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ギャグ・その他 マリア様がみてる

【マリみてSS(色々・ネタ)】クリスマスネタ①

更新日:

 

<1>

寒風も吹き荒ぶ師走。街の中はクリスマスを控えて彩り鮮やかな飾り、イルミネーションで華やかになっている。
各店はクリスマスにかこつけて様々なセール、商品を出してお客さんを集めようとしている。
そんな街中、祐麒は寒さに首をすぼめながら歩いていた。
店先ではサンタの帽子を被ったり、サンタの格好をしたり、トナカイの着ぐるみをきたりしている人が色々売り込んでいる。
呼び込みの声を耳にしながら、祐麒は歩く。今日は、クリスマスプレゼントを買うためにやってきた。
誰のためか? それは……
「クリスマスセールやっています、よろしくお願いしまーーす」
女性の声とともに差し出されたチラシを受け取り、ふと視線を向けると。
「ゆ、祐麒さんっ!?」
「って、二条さん!?」
立っていたのは乃梨子だった。しかし、驚いたのはそのせいではない。
乃梨子はなんと、サンタのコスプレをしていたのだ。
真っ赤なワンピースは裾がやたら短く、半袖で腕もむき出し。もちろん、ロンググローブに二ーハイソックスで防寒はしているが。
祐麒の姿を認めた乃梨子の顔が、急速に赤くなる。
「な、何しているの二条さん」
「あ、アルバイトです、見れば分かるでしょうっ!?」真っ赤になりながら言い返す乃梨子。
もじもじと両腕で体の前面を隠し、内股になっているが、そんな仕草が余計に可愛さを演出している。
「アルバイトは禁止なんじゃ……ってか、そんなことより、寒くないのその格好?」
「寒いに決まっているじゃないですか! まったく、こんな格好考えた人は着る人間のことを考えて欲しいですね」
横を向いて口を尖らせる乃梨子。頭にのせたサンタ帽は、乃梨子の黒髪とコントラストをなしてよく似合う。
「二条さんのアルバイト先って」
「ただのファミレスですよ。ま、まあ、来てくれたら接客してあげなくもないです」バイトなら普通に接客してください。
「うん、ありがとう。でも二条さんのサンタさん、可愛いと思うよ」
「なっ………………」
感想を素直に伝えると、口を開けて立ち尽くす乃梨子。その手からチラシがばさばさと落ちる。
「わ、わわっ」慌てて道路にしゃがみ込み、散らばったチラシを集め出す。放っておくわけにもいかず、祐麒も手伝