【作品情報】
作品名:レアケース
著者:大門 剛明
ページ数:246
ジャンル:ミステリー
出版社:PHP研究所
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
読み進めやすさ度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : 社会はミステリに興味あり
主人公の石坂壮馬は被生活保護者を担当する新人のケースワーカーとして市役所に勤めている。
働いていく中で判明していく、
いっこうに自立しようとしない者
保護費を詐取しようとする者
被保護者を食い物にする「貧困ビジネス」
そういったものに疑問を感じるようになっていく。
そんな中で、あくどく稼いでいると評判の者から盗みを働き、貧しい人々に金を配る「現代のねずみ小僧」が話題になる。
ねずみ小僧の存在に複雑な思いを抱く壮馬だったが、ある日、彼の担当する被保護者が殺される事件が起こる。
生活保護の問題に踏み込んだ一作
レアケースって何だろうと思ったら、生活保護を求める人たちのことを「ケース」というのですね。
勉強不足でした。
本作では新人ケースワーカーである壮馬を主人公として、様々なケースに接する壮馬の目を通して生活保護の問題点をついていきます。
一時期、芸能人の不正受給でも問題になりましたが、実際にそういう人はいるのでしょうね。
判断するのも難しいでしょうし。
必要な人には届けなければいけない。
そうでない人に不要に与えてはいけない。
でも、その線引きをどこでするのか。
基準はあろうとも、騙す手段があるのは不正受給があることからも分かる。
さらに、生活保護受給者から搾取する「貧困ビジネス」についても。
なるほど、生活保護なら確実にお金が手に入るわけですから、そういう人をターゲットにしたビジネスも出てくるわけです。
嫌な世の中だ。
そうした様々なあケースを見ていくのと同時に、現代のねずみ小僧が話題になってくる。
何が絡むのかと思うと、その現代のねずみ小僧はどうやら壮馬の近くにいるらしい。
果たしてねずみ小僧は誰なのか。
そして、ねずみ小僧の真意はどこにあるのか。
生活保護の問題を追いつつ、殺人事件とねずみ小僧の正体を追うミステリー要素も含んでいる。
テーマは重いが読みやすく、一気にラストまで読み進められる。
重いテーマだけにもっと突っ込んで欲しいという人も、もしかしたらいるかもしれない(特に実際のケースワーカーの人とか)
ただ、小説として読む分にはこれくらいがちょうどよいのかも。