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はやて×ブレード

【はやて×ブレードSS(乙葉×未知)】脈動

更新日:

 

~ 脈動 ~

 

 

「ちょっ……未知、キミ、何をする気?」
「何って……ナニ、でしょう?」
 ただ今、二人は自室の床で向かい合っていた。
 ちなみに今日は休日であり、乙葉も未知もリラックスしてくつろいでいたのだが、空気が変わったのは未知に何やら宅配便が届いたときから。
 通信で截拳道を習うなど、変なことをする友人だから、また何か変なものでも購入したのだろうかと横目で様子をうかがっていたのだが、嬉々として未知が取り出したソレを目にして、乙葉は聞かずにはいられなかった。
 その、未知の手に握られた棒状の物体を見て。
「それって、その、あれさ」
「あ、スイッチはっけーん」
 と、未知が言うなり、『ヴィーーーン』と鈍い音を出しながら、棒状の物体がぶるぶると震えだした。
「うをうっ!?」
「あははっ、すごいね、コレ」
「未知、キミ分かっているの、それがなんだか」
「ん? バイブでしょう」
 当然のように答えながら、スイッチを切る。
 静かに動きを止めるいかがわしい機器。色は可愛らしいピンクであるが、先端の方には何やら突起物があり、ゴテゴテとした印象。
 突然でいきなりの展開に、乙葉の思考はついていかなかった。
 そもそも二人の仲は、バイブを使用しあうようなものではない。キスだってしたことないし、告白だってしてもいないのだ。だというのに、いきなりそんな激しいプレイをしようというのだろうか。
 乙葉は、後ずさった。
「ソレ、どうするつもりさ?」
「え? あ、あんまり考えていなかったかも。つい、どんなんかなーと思って、興味半分で申し込んじゃって」
 てらいなく笑う未知。
 楽しそうに、バイブレーションをいじくりまわしている。
「でも、こうして間近で見てみると凄いねー。こんなのが、中に入っちゃうんだ」
「な、中にって、凄いこと口走るなキミは」
 実際にバイブを手にしている未知より、その様子を横から見ている乙葉の方が恥しくなってくる。
 一方の未知はといえば、興味津々と言った感じで、大きな目をさらに大きくしてバイブを見つめている。
「……ね、雉っちゃん、入れてみる?」
「何を言っているのか分かっているの、未知」
「もちろん。ね、駄目?」
「だ、駄目に決まっているでしょう!」
 妖しげな光を瞳に灯らせた未知を押し返す。
「ちぇー、つまんないの」
「つまんなくない。そういうのは、もっと、ちゃんとステップを踏んでからだね」
「ステップって?」
「だから、告白してちゃんと付き合って、一緒に遊んだりデートしたりして交遊を深めて、しかるべき段階を経てすべきじゃない?」
「デートの後の段階は?」
「そりゃ、その、キスとか……かな?」
「ふぅん……ね、あたしと雉っちゃん、一緒に遊んだりデートしたり、しょっちゅうだよね?」
「へ? そりゃまあ、付き合い長いし」
「じゃあ、そのステップはもうクリアじゃん」
「ん?」
 正面から、見つめてくる未知。
 ちょっと考えて。
「――――ええぇっ!?」
 また、驚き後ろに反り返る。
「何、その反応。ってか、レスポンス遅すぎ、雉っちゃん」
「いや、しかしだね、あの、それは」
 乙葉は混乱する。
 未知は追求する。
「大体、親元離れて寮暮らしだっていうのに、どうして何もしてこないかなー」
「あの、未知サン?」
「お風呂入るときだって、今でもタオルでガチガチにガードしているし」
「それは関係ないんじゃあ」
「本当、ヘタレだよね、雉っちゃんって」
「ヘタっ!?」
 そこで、すくっと未知は立ち上がった。手には依然として、例の物体を握り締めたまま。
「いいよ、もう。わんわんとこ行くから」
「ちょ、ちょっと待った。なんで五十鈴んところ行くのさ」
「別にいいでしょ。雉っちゃんには関係ないし」
「関係ないって……未知、キミ最近やけに五十鈴と仲が良いけど、まさか」
「まさか、何よ」
 そこで乙葉は、妄想する。
 未知と五十鈴が抱き合い、愛し合っている光景を。
 五十鈴は桃香のことを強く想っているが、未知と仲が良いのも確かだ。そして、恐ろしい呪術の使い手ではあるが、素顔はなかなかに可愛らしい。
 未知は未知で結構マイペースで強引だから、流されやすいところのある五十鈴もそのままムードに流されて……
「ふあぁぁぁぁっ!!」
「ひゃっ、な、何、いきなりっ」
「そうか、そうなのね。そのバイブを使って五十鈴を悦ばせるつもりなのねっ」
「ちょっと雉っちゃん? な、なんでそーなるかな」
「そうはいかないんだからね、それを渡しなさい」
「ちょっと、やめてよーっ」
 未知に飛び掛る乙葉。
 最初は驚いていたが、すぐに応戦してくる未知。
 どたばたと、取っ組み合いをする二人の力は互角。息を切らせながら、それでも最初に不意をついたのが効いたのか、やがて乙葉の方が優位に立った。
「さあ、ここまでよ未知」
 と、勝利宣言をしたその時。
 無造作に、部屋の扉が開かれた。

 

「おっす、遊びにきたでヘタレ女」
「お、お邪魔致します」
 入ってきた二人――桃香と五十鈴の目と動きが止まる。
「な、何しとんじゃ、おまっ」
「何って……えっ!?」
 そこで乙葉は気がついた。
 まず、乙葉が未知の上に乗るような格好になっている。先ほどまで取っ組み合いをしていたせいか、服装は乱れ、未知のブラウスのボタンは弾け飛んで肩紐の外れかかったブラジャーが見えている。
 下半身は下半身でスカートが捲れ上がり、しかもM字開脚の格好になっているのでショーツがもろ見え状態である。
 極めつけは、乙葉が高々と掲げ持っているバイブ。掴みあいの最中に奪い取ったのだが、どこかでスイッチが入ったのか奇妙にクネクネと蠢いている。音のなくなった部屋の中、バイブが稼動している音だけが、響いている。
「ちょ、それはやりすぎ」
「す、凄いです、雉宮さん」
 引き気味の桃香に、なぜか興奮気味の五十鈴。
 未知は、まだ少し荒い息をはきながら、乙葉を見上げてくる。
「雉っちゃん……いきなり襲い掛かってくるんだもん」
 なぜか、切なげな声と表情で。
「へ……へたれ女が、随分と思い切ったもんじゃのう」
「じゃ、邪魔しちゃ悪いですよ。行きましょう、桃香さん」
「お、おう」
 五十鈴に腕を引っ張られるようにして、部屋を出て行こうとする桃香。その扉の隙間からは、騒ぎを聞きつけたのか他の一年生の娘達の姿も見えた。
 皆、好奇や驚喜や興奮の視線で、乙葉と乙葉の手にしたモノを見つめてきている。

「……ち、ちがーう、これは私じゃなーーーーーーいっ!!」

 乙葉の叫びも空しく。

 ただバイブだけが、ウネウネとまるで生命を持ったかのように力強く脈動しているのであった。

 

 

おしまい

 

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