書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

マリア様の愛読書

ノーマルCP マリア様がみてる 菜々

【マリみてSS(菜々×祐麒)】気まぐれちょうちょ

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~ 気まぐれちょうちょ ~

 

 

 今日は放課後に菜々と会う約束になっていた。欲しい本が出るということで、買い物に付き合うのだ。
 そんな菜々から昼休みにメールが届いた。
 なんでも、財布を忘れてお金がないから学校まで迎えに来てほしい、とのこと。しっかり者の菜々が欲しい本が出るというのに財布を忘れるなんて珍しい、そんなことを思いながら気軽に返信する。
 そして放課後、言われたとおりにやってきたところで少しばかり後悔する。なぜって、菜々が通っているのはリリアン女学園の中等部だからだ。
 男子校の前で女子が待っているよりも、女子高の前で男子が待っている方が難易度は高いと思う。
 一応、怪しまれる前に守衛の人には花寺学院の生徒手帳を見せ、知り合いの子を待っていると説明はしたので、捕まってしまうなんてことは起こらないだろうけれども。
 それでも、中等部の女子生徒達が門を出るときにチラチラと祐麒のことを見てくるので、非常に気恥ずかしい。時間を確認する。到着したのは菜々に指定された時間とほぼ同時刻で、なるべく待ち時間を少なくするためだったのだが、既に十五分ほど過ぎている。ホームルームがのびているのか、それとも掃除が長引いているのか、メールをしても返信は来ないし、いずれにしても待っているしかない。
 更に五分ほど女子生徒達の好奇の目にさらされたところで、ようやく前方から菜々が歩いてくる姿が目に入った。

「――菜々ちゃん」
 ようやく解放される安堵感からか、うっかりと菜々に向かって手を振りつつ名前を呼んでしまった。
 瞬間、周囲の視線が祐麒、および菜々に一気に集中する。
 菜々は珍しく慌てたようで、一緒に歩いていた友人らしき子に何か話した後、ぱたぱたと小走りに祐麒のもとにやってきた。それまで二人に分散していた視線が完全に集中する。
 なんとなく気まずい雰囲気、さっさとこの場を離れたいと思うのだが。
「……先輩、わざわざ迎えに来てくれたんですか? 嬉しいです」
 祐麒の前で立ち止まった菜々は、もじもじと恥ずかしそうな態度を見せながら、上目づかいにそんなことを言ってきた。
「え? だって菜々ちゃんが迎えに来いって……」
「私のために、来てくださって本当にありがとうございます」
「あ……あぁ、うん、まぁ」
 良く分からないが、祐麒のことを立ててくれようとしているのだろうか。確かに、年下の子から呼びつけられて来たというよりも、自分から出向いてきたと言った方が良いのかもしれないが。
「とにかく、行こうか?」
 いつまでもさらし者になっているのは自分としても嫌だし、菜々だって困るだろう。
「は、はい」
 菜々もそう頷くのだが。
「…………行かないの?」
 祐麒が歩き出そうとしても、なぜか動こうとしない菜々。
「えと、そうなんですけど」
「? 今日の菜々ちゃんは、何か変だね」
「…………もっと、気を利かせてくださいっての、まったく」
 ぼそりと呟く菜々。
「ん、何か言った?」
「いえ、なんでもないです」
 そうこうしているうちにも、なんだか野次馬の女子生徒の姿はどんどんと増えている。
「――え、何、どうしたの? 誰か有名人?」
「あの制服って、花寺よね」
「彼氏が迎えに来ているってこと? あの女の子?」
 ざわざわと、そんな声も聞こえてきたりして居心地が悪い。菜々の様子が良く分からないが、そろそろこの場を離れたい、そう思った祐麒は思いきった行動に出た。
「ほら、菜々ちゃん」
「え、あっ」
 手を差し出すと、小さな菜々の小さな手を握り、歩き出した。立ち止まって動かないでいた菜々も、引っ張られて歩き出す。
 周囲の女子達から小さな歓声があがったりするのを耳にしたが、無視してこの場を離れることを優先した。
「……たまーに、大胆なことしますよね」
「何か言った?」
「いえ、別に~」
 そんなこんなで逃げ出すように帰途についたわけだが。

