書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

マリア様の愛読書

ノーマルCP マリア様がみてる 克美

【マリみてSS(克美×祐麒)】プリティ・ロマンス?

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~ プリティ・ロマンス? ~

 

 試験が終了し、克美と一緒に自己採点をしてみると、やはり微妙な結果となっていた。焦っていたり、時間がなかったりで、自分の回答を全て覚えているわけではないが、数学、物理といった教科が目標の点数に達しているかが問題点であった。やはり、理数系教科の難易度は、随分と上がっている。
 それだけに、帰ってきた結果をみたときに、祐麒は内心では飛び上がりたいほど喜んでいた。両教科ともギリギリで目標を達成し、結果、当初の目標点数を全教科で上回ったのであった。
 家庭教師の日に克美に報告してみせると、克美も素直に喜んでくれた。いつもの硬い表情も、わずかに緩み、その表情の微妙な変化を読み取れることが嬉しくなる。
 もちろん、約束のことも忘れていない。祐麒の方から切り出すと、克美も分かっていると頷いた。
「それで、どこに何しに行くの?」
「ええと、じ、実は観たい映画がありまして、それに一緒に」
「ふーん。じゃあ、その映画代を奢ればいいのかしら」
「いや、チケットはあるので、一緒にいっていただければ」
「何よ、それじゃ福沢くんの得にならないじゃない」
 素で不思議がる克美。
 祐麒としてみれば、克美が一緒に行ってくれるだけで良いのだが、克美から見てみれば、それでは祐麒に全く得がないように思えるのだろう。チケット代は自分がもつといってきた。
 正直、そんなことを望んでいない祐麒は、咄嗟に思いついたことを口にした。
「それじゃあ、チケット代じゃなくて違うお願い、してもいいですか?」
 そのお願いを聞いて、克美は目を丸くして、絶句したのであった。

 

 そしていざ約束をした当日、祐麒は落ち着かない気分で克美のことを待ち受けていた。ありがちな駅前の待ち合わせポイントで、初めて女性と待ち合わせ。つい、気がせいて三十分も前に到着してしまい、一分毎くらいに周囲に克美がいないか探ってしまう。
 家庭教師の時間もカッチリ守ってくる克美なので、待ち合わせ時間もきっちりに来そうな気はしているが、思っている通りに自分の挙動を制御できれば苦労は無い。
 時計を見ても遅々として進まず、焦燥感と緊張感だけが否応にも高まってくるのだが、約束の時間の一分前になっても姿が見えないと、さすがに不安になってくる。ひょっとしたら、ドタキャンされたのではないかと。
 秒針が無情に進んでゆき、あと三秒ほどで約束の時間を指そうかとしたとき、待ちに待っていた声がかけられた。
「……お、お待たせ」
 祐麒は振り向いた。

 

 

 祐麒との約束の日の前夜、克美は思い悩んでいた。
 一緒に出かけることは試験前からの約束だから、そのこと自体に問題があるわけではない。問題は、追加事項であった。
 無視してしまおうかとも思ったが、追加事項だとしても約束は約束であり、勉強を教えている身で約束を反故にしてしまうのは、気がとがめた。
 時間をかけたところで悩みが解決するわけでもなく、克美は悩みを振り払って行動することにした。
「笙子、ちょっといい?」
 妹の部屋を訪れると、妹の笙子がベッドの上から少し驚いたように克美のことを見ていた。
 ベッドの上にうつ伏せになり、本を読みながらお菓子を食べていたようだ。すでに夕食も終えているというのに、太ってもいいのだろうか。普段、体重のことを散々気にしているというのに。
「どうしたの、お姉ちゃん」
 ポッキーを咥えたまま体を起こし、首を傾げてくる。
 克美は体の前で腕を組み、笙子からわざと顔をそらすようにして、何気なく言葉を吐き出す。
「ちょっと笙子の洋服、貸して欲しいんだけど」
 ごく普通に言ったつもりであったが。
「え」
 口を開け、笙子はポッキーをベッドのシーツの上に落とした。
 そして、ベッドから飛び降りると、駆け寄ってきて克美の両腕をつかんで揺すってきた。
「ど、ど、ど、どうしたの一体? あの、ファッションに全く興味のなかったお姉ちゃんがそんなこと言ってくるなんて!?」
 と、酷いことを言ってくるが、完全に否定しきれないのも事実であるからこそ、こうして笙子の部屋を訪れている。
「で、なに、どんな服を」
「えーっと、それは」
 と、要望を伝えると。
「えええーーーっ!」
 更に大きく驚かれたが。
「い、意外っ、だけど面白そうかも」
 逆に目を輝かせ始めた。
「あのね、別になんでもいいから貸してくれれば」
 嫌な予感がして予防線を張ったが、笙子は克美のそんな言葉など耳に入らなかったかのようにクローゼットを勢いよく開き、自分の服を漁り始めた。
 克美としては本当に何でもよいのだが、笙子としてみればそうもいかないようで、克美が目を丸くしている前で様々な服を出してくる。
「へー、お姉ちゃんがねー、あ、ひょっとしてデートとか?」
「そんなんじゃないわよ。ちょっと、罰ゲームみたいなもの」
 笙子が取り出してきて並べる様々な服を、呆れたように見つめる。本当に、よくこれだけ様々な服を買い揃えているものだと、本気で驚く。色んな服を着ているな、というのは感じていたが、こうして目にすると改めて思うものである。
 そして。
「さー、どれがお姉ちゃんに似合うか、私が選んであげるよ」
 決して、仲の良い姉妹だったとはいえないはずだったのに、笙子は嬉々として服を選び出し、克美はそれに付き合うことになるのであった。

