書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(真紀×祐麒)】OKとNG

更新日:

~ OKとNG ~

 

 試合を終えて週明けの学園、進路相談室で祐麒は真紀と対面していた。大会終了後、いつの間にかやってきていた真紀の姿を見た時は驚いた。その場で色々と話したかったが、祐巳たちがいるのでそれも出来ず、それでも隙を見つけて真紀と話す機会を作りこうして放課後に会う時間を作ってもらったわけだ。
「A級の昇級、おめでとう」
「あ……ありがとうございます」
 祝福の言葉を送られて、頭を下げる。
 見事、決勝戦を勝ち抜いた祐麒は、念願であるA級に上がった。そのことを真紀に祝ってもらうと、改めて嬉しさが胸にしみわたってくるのを感じる。
「福沢くん……あのときの、野球少年だったのね」
 続いて発せられた真紀の言葉に、ハッとして顔を上げる。
「覚えて…………いたんですか」
「覚えていた、というか、思い出した、というのが正解かしらね」
「そう、ですか」
 絶対に、真紀は覚えてなどいないと思っていた。仮に覚えていたとしても、そんなこともあったなくらいだろうと。だが今、祐麒を見つめる真紀の表情は、四年前の彼女のものと重なった。
 ならば、あの言葉も覚えているだろうか。子供心にも精一杯の気持ちを込めて言ったことを。子供らしい戯れ言だと、忘れられているだろうか。
「俺……鹿取先生のこと、好きです。ずっと……あの時から」
「私がキスしちゃったのが、いけなかったのかしら?」
「違います、最初から……いや二回目の時、応援していると言われたあの日から……キスは、確かにその、嬉しかったですけれど」
 言いながら、顔が熱くなるのが分かる。
 真紀は、なんともいえない表情を見せている。
「A級にこだわっていたのは、優勝しないと上がれなかったから?」
「はい、そうです」
 四年前、勝手にした約束。
 甲子園に出て優勝したら、結婚してほしい。
 子供としか思えない馬鹿馬鹿しい発言だが、あの時は本気だった。子供である自分を自覚していたけれど、甲子園で優勝したら彼女も一目置いてくれるに違いない、釣り合うことができると思い、口にした。甲子園優勝が簡単に出来ると本気で思うほど幼くはなかったが、それくらいの本気度だと彼女に知ってほしかったのだ。
 真紀が姿を見せなくなった後も、練習試合での情けない姿を見て呆れられたのかと思い、見返すべく練習にのめり込んだ。
 肩を壊してからは失意に身をやつしたが、こうして競技かるたにのめり込んだのは、再び彼女に恥ずかしくない姿を見てもらいたいため。
「優勝といってもB級だし、まだ名人戦どころかA級での優勝だっていつ出来るかわからないけれど……それでも、優勝という結果が必要だったんです。貴女と、恥ずかしくない自分として会うために」
 自己満足、エゴ、それは分かっている。
 それでも本気で好きだと、高校生活で真紀を見て、接して、思ったから。
「だから、あの時の約束、覚えていますか? 鹿取先生は、頷いてくれました」
「でも、あれは」
「分かっています、優勝したといっても甲子園じゃない」
 ずるい言い方だ。真紀が言いたいのはそういうことではないと分かっている。
「でも俺は、真剣に好きなんです。その気持ちはあの時から微塵も変わっていない。いえ、少しは成長して、より強まったと言ってもいいです」
「なんで、そんな私なんか。福沢くんには筒井さんや藤堂さんみたいに、若くて可愛い子が他にも」
「それを言うなら、先ほどの言葉を返させてもらいます。先生の応援が、先生がしてくれたキスが、やっぱりこんな気持ちにさせたんです」
「…………」
「ただ、高校生の俺がいきなり結婚なんて無茶なのは分かっていますし、だから……俺とデートしてください」
 祐麒は真剣に、真紀を見つめて言った。

 

