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ノーマルCP マリア様がみてる 志摩子 真紀

【マリみてSS(志摩子×静×真紀×祐麒)】委員会活動の彼女

更新日:

~ 委員会活動の彼女 ~

 

 大型連休直前、学園内ではまだ静と祐麒のリリアン初の"姉弟"について盛り上がっていたが、タイミングよく連休に入るので、そこで少しは落ち着くだろうと思いたい。今でも、新聞部の先輩がしつこくインタビューを求めてきていて、その度に祐麒としては逃げ出しているのだ。
 男子生徒が少ないから、教室内にいても不在かどうかすぐわかるし、校舎内を歩いていても目撃者を捜すのはさほど難しくない。困ったものである。
 放課後、掃除を終えて帰ろうとしたら教室前に新聞部のポニーテール先輩が待ち構えているのを見つけ、慌てて踵を返して校舎内を徘徊していた。鞄が教室内に置いてある限り家には帰れないし、仕方ないので相手が諦めるまでどこかで時間を潰そうと校舎内を徘徊する。
 時間を潰すならばやはり図書室だろうか、そういえばいまだ図書室には足を運んでいなかったなと思いつつ廊下を歩いているときに、それは目に入った。
 しばらく窓ガラス越しに見つめていたが、相手がこちらに気が付く様子もなかったので、暇でもあるしその場に向かってみることにした。
「――藤堂さん。何しているの?」
 声をかけてみる。
「あ、福沢くん?」
 立ち上がる志摩子に思わず目を奪われる。
 なぜって、志摩子は制服ではなく学校指定の体操服姿だったから。白い体操着の上にはジャージ、下もジャージのパンツというダサい格好であるにもかかわらず、志摩子が着ているだけでブランド物に見えてしまうというのは、さすが学年ナンバーワンの美少女。
 そして何より、四月といえども陽気がよく少し暑いのかジャージの前を開けており、そこから飛び込んでくる胸の膨らみ。制服のときは良くわからなかったが、こうして体操着になると胸の大きさ、迫力が良くわかる。
 しゃがんでいた状態から立ち上がる志摩子、その弾みで胸が揺れるのが目に入り、慌てて顔をそらす。
「どうしたの?」
「いや、藤堂さん何しているのかなって」
「私? 私は植物の苗を植えているの」
 地面に目を向ける志摩子につられて見てみれば確かに、花壇の土をシャベルで掘り起こしている跡が見える。
「へえ、そんなことしているんだ」
「私、環境整備委員会だから」
「環境整備委員会って、こういうことするんだ? 園芸部がするんだと思っていた」
「園芸部とも協力するけれど、園芸部はどちらかといえば自分たちの花壇で、自分たちのコンセプトをもって植物を育てているの。それに対して環境整備委員会では、学校全体の環境を良くするために各所の花壇や木々のお手入れをしているの」
「なるほどね」
 頷き納得はしたものの、学年位置の美少女といわれている志摩子がジャージ姿で土いじりをしているというのが、なんとも不思議な組み合わせに思えてしまう。だがまあ、似合っていないわけではない、むしろ志摩子がやれば何でも絵になってしまうというか、土いじりと美少女も良いものだと感じる。
 気取った様子がなく、決して見栄えがいいとはいえない学校指定のジャージ上下、ふわふわの髪の毛を後ろで無造作に束ね、手には軍手、ポケットには汗拭き用と思えるタオル、真面目に活動しているというのがよくわかる。ほっぺが土で少し汚れているのも、むしろ可愛さを強くしている。
「でも、他に委員の人はいないの? さすがに一人では大変じゃない」
「今日、ここの担当の先輩が具合悪くてお休みされていて。でも、だからといって放っておくのは可愛そうだから」
 そう言って志摩子はしゃがみこみ、シャベルを手にして活動を再開する。上から覗いて見えるうなじと後れ毛がほのかに色っぽい。
「ねえ、良かったら俺も少し手伝おうか?」
「えっ……手伝ってくれたら有難いけれど、大丈夫なの?」
「全然、問題なし。むしろ俺から頼ませてもらいたいくらいだし、力つかう仕事もありそうだし、学校を綺麗にする手伝いになるなら、喜んでするよ」
「あ……うん、ありがとう。土とか重いから、本当は手伝ってくれると凄く助かるの」
 家の庭での手伝い、あるいは中学時代にも学校内で手伝いをしたことがあるが、この手の活動は結構に体力を使うし力も必要になる。
「それじゃあ、せっかくだから少し力が必要な部分お願いしていいかしら。実は、この部分の土を作ってほしいの。他の場所は大丈夫なんだけど、ここ、今年になって拡張した場所らしくて土の状態が今、あまりよくないから」
 志摩子に指された場所を見てみると、確かに他の場所と土の状態が違うように素人目にも見えた。良い土の状態にするため、土を掘り起こし、腐葉土と石灰と肥料を撒いて混ぜてゆく必要があるとのこと。確かにそれはそれなりに重労働になりそうだった。

