~ 何があったの? <おまけ-真相> ~
「ねえ祐麒、コレ、どう?」
そう言って微笑みながら祐巳が掲げて見せたのはワイン。
「どう、って言われても、何が?」
祐麒は戸惑いながらそう応じる。
すると祐巳は、ワインを胸の前で抱えたままつまらなそうに口を尖らせた。
「ちょっと飲んでみない、ってこと。ほら、お父さんたちもいないし、興味あるでしょ?」
「でもそれ、勝手に飲んだらまずいんじゃないか。あとで父さんにバレるだろ」
「大丈夫、大丈夫、お父さん抜けているところあるし。それにもしバレても、祐麒が勢いで飲んだことにしてくれるでしょ」
「俺のせいにするなよ、祐巳が持ってきたのに」
「いいから、ほら、ねえ開けてよ」
結局、祐巳に押し切られてワインを飲む流れになり、蓋も開けさせられる祐麒。
なんだかんだいって、祐巳に甘いのだ。
「それじゃあほら、私がお酌してあげるから」
「いやそれ、ワインの持ち方じゃないぞ」
まるでビールをお酌するようにワインのボトルを持って祐麒のグラスに注ごうとする祐巳。
「ん、なに、違うの?」
「あ、いや……まあ、そのままでいいけれど」
酌をするために前屈みになったことでシャツの首周りから胸の谷間がちらりと見えた。
風呂に入った後だからノーブラか。
しかしワインだからグラス一杯に入れるわけでもなく、すぐに終わってしまう。
「はい、じゃあ次は祐麒の番ね」
「なんだよ、自分でやればいいじゃん」
「だーめ、こういうのは自分でしたらなんか興がそがれるじゃない。それに」
「それに?」
祐麒はワインのボトルを受け取りながら聞き返す。
「……私は、祐麒に、入れて欲しいから」
頬杖をつき、祐麒のことを見上げるようにしながら祐巳は言う。
「祐麒に、たっぷり注いでもらいたいなぁ……」
「なっ……ちょ、祐巳」
「あれ、どうしたの祐麒、まだ飲んでもいないのに顔赤くなっちゃっているけど」
「いや、そ、それは、おまえっ」
「あ、ちょっと祐麒、入れ過ぎ、そんないっぱい入りきらない……溢れちゃう」
「わ、とっ!」
祐巳に言われ慌てて注ぐのをやめる。
グラスのぎりぎりまで並々と注いでしまったが、かろうじて零さずに済んだ。
「もう、これじゃグラス持って乾杯できないじゃない」
「ご、ごめん」
「仕方ないなぁ、じゃあ乾杯はなしで、こぼれないように飲んじゃうね」
祐巳はそういうとテーブルに置かれたグラスの方に上半身を傾けて顔を近づけていく。
髪の毛が入らないよう片手で髪をおさえながら、なみなみと注がれて表面張力で溢れる寸前の液面に唇を寄せる。
またしても胸の谷間が目に入る。
更に。
「……んっ」
唇を少しすぼませグラスの縁にキスをするようにしてワインを口にする祐巳。
「ん、ぺろっ……ちゅるっ」
グラスの縁から少しだけこぼれて流れるワインに、小さな唇を出して舐める。
「ちゅ……れろっ、ぺろ…………って、どうしたの、祐麒、お腹でも痛いの?」
祐麒は、両腕でお腹を抱えるようにして体をくの字に折り曲げ、身悶えていた。
「い、いや、なんでもない……」
「そ? じゃあ、ほら早く、祐麒も一緒に……ね?」
「ぬほぉぉっ……!!」
おねだりするような祐巳の声色に、祐麒は奇声をあげるのであった。
ワインは、スーパーで購入してきたものだ。
どうせヘタレな祐麒のことで何もできないだろう。
ならばお酒の力を借りられるようにしてあげよう、という祐巳の計らいであった。
しかし、飲む前から祐麒の様子はやたらおかしく、更にはいきなりグラスに注がれたワインを一気飲みするという奇行にはしった。
それでもしばらくはチーズやクラッカーをおつまみにして気持ち良く飲んでいた。
様子が変わったのは、30分もしたころだろうか。
祐麒の方から部屋に行こうと誘ってきたのだ。
コレは、お酒の力で気が強くなったのかと、期待と、少しばかりの不安を抱えて祐麒の部屋に入るなりベッドに押し倒された。
祐麒の手が胸をまさぐってくる。
少し力が強くて痛い。
「ちょっ、祐麒、もうちょっと優しく、っていうか突然すぎっ。あんまりがっつかれると、って別に嫌じゃないんだけど、私としては最低限のムードとか……祐麒」
「…………ぐう」
「って、お約束かーい!!」
寝息を立て始めている祐麒の体の下から這い出て衣服を整える。
もしかして、ここまできて臆病風に吹かれて寝たふりをしているのではないかとも疑ったが、頬をつねっても、おっぱいを当てても、ちょっとだけ触ってみても起きる気配もなかったから本当なのだろう。
「まったくもう……」
祐巳は大きく息を吐き出した。
最初の一気が効いたのか、そのあともちびちびと飲み続けていたのが効いたのか、いずれにしてもお酒の勢いで、というのは祐麒には無理な作戦のようだった。
「はーあ、もう、おやすみっ」
あっかんべーをして祐巳は祐麒の部屋を立ち去った。
翌朝。
様子を見に来てみると、祐麒はまだアホ面をして気持ちよさそうに寝ていた。
その姿を見下ろしていると、なんとなく苛々してきて、祐巳は意地悪をしてやろうと思った。
まず、苦労して祐麒の服を脱がせて全裸にした。
「…………うわ……」
思わず赤面して目を見張る。
大きくなってからまともに見るのは初めてだった。
興味もあり、ちょっと触れてみたり、つついてみたりしたが、祐麒は一向に起きる気配がなかったので、色々と練習してみた。
「…………んっ……は、ぁ……コレでもまだ起きないんだ」
さすがに少し呆れる。
まあ、祐巳としては色々とプラスに考えることにした。
さらに。
「まあ、祐麒ばかりじゃ不公平だからね」
などと言いながら祐巳も服を脱ぎ棄てて裸になって毛布に入り込み。
祐麒が目覚めた時のリアクションを想像しながら、温もりを楽しむ祐巳なのであった。