 教師と生徒、無理な願いだということは分かるけれど、伝えずに終わることだけは嫌だった。だから、精一杯の想いをこめてぶつけた。
 拒否されることを想定していただけに、デートの申し込みを「考える」と保留されたことは意外だったし、一週間ほどして完全に無かったことにされたと思いかけた頃、「OK」の返事が来たことには更に驚かされた。
 頑張った祐麒へのご褒美だろうか。それくらいしか思えない。いくらなんでも、祐麒の想いを受け入れてくれたと思い込むほど単純ではない。
 それでも、これは真紀を引き寄せるための端緒にはなると信じ、気合を入れてデートに臨む。一回のデートで終わらせないようにすることが、重要だ。
 行き先は祐麒に委ねられ、これも試されているような気がした。色々と考えた末に、博物館に行くという方向に落ち着いた。博物館なら、同じ学園の生徒とは会う可能性が低いだろうという計算もある。
「博物館なんて、何年振りかしら」
 真紀は意外と喜んでくれた。
 デートに現れた真紀はちゃんとお洒落をしてきてくれており、嬉しいと同時に気恥ずかしくもなる。祐麒も頑張ってきたつもりだが、大人の女性である真紀と並ぶと、どうしたって釣り合っていないと思えるから。
「鹿取先生、眼鏡するんですね」
 初めて見る真紀の眼鏡姿に、実は眼鏡っ娘好きの祐麒は内心で歓喜している。
「ああ、これ? 伊達眼鏡よ」
 どうやら変装の一環の様だが、似合っているので嬉しい。
 博物館では『太古の哺乳類展』というものを開催しており、その名の通り太古の動物の化石などが展示されていた。それらの展示物を見て回っていると。
「――――きゃあっ? え、わ、何これっ?」
 真紀の声に目を向けてみれば、変な着ぐるみキャラがいつの間にかやってきて、愛嬌のある動きをしていた。どうやら、今回の展示にあわせて作られたマスコットキャラクターらしく、変な顔をしているが丸っこいフォルムで全体的には可愛らしい。
「あははっ、可愛い~っ」
 嬉しそうに着ぐるみを撫でる真紀。
「あ、写真撮りますよ」
「え、やだ、こんなところを?」
 と言いながらも、ポーズをとって笑ってみせる真紀。
「福沢くんも、撮ってあげようか?」
「いえ、俺は……そうですね、あの、写真お願いできますか? ここ押すだけですから」
 一瞬、迷った祐麒だったが、近くにいた親子連れのお父さんにお願いしてスマホを渡し、真紀と一緒にマスコットキャラと並ぶ。
「え、一緒に?」
「ほら、撮ってくれますよ」
 少し困った表情を見せた真紀だったが、カメラを向けられると笑顔を見せる。
「――ありがとうございました」
 お返しに家族連れの方の写真を撮り、お礼を言って別れたところで、スマホの写真を確認してみる。
「福沢くん、これ、他の人に見せちゃあ駄目よ?」
 隣から一緒に画面をのぞき込んできた真紀が言ってきたが、間近で真紀の匂いを感じた祐麒はドキドキしてしまい、それどころではなかった。
「もう、分かっているの?」
「は、はい、誰にも見せません、俺だけの宝物にします」
「もう……そういうことじゃないのに」
 目をぱちくりさせる真紀。
 こうして一緒にいると、学校では見られない真紀の姿を少しずつ目にすることが出来て、好きだという気持ちがどんどん大きくなっていく。
 博物館を出た後は、喫茶店でティーブレイクをして、デートは終了となった。本当は食事にでも誘いたいところだが、初めてでそこまで誘ったものか躊躇してしまい、変なところで小心な自分が情けなかった。
 だけど、別れ際には小心さを振り払い、真紀に告げる。
「あの、また……今度デートに誘ってもいいですか?」
「ええと……」
 困ったように首を傾げ、斜め上に目を向ける真紀だが、すぐに拒否しないところを見ると、絶対に駄目というわけではないと思った。
「あの、美術館で面白そうな展覧会が開催されるんです。良かったら、どうですか」
 今日の会話の中で、美術館にも行って見たいというような発言があったことを記憶の中から拾い上げ、咄嗟に口にしていた。
「あら……何の展覧会?」
「え。えと、その……あれです」
「あれ?」
「と、当日までのお楽しみ、ということで」
 実際は美術館のことなど詳しくなくて、ただ今日のデート場所を決める際に美術館もネットで検索していて、何かしらの展覧会をどこかでやっていた記憶がぼんやりとあるだけなのだ。
 さすがにこれでは苦しく、駄目かと思ったが。
「……それじゃあ、楽しみにしておこうかしら?」
 苦笑しつつ、真紀はそう言ってくれた。
「本当ですかっ? じゃ、じゃあ来週……あ、いや、またメールします」
 来週、何をやっているか分からないので、簡単には言えなかった。
 そうして真紀と別れたけれど、滅茶苦茶嬉しかった。

