【作品情報】
作品名:ミモザの告白
著者:八目迷
ページ数:336
ジャンル:エンタメ
出版社:小学館
おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
重いけれど青春度 : ★★★★★★★★☆☆
こういう人におススメ! : ジェンダー問題を真剣に扱ったラノベを読みたい
とある地方都市に暮らす冴えない高校生・紙木咲馬には、完璧な幼馴染がいた。
槻ノ木汐――咲馬の幼馴染である彼は、イケメンよりも美少年という表現がしっくり来るほど魅力的な容姿をしている。
そのうえスポーツ万能、かつ成績は常に学年トップクラス。
極めつけには人望があり、特に女子からは絶大な人気を誇っている――。
幼馴染で誰よりも仲がよかった二人は、しかし高校に進学してからは疎遠な関係に。
過去のトラウマと汐に対する劣等感から、咲馬はすっかり性格をこじらせていた。
そんな咲馬にも、好きな人ができる。
クラスの愛されキャラ・星原夏希。彼女と小説の話で意気投合した咲馬は、熱い恋心に浮かれた。
しかしその日の夜、咲馬は公園で信じられないものを目にする。
それはセーラー服を着て泣きじゃくる、槻ノ木汐だった。
ジェンダーの問題。
ラノベで重たいテーマを持ってきました。
もちろん、ラノベでも重たいテーマを扱っている作品はあると思います。
その中で、そのテーマをどのように描いていくのかというのが、この手のラノベ作品だと傾向が違ってくる。
明るくコメディ方向に描く作品もあれば、深く描きつつも明るい方向にもっていく作品もある。
本作は、真面目に深く描いていこうとする方向で、なおかつ重く苦しい感じで進んでいきます。
主人公はごく普通の、クラス内でも目立たない男子高校生の咲馬。
咲馬には汐という幼馴染がいて、汐はイケメンで成績優秀、スポーツ万能で女子にもモテる、そんなパーフェクトみたいな男。
小学生の頃はともかく、次第に引け目を覚えていき、高校生の今は関係も疎遠になってしまった。
ところがある日咲馬は、その汐がセーラー服を着て泣いている姿を目撃してしまう。
その衝撃も収まらぬまま日にちだけが過ぎ、汐は女子の制服を着て教室に現れる。
そして、これからは女子として生活するという。
汐は、体は男でも心は女だった。
そこから始まる、というか変わっていく汐と周囲の関係。
明るいラノベだと、クラスメイトも結構簡単に受け入れて、女として生きようとする汐とのドタバタを描いていく、みたいになるかもですが。
本作はそんなのとは程遠い。
戸惑うクラスメイト達、冗談はやめろ、今なら笑い話で終わるぞ、と本気にしない。
女子に人気があっただけに、汐のことが好きだった女子なら尚更、そんなこと認められるはずもない。
人気者だった汐が、あっという間にクラスの中で浮いた存在に。
そんな状態を放っておけない咲馬は、再び汐に対して積極的に関わり始める。
汐の気持ちなんて、本当には理解できない。
でも、関わり続けると誓う咲馬。
だからこそ、苦しむし、それは汐も同じ。
二人だけではなく、咲馬が思いを寄せる女子、夏希。
でも夏希は男の時の汐が好きで、と見事な三角関係、だけど不思議な三角関係。
着地点の見えないまま、続いていく。
重いんだけど、先が楽しみだ!
女装男子だ! 男の娘だ!
なんて明るい展開になりませんからね。
そういう作品ですので。