「…………なんで、菜々ちゃんの家に来ているんだろうか」
 買い物に行くはずだったのだが、結局のところ真っ直ぐに菜々の家に帰ってきた。
「本代だったら出してあげるってのに。ってゆーか、そのために俺を呼んだんでしょ?」
「やっぱり、そういうのはよくないかなと思いまして。それに、他に欲しいものがあったりしたら、困るじゃないですか」
「だったら、最初に言ってくれよな~。滅茶苦茶恥ずかしかったんだから」
 生徒達の視線から逃げたはずなのだが、帰宅するには結局バスに乗らなければならず、バス停でバスを待っている間に女子生徒達は集まってきて、バスの中でも女子生徒に周囲を囲まれている状態。リリアン専用のバスでないとはいえ、時間帯的に乗客のほとんどがリリアンの中等部の女の子達ばかり。全員が全員というわけではないが、何人かには確実に興味津々に見られていた。
 一緒にいる菜々は度胸が据わっているのか、それとも祐麒のことなどなんとも思っていないからなのか、表情を変えようともしない。まあ、さすがにいつも二人でいるときのようなオタク的な会話はせず、かなり大人しく控え目ではあったけれど。
「本当は、女子中学生に見られて嬉しかったんじゃないですか?」
「いやー。てかさ、中学生でも本当、色んな子がいるよね。凄い色っぽいというか大人っぽい子もいてびっくりしたよ」
 女の子の方が発育は早く、中学生ともなればかなり色気づいていると世間的には言われているわけだが、男子校の祐麒にはあまり実感がなかった。しかし今日、実際に沢山の女子中学生を目にして驚いたことは事実。
「そうでしょう、そうでしょう」
「うん、菜々ちゃんみたいに小学生みたいな子ばかりじゃないんだね」
「そうですよ、小学生みたいなのは私とか、かすりんとか――って、誰が小学生ばりの幼児体型ですか!?」
「あぶれいゆっ!? ちょ、ノリツッコミ鋭いよっ」
 鋭いローキックに膝から崩れる。
 そんなこんなで結局、菜々の部屋でゲームをして過ごした。

 

 翌日。
「――――ん?」
 名前を呼ばれて顔をあげると、クラスメイトの女子数人が菜々を取り囲むようにして立っていた。
「ねえ菜々さん。昨日、菜々さんをお迎えにいらしていた殿方は……菜々さんの恋人ですの?」
 さっそくきた、と思った。
「えっと……びっくりしました。いきなり、迎えに来てくれているなんて」
「素敵ですよね! 門の前で迎えてくれるのって、憧れます!」
「お二人で仲睦まじく手を繋いで帰るなんて、羨ましいわ」
「花寺学院の高等部の方ですよね? 爽やかで素敵な方でしたわ~」
 きゃあきゃあと騒ぎ出す女子生徒達。菜々は別に、彼氏とも恋人とも言っていないのだが、既に皆の認識は確立されてしまっている。待ち合わせ時間から20分遅れたから、20分以上は生徒達の目にふれているわけで、容姿も記憶に残っているだろう。決して目立つ顔立ちではないが、爽やかでいてそれなりに格好いいし、ミーハーな子は結構な時間目にしていたことだろう。
 女子中学生となれば恋愛事にも相当の興味を抱く頃、お嬢様学校で且つ女子校のリリアンとはいえ、世間一般の女子中学生とそこまでかけ離れているわけではない。むしろ、大事に守られているからこそ、恋愛に対する憧れ、素敵な異性に対する憧れは大げさなくらい強いところもある。それこそ、白馬の王子様を待つような。
 そんなこんなで注目を集めた菜々は、かなり噂になっていた。勿論、好意的なものばかりではなく、嫌味的なものもあったが。
 色々と尋ねられ、それを適当にかわしつつ午前中の授業を終えて昼休み、菜々は教室から抜け出して人気の少ない裏庭へと向かった。