 そしていざ、約束の当日。
 実は約束の時間よりいくらか余裕をもって到着し、既に祐麒の姿も見つけていたのだが、自分の姿が恥しくてなかなか声をかけることが出来なかった。しかし、さすがに約束の時間に遅れるわけにもいかず、ギリギリのタイミングでようやく思い切って歩み寄り、声をかけたのであった。

 

 

 振り向いた先には、勿論、克美がいた。そして、祐麒のリクエストを忠実に実行してくれていた。
 其れは即ち。

「――その日、かわいい格好してきてくれませんか?」

 というもの。
「かわいい格好って、何よ。そんな曖昧なこと言われたって」
 戸惑う克美に、祐麒は更に提案した。
「そうですね、例えば、ミニスカートとか」
 と。

 

 いざ、姿を現した克美は、ドット状の織り柄の素材と、ラメストライプの素材を切替えた、薄カーキ色のミニスカート。裾は二枚重ねのフリルになっている。スカートからは生足が伸び、膝から下はブーツに包まれている。
 トップスはホワイトのロング丈カットソーに、上から鮮やかなイエローのショート丈カーディガン。
 上下のコーディネートは祐麒の予想を上回るものであったが、髪の毛はあいかわらず無造作に束ねただけだし、黒縁の冴えない眼鏡をして、メイクが派手なわけでもない。そのアンバランスさが、克美らしいと感じる。
 初めて目にした克美の脚は、思っていた以上に細かった。ほとんど無駄な肉がないのではないかと思うくらいで、もう少し肉がついていたほうが色気を感じるのだが、ここまで細いとあまり感じられなくなってしまう。
「な、何よ。どうせ、似合っていないとか思っているんでしょう」
 文句を口にする克美であったが、わずかに赤くなり、気になるのか短いスカートの裾を手で押さえるようにして、少し怒ったような表情で祐麒のことを見つめてくるのが、とても新鮮で、可愛らしく感じた。
「もー、なんで私がこんな格好を……」
 ぶつぶつと、まだ小声で文句を言っている。
「いや、とても似合っていますよ、先生」
「やめてよ」
 そっぽを向く仕種も、こうなるとかわいく見えて仕方が無い。今までの家庭教師ではあまり感情や、気持ちといったものを見せなかっただけに、ギャップが大きいのだ。そしてその手のギャップに人は弱く、祐麒も例外ではなかった。
 物凄い美人、可愛い、そういうわけではない。だけど、祐麒だけが克美の今の姿を知っている。些細な優越感も、心をくすぐる。
「それじゃ先生、行きましょうか」
 いつまでも駅前で立っていても仕方ない、祐麒は声をかけた。二人並んで歩き出して、克美が次に口を開く。
「なんか、『先生』っていまだに慣れないのよね」
「いいじゃないですか、『先生』ぽいですよ」
「何よ、それ」
「じゃあ、『克美先生』でどうですか」
 流れにのって、思い切って名前で呼んでみた。
「名前がついただけで、先生が抜けてないじゃない」
「いいじゃないですか。それとも図々しかったですかね」
「別に、それは構わないけれど……」
「なんなら、俺のことも名前で呼んでくれれば」
 今までは『先生』と『福沢君』であった。祐麒はこの機会を利用して、少し二人の距離を縮めようと思っていたのだ。
 正直、家庭教師が始まった頃には思いもしなかった程に、克美に魅力を感じ始めている。
「いや、別に嫌なら無理には」
 横目で見据えられて、慌てて言い繕う。
 あまりに図々しいかと思ったのだが。
「まあ、いいわ。それじゃあ行きましょう、祐麒」
 あっさりと克美は下の名前で呼んできた。しかも、いきなり呼び捨てである。まさか呼び捨てにされるとは思っておらず戸惑ったものの、別に悪い気はしなかった。
「はい、それじゃあ行きましょう、克美先生」
 祐麒は心なしか足取りも軽く、歩き出すのであった。

