祥子は困惑していた。
なぜかといえば勿論、祐麒と妙な約束をしてしまったこと。いやいや別に変な約束というわけではない。ただ、パーティに祐麒を招待するというだけのことで、パーティが開催されるのがクリスマス・イブだというだけ。問題など何もないはずなのに、そわそわと落ち着かずに無駄に室内をうろうろと歩きまわったり、髪の毛を指でいじったり、本を手にとって読んでみたり、でも全く頭に入ってこなくてすぐに閉じたりと、無意味な行動を繰り返す。
どうして、祐麒のこととなるとこんなに気分が落ち着かなくなるのか、不思議で仕方がない。
祐麒のことを考える。
祐巳とよく似た雰囲気を持つ、一学年年下の男の子。男嫌いの祥子であるが、祐巳の弟ということもあって嫌悪感などは抱いていない。むしろ、男の割には側にいても嫌ではない。でも、近くにいると微妙に脈拍が速くなるし、体も少し熱っぽくなることが多く、無意識的に男嫌いのことが体に影響を及ぼしているのかもしれない。
そんな祐麒とペアでパーティに出るなんて。
いやいやそれだけではない、小笠原家のパーティで、祥子の相手として来るということは、他のお客からも好奇の目で見られるということ。祐麒とは特別な関係でも何でもないのに変に周囲から勘繰られでもしたら、祐麒に迷惑がかかってしまう。そうだ、迷惑をかけてしまうのに呼ぶなんて、失礼ではないか。だから、申し訳ないけれどやはり今からでも断ってしまえば。
でも、祐麒だったら『小笠原』という名の重さなど気にすることなく、祥子を一人の少女だと見て接してくれる。周囲の勝手な思い込みや噂など、問題にしない気がする。だとしたら、祥子の心配など杞憂に終わる。
それに。
パーティは基本的に、それほど好きではない。小笠原家の一人娘ということで、小さい頃から出席して慣れてはいるものの、憂鬱になることも多い。親しい人と開かれるものならともかく、父の仕事関係者が大勢集うようなパーティでは、あからさまに祥子のご機嫌を取ろうとする者、色目を使ってくる男、自慢話ばかりする婦人、祥子の気持ちをげんなりさせる人間には事欠かない。
今回のクリスマスパーティも同じようなものだ。楽しくない時間の方が多いに決まっている。でもそこに、祐麒が隣に居てくれたなら――
「……ふふ」
思わず、笑いがこぼれてしまった。
慣れないパーティに戸惑う祐麒の仕種、表情が頭に浮かんできて、自然とおかしさが溢れてしまったのだ。
そういえば、夏の納涼パーティの時でも、やっぱり祐麒が隣に居てくれたおかげで随分と気分的に楽になれていた。
そう考えると――
「……祥子様」
「――っ、あ、アンリっ!? い、いったいいつの間に」
「結構前にノックをしたのですが、反応がなかったので失礼ですが入らせていただきましたら……祥子様がお一人、何やら不安そうな顔をしたり嬉しそうな顔をしたりと忙しなく、つい声をおかけするタイミングを逃してしまいまして」
小笠原家の使用人であるアンリの言葉を聞いて、祥子は頬がカーッと熱くなるのを抑えられなかった。とんだ失態である。
「な、何か用かしら?」
とりあえず、知らん顔して話を転換する。
「はい」
アンリも使用人、主人の失態など見ていなかったかのように、澄ました顔で祥子の問いに答える。
「本日届きましたお手紙です」
束になっている手紙を、そっとテーブルの上に置く。時期的に、パーティの誘いなどが多そうであり、祥子は気分が重くなってため息をつく。見る気もなく、無言で頷くだけにとどめる。
「ご覧にならないのですか?」
普段はどちらかというと無愛想なアンリが、珍しく尋ねてきた。元々は母親が連れてきたのだが、年齢的に祥子に近いということもあり、祥子のことを世話することが多いが、自分から何かを語ってくるような娘ではなかった。
