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ノーマルCP マリア様がみてる 可南子

【マリみてSS(可南子×祐麒)】とある休日の

更新日:

 

~ とある休日の ~

 

 

「――あ、祐麒だ!」  突然、自分の名を呼ぶ声に驚いて立ち止まり、周囲をキョロキョロと見回してみるが、見知った顔は見つからない。しかし、確実に祐麒の名を呼んだ気がするのだが、もしかしたら同名の別人だろうか。
 仕方なく歩き出そうとしたところで。
「こっちだってば、祐麒!」
 と、もう一度名前を呼ばれてシャツの裾を引っ張られた。
 驚いて目を向けてみると、そこには小麦色の肌に日焼けをした、勝ち気な表情の少年が立っていた。
「あれ、暁じゃん」
 いや、少女、であった。
 Tシャツにショートパンツ、帽子という夏らしい格好で、どう見ても少年にしか見えないが、れっきとした少女であることを祐麒は先日、知った。
「何やってんの祐麒? どーせヒマ持て余してるんでしょ? だったらオレ達と一緒に遊びに行こーぜ」
 引き続きシャツの裾を引っ張って、祐麒のことを誘ってくる。
 夏休み中のキャンプで暁とは知り合い、一緒に遊んでいるうちに随分と懐かれた。
「遊びにって、どこに行くところなんだ?」
 暇と決めつけられるのはどうかと思うが、実際のところ家にいても何もすることがなく、とりあえず街に出てみてぶらぶらしていただけなので、暁の言っていることは全くもって正解だった。
「んーとね、『ライジングセンター』!」
 暁が口にしたのは、大型の複合型ショッピングセンターだ。様々なお店が入っているのはもちろん、シネコン、ボウリング場、大型電気店、イベント会場などもあって一日中でも楽しめると有名な場所。
「いいじゃん祐麒、行こうぜ、暇人だろー、遊ぼうよー」
「んー、そうだなぁ、まあ、別にいいけれど」
「やった! そうこなくちゃ!」
「こ、こら暁、迷惑かけちゃだめじゃない。あの、す、すみませんウチの子が」
 そこで、暁の後ろから少し遅れてやってきた女性が、困った表情をして頭を下げてきた。
「え……あ、ええと、暁のお母さん?」
「はい。あの、ユウキさん、ですよね」

 キャンプから戻ってきた翌日、可南子の家に暁とともにお礼にやってきた時に、顔を合わせている。確か、塔山理砂子と名乗っていたと記憶する。シフォンブラウスにシフォンスカート、日差し対策に鍔広の帽子をかぶっている。
「別に迷惑かけてないよ、祐麒だって暇だって言っていたし」
「暁が我が儘言うからでしょう? ごめんなさいねユウキさん、この子の我が儘に無理に付き合っていただかなくても大丈夫ですから」
 ぺこぺこと頭を下げてくる。とても腰の低い人のようだ。
「あ、別に無理とかじゃないスよ。暇してブラブラしていただけなんで」
「ほらー、オレの言った通りじゃん」
「暁! もう、女の子なんだからオレなんて言うんじゃないのって、何回言ったらわかるのよ」
「それ男女差別ー。オレがオレって言ったっていいじゃん」
「屁理屈ばかり上手くなって……」
「仲良いんですね」
 笑っている暁とため息をついている理砂子を見て、そんな風に声をかけると、理砂子は祐麒の方を見て顔を赤らめた。
「やだ、変な所見られちゃいましたね。もう、恥ずかしい」
 両手で頬を抑える。
 なんというか、ずっと年上なのに可愛らしい感じがする。美月が綺麗で格好いいのに対し、理砂子はほんわかと穏やかで可愛いというところか。
「とにかく、祐麒は今日一日、オレたちと遊ぶことでけってーい!」
「ああ、もう暁っ」
「ははっ、だから大丈夫ですって、俺も『ライジングセンター』ってまだ行ったことなかったし、実は楽しみなんですけど」
「はぁ……申し訳ありません」
 またも深々と頭を下げる理砂子に笑ってみせ、暁に手を引かれて歩き出す。

