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SF 書評

【ブックレビュー】グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船(著:高野史緒)

更新日:

【作品情報】
 作品名:グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船
 著者:高野 史緒
 ページ数:384
 ジャンル:SF
 出版社:早川書房

 おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
 青春SF度 : ★★★★★★★☆☆☆
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■作品について

月と火星開発が進みながらも、インターネットが実用化されたばかりの夏紀の宇宙。
宇宙開発は発展途上だが、量子コンピュータの開発・運用が実現している登志夫の宇宙。
別々の2021年を生きる二人には幼いころ「グラーフ・ツェッペリン号」を見たという不可解な記憶があった。
二人の日常にかすかな違和感が生じるなか、開通したばかりの電子メールで自分宛てのメールを送っていた夏紀のもとへ思いがけない返信が届き――。

■良かった点

タイムリープとパラレルワールドにボーイミーツガールを交えた青春SF。
主人公は二人、登志夫と夏紀。
別々の世界を生きる二人だけど、幼い頃に「グラーフ・ツェッペリン号」を共に見たという不思議な記憶が。
同じ2021年だけど、登志夫の世界は量子コンピュータの開発や運用が実現している、今の我々に近い世界。
一方で夏紀が暮らす世界は既に宇宙に進出して火星開発も進んでいる一方、ようやくインターネットが実用化され始めたという世界。
科学技術はともに発展しているけれど、何に注力し、どこが伸びていったのかが異なる世界、ということ。
蒸気の技術が発展したスチームパンクの世界とも異なる観点で、そういう世界もあるんだと思わせてくれるのは楽しいところ。
ちょっと気を付けないと、夏紀の生きている時代は登志夫が暮らす時代より数十年昔なのかと思ってしまうかも。

異なる世界なんだけど、それが少しずつ混じっていく。
夏紀が投げた夏紀自身宛ての電子メールに、登志夫からの応答が?
違和感が少しずつ増していく世界を進む二人が、やがて交錯する。
物語序盤は青春小説っぽさを少し強く出しつつ、中盤から後半にかけてSFチックな部分が強くなっていく。
そしてラストはまた異なった味わいに。
エンタメともSFともちょっと異なる、むしろ純文学的な世界になっていくような。
その分、最後の理解が難しいかもしれない。

■ここが改善できるともっとよかったかも?

おそらく、ラストを理解できるかどうか。
というか、理解できなくても納得できるかどうかという感じか。
最後にぶん投げてよくわからない方向に飛んでって終わった、そう感じる人も結構、いると思う。

多分、説明不足なんだけど、そこは読者のご想像にってところか。

 

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