「――おっす、ナナッチ」
「お待たせ、かすりん」
 一年の時に同じクラスで仲良くなった友人、八橋かすりと待ち合わせてお弁当を食べる約束をしていたのだ。
「ちょっとちょっとナナッチ、昨日のはどういうことなのよ~。置き去りにされてあたしは悲しみで枕を濡らしたのよ。ちゃんと説明してくれるんでしょうねぇ」
「あはは、ごめんね、かすりん」
「しかし、いつの間に彼氏なんか作ったの? うぅ、あたしのナナッチが……一緒に百合プレイでロストヴァージンしようって約束したじゃない、よよよ」
「アレは、お互いに彼氏ができそうもなかったらって話でしょ。ってか、まだロストしていないから」
「おお! とゆうことは、このかすりさんにもまだチャンスがある? ふふ、NTRか……女に寝取られたと知ったら、彼氏さんはどれだけショックを受けるでしょうかねぇ」
「とりあえず、お弁当食べようよ」
「華麗にスルー!? でもそんなナナッチが好き!」
 とにかく賑やかなかすりのいつもの調子に苦笑いしつつ、お弁当をあけて箸をつけはじめる。
 他のクラスメイト達には隠しているが、かすりに対してだけは菜々の趣味のことは包み隠さず話している。即ち、かすりも同等に腐っている女子ということだ。
「え、何、ナナッチの趣味のこと既に暴露しているの? ってことは、ナナッチの全てを受け入れてくれてるってことね……受け専?」
「あー、タイプ的には受けだねー」
「ってことは、ナナッチ攻めで『アッーーー!』的なことも受け入れてくれると!?」
「だから、そーゆーことは、まだしてないってば」
「でもでも、口でくらいはしてあげてんでしょ?」
 鼻息も荒くかすりは訊いてくる。
「え、ほらどうなの、キスくらいは?」
「…………あれはキス、とは言わないよね……」
 アクシデントでぶつかっただけ、それもどちらかといえば歯と歯がぶつかったと言った方が近いし。
「なんだよー、つまらんじゃんよー、もっとこう薄い本ばりのエロエロな展開になってないの? ナナッチみたいなロリJCを好きになる男子高校生ってことは、その人はきっとむっつりスケベな変態ロリコンでしょー? すぐに手出しそうじゃん」
「あー、その辺はヘタレなんで」
「ヘタレ受けかー、ナナッチの好みはヘタレ攻めだよねぇ。てか、ヘタレの割にはよくリリアンの門で待ち受けていたよね」
「その辺は作戦通り……いえ、エロゲーの主人公属性を無駄に持っていて、鈍感なんで」
「出た、最強属性。てことは、ハーレム展開キタ!? も、もしかして彼女の友人枠で、このかすりさんも落とされちゃうとか? そ、そしたらナナッチと百合展開プラス3Pとか堪らんですなコレ!」
「とりあえず落ち着け」
 軽く頭を叩いて鎮まらせる。
 性経験どころか恋愛体験すらないくせに、平気でそういうことを口にするのだから、腐女子というのは恐ろしいものである。
「あー、しかしこれでナナッチもリア充か。羨ましいですなぁ、この、このっ」
「あははっ、やめて、くすぐったいよーっ」
「よし、ここはひとつナナッチのために私も一肌脱いで練習につきあっちゃうよん」
「練習……って、何の?」
「そらもちろん、薄い本ばりのえっちなことの練習さっ。まずは、ふぇ」
「余計なお世話だー!」

 

 そして一週間後。
 祐麒はまたしても、菜々の呼び出しを受けてリリアン女学園中等部正門前にまでやってきていた。
 今回もまた、女子生徒達に見られるのは同じだったが、微妙に違うのは何人か通りすがりざまに会釈をしてくること。知り合いでもないのにどうしてだろうと思っていると、途中で一人が「あの、菜々さんの……ですよね? 菜々さん、掃除当番でもうすぐ出てくると思いますので」と声をかけてきたので、どうやら菜々のクラスメイトだと知る。
 やがて出てきた菜々の隣には、もう一人女の子がいた。
「――はじめまして、ナナッチの親友の八橋かすりです」
 ショートボブに見えるが後ろ髪は首の付け根くらいまで微妙に長く伸びている、ちょっと変にも見える髪型で、ちょっと垂れ目で人懐こそうな女の子が挨拶してくる。祐麒もとりあえず頭を下げる。
「――で、福沢さん。話は何ですが、腐女子にご理解あるということでしたら、この不肖、八橋かすりも福沢さんのJCハーレムに加えてはいかがでしょうか? 福沢さんがヘタレ受け、ナナッチがツンデレ攻め、あたしはワンコ攻めなんでバランスは良いかと。なんならあたしの妹なんかJSですが、実はあたしより巨乳でJSに見えないグンバツなスタイルで尚且つあたしの影響で現在着々と腐女子化進行中なんでゲスッ!?」
 早口でわけのわからないことを呟き出したかすりに対し、菜々が重そうな肘打ちを叩き込み、その場に膝をつくかすり。
「かすりん、さすがにそれは、私も引くけど……」
「……しゅ、しゅみません…………」
「さ、行きましょ、先輩」
「えーっと、この子は」
「あ、打たれ強いんで放っておいて大丈夫です」
「そ、そう……」
 蹲っているかすりを放置し、今度は菜々に手を引かれて歩き出す祐麒。

