い出して、ようやくつながった。
「あ、あっ、あああああああああっ!!!?」
 思わず立ち上がり、大声を出して指さしてしまった。
「ん? どうしたの福沢クン」
 江利子の問いかけに答える前に、祐巳と名乗った少女が口を開く。
「あ、祐麒」
 その一言に、クラスの視線が祐麒、もしくは祐巳に注がれる。
「やった、同じクラスなんだね。えへへっ、嬉しいな」
 にこにこと笑い、ぱたぱたと手を振ってくる姿は十分に可愛らしいが、それ故にクラスメイト達から並々ならぬ思いの視線を向けられる。
 男子からは嫉妬の、女子からは主に好奇の視線だ。
「何、知り合いなの?」
「え? あ……は、はい」
 頷きながら、ぽっ、と赤くなる祐巳。ざわめく教室。
「なんで……福沢ばっかり……」
「おかしい、おかしすぎる……」
「福沢君って、浮気者?」
「え、じゃあ由乃さんや令先輩は……」
 好き勝手なことを言い出すクラスメイト達。
「祐麒……」
 祐巳が、熱い視線を向けてくる。たじろぐ祐麒。
「いくら久しぶりだからって、朝からあんな激しくされたら……だから今度からはもっと優しくして……ね?」
 恥じらう様を見せながら、とんでもないことを口走る祐巳。
 由乃の、蔦子の、真美の、それぞれから向けられる視線が体を貫いて痛い。
「へぇ……さすが福沢クン、幼馴染にクラスメイト、先輩後輩に蓉子や景ちゃん……さらに転入生まで。恋愛重力場の異名は伊達じゃないわね」
 先ほどまでのつまらなそうな顔から一転、面白い玩具を見つけた子供のような笑みを浮かべている江利子。
「なんなんですか、それはっ!?」
 祐麒の叫びが教室内に響き渡る。
 狂騒は、授業が始まり隣のクラスから蓉子が苦情を言いにやってくるまで続いていた。

 

 学校では一日、大変な目にあったが、もちろんそれで終わりではなかった。
 家に帰った祐麒を待ちうけていたのは、更なる衝撃。
「はあぁぁっ!? それ、どういうことだよっ!?」
「だからぁ、今日から一緒に住むんだってば……あ、正確には昨日からか。聞いてない?」
「き、聞いていたら驚かないって!」
 ソファにぺたん、と座っている祐巳は、きょとんとした顔をして見上げてくる。
 寄り道をして帰宅したら、当然のように祐巳が家の中にいた。どういうことか親に問い詰めようと思ったが、姿が見えずにかわりに祐巳から差し出されたのは一枚の紙切れ。
 そこには、海外の巨大建造物の設計に関するプロジェクトで当分留守にするという親からの伝言が記されていた。父親だけでなく、母親も一緒にである。今日の午前中に旅立ったらしいが、祐麒は何も聞いていない。
「おじさんたちは、祐麒には伝えてある、って言っていたよ」
「聞いてねぇよ……」
 頭を抱える。
 書置きの続きには、ろくでもないことしか書かれていない。

『……まあ、令ちゃんも由乃ちゃんもいるし、特に問題はないだろう。私達がいないから、存分に二人といちゃいちゃしてくれて構わない。孫の顔は早く見たいが、令ちゃんも由乃ちゃんもまだ高校生だから、そこは卒業してからにした方が良いだろう。 あと、祐巳ちゃんも祐麒の世話をしてくれると言ってくれている。可愛い女の子に囲まれての生活を十分に満喫するといい、といってもある程度の節度は持つように』

 まともな親が子供に言い残すような事ではない。祐麒はため息をついた。
「ため息なんてついていたら、幸せが逃げちゃうよ?」
 ため息の元凶の一つでもある祐巳が、能天気な笑みを浮かべて見つめてきている。
 祐巳のことは、説明されてようやく思い出した。とはいっても、かろうじてそんなこともあったか、というくらいのものだ。
 祝部祐巳は親戚だった。ただ、殆ど顔をあわせたことはない。親同士の仲があまりよくなかったこと、住んでいる場所が遠かったこと、幾つかのそういった要因があわさり、幼い頃に遊んで以来、実に十年来の再会であった。
 なぜ、今になっていきなりやってきたのか、それは不明だった。
「えへへ、別にいいじゃん、そんなこと。それより、久しぶりに会ったんだし、もっと楽しいこと、しようよ」
 いつの間にか近づいていた祐巳が、祐麒の膝の上に腰をおろして迫ってくる。
「た、た、楽しいことって……?」
「そうね……朝の続きとか、どう?」
 一見すると幼くも見える愛らしい顔立ちの祐巳だが、迫ってくる様はやけに色気があるように感じる。思わず、ごくりと唾を飲み込む。
「あ、あ、朝の続き、って?」
「ふふ、わかってるくせにー」
 祐巳の両手が頬を挟む。
 女の子の甘い香りがほんのりと漂ってきて、くらくらと酔いそうになる。
「おい、やめろよ、冗談は」
「冗談、でしょうか?」
 祐巳の顔が近づいてくる。
 嘘だろ、マジか、どうすればいいんだと、混乱している間にも祐巳の指が首筋をくすぐってきて思考能力を奪う。
 本当にまずい、なんだこれ、どうにかしないと――――

「祐麒っ! ゆ、許さないんだからっ!」
「祐麒くん、不潔っ!!」

 玄関先から由乃と令の声が聞こえてきて、正気に戻る。次の瞬間には、祐巳は素早く祐麒から身を離し、何事もなかったかのような顔をしてリビングの入り口に顔を向けた。
 そこには、やけに大きな荷物を抱え込んだ由乃と令の姿があった。
「お、お母さんから聞いたわよっ、今日から祝部さんと二人で暮らすなんて、そ、そんなの駄目よ!」
「そ、そうだよ、そんなの絶対に駄目っ!」
「ゆ、祐麒なんかと一緒にいたら、祝部さんの貞操の危機よっ! だ、だから、今日から私達もこっちの家に泊まることにしたからっ」
「祐麒くんはえっちだから、わ、私達が見張っていないとね」
「あ、大丈夫、お母さんたちには許可をとっているから、何の問題もないわ」
「そうそう、むしろ予行演習だと思って頑張ってきなさいとか言われちゃって……あわわ」
 興奮気味の由乃と令を見ても、何も言えない。あまりの急展開に、ついていけていないのだ。
 一方、祐巳はといえば。
「あはは、賑やかになって楽しそうだね。これからよろしく……ね」
 と、祐麒に向けてウィンクをしてみせる。

 

 高校二年の秋、祐麒の生活は落ち着く様子など微塵も見せないのであった。

 

おしまい

 

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