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ギャグ・その他 マリア様がみてる

マリみてSS(由乃、祐麒他)】ぱられる20 お祭り前日! ②

更新日:

 

~ ぱられる! ~

 

 「ぱられる20   お祭り前日! ②」 

 

 

「ただいまー」
 学園祭の準備もあって疲れた体を引きずって家に帰り、玄関を開けると。
 ぱたぱたと廊下を駆けてくるスリッパの足音。
「おかえりなさい、祐麒くん」
 出迎えに来てくれたのはエプロン姿の令だった。
「ただいま、令ちゃん。わざわざいいのに」
「駄目駄目、帰ってきた時はちゃんとお出迎えしないと。ふふ、学校、お疲れ様」
 そう言いながら祐麒の鞄を受け取り、笑顔を見せる。
 別に鞄を運んでもらう必要などないのだが、なぜか令がこだわりを持っており、どうしてもというので素直に渡すことにしている。もっとも、由乃や祐巳がいるときは祐麒の分だけ持つことが申し訳ないのか、言いだしてこないのだが。
「いやいや、令ちゃんの方こそ学園祭の準備して帰ってきてご飯の準備しているんでしょ? いつも思うけど、凄いよね」
 いい匂いが漂ってくるのは、令が夕飯の支度をしているからだろう。疲れもあったし、鼻孔をくすぐる食欲をそそる匂いによって一気に空腹度が上がったような気がする。
「もうちょっと待ってね、すぐできるから。あ、それとも先にお風呂にする? 沸かしてあるから……」
 と、そこまで言ったところで令の動きが止まる。
 かと思うと、なぜかほんのりと顔を赤らめ、もじもじと落ち着かない様子を見せ始めた。
「そ……それとも…………」
「ん?」
「そ、それとも、わ、わた……わたっ」
「え、綿?」
「わ……わた、綿菓子っ、にする?」
「――綿菓子? ああ、令ちゃんのクラスは縁日だっけ、綿菓子作るの?」
「そそっ、そう、そうなのっ。それで綿菓子のレシピを考えていて、普通のだけじゃつまらないから他の味をつけてみようかって、キャラメルとかストロベリーとかっ」
「へぇ、美味しそうだね。あ、でもこれから夜ご飯だよね、さすがにどうしようかな」
「あ、そ、そうだよね、うん、変なこと言ってごめんね」
 わたわたと手を振る令。
「んー、それじゃあ、お言葉に甘えて先にお風呂入らせてもらおうかな。ちょっと汗かいて気持ち悪かったし」
「うん、どうぞどうぞ。出てくる頃にはご飯も出来ていると思うから」
「ありがとう」
 礼を告げて洗面所へと祐麒は入っていく。
 その姿を見届けてからリビングの方へと戻る令だが、表情がふにゃふにゃに蕩けてしまいそうなのを、こらえようとしてこらえきれず、手でおさえてしゃがみこむ。
「うぅ~、お出迎えして、『ご飯にする? お風呂にする?』なんて、新婚さんみたい? あうぅぅ」
 身悶えする。
 さすがに、続けて『……それとも私にする?』とは口に出せなかったが。
 それでも嬉しくてにやにやしていると。
 頭上から声が落ちてきて、はっとして見上げてみると。
 階段から祐巳が降りてくるところだった
「あわわっ!? ゆゆっ、祐巳ちゃん、もしかして今の、見てた……?」
「え、何が?」
 首を傾げる祐巳。
 どうやら聞かれていなかったようだと、ほっと胸をなでおろす令だったが。
「どうして、『私にする?』って聞かなかったんですか?」
 と、降りてきた祐巳にすれ違いざまに言われて。
「ややややっぱり聞いていたんじゃない~~~っ!! って、ちょちょ、ちょっと待って祐巳ちゃん、今の由乃には内緒に、ああっ」
 すたすたとリビングに入っていく祐巳を慌てて追いかける令。
 その後、大人気『くまやの特製苺大福』をご馳走することでどうにか口封じの約束を得ることが出来た令であった。

 