 

 色々と調べた結果、祐麒が選んだのは『美術で楽しむ古典芸能』という展覧会だった。古典芸能そのものも美術に近い部分があるが、日本舞踊の衣装や道具、そういったものにスポットをあてながら歴史を楽しく学ぶこともできるような内容で、下手に外国絵画よりも入りやすいと祐麒には感じられたのである。
 前日までに色々と下調べして情報をインプットすることで、実際の展覧会では想像していた以上に楽しむことが出来た。
「当たり前だけど、一口に日本舞踊と言っても雅楽、田楽、舞楽、色々とあってそれぞれで意味があるものなのね。日本の古典芸能って、奥深いわよね」
 真紀も楽しんでくれた。
 古典芸能ということで工芸品、漆器なども出展されており、美術館内の店で一部販売もされていた。良いものは当然、値段も張るが、中にはお手頃な価格の作品もあり、その中で良いデザインを見つけた祐麒は、真紀がお手洗いに行っている間にこっそりと購入し、プレゼントした。
「駄目よそんな、貰うわけにはいかないわ。理由がないもの」
 案の定、真紀は断ってきたが、既に買ってしまっているわけで祐麒だって引くわけにはいかない。
「理由なら、あります」
「何かしら」
「好きな人に喜んでもらいたい……それじゃ、駄目ですか?」
 誕生日はまだ教えてもらっていないし、クリスマスはとっくに過ぎている。そういうのがあれば楽だったのかもしれないが。
「鹿取先生、今使用しているのが欠けてしまって新しいのを買おうか、なんて言っていたじゃないですか、さっき」
「もう……」
 困った様子を見せる真紀。
 素直に受け取るのもどうかと思うし、さりとて突き返すのも悪いしと、そういった感情が揺らぎ見えるようだった。
「分かったわ、せっかくですもの、これはいただくわね。でも、今度、何か福沢くんにも返すから」
「そんな、俺こそそういうつもりでプレゼントしたわけじゃないですから」
「駄目です。それじゃあ、私だって困るのよ」
「分かりました……じゃあ、その」
 一つ思い浮かんだ。
 これならきっと、後腐れない。
「良かったら今日この後……一緒に食事、行ってくれませんか。それで」
 これならばプレゼントのお礼ということで誘いやすいと、咄嗟に考えて誘ってみる。
「あ、ごめんなさい。今日はこの後に予定があるから」
 しかし、あっさりと断られた。
 そううまくはいかないかと内心で肩を落とす祐麒。
「福沢くんの気持ちは嬉しいけれど、やっぱり二人で会うのは今回限りにしましょう」
「え……そんな」
「もともと、一回のところを二回もデートして、それだけでも大変なことなのよ。だから、分かって」
「鹿取先生だって、楽しんでくれてたんじゃないんですか?」
「ええ、楽しかったわ。だから……ね」
「嫌ですよ……だって、今を逃したら先生は」
 結婚してしまうんですよね、とは声に出して言えなかった。言ったとたんに、事実として固まってしまいそうに思えたから。
 だけど、真紀は。
「それじゃあ……学校でまた。先生と、生徒として」
 無情にもそう告げて、背を向けて歩いていってしまう。
 呼び止めたいけれど、声は出せなかった。
 勝負をかけた、だけど叶わなかった。1%にも満たないかもしれない可能性に賭けたけれど、やっぱり駄目だった、それだけだ。
 ここで未練たらしく追いかけても、真紀に迷惑をかけるだけである。
 夜空を仰ぎ見、大きく息を吸い込み、吐き出しながら閉じていた目をゆっくりと開く。
 闇の向こうに、真紀の姿は見えなかった。

 

おしまい

 

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