【作品情報】
作品名:死神の日曜日
著者:伊東 良
ページ数:300
ジャンル:ファンタジー
出版社:幻冬舎
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
生と死について考える度 : ★★★★★★☆☆☆☆
こういう人におススメ! : 読みやすいファンタジーを求める
オリオナという街で暮らしている少女ナオミ。
ナオミは重い病で入院している祖母を助けたい一心で、伝説の魔女に会いに行こうとする。
だが、ナオミにはある隠された秘密があり、魔女はナオミの存在を狙っていた。
そんな魔女に対抗するために動く、「死神」
命とは何か。
生と死、その意味を問うファンタジー。
ファンタジーということで、魔法とか魔術とかそういうものを想像していると少し違う。
もちろん、魔女がいて死神がいて悪霊がいて、というところではあるのだが、彼らは物凄い特別なことをするわけではない。
彼らには特殊な力があるけれど、それで出来ることはごく限られたことだけ。
人間の持つ力の方が圧倒的に強く、人間の弱さをどうにか出してそこに付け入らないといけないというのは、こういうファンタジーでは少し新鮮に映るかもしれない。
死神という存在がいることで想像はつくかもしれないが、この作品で扱っているのは命である。
- 死ぬとはどういうことなのか
- 何のために生きたいと願うのか
- 魔女が与えてくれるという「永遠の命」をなぜ求めようとするのか
そういったことに対して、登場人物達がそれぞれの立場や役割から考えていく。
- 重い病を持つ大好きな祖母を助けたいから
- 自分の夢を実現するまでは死ねないから
そういう、どうにかしたい、という思いに魔女は付け込んでくるわけだ。
ファンタジーではあるけれど、描いていることは何気に現実的というか、考えさせられるもの。
自分が生きることの意味、死にたくない理由、人それぞれ異なるけれど、死は誰しも逃れられないもの。
そこにどう意味を見つけるかが大事。
そう、メッセージが込められているのかもしれない。
文章が少し子供向けのような感じで書かれているのはファンタジーを意識してのことか。
しかしてテーマは子供向けとは少し言い難い感じ。
生と死というのもそうだし、死んでもまた会えるとか、魂であるとか、そういうことも含んでいる。
ただ先述したように文章が小難しくないので読みやすく、深く重く受け止めずに読むことも出来るし、テーマを強く受け止めて考える人もいるだろう。
そう言った意味では、バランスが良いのかもしれない。
文章としては読みやすく、すらっと読める。
ファンタジーが苦手、という人でも大丈夫ではないかと思います。
トメニア帝国の皇帝とか戦いとか、その内容が核とかミサイルとかなので、いきなりそこが生々しいですね。
ファンタジーでありながら、その辺が急に現代的というか、そういったところが他にも節々あって、そこをアンバランスととるかどうかは人によるか。
逆にファンタジー過ぎず現代感覚で読める、という良い点かも?