「見る必要もないわ」
「……そうですね、祥子様のお相手は、既に祐麒様と決まっていますから」
「なっ、な、アンリあなたっ」
「それより祥子様、そろそろお支度なさらないと、時間に遅れてしまいますが」
「だ、大体あなたが……って、え、今日は何か予定、あったかしら?」
頭の中でスケジュール帳を開いてみるが、どう考えても何か書かれているようには見えない。今日は完全なオフの日で、ゆっくりのんびりと過ごそうと昨日から思っていたのだから。それとも、両親が何か予定を入れていたのだろうか。たまに、用事を伝え忘れることがないわけではない。
「はい、午後から祐麒様とデートの約束が」
「ああ、そう、そうだったの。それじゃあ……って、え、ででっ、でえと!?」
しかしながら、アンリは祥子の考えを打ち払うかのように、とんでもないことを口にしてきて、祥子は目をひんむいた。
アンリの言った言葉が脳内でリフレインする。
「ちょっと、私、そんな記憶ないわよっ!? あ……ま、まさか祐麒さん、いつの間にか私にお誘いの手紙とか……?」
テーブルの上に置かれた手紙の束を見て思い至った祥子は、机の引き出しから最近受けとった手紙を引っ張りだし、テーブルの上に広げた。色々と誘いの手紙や、知らないどこかの御曹司からのメッセージカードなどが沢山あって、目を通すこともなく避けてしまったのだが、その中にあったのだろうか。
「祥子様……にやにやしながら手紙を漁る姿は、あまりお上品ではないかと」
「に、にやにやなんてしていませんっ!」
アンリに言われて慌てて頬を軽く叩くが、まさか本当に頬が緩くなっていたなんてことはないだろうかと不安にもなる。
そもそも、何でにやにやしなければいけないのか。いや、そんなことより今大事なのは、祐麒からの手紙を探すことだ。もしも誤って他のどうでもいい手紙と混同していたのだとしたら、とんでもない失態である。せっかく手紙を貰ったというのに、返事を出さないどころか封を開けてすらいないなど。
「……ない、ないわっ。まさか、捨ててしまったとか……」
いくら探してみても見つけることが出来ず、蒼くなる祥子。
「祥子様、祐麒様からお手紙でお誘いであったわけではありません」
「そっ、それならそうと早く言いなさいよっ!」
「申し訳ありません、あまりに一生懸命にお探しになる祥子様が可愛……いえ、声をかけるのが憚られまして」
「アンリ……あなた結構性格、悪いのかしら……そ、それより、それじゃあ祐麒さんはどのようにして私にお誘いを」
「私が祥子様の代理として祐麒様に申し込んでおきました」
「なんだ、そうだったの……って、え、ちょっと、ええっ!?」
一旦、納得したように頷いた祥子だったが、すぐに長い黒髪をたなびかせてアンリに詰め寄る。
「どっ、ど、どど」
「落ち着きください」
「あ、あなたがっ……いえ」
大きく息を吸い込む祥子。
少し落ち着いたのか、アンリの肩を掴んでいた手を離し、わざとらしく咳払いをしてから祥子は改めて問いかける。
「どういうこと? 私の代理? 申し込み? 何がいったいどうなっているの?」
畳みかけるように疑問を叩きつける祥子。頭の中はクエスチョンマークで一杯で、余裕は全くない。
「このたびのパーティでのことを心配しまして」
「心配、って?」
「パーティではダンスが催されます。当然、祥子様は祐麒様のお相手になりますよね」
「そっ、そう、なのかしら」
想像してみる。
きっと祐麒は、優のようにそつなくダンスすることなど出来ないだろう。拙いステップで、少し焦ったような顔をして祥子をリードする。時に失敗して、申し訳なさそうな顔をして謝ってくる祐麒に、祥子は少し拗ねたような、怒ったような顔をしてみせる。慌ててご機嫌を取ろうとして来る祐麒だが、ダンスと一緒になんて器用なことはできなくて、余計に足の運びが乱れて焦った表情を見せて。そこでようやく祥子が「冗談よ」とでも言うように軽く笑ってみせると、本当に安心したような顔をして――
