【作品情報】
作品名:恋する検事はわきまえない
著者:直島翔
ページ数:266
ジャンル:ミステリー
出版社:講談社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
物語から人間臭さが見える度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : 魚屋の健ちゃんが気になる人
人が人を裁けるのか―― 「正義」の番人たちの懊悩に迫る人情検察小説。 「特捜部初の女性検事」として期待と嫉妬を一身に背負う常盤春子は、着任早々、下水道事業の五社談合事件を任された。
落とし所は末端社員たちの摘発――。
しかし、取り調べ中に闖入してきた被疑者の幼なじみによって、捜査は思わぬ方向に転がり始めた。
築地の魚屋で働く男は、被疑者を庇いながら言葉を吐く。
「おれはよ、法に背いたのは人間じゃねえ気がするんだ。人間の周りを囲んでいる全体みたいなもんだ」
覚悟を決めた春子は、検察幹部仰天の一手に出た(表題作)。
全四話+αの連作短編集。
シリーズ2作目は短編集でした。
前作のラストより、鹿児島へと着任した倉沢が主人公かと思いきや、そうというわけではない。
いや、倉沢が主人公でもあるけれど、短篇によって主人公が異なっている。
また時代も違ったりしているのだけれど、それでもちゃんと連作短編として繋がりを持たせ、上手いこと読ませるつくりになっている。
表題作は、てっきり倉沢のことなのだと思っていたら、実は常盤春子の過去の話でした。
ちょっと意表をつかれたけれど、常盤を形作る過去の事件を知ることが出来て、これはこれでOK。
何よりここで登場する魚屋の健ちゃんのキャラが秀逸である。
この健ちゃんのキャラクターを活かしての、問題への切り込み方もなかなか。
また事件の見せ方も、単純にその事件の謎であったり、犯人の思考を追うだけというわけではなく。
法理をいかに適用して迫っていくか、なんていうところも描かれていたりして、そういう見せ方も面白い部分だった。
今作においては、事件そのものというよりも、登場人物の人情というか心情というか。
そちらの動きの方により、力を入れていたようにも感じた。
前作では視点の転換がちょっと分かりづらい部分があったのだが、短編集にして、それぞれで主人公を変えることでその欠点が直されている。
あとはまた長編になったとき、その辺のことが活かされるとよいのだけれど。
読みやすく一気にいけますが、ガツン! というような衝撃のある作品ではない。
気軽に面白く読めますけどね。