【作品情報】
作品名:プロジェクトぴあの(下)
著者:山本弘
ページ数:290
ジャンル:SF、エンタメ
出版社:早川書房
おススメ度 : ★★★★★★★★★☆
ラストの複雑な余韻度 : ★★★★★★★★★☆
こういう人におススメ! : とにかく素敵で面白い作品を読みたい人
結城ぴあのはついに超光速粒子推進を実用化した「ピアノ・ドライブ」の開発に成功。
宇宙への夢を切り開く。
光速を超えて進み、今までのような膨大な燃料と資金を必要とすることもない宇宙船。
月や火星ではない、太陽系さえ突き抜けることが可能な技術・ハードを得て、ぴあのが到達する場所とは。
一大エンタメ・ハードSFの真骨頂。
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【ブックレビュー】プロジェクトぴあの(上)(著:山本弘)
【作品情報】 作品名:プロジェクトぴあの(上) 著者:山本弘 ページ数:318 ジャンル:SF、エンタメ 出版社:早川書房 おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆ ワクワクさせてくれる度 ...
そもそも上巻の冒頭で、どのような結末を迎えるかは分かっていた。
それでも、もしかしたらと思いたくもなっていた。
だけど迎えた結末はやっぱり分かっていた通りであり、予想を超えるものでもあった。
切なくも爽やかな結末とでもいえばいいのでしょうか。
ここまで読んできた人なら、「ああ、結城ぴあのだなぁ」と頷いてしまうような。
上巻が宇宙に向けて一つずつ積み上げている段階だとしたら、下巻ではその土台をもとに一気に駆け上がっていく。
ピアノ・ドライブを発明して宇宙に行けるための準備を整える。
そうしたらもうあとはわき目もふらずに突き進むのみ。
もちろん、途中では障害となるものも色々と発生はするけれど、前例・慣習にとらわれないぴあのはそれらを一つ一つクリアしていきます。
その突き進む姿は読み手としてものめりこんでしまい、下巻の途中からは一気であった。
それくらいのリーダビリティをみせてくれている。
宇宙に行きたい。
ただその思いだけで生きて、駆け抜けていくぴあの。
タイトルの「プロジェクトぴあの」の通り、これは結城ぴあのという一人の天才少女が、自分の夢をかなえる、結城ぴあのの物語。
しかも夢を叶えるなかで人々の思いを変え、固定観念を破壊し、新たな歴史を作り上げていく。
でもそれは全て付随事項で、ぴあのにとっては宇宙に行くことこそが、自分の人生をかけてやりたいこと。
純粋な思いすぎるゆえに、人々を巻き込んで、何をしても叶える。
たとえ天才だとしても、そうじゃないとこの夢は叶えられなかっただろう。
結城ぴあのの物語。
周囲から見れば、結城ぴあのの神話。
切ない余韻を残したぴあのの物語は、果たしてどのような終わりを迎えるのか。
それは、ピアノにしかわからない。
結城ぴあのという天才少女が見せてくれた、とても素敵な物語でした。
ぴあのがその後どうなったのか、読みたいようなそうでないような。
そして本編とは異なりますが、あとがきで、作者の山本弘さんが脳梗塞で倒れリハビリ中だということを知りました。
今の山本さんでは、難しいハードSFを書くことが出来ないとのこと。
こんな面白い作品を読ませてくれたことに感謝するとともに、ハードSFでなくても面白い作品を待ちたいと思います。