 そうして三人で電車に乗り、やがて『ライジングセンター』へと到着する。
 巨大なショッピングセンターは休日ということもあり、非常に人が多く混雑している。
 暁のお目当ては、まずは夏休みに封切公開された映画だった。田舎の夏を舞台にしたアニメで、子供だけでなく大人からの評判も良い作品で、祐麒も機会があれば観たいと思っていたので丁度良かった。
 理砂子はチケット代を払ってくれようとしたが、さすがにそこまで甘えるわけにはいかず自腹で中に入る。ポップコーンとジュースはうまいこと理砂子に奢られてしまったが、まあこれくらいはいいだろう。
 映画はそれなりに人で賑わっていたが、中央あたりの丁度良い席が確保できたので、暁を真ん中に挟んで並んで座る。
 映画の内容は笑いあり、涙あり、青春ありという感じで、非常に爽やかで後味の良いものだった。これなら、子供に鑑賞させても問題ないどころか、むしろ沢山の人に観てもらいたいと思えるようなものだった。
「面白かったー!」
 シネコンから出た後、近くのカフェに入って休憩する。暁は楽しげに映画のことを話し、理砂子や祐麒が受けて和やかな時間を過ごす。やはり、年齢の近い祐麒の方が話しやすいのか、主に祐麒が暁の話し相手となって、理砂子は時々相槌をうつくらいだが、非常に楽しそうに暁のことを見ている。
 続いて暁に連れられて行ったのは、大きなホビーショップだ。
「ねえお母さん、これ買って」
「駄目よ、この前も買ったばかりでしょう?」
 暁が理砂子におねだりしているのは、幅広い世代で人気が出ているトレーディングカードゲームの拡張パックだった。男性に人気のある有名ロボットアニメのカードを好んでいるようで、女の子にしては珍しいと思ったが、暁は男の子みたいなものだし、丁度良い。
「おい暁、それだったら俺も持ってるから、今度トレードしてやるよ」
「え、マジで!? 何持ってるの!?」
「そうだなー、"シャオ・ミュン"とか"カイゼル・改"とか」
「あ、"改"の方持ってるの!? オレ欲しいのにっ。レアカードは?」
 目を輝かせて食いついてくる暁。丁度、なぜか花寺の生徒会でもTCGがなぜかブームになっていて、祐麒もつられるようにして色々と集めていたのだ。この手のカードものは、一度ハマりだすと意外と離れられないものだったりする。
「よし、じゃあ今度トレードやろうな」
「その前に、デュエルしようぜ! 絶対に勝つし!」
 嬉々として飛び跳ねる暁は、新しいカードの購入をねだっていたことはすっかり忘れたようにはしゃいでいる。
 暁の相手をしながら理砂子の方を見ると、また小さくぺこりと頭を下げ、感謝の視線を向けてきた。どうやら、暁の矛先を反らしたことに感謝してくれているようだ。勿論、多少は狙ったところはあるが、実際には自分の趣味と合ったので話しただけで、結果としてそうなっただけである。
「良かったわね、暁」
「うん。よし、じゃあ祐麒、今度うちに遊びに来てよ、絶対だよっ」
「分かった、分かった」
 あまりの勢いに苦笑するしかない。
 本当に訪れることになったら迷惑だろうが、だからといって約束を破るというわけにもいかない。現実的には、可南子の家で遊ぶのが一番だろうが、それはそれで可南子に迷惑がかかってしまう。
「暁も喜んでいますし、もしご迷惑でなければ、いつでもいらしてください」
「あ、ど、どうも」
 にこにこと理砂子に言われ、頭を下げるが、さすがに社交辞令であろう。
 その後、ホビーショップの中をうろうろと見て回る。別に特別に買うものがなくても、こういう場所は見ているだけでも楽しいものだ。暁は以後、特に何が欲しいなどと我が儘をいうこともなく、面白そうなものを見つけてはしゃいでいる。暁を見守る理砂子の視線はとても暖かく、良い親子関係を築いているのだと傍目で見ていてもよく分かる。
「――あ、オレちょっとトイレ」
 ホビーショップを出て館内を適当に歩いている時、不意に暁が言いだした。
「ええと、トイレはあっちね」
「あー、大丈夫、だいじょぶ。トイレくらい一人で行けるから、この辺で待っててよ」
「でも、暁」
「そいじゃ、行ってきまーす」
 すばしっこく人の間をすり抜けて、あっという間に暁の姿は見えなくなってしまった。