 鍬を手にして、志摩子に言われたように土を起こしてゆく。範囲が広くないとはいえ、腕や腰に負担がかかり、女の子一人では確かに厳しそうだった。
「あの、福沢くん」
 作業を開始してからしばらくして、志摩子が口を開いた。
「静さまとのこと、なんだけど」
「う、藤堂さんも、気になるのやっぱり」
「あ、ご、ごめんなさい。ただ、いきなりだったから」
「ああ、ごめん。最近、新聞部に追われていたからつい、嫌な言い方しちゃったね。そりゃまあ、気になるよね。たださ、実は俺も思いもしていなかったことで、戸惑っているというか驚いているというかで、何を言いようもないんだよね」
「……そうなの? でも、静さまと"姉弟"の契りを交わしたのは本当なんでしょ?」
「いやー、そもそも俺、そんなこと知らなくて、ただ勘違いしてあのロザリオを受け取って、そしたらあんな騒ぎになっちゃって」
「勘違い?」
「そうなんだ……っと、あ」
 余計なことを口にしてしまったと思ったが既に遅い。志摩子は「どういうこと?」といった顔で祐麒のことを見つめている。仕方なく、真紀に説明したのと同じようなことを志摩子にも伝えておく。
「そうなんだ……私てっきり、知っていて受け取ったのかと」
「違うんだ、これがね」
 すると、今度は心配そうな表情をして志摩子が見つめてくる。
「それじゃあ、あの、逆になりたくないのに姉弟になって迷惑とか、そうゆうことはないのかしら?」
「ん? ん~と、そうだなぁ、ただ実際に静先輩の"弟"になったからといって何か具体的に困っているとかはないからなぁ」
「でも、噂されて、新聞部の人に追いかけられて、困っているでしょう。もし、静さまに悪いと思って言い出せないなら、私の方から言っても……」
「いやいやっ」
 慌てて手を振る祐麒。
 まさか志摩子がそこまで心配してくれていたとは思わなかったが、それでもちょっと嬉しくなる。
 とはいえ、いくらなんでもここで女の子に代わりに言ってもらうなんてこと、男として出来るわけがない。
「大丈夫、そもそもリリアンに入るのによく調べていなかったし、断るなら最初に俺が自分で言うべきだったこと。今さら、そんなこと知らなかった、騙された、なんていうのも男らしくないしね」
「でも……」
「それに、さっきも言ったけれど実質的に何が変わった、ってこともないし。まあ、何か困った時に頼りに出来る先輩が出来たと思えばいいんじゃないかなって思うことにした」
「そんな」
 悲しそうな顔をする志摩子。そこまで親身になって考えてくれていたかと思うと、逆に少し申し訳ない期までしてくる。
「心配してくれてありがとう藤堂さん」
 だから、出来る限り不安を与えないよう、笑ってそう言った。
「あ……い、いえ、出過ぎたことを言って、ごめんなさい」
 すると志摩子は少し冷静になったのか、頬を赤らめて俯く。
「……でも、静さまに変なことを命じられたら、ちゃんと断ってね」
「変なことって?」
「え……あの、そ、それは、具体的には分からないけれど……ほら、静さまってなんか突拍子もないこと、言ってきそうじゃない」
 わたわたと小動物のような動きを見せつつ、そんなことを言う志摩子を見て、なんとなく心が和む。
「ほら藤堂さん、手が止まっている。早く作業しないとこれ、意外と時間かかりそう」
「あ、うん…………でも、時間は沢山かかっても構わないのだけれど……わ、私は」
「そうなんだ」
 よほどこの仕事が好きなんだなと感心しつつ、祐麒も作業を再開する。力も必要になるし、しゃがんだり中腰になったり、結構足腰にくる体勢になることも多くて大変だけど、好きな人は好きなのだろう。