 夕食を終え、テレビを見ながらのくつろぎタイムも終了し、それぞれ自由な時間を過ごすことになる。
 学園祭準備で疲れている由乃は、体力がもともと少ないこともあり、さっさとお風呂に入ってソファでうとうとしているところ、令にお姫様抱っこされて部屋に連れて行かれた。祐巳は現在、お風呂に入っている。
 由乃を部屋まで運んだ令が戻ってきて、ソファに腰を下ろす。
「由乃は?」
「もう、ぐっすり。よほど疲れちゃったんだね」
「自分の体力のことも考えず、全力でやるからなぁ」
 笑いつつも、それが由乃の良い所だろうと思う。
「お茶でも淹れようか、祐麒くん」
「いいよ、令ちゃんもそろそろ休んでいなって」
 何かと世話を焼きたがる年上の幼馴染にそう言うと、令は浮かしかけた腰を素直に下ろしてソファに背を預ける。
 そのまま無言の時が続くが、決して居心地悪いわけではない。おしゃべりの由乃と異なり、令とは二人きりの時はこういうこともよくあるのだ。だから、いつもと同じように令の姿を視界に留めながら雑誌に目を落としていたのだが。
「……ね、ねえ、祐麒くん」
「うん?」
 話しかけられて顔を上げる。
「ああああ、あの、あのね。よ、よか、よかったらなんだけど、その、が、学園祭、いいいいい一緒に、ま、ま、回らない?」
 ソファに置いてあったうさぎのぬいぐるみをギュっと抱きしめた令が、うさぎの頭の上から目を出して祐麒の様子を窺いながら訊いてきた。
「ああ、もちろん。由乃と三人で遊ぼうって話したよね」
「あ、うん、そうなんだけど、あの、そ、そ、それ以外にも、祐麒くんと二人で……その……」
 もにょもにょと語尾が聞き取れなくなるが、言いたいことは分かる。
「いいよ、じゃあ二人でもどこか遊びに行こうか」
「そ、そ、そうだよね、私と二人で遊びになんか……って、いいの!?」
「え、もちろん」
 確か由乃とクラスの出し物でシフトが重なっていない時間もあり、どうせそこは由乃と一緒に行動することが出来ないのだから。
「えーと、俺が遊べる時間帯は……」
 二人のスケジュールを確認してみる。令はクラスの出し物の他に剣道部としても参加するイベントがあり、意外と予定が合わないことが分かったが、それでも全ての時間が駄目というわけではない。
「これなら、二日目のこの時間があわせられるね。一時間くらいだけど、いい?」
「うん、もちろん、全然! えへへ、ありがと、祐麒くん」
「別にお礼を言われるような事じゃないけどね。ま、どこか見たいところとか、考えておいてよ」
「私は別に、祐麒くんと一緒ならどこでもいいよ」
「うーん、じゃあ、俺も少し考えておくよ」
「うんっ!」
 喜色満面、大きな声で頷く令。
「あ……あの、祐麒くん。二人で遊ぶことは、他の人には内緒でお願いできる?」
「いいけど、なんで?」
「ほ、ほら、由乃とか、絶対に拗ねちゃうから。『あたしが働いている時に、二人で遊ぶなんてずるい!』とか」
「ああ、確かにありそうかも。分かった、それじゃあ俺と令ちゃんだけの秘密、ってことだね」
「ふ、二人だけの秘密……」
 ぽーっ、とした顔をする令。