 残された祐麒と理砂子はなんとなく顔を見合わせ、苦笑する。
「でも、本当に今日はありがとうございます。暁につきあっていただいて、助かります」
「俺の方こそ、凄く楽しんでいるんで、気にしないでください」
「でも、せっかく来たのに暁につきあってもらってばかりで……ユウキさん、何か見たいものとか買いたいもの、ありませんか?」
「それを言うなら、俺よりむしろ」
 と、目を向ける。丁度、祐麒と理砂子がいる場所はレディースファッションのフロアで、様々なショップが色々な服などを展示している。
「そうですねぇ、でも、私にはちょっと若々しすぎて、似合わないかな」
 困ったように笑いながら、すぐ近くのショップの展示品に近寄り、手に取ってみる。
「そうですか? 全然、問題ないと思いますけれど」
 祐麒も側に寄って見てみる。確かに比較的若い女性向けの店のようだが、理砂子なら大丈夫と思える。
「――いらっしゃいませ、何かお探しですか? こちらのストールは新作で、今、非常におすすめですよ」
「あ、いえ、その」
 商品を見ていると、音もなくショップの女性店員が寄ってきて、見事な営業スマイルで説明をしてくれた。
 理砂子は店員に対し及び腰で、どうやらこの手の接客が苦手のようだった。気持ちは良く分かる、祐麒も自分でじっくりと見たい時に店員に寄られるのが嫌だから。
「よかったら合わせてみますか? そうですね、今日のコーディネートですと、このサックスブルーなんかよく似合うと思いますよ」
 と、素早くストールを理砂子の首に巻いてしまった。理砂子はおろおろとして、困惑しながら逆らえないでいる。
「どうでしょう、よくお似合いだと思いますけれど」
 店員は理砂子、そして祐麒に向かって微笑みかける。
「はい、凄く似合っていると思います」
 祐麒が答えると。
「ありがとうございます。でも申し訳ありません、今日は見に来ただけなので、お返しします」
 理砂子はストールを外して店員に手渡し、早足で店から出て行く
 慌てて追いかける祐麒。
「あ、待ってください、どうかしました?」
 店を少し離れた場所で立ち止まり、理砂子は振り返って祐麒を見る。
「いえ、なんかあまり若い子向けのお店にいると、恥ずかしくなるので」
「理砂子さんだって若いじゃないですか。全然変じゃないですよ」
「ありがとうございます」
 やんわりと微笑む理砂子。
「あーっ、やっと見つけた! もう、場所動かないでよねー」
 そこで、トイレから戻ってきた暁が大きな声をあげたので、祐麒も理砂子も話すのを止める。
「探しちゃったじゃん、ほらもう次行こう、次っ」
「お、おい暁、引っ張るなよっ」
 あっさりと、暁のペースに乗せられる祐麒であった。

 

 暁に引っ張られてやってきたのは、ゲームセンターだった。
 果たして何をするのかと思ったら、暁は意外なコーナーへと向かった。
「……プリクラ?」
「そう、一緒にとろうぜ祐麒ーー」
 てっきり、格闘ゲームか体感ゲームでもプレイするのかと思ったら、こんなところだけ女の子っぽいとは。
「お母さんも早く来てよ」
「え、私も?」
「そりゃそうだよ、だって」
 と、暁が指差す先には。

"男性のみでのご利用、立ち入りはご遠慮ください"