「――――――あ、やっと見つけた。こんなところで油を売っていたのねっ」
「うわっ、し、静先輩っ!?」
 不意に響いてきた声に驚いて振り返って見れば、静が歩いてくるところだった。思わず志摩子と顔を見合わせると、図ったように二人ほぼ同時に立ち上がる。
「もう、捜しちゃったわよ」
「何か用ですか?」
 特に約束した覚えはないし、怒られるようなことはないはずだが、静は微妙に不機嫌なようにも見える。
「何か用ですか、じゃないでしょ。部室の片付けに男手が欲しいから手伝ってほしいってメールしたのに」
「え? メールなんて……あ、そういや全然チェックしてなかった」
 昼休み以降は授業があったし、授業が終わってからは掃除があり、掃除が終わった後は教室に戻れなかったからスマホも鞄の中に入ったまま。静がいつメールしたのかは知らないが、昼休み以降であるなら祐麒は全く見ることがないから知らないのも当然のこと。学校の規則で、着信メロディもバイブも切ってあるから、見ないことには気づけないのだ。
 静としては祐麒にメールを送ったのにやってこないから業を煮やし、こうしてわざわざ探して出歩いていたらしい。
「静さま、福沢くんは油を売っていたわけではありません。一人で作業をしていた私を手伝うため、私のためにこうして一緒に作業をしてくれていたんです」
「手伝っていたのは良いことかもしれないけれど、私だって」
「私が言いたいのは、油を売っていたという言い方が酷いということです」
 意外にも、志摩子は静の言葉を遮り、強い決意を秘めた表情で言い切った。
 下級生が先輩に口答えするなど、なかなか考えられないこと。特に『姉妹制度』のあるリリアンではなおさらのことで、どうなることかとむしろ祐麒の方が緊張して事態の行方を見守る。
「……花壇を綺麗にするのは、大切な仕事です。私達、環境整備委員は、誇りを持って作業しています。それを、そんな言い方」
「……それは。志摩子さんの言う通りね。私が悪かったわ、決して貴女の仕事を侮辱するつもりなんて無かったのだけれど……ごめんなさい」
 驚くことに、静は志摩子の言葉を受け止めると自らの失言を認め、深々と頭を下げた。祐麒の見ている前で、潔いといっていい姿だった。