「……祥子様、何がそんなに嬉しいのですか」
「べ、別に、にやけてなんかいないわっ」
「そんなこと言っていませんが……自覚なされているのですね」
少し呆れた様なアンリを見て、慌てて両手で頬を抑える。
「それよりっ、ダンスがどうしたというのかしら」
「祐麒様はおそらく、ダンスの心得はあまりないかと思われます」
「そうでしょうね」
「ですが、恥をかかない程度には出来ていただかないと、祥子様に恥をかかせてしまうことになります。それは、祥子様としても祐麒様としても避けなければいけないことです」
「まあ、そうだけれども……それがなぜ」
「ダンスの練習をされるのが一番かと思いますが、ダンスパートナーというものはお互いに信頼しあい、心が通い合っていないといけません。しかしながら祥子様と祐麒様は、とてもその域には達しておりません」
淡々と話すアンリに、ちょっとだけ腹がたった。アンリの言いようでは、祥子と祐麒が信頼し合っておらず、仲が悪いように聞こえるではないかと。
祥子の内心など知らないアンリは淡々と続ける。
「ですので、まずは祥子様と祐麒様、お互いのことをよく知りあうのが先決かと思い、私の方でデートをセッティングさせていただきました」
「そうだったの……って、私、そんなの今初めて聞いたわよっ!?」
「お伝えしていたつもりですが……伝わっていなかったのであれば私の落ち度です、申し訳ございません」
「そんな、いきなり、で、でぇとだなんて言われても……」
ぷいと横を向く祥子。
デート、それは親しい二人の間で行われるイベント。祥子だって、姉である蓉子や妹である祐巳とデートくらいしたことはある。だけど、それとこれとは根本的に異なる。優と一緒に外出するのとも全く違う。
いきなり言われて、心の準備も出来ていない。
「そうですか……祥子様に伝わっていなかったのは私のミスです。申し訳ありません、祐麒様の方には私の方からお断りの連絡を致します」
「えっ……」
「本当に申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げて、肩を落として部屋を出て行こうとするアンリ。
その背中に向けて、祥子は思わず声をかけていた。
「お待ちなさい、アンリ」
祥子の声に、ぴたりと足を止めるアンリ。
ゆっくりと、振り返る。
一つ咳払いをして、祥子は口を開く。
「ま、まあ、祐麒さんには何の落ち度もないことで、こちらのせいで振り回してしまうというのもご迷惑というもの。それに、使用人のミスを挽回するのは、主人である私の責任でもあるわ」
「はい」
「だから、まあ、別に構わないわよ?」
「何がですか?」
「だからっ! ゆ、祐麒さんと、で、でえとしても。ちょうど今日は一日オフで、予定もないことだし……な、何よその顔はっ!? べ、別に祐麒さんとデートがしたいわけじゃないのよ、貴女のミスは私のミスになるから」
「はい、分かっております。ありがとうございます」
頭を下げるアンリを、赤い顔をしながら見下ろす祥子。無表情のはずなのに、なぜかアンリが笑っているように感じられて、ひどく恥しい気持ちにさせられる。
「良かったです、お誘いした時、祐麒様はそれはとてもお喜びになり、祥子様とデートできるのを心待ちにしていると仰られましたので、約束を反故にしなくてすんで本当に良かったです」
「なっ……ゆ、祐麒さんが、そんな?」
ゆっくりと、肯定の意を示すように顎を引くアンリ。
祥子の体温が、またも上昇する。
「それで、約束というのは一体何時に」
誤魔化すように問う祥子。