 との注意書き。
「暁おまえ……自分が男に見えることは自覚してんのな」
「う、うるさいなー! だからほら、お母さんが必要なの」
 子供だったらうるさく言われないような気もするが、祐麒と一緒だと完全に男二人だけと見られてしまうかもしれない。
 結局、理砂子も暁に手を引かれてプリクラコーナーへと足を踏み入れる。
 よく分からないので、暁に言われるがままに最新機種の中に入り、お金を投入。男子校の祐麒はプリクラの経験など殆どないので戸惑っていたが、理砂子も困惑している。
「はぁ……私が昔やったことがあるのとは、随分と変わっているのねぇ」
 どうやら久方ぶりに体験するプリクラに驚いている様子だった。
「オレが適当に設定しちゃうよ? よーっし、んじゃ、ほら二人とも早く早く」
「え、も、もう撮るのか?」
 などと言っているうちに撮影が始まる。
 暁は自由にポーズなんかとっているが、祐麒や理砂子は照れの方が先に出てしまって、なかなか暁ようにはいかない。
「二人とも、そんなんじゃつまんないじゃん」
「そ、そう言われてもなぁ」
 落書きも殆ど暁一人で行ってしまい、文句を言いつつも満悦そうな暁。
「じゃあ、次は祐麒と二人で撮る!」
 暁に腕を掴まれ、二人でプリクラの撮影を行う。出てきた写真を見てみたが、どこをとっても男と男の子のツーショットにしか見えない。それでも暁は満足のようで、続いて理砂子と二人で撮影する。
 子供とは元気だなぁと、まだ高校生のくせにそんなことを考えながら、二人が撮影を終えるのを待つ。
 やがて、母娘で楽しそうに落書きをして、それじゃあ出ようかと言おうとしたところで、暁がとんでもないことを言ってきた。
「じゃー、次はお母さんと祐麒の二人の番だね」
「――――え?」
 きょとん、として暁を見る祐麒、そして理砂子。
「だって、まだ撮ってないでしょう? ほら、さっさと」
 二人をプリクラの中へと押し入れる。
 顔を見合わせる。
「――ちょっと暁、何言っているのよ?」
 出て行こうとする暁の腕を、慌てて掴んで引き留める理砂子。
「そ、そんなの無理よ。ね、三人で撮りましょう」
「三人では、最初に撮ったじゃん」
「だからって……」
 ちらちらと祐麒に目を向けては反らす理砂子。
 それはそうだろう、いきなり祐麒とツーショットって、なんだそれは。祐麒だって、暁と一緒のはともかく、理砂子と二人でなんていうのは想像もしていなかった。
「もー、しょうがないなぁ」
 理砂子が拝み倒し、渋々と暁は三人で撮ることに同意する。
 お金を投入し、またも暁が設定する。
「それじゃほら、カメラの方、向いて」
 三人でカメラを見る。そして、撮影がされる直前。
「……それじゃ、オレはこれで」
 と、いきなり暁が出て行ってしまった。
 取り残される理砂子と祐麒、そして暁を追おうとしたところで撮影が始まる。
「え、え、撮られちゃった!?」
「あ、ええ、はじまってますよ撮影、って、うわ」
 続いて切られるシャッター。驚き、慌てふためいている二人の姿が写されてしまう。
「と、とりあえず撮っちゃいましょうか、お金もったいないですし」
「でも、私と二人でなんて、嫌でしょう?」
「いえ、理砂子さんとのツーショットなら、嬉しいですよ」
「え…………」
 またも、シャッターだが、二人とも横を向いている。
 撮影が、勝手に進んでしまう。
『次で最後だよ、ポーズをとってね!』
 機械からのアナウンスに、はっとする。
「最後ですって、一枚くらい、ちゃんと撮ってみませんか?」
「で、でも」
「えーっと、それなら、顔半分隠してもいいですから」
「えと……こ、こう?」
 次の瞬間、撮影がされた。ぜーはーと呼吸も荒く、なぜか二人とも疲労していた。隣のスペースに移動し、落書きタイムに突入する。
「な、何か書きます?」
 尋ねてみたが、理砂子は無言である。何となく気まずいところに救いの手、いや、そもそもは元凶である暁が姿を見せた。
「できたー? あ、じゃあオレが落書きしてあげるよっ」
 画面を見て、いきなり落書きをし始める暁を、祐麒も理砂子も止められない。
「――これでよしっ、と」
「暁っ?」
 立ち尽くす理砂子を尻目に、暁はさっさと写真がプリントアウトされる場所へ移動し、待ち受ける。
 やがて出てきた写真を暁が手に取り、それを後ろから祐麒と理砂子が見てみると。

「――――――っ!?」
 理砂子が声をなくして写真に目を落としている。
 映っていたのは、気を付けの姿勢で立っている祐麒と、その隣で恥しそうに顔の下半分を帽子で隠して立っている理砂子。俯きがちだけどどうにかカメラを見ようとしているので、上目づかいになっている。
 しかもそれだけでなく、暁が選んだフレームは明らかにカップル用のもので、ハートマークが何個もあしらわれているばかりか、『Love』なんて文字も入っている。
 止めは暁の落書きで、祐麒と理砂子の二人をハートマークで囲んで、『なかよし』なんて書いている。これは恥ずかしすぎる。
「なんてことするのよ、暁っ」
「えー、なんで? こんなのフツーだよ、みんなやってるよ?」
 暁は特に深い意味もなく、いつもやっているだけのことをしたようで、理砂子が怒っているのが理解できないようだった。
「本当、申し訳ありません、ユウキさん……」
 肩を落として謝ってくる理砂子だが、祐麒にしてみれば別に謝られるようなことではない。確かに、他の誰にも見せられるようなものではないが。
 ついでに、撮影する前に携帯アドレスも入力してあるので、携帯の方にも画像が送られてきていた。理砂子の方にも送信されてきたようで、携帯を見て目を丸くしている。
「記念に、いいじゃないですか」
 祐麒がそう言って笑いかけると。
「……そう、ですね」
 残暑厳しい中、携帯とプリクラを手に理砂子もようやく苦笑ではあるが、笑顔を見せたのであった。

 

おしまい

 

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