「あ……いえ、わ、私こそつい、きつい言い方になってしまってすみませんでした」
 さすがにこれには志摩子も驚いたのか、あるいは冷静になって自分の発言が度を過ぎたと思ったのか、頭を下げる。
「いいえ、志摩子さんは悪くないわ。誰でも、自分の大切なことを悪く言われたら、気分良くないものね。はぁ……私もまだまだ、駄目だなぁ」
 息を吐き出し、頭をかく静。
「それじゃあ――」
「ああ、でも私の方も予定があるし、申し訳ないけれど連れて行っていいかしら」
「――――」
 志摩子が言葉を失い、静が祐麒を手招きする。
 だけど、祐麒は。
「祐麒くん?」
「えーっと、ごめん静先輩。メールを見れなかったのは俺の責任だけど、返事をしていないから静先輩を手伝うと約束したわけでもないですよね。それで俺、藤堂さんの仕事を手伝う約束したんですよ。俺的には、藤堂さんとの約束が先なわけで、まだ作業も終わっていない状況で離れるわけにはいかないから、申し訳ないですけれど静先輩のお手伝いには行けません」
「え、ちょっと、福沢くん?」
 今度は志摩子の方が驚くようにして祐麒を見つめる。
 下級生が、しかも仮にも"姉弟"の契りを交わした相手に対して反抗するのもまた、異例の事であったから。
「……あ~、もしかして私、今日は凄い悪役? でも確かに、祐麒くんの方が正統よね、返信を確認しなかったのは確かだし」
 しかし静はやはり怒った様子もなく、苦笑いして頬をかいている。
 祐麒が口にしたことは事実であるが、加えてもう一つ裏の理由もある。
 ちらりと目を向けた先の静、実は志摩子と同じように体操服姿である。おそらく部室の片付けで汚れるからジャージ姿になっており、さらに志摩子と同様、ジャージの前を開けていて胸の大きさが非常に分かりやすい。
 向かい合っている志摩子と同時に見ると、隠しようもなくシャツが盛り上がって名前のタグが歪になってしまっている志摩子に対し、すとーんと綺麗に平らなラインのままの静と、明確過ぎるほどの差が両者にはある。
 祐麒は決して巨乳至上主義ではなく、微乳や貧乳の良さも認める乳ニストであるが、今この場においてはどうしても志摩子に目が向けられてしまう。
「すみません、こっち終わったら手伝います。あ、でも時間ないか。明日以降で良かったら」
「大丈夫、こっちはなんとかするから。どうしても男子がいないと厳しそうなところがあったら、明日にでもお願いするかもしれないけど。それじゃあ藤堂さん、色々とごめんなさいね」
「いえ、こちらこそ申し訳ありません」
 そうして去っていく静を二人で見送る。
「…………さて、それじゃあ作業を進めようか」
「あ、あの、福沢くん」
「ん、何?」
「大丈夫? 静さまにあんな風に言ってしまって……」
「藤堂さんがそんな風に申し訳なく思うこと無いって、俺が言った通りだし、静先輩だって納得していたでしょ? それに、中途半端で終わらせたら俺も嫌だし、綺麗な花壇にしようよ、一緒に」
「――はい」
 嬉しそうに、志摩子もようやく笑みを浮かべてくれた。