「……ってゆーか、いいの、菜々ちゃん?」
「何がですか? かすりんなら、大丈夫で」
「そうじゃなくて。ほら、皆から見られているじゃん……もしかしたらさ、ほら、俺のこと菜々ちゃんの彼氏だとか思われたりしたら、菜々ちゃん困ったりしないかと」
 菜々のことを思ってそう告げると。
 菜々は立ち止まり、物凄く哀れな物でも見るような目で祐麒のことを見上げ、さらに大きくため息までついた。
 祐麒としては、菜々の彼氏と思われるのはまあ嬉しいところではあるが、菜々にしてみたらどうだろうかと、菜々のことを慮っての発言なのにこの態度、この表情。何が気に入らなかったというのか。
「……いや、ここまで酷いとは」
 やれやれとばかりに肩をすくめ、首をゆるゆると左右に振る菜々。
「ええっ、何、どういう意味さ菜々ちゃん!?」
「なんでもないです、ほら、さっさと行きますよ?」
「おおう、なんかこの冷たい視線が突き刺さるのが、なんとも……」
 そうこうしているうちにバス停に到着すると、それまで少し距離のあった他の生徒達とも必然的に距離が近くなるので、菜々も大人しくなる。
「菜々ちゃんて、猫かぶりなんだ?」
「そーゆー福沢さんは皮か……げふぅっ!!」
「……かすりん、ぶつよ?」
「す、既に膝が入っているんですけど……あぁ、でもこの痛みもナナッチの愛だと思えばこそ……」
 いつの間にか背後にやってきていたかすりが、振り向きざまの菜々の膝蹴りを受けて再び崩れ落ちる。周囲の女子生徒達がドン引きしている。
「ああもうっ、祐麒せんぱい、こっち!」
「え、菜々ちゃん、バスはっ!?」
 恐らく恥ずかしくなったのか、菜々は微妙に頬を赤くして、祐麒の手を取って走り出した。バス停からの女の子達の声が遠ざかってゆく。
 しばらく走ったところで足を緩め、ようやく立ち止まった菜々を覗き込むと、ぷいと顔を背けられてしまった。
「えと……ごめん?」
「別に、せんぱいは悪くないですよ。かすりんが、変なことばっか言うから、恥ずかしくなっただけです」
「そう……何て言ってきたの……って、あー嘘、言わなくていいや」
 顔を赤くした菜々を見て、その話題には触れない方が良いと悟る。
「なかなか、賑やかで楽しそうな友達だね」
「ま、そですね」
「で、これからどうする? 次のバス停まで歩く?」
「それじゃあ、変わらないじゃないですか。むしろ、なんでそのバス停から乗ってきたのか変に興味をそそってしまいますよ」
「そっか。じゃあ……」
 と、考え出す祐麒の横で。
「先輩、こっち行ってみましょうよっ」
 菜々が指をさしている。
「そっちは、何かあるの?」
「分かりません!」
「え?」
 自信満々に指差すものだから、どこか別の通りにでも向かうのだと思っていた。ところが菜々は胸を張って分からないと答える。
 どうして、そっちに行ってみようと思ったのか訊いてみると。
「猫が、走って行ったんです」
「…………猫?」
「はい、それもなんと、珍しい三毛猫でした。これはもう、彼女の行く先で何か事件が待っているとしか思えません。もしかしたら義■郎さんが待っているかもですし、追いかけましょう」
「いやいや、菜々ちゃん?」
「ミステリーアドベンチャーですよ、ほら、見失っちゃいます」
 目をキラキラと輝かせながら手を伸ばしてくる菜々。
 そんな菜々を見ていると、どこへ向かおうがどこに出ようが、関係ない気がした。この子と一緒なら、どこに行くのもまた面白いだろうし、何より――惚れた弱味だ。
「よし、行こうか」
 菜々の手を取ろうとして。
「――――おわっ!?」
 空振り、バランスを崩す。
「へへーっ、残念でしたっ、そう簡単にこの可愛い菜々タンの手は握れませんよーだ」
「いやいや、さっき手を繋いだだろーが」
「知りませーん」
 ちょこまかと駆けてゆく菜々の後を必死で追いかける。
 自由に舞い飛ぶ蝶々を、決して逃すまいと。

 だけど、そんな祐麒をあざ笑うかのように、菜々はひらひらと祐麒の手をすり抜けるようにして駆けてゆくのであった。

 

 

おしまい

 

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