 

 デートは、可もなく不可もなく、といった感じであった。正直、克美の方はデートとは思っていないだろうが。
 映画はそこそこに面白かったけれど突っ込みどころも満載で、それはそれをネタにして克美と話すことができた。
 映画を観終わったことで帰ろうとする克美を説得し、喫茶店で軽くお茶して、買い物につきあってくれといって半ば無理矢理にデパートに連れて行った。渋々、といった感じではあったが、克美もつきあってくれた。
 特に買いたいものがあったわけではないけれど、克美に言った手前、適当に店を物色してジーンズを購入した。
 一緒にデパートや街を歩いている間、克美は短いスカートがよほど気になるのか、しきりに脚の方を気にして、スカートの前や後ろを手でおさえるようにしていた。僅かに恥じらいを見せているそんな仕種が、いつも生真面目で表情もあまり変えない克美の姿と随分と異なって見えて、つい意識が奪われてしまう。

 

 夕方になり、別れる時間になった。夕食も一緒にと誘ってはみたものの、家で夜ご飯の支度がされているからと言われると、無理には誘えなかった。
 待ち合わせをした駅まで戻ってきて、「それじゃあまた、明後日に」と、家庭教師の日を口にして、あっさりと克美が背を向けようとする。
 確かに、明後日になればまた会うことができるのであるが、あくまでそれは家庭教師とその生徒である。ある意味、今日は特別な日であった。一度、元の状態に戻ってしまうと、再び今日のようになれないような気がした。そして祐麒は現在進行形で克美に魅かれつつあり、今日で終わりにはしたくなかった。
「あの、克美先生っ」
 だから咄嗟に呼び止めていた。
「なに?」と言って、克美が立ち止まる。
「えっとー、ら、来週の日曜日も出かけませんかっ?」
 うまい言葉が見つからず、ストレートにぶつけた。とにかく、どうにかしなければいけないと思ったのだ。
 案の定、克美は首を捻っている。
「どうして? 約束は今日一日だし、もういいでしょう」
 祐麒は焦る。どうすれば良いのか、こういうときにスマートな言葉を紡ぎだせるほど経験はないから、どうしたって直球勝負にならざるを得ない。
「この前の試験の約束は今日一日ですけれど、来週の話は今日するまた別の約束ですから」
「はあ?」
「それとも、何か予定でもありますか?」
「いえ、別に特には無いけれど……」
 困った表情を浮かべる克美。
「い、嫌だったりするんですか?」
「嫌っていうわけじゃ、無いけれど……」
 戸惑いを見せる克美。
 どうして祐麒がまた誘ってきているのか、本気で理解出来ないというように見える。この前の試験の点数の賭けといい、今といい、確かに家庭教師をはじめてから三ヶ月間のことを思い返してみてみれば、突然のこととしか思えないだろう。これまでに全く無かったようなことを、祐麒はしているのだから。
「でも、出かけるって、どこに?」
 克美の発言内容が変わった。
 どこに出かけるかと聞いてきたということは、それなりに前向きになってきていると捉えられた。三ヶ月半くらいのつきあいではあるが、嫌なことであれば嫌だと言う性格であると、祐麒は克美のことを見ていた。だからすぐに断らないということは、望みがあるということでもある。
「どこでも……いや、そうだ、あの、『電力の館』に行ってみたくて。ほら、電気の勉強にもなるし」
 少しずるいとは思ったが、単に遊びに行くというよりも、勉強と結びつけたほうが克美は心が動くのではないかと思った。
 そして祐麒の思惑通り、克美は考え出した。
「『電力の館』……? そんなところが、あるの」
「ええ、前から少し興味あったんですけれど、どうですかね」
 嘘である。
 実はたまたま、電力会社からのPRのチラシか何かがリビングに置いてあったのを目にしていて思い浮かんだのだ。
「ふぅん……ちょっと、面白そうね」
「面白いですよ、きっと。楽しみながら勉強できるのって、よくないですか?」
 あくまで、勉強を前面に押し出す。
 何はともあれ、約束を取り付けるのが先決だと思ったから。
「うーん、そうねぇ、それじゃあまあ、いいけれど」
 まだ少し悩んでいるようではあったが、OKを貰い、祐麒は内心でガッツポーズをした。
「詳しいことは、また明後日にでも話しましょうか」
「そうね……あ、ちょっと待って」
 何かに気がついたように、声のトーンが高くなった克美。
 やはり気が変わったりしたのだろうかと、不安になる。
 しかし克美は、唇に指をあて、手でスカートの裾をおさえている下の方に目線を向けて、呟くように言う。
「それって、また今日みたいな格好じゃないと駄目なのかしら?」
 なぜ、そのような思考に至ったのか過程は謎であったが、祐麒としては降ってわいたような好機、乗らないわけにはいかない。
「そ、そりゃもちろん、そうですね」
 何が勿論なのかは分からないが。
 そして何に納得したのかも分からないが、克美もなぜか小さく頷いた。
「そ、そう。うー……」
 困ったように唸っているが、それもまた新たな克美の姿であって、見ていて笑いたくなるのをどうにか堪える。
「約束ですよ、克美先生」
「わ、分かったわよ。それじゃ、さようなら」
 駅の中に消えてゆく克美の背中を見送る。
 別れたばかりだというのに、明後日が早くも待ち遠しくなる祐麒なのであった。