 作業の方は慣れないことで手間がかかり、思ったように進捗こそしなかったが、こうして土と接することは祐麒にとっては楽しかった。もともと、小さいころから土にはずっと触れて育ってきた身でもある。
 日が落ちてきて、下校の時間が近づいたところで作業を切り上げて道具を片付ける。残念ながら、予定していたところまで終わらなかった。花壇が広く、作業量が多くて見積もりが甘かったのだ。
「ああくそっ、なんか中途半端なところで終わっちゃったなぁ。ごめんね、藤堂さん」
「そんな、凄い助かった。私一人だったら、多分、半分どころか四分の一も終わってなかったかもしれないし」
 力仕事もあるし、決して動きが機敏とは言えない志摩子(ただし、非常に丁寧ではある)、確かにそれくらいの時間はかかるかもしれない。それは今日に限らず、今後も。
「だから……今日は、ありがとう」
「ねえ藤堂さん、俺、また今度手伝っていい?」
「――え?」
「中途半端ですげーもやもやするし、それに一度手伝ったら綺麗に出来上がったところも見たくなったし。あ、ただ、毎回手伝うっていうのは厳しいかもしれないから、俺の予定が合う時……って、それじゃ俺の都合が良すぎるか」
「そっ、そんなことないわ、あの、来られる時だけでも手伝ってもらえると……凄く、凄く嬉しい」
 気のせいか、言葉に力がこもっているように感じられた。もしかしたら、他の環境整備委員の人はサボりがちなのだろうか。だとしたら、不定期とはいえ助っ人は有り難いのだろう。
「うん、じゃあ活動のスケジュールが分かったら教えて。で、俺が入れそうな時を教えるから。あ、先輩とかに邪魔扱いされそうならその時は遠慮するから」
「ううん大丈夫心配しないで。そんなことを言う先輩がいたらそんなこと言えないようにしちゃうから」
「そっか、それなら――――ん?」
 あっさりと聞き流したが、何か今、志摩子の発言の中に変なところがなかっただろうか。
「それより福沢くん、実は聞きたいことがあるんだけど」
 しかし、深く考える前に志摩子の声によって中断される。
「静さまと……メールアドレス交換しているの?」
「え? あ、ああ、うん、ほら"姉弟"になったから? 教えあおうってことになって」
「そうなんだ……へぇ……」
 教室へ向かうべく廊下を歩きながら、なんとなく会話が止まる。しかも、なんとなく気まずい気がして、慌てて間を繋ぐように口を開く。
「あ~~、そうだ、せっかくだから藤堂さんとも交換したいなー、なんて、さすがにそれ」
「は、はい、お願いします」
「え? あ、う、うん、え、いいの?」
 気軽すぎるかと思ったが、志摩子はあっさりと頷いた。
「はい、だって同じクラス委員同士だもの、連絡を取り合うためにも必要じゃないかと思って」
「ああ、そりゃそうか。じゃあ、ちょっと待ってて」
「私も、出しますね」
 丁度、教室に戻ってきたので、お互いに鞄からスマホを取り出してきてアドレスと電話番号を交換する。
「おー、俺、同級生の女の子で藤堂さんが最初ですよ、登録するの」
「まあ…………フフ、私が福沢くんの一番……」
「藤堂さん?」
「私も……福沢くんが、私に入った初めての男の子です」
「それは光栄だなぁ、っと、時間がそろそろやばいね、帰ろうか」
「え、い、一緒にですか?」
「あ、男と一緒に帰るとかまずいかな?」
「そんなことないですっ、す、すぐに着替えますから待っていてくださいっ」
「ははっ、そんなに慌てなくてもちゃんと待ってるから……って、と、藤堂さんっ!?」
「――――え?」
 何を勘違いしたかはたまた焦るあまりか、志摩子は今、教室のこの場で着替えを始めようとジャージを脱ぎ、シャツをまくり上げかけていた。
 すらりとしなやかな腰のくびれに、逆に軽く突き出した格好のお腹、そしてちょこんと可愛らしい臍が顔を見せている。あともう少し上げたら、ブラジャーが見えそうなところまできている。
 自らの失敗に気が付いた志摩子は、途端に真っ赤になり、その場にしゃがみ込んでしまった。一方で祐麒も、赤面しつつ慌てて背を向けるが、脳裏には志摩子の柔らかそうなお腹とお臍が焼き付いてしまった。
「ご、ごめん、み、見てないからっ」
 嘘だが、こう言うしかない。
「い、いえ、悪いのは、私ですからっ」
 そう言う志摩子にちらりと目をむけると、まだ僅かにめくれているシャツの下の肌が見えて再び反対側を向く。
「き、着替えてきますね……」
 背後で志摩子が立ちあがる気配がし、やがて教室を出て行ったところで、ようやく祐麒は息を吐き出し体から力を抜いた。

 

「き、着替えるのは更衣室でした……ちゅ、中学の時は、周りは女の子だけで教室で着替えることもあったから……」
 帰り道、制服姿になった志摩子はいまだに顔を赤くし、俯いたまま祐麒の方を見ることもできないでいた。
「藤堂さんも、意外とそそっかしいところあるんだね。まあ、俺としてはちょっとだけラッキーだったけど」
「――え」
「――あ、ち、ちがっ、見えてないから、藤堂さんがドジした珍しいところを見られてラッキーだったって意味で!」
 なんとか空気を軽くしようと冗談を口にしたが、これまた余計なことを言ってしまい、さらに志摩子は顔を赤くしてしまった。
「えーとえーと、そうだ、次の環境整備委員の活動はいつ? 俺、本当に手伝うよ、次は俺も本気を出せるようジャージ装着で行くし、そうしたら今日の倍は捗るよ? いや、これ本当だからね」
 仕方ない、こうなったら黙り込んだら負けだ、なんでもいいから喋れとばかりに口を動かすと。
「……ありがとう、気を遣ってくれて。やっぱり福沢くんって、優しいね」
「え、そうかな? 別に普通じゃないかな」
「ううん、優しいです…………ずっと……」
 夕日を浴びてそう言う志摩子の表情は。
 祐麒を見つめながらも、どこか遠い場所に目を向けている、そんな風に思える祐麒なのであった。

 

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