「ふーっ、お風呂、空いたよー」
 そのタイミングで、浴室から濡れた髪をタオルで包みながら祐巳が出てくる。
「そ、それじゃあ私、お風呂入ってくるね」
 そそくさと、ご機嫌に鼻歌でも歌いそうな感じでリビングを弾む足取りで出て行く令。入れ替わるようにして祐巳がソファに腰を下ろす。風呂上り、シャンプーの良い香りがふわりと漂ってくる。
「何、話していたの?」
「文化祭が楽しみだって話」
「ふぅん。その割には令さん、随分と嬉しそうだったけど」
「楽しみだから、嬉しそうでもおかしくないんじゃない?」
「そ、まあ、いいけど」
 何やら意味深な言葉を投げかけてくる祐巳。何となく居心地を悪く感じ、立ち上がる。
「どこか行くの?」
「自分の部屋だよ」
 祐巳の視線を背中に感じながら出て行き、ようやくその視線が途切れたところでホッと息を吐き出す。よくわからないプレッシャーのようなものを感じ、息苦しくなったのだ。
 こういうときは由乃でもからかって気を晴らすかと、階段を上って由乃が使っている部屋へと向かう。
 軽く部屋の扉をノックするが、返事がない。勝手に部屋に入ると怒られるが、ノックをしたわけだし良いだろう、なんて思いながらそっと扉を開いてみると、ベッドの上で由乃が寝ている姿が目に入った。そういえば、既に眠ってしまったと先ほど令から聞いたばかりだったことを思い出す。
「それならそれで、電気くらい消せば良いのに」
 明るいままの部屋の中を歩いてベッド際まで行くと、由乃の寝顔を視界にとらえる。ずっと昔から見慣れた顔だ。
「…………ん……?」
 気配を悟ったのか、それとも祐麒が立ったことで影がかかったせいか、由乃が身じろぎして薄目を開けてきた。
「あ、ワリぃ、起こしちゃったか?」
 さすがに疲れて寝ているところを無理に起こすつもりはなく、申し訳なく頭をかく。由乃はまだ寝ぼけ眼を見せながらも、もぞもぞとゆっくり身を起こし始める。
「別に寝てていいって、用があるわけじゃなかったし」
「ふぁ……ん、だいじょぶ…………寝ちゃってたんだ、あたし」
「疲れてたんだろ、無理すんなよ」
「うん……でも、じゃあなんで用もないのに祐麒はやって来たの?」
 寝起きだというのに、どうでもいいようなことを気にするやつだと内心で困る。さすがに、なんとなく気晴らしにからかいつもりでやって来たとは言いづらい。
「いや、そうだな……そうそう、文化祭でさ、一緒にどこか見て回らないかと思って」
「それなら、もう約束してるじゃん」
「うん。あ、そうじゃなくて、俺と二人でってことで」
 令とは二人で見て回るのに、由乃とは遊ばないなんてことを知られたら、由乃も拗ねるだろうし。あ、いや待て、そういえば令と二人で遊ぶことは内緒にする約束だったのだから、別にこだわる必要もないのか。
「……え、えっ!? わわっ、わたしと、祐麒と、二人でっ!?」
「そうだけど、まあ別に無理にしなくても」
 由乃のことだから、祐麒と二人で学園祭を見て回ったりしたら周囲からまた何を言われるか分からない、そんなことできるわけない、とでも言いそうだし、と思ったのだが。

「ま、まあ……祐麒がそんなに、どーしてもっていうなら、一緒に回ってあげてもよいけれど?」
 なんてことを言いだした。
「なんだよ、珍しいな。だから、無理しなくても……」
「ちょっと何よ、祐麒の方から誘って来たんでしょう? 仕方ないわねぇ、どうせせっかくの学園祭だってのに一緒に回ってくれるような女の子もいないんだろうから、うん、私が一緒に見てあげるわよ」
 腕を組み、うんうんと偉そうに頷きながら言う由乃。
「で、何を見に行きたいの?」
「いや、その前に時間が合うかどうか確認しなくちゃだろ」
 勢い込んでいる由乃を止めるのは不可能だし、別に祐麒としても由乃と二人で遊ぶことが嫌なわけでもなんでもない。どうせ他に特に約束をしているわけでもないのだから、素直に流れに乗ることにした。
 二人の予定をあわせると、二日目に令と遊んだあとに一時間ほど時間がとれることが分かり、そこで一緒に見て回ることにした。
「あ、そだ祐麒。一応、二人で遊ぶことは令ちゃんには内緒にね」
「ん、なんで?」
「え? あ、だってほら、二人だけで遊ぶなんて知ったら、令ちゃんのことだからいじけちゃうかもしれないし、ねえ?」
 実は令とも二人で遊ぶ約束をしているし、こうなったらお互いにバラしてしまっても問題ないのではないかと思ったが。
「と・に・か・く、令ちゃんには言わないこと。いいわね?」
 いつになく強気で押してこられ、祐麒としては頷くしかなかった。
「いい、令ちゃん以外も、祐巳さんや蔦子にも言っちゃ駄目だからね」
「分かったってば、何度も言わなくても大丈夫だって」
 まあ、実際のところは二人で、なんて言ったらなんてからかわれるか分からないから、だから秘密にしておこうってことなのだろうが。実際に当日、二人で行動していれば誰かに目撃される可能性は高く、あまり意味はないと思うのだが、ここは素直に由乃の言うとおりにしておくことにする。
「へへへっ、文化祭、楽しみだね」
「準備ではしゃぎすぎて、当日に熱を出して寝込むとかやめろよ? それで中学一年の時の文化祭直前に風邪ひいて、駄目にしたんだから」
「あの時は、祐麒にも迷惑かけちゃったもんね」
「全くだよ、風邪をうつされて、俺も学園祭、行けなくなっちゃったから」
 ため息をついて、当時のことを思い出す。
 中学に入って初めての文化祭ということで、異常にテンション高く張り切っていた由乃は、直前に体調を崩して寝込んでしまい、悔しくて泣きながら布団にくるまっていた。祐麒と令で宥めるのが大変だった。
「……あの時さ、祐麒、本当は熱なんかなかったでしょ?」
「は? そんなわけないだろ、わざわざ仮病で学園祭を休むなんてことしないって」
「私があんまり酷く落ち込んでいたからさ、気をつかってくれたんでしょ? 令ちゃんも、二人を看病しないといけないから、なんて言って休んで……ごめんね」
 急にしおらしくなる由乃に戸惑う。
「…………ま、まあどうせ、由乃が一緒じゃなきゃ、楽しくなかっただろうし」
 確かに、由乃に気をつかったというのもあるが、今言葉にしたことも本当のことだ。だから、令と二人で話して決めたのだ。
「だから、ね。今年は、私がいーっぱい、祐麒も、令ちゃんも、楽しませてあげる」
「馬鹿、充分に楽しんでるよ」
「うん…………」
 気づくといつの間にかベッドに並んで座っていて、祐麒の肩に由乃は頭を乗せてきていたりした。おまけに、ベッドについていた手の小指同士が触れ合ってもいて、なんだか急にドキドキしてくる。
 ちらりと由乃を見れば、こちらもどこか落ち着かない様子で、わずかに顔を赤らめていたりもする。
「ね、ねえ。祐麒……」
 由乃の小さな手が動き、手の甲に指を乗せてくる。
 そして。