「午後の一時でございます」
「一時ね、いち……もう一時間しかないじゃないっ!?」
時計の針を見て、声を荒げる祥子。
「ですから、遅れてしまうと申し上げていましたのに」
「そもそも、貴女が私に、ってもういいわ、とにかく急がないと……って、ああっ!?」
「ど、どうかなされましたか?」
いきなり悲痛な声を出した祥子に、さすがにアンリも驚いたようで、僅かに体を震わせた。一方の祥子はといえば、おろおろと落ち着きがなく、目が泳いでいる。
「どうしましょう、な、何を着て行けば良いのかしら」
まるで、世界の終りが来たかとでもいうような暗い顔をする祥子。
いくらお金持ちのお嬢様だからって、普段からドレスを着て行動しているわけではない。外出だってするし、祐巳や令と出かけるときには飾りのない私服を身につける。だけど今回、祐麒が相手となるデートでどんな格好で行けばよいのか、祥子には全く分からなかった。思わず、アンリに目を向ける。
「分かりました、お任せください」
全て承知とばかりにアンリは力強く頷くと、クローゼットに向かった。大きなクローゼットには、大量の衣類が綺麗に収められているが、アンリは迷うことなく幾つかの服を取り出してベッドに並べる。
「やはりベアトップ、ミニスカートの露出で悩殺するのが一番かと。もしくはこちらの学園の制服に二ーハイソックスの組み合わせが鉄板ですね。祐麒様はコスプレ好きだという情報も仕入れてありますので」
「ここっ、こんなの着られるわけないでしょうっ!?」
真っ赤になって悲鳴をあげる祥子。
アンリが取り出してきた服は、どれも露出が高くて際どいものばかりであった。こんな服、いつの間にクローゼットの中にあったのかと不思議に思うくらいだが、贈り物などで知らないうちに服が仕舞われていることもあるので、それらの品かもしれない。
その後もアンリはチャイナドレス、セーラー服、特攻服など訳の分からないものばかり取り出しては、祥子をキレさせていた。
いい加減に決めないと本気で約束の時間に遅れてしまう。壁掛けの時計を見て、祥子は焦る。
「それでは、こちらでいかがでしょう」
「……わ、分かったわ。それなら、いいでしょう」
選ばれたのはワンピースにカットソーカーディガン、そして二ーハイソックス。ニーソに関しては、なぜかアンリが譲ろうとしなかったのだ。曰く、「これがウケると、ネットに書かれていましたから」とのこと。
続いて髪の毛。
髪に関しては、休日といえども朝に必ずきちんと整えるので、あとは軽くセットすれば良いと祥子は考えていたのだが、アンリに却下される。髪は女の命ですから、とかなんとかいいながら、祥子の髪の毛に櫛を入れる。
「ここはやはり、ツインテールでいきましょう」
「ついんてーる?」
「こういうのです」
祥子の髪の毛を左右それぞれの側頭部で握り、ぴょこんと二つの尻尾を作ってみせる。鏡で自分のその姿を見た祥子は、羞恥に身悶える。
「こっ、こんな髪型で行けるわけないでしょうっ」
「あら、それでは祐巳様に失礼ではないでしょうか」
「祐巳みたいに可愛らしい子だから似合うのよ、こういう髪型は」
「今の祥子様も十分に……いえ、ではサイドポニーはいかがでしょう」
「いつもと同じでいいわ」
「いえいえ、ここは是非、祐麒様もポニー好きだという情報が」
「だ、だけど」
祥子とて女、色々な髪飾りで彩り、髪型だって常にストレートというわけではない。パーティでドレスを着たとき、和服を着たりしたときには、それにふさわしい髪型にしている。が、サイドポニーなどしたことがない。
まごまごしているうちに、アンリによって手際よくサイドで髪の毛をまとめられる。ボリュームのある祥子の髪の毛だが、バランス良く結われて揺れる。さらに薄く化粧を施される。