 

 

 日曜日だというのに特に用事も無く、部屋で音楽を聴きながら漫画を読んでいると、階段を上がってくる足音と気配が伝わってきた。家族なのでなんとなく分かるが、姉の克美が帰ってきたのだと察する。笙子がベッドから降りて自室の扉を開け、廊下に顔を出すと、まさに克美が上がってきたところだった。
「あれえお姉ちゃん、もう帰ってきたの?」
「何よ、帰ってきたら悪いみたいに」
「えー、だってえ」
 ぽりぽりと頭をかきながら、笙子は克美を見つめる。
「てっきり、夜ご飯くらい食べてくるかと思ってた」
「家で食べるに決まっているでしょう」
 まだ言いたいことはあったのだが、笙子を無視するようにして克美は自室に入ってしまった。仕方なく、笙子もまた部屋に戻る。
 珍しく、というか記憶にある限り初めて、克美が笙子から洋服を借りた。しかも、リクエストはミニスカートであった。それで出かけるというのだから、デートなのかと思ったが、あの堅物の姉が一体どんな相手となのかが想像つかず、こうして夕飯前に帰ってきたとなると、やっぱりただの女友達か何かだったのかと思い始める。
 まあ、考えたところで分からないものは仕方が無い。姉の克美との関係は、笙子が中学三年生のバレンタインデーの時の一件で良くなったものの、何でも話す仲良し姉妹になったわけではない。まだまだ壁はあるのだ。
 ベッドに腰を下ろし、壁に背を預けて漫画の続きを読み始める。
 しばらくして、CDの曲がちょうど終わる頃、ノックの音が響き扉が開いた。
「笙子、この服、どうもありがとう」
「ん」
 貸していたミニスカート、およびトップスの一式を受け取り、クローゼットにしまうのだが、なぜか克美はまだ部屋を辞去しようとしない。
「どうしたのお姉ちゃん。まだ、何かあるの」
「あー、あるというか、あるんだけれど」
 腕を組み、横を向く克美。
 なんだなんだ、と思っていると、克美はまたも笙子が思いもしていなかった台詞を言ってきた。
「ええとさ、また来週、貸して欲しいんだけど」
「え」
 本気でびっくりした。一度ならず、二度も借りようとするなんて。しかしすぐに、驚きよりも嬉しさがこみ上げてくる。
 一体、克美に何があったのか興味津々だし、笙子のことを頼ってきてくれるのが嬉しかった。
 だから笙子はまた昨日みたいに、ベッドから飛び降りて克美に抱きつくようにして飛びついた。
「うん、もちろんいいよ! でも何、何があったのお姉ちゃん? やっぱりデートなんでしょう教えてよ」
「だから、違うってば。もう、なんなのよ」
 少し焦ったような克美の様子が妙にかわいく見えて、また嬉しくなる。

 あの堅物の姉を誘う相手は一体どんな人なのだろう、姉にどんな格好をさせたらかわいくなるだろう、そんなことを考えて笙子は楽しくなり。

 そんな笙子の様子を目の当たりにして、克美は苦笑いを浮かべるのであった。

 

おしまい

 

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