「――ふぅっ、お風呂あいたよ、祐麒くんっ、ってあれ、いない?」
 外から聞こえてきた声に、慌てて二人は体を離す。
「そ、それじゃあな、体冷えるからさっさと寝ちゃえよ」
「う、うん、おやすみっ」
 背を向ける祐麒、布団にくるまる由乃。
「ああ、なんだ祐麒くん。由乃の部屋にいたんだ」
「うん、学園祭のことで打ち合わせたい事があってさ。お風呂、それじゃ俺も入ってくるから」
 風呂上り、しっとりとした肌つやの令に笑いかけ、階段を下りていく。
 その祐麒を見送り、令はまだ少し濡れたベリーショートの髪を撫でながら、由乃の部屋へと入る。
「……由乃?」
「――――私はもう寝ました」
「ちょっともう、何よそれは」
 布団の下から聞こえてきた声に苦笑いしながら、令は丸まっている布団の上に乗っかって体重をかけてゆく。
「うわっ、ちょっ、重い重いっ! 苦しい、死んじゃうっ」
「失礼だなぁ、レディに向かって重いなんてっ、こらっ」
「あはっ、やめ、くすぐり反則……あははははははっ!!」
 隙間から差し入れられてきた令の手にくすぐられ、たまらず布団から笑いながら転がり出る由乃。逃さないとばかりに抱きつき、脇腹をくすぐる令。
「やめやめっ、あはっ、ひっ、苦しっ……って、いい加減やめんかーーー!」
「おふっ!?」
 苦し紛れに繰り出した由乃の掌底が令の顎にクリーンヒットし、脳を揺すられてグラリと倒れ込む令。一方、まぐれを発動した由乃も、笑いつかれ及び倒れてきた令の下敷きになってダブルノックダウン状態。
 ぜえはあと荒い息を整えつつ、二人はベッドに並んで横になり、天井を見上げる。
「――――楽しみだね、学園祭」
「うん、目いっぱい、楽しもう」
 どちらからともなく。
 手を繋いだ。

 

 一方、風呂から出た祐麒は。
「……ん、メール?」
 自室に戻ると、携帯がメール着信を知らせるランプを点灯させていた。メールの差出人の名前を見て、軽く驚く。
「珍しいな、ってか、初めてか?」
 呟きつつ、メール本文を開くと。

『突然のメールですみません。今度の学園祭ですが、もし、どこかでお時間があえば一緒に回っていただきたいところがあるんです。一人ではちょっと恥ずかしくて、お願いできないでしょうか』

 もう一度、差出人に目を向ける。

『from:藤堂さん』

「ん~~、まあ、別に時間がうまいことあえばいっか」
 確か、あまり仲の良い友達がいないといっていたから、何人かアテが外れて自分にお願いが回ってきたのだろう。学園祭の二日間、クラスの出し物の手伝いに令や由乃との約束もあったが、空いている時間が全くないわけでもない。そこで志摩子の都合があえば、構わないだろう。
 しかし、一人では恥ずかしいとは、何を見に行きたいと思っているのか、ちょっと気になりながら返信する。

 こうして、いよいよ文化祭が始まる。

 

おしまい

 

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