出来上がった自分自身を姿見で確認して、祥子は赤面する。こんな格好で街に出るだけでなく、祐麒の前に姿を見せなければならないなんて、考えるだけで身悶えしそうなほどに恥しい。
「アンリ、や、やっぱり別の……」
「いけません、祥子様っ。そうこうしているうちに約束の時間まであと二十分しかありません」
「え、あらやだ、本当?」
「セバスチャンさんにお車を用意してもらっていますので、さ、早く」
急かされるように、アンリに立たされる。バッグに必要な小物を手際よく入れてアンリが手渡してくる。
「祥子様の方からお誘いしたんですから、遅れるわけにはいかないですよね」
「え、ええ、そうね……あら?」
自分で誘った記憶などないと、首を傾げる。
「祥子様の代理で私の方からお誘い致しました。即ち、祥子様がお誘いになったのと同意です」
「まあ、そうなる、のかしら」
なんかおかしな気もするが、考えようとする前にアンリが急がせてきて、部屋の外に出される。先導するように歩くアンリの背中を追って廊下を進む。そして、あれよという間に車の中に押し込まれてしまった。
「それでは祥子様、行ってらっしゃいませ」
「ええ……って、そういえばどこに行くのっ?」
後部座席に収まった祥子が、扉を閉める前に訊いてきた。アンリは待ち合わせ場所を告げる。人ごみの嫌いな祥子のことを考えて、駅前の人が多い場所を微妙にずらした場所だ。
「そ、そう。それで、ええと、その後はどうすればよいのかしら?」
不安そうに眉尻を下げて尋ねてくる祥子。
しかし、それに対しては。
「祐麒様とお話して、お二人で決めてくださいませ。それでは」
「あ、えっ、ちょっとアンリ……あっ」
丁寧に頭を下げて見送るアンリを置いて、車は出発した。祥子の声は消え、静かなエンジン音だけが響き、やがてその音もすぐに聞こえなくなった。
確実に車が出て行ったことを確認してから、アンリは頭を上げた。
「――ふぅ」
息をつく。
「御苦労さま、真由さん」
するといつから居たのか、清子が姿を現した。
「奥様――あれでよろしかったのでしょうか? 旦那様に知られたら」
「いいのよ、祥子さんにはあれくらいしないと、駄目でしょうから」
「はぁ、そうですか」
首を捻るアンリ。
良く分からないが、とりあえず清子の言う通りに祥子をデートに連れ出したことには成功したので、良しとするしかない。
一方の清子は、とても満足そうな笑みを浮かべている。
「うふふ、祥子さん、可愛かったわねぇ。さて、それじゃあ真由さん、後もよろしく」
「ええっ、まだあるんですか!?」
「デートの様子を見て、危なそうなら祥子さんをフォローしてあげてちょうだい。何しろあの子、初めてでしょうから」
「そ、そう言われてましても」
「大丈夫、真由さん、少女漫画沢山持っているじゃない」
「あ、あれは漫画ですし」
「いいから、早くしないと追いつけないわよ」
清子に言われ、走り出すアンリ。使用人の服は街では目立つが、コートを上に来てしまえば分からない。裏から車が滑るように走ってくると、目の前で扉が開くので素早く乗り込む。
扉を閉め、走り出した車内でカチューシャを外し、ふと後ろを見てみると、満面の笑みを浮かべた清子が見送っていた。
「――やれやれ、お嬢も大変だなぁ、ったく」
ガシガシと髪の毛を掻くアンリ。
面倒くさいとは思わない。むしろ、あんな祥子を見るのは初めてで、応援したくもなる。しかし、フォローするとなると話は別だ。
(……あたしだって、んな経験、ないしなぁ)
車内で一人、悶々とするアンリ。
もう一方の車内では、ガチガチになった祥子がテンパっていた。
「ど、どこに行けばよいのかしら。映画? ショッピング? バレエ鑑賞? わ、分からないわ」
祥子の初デートは、前途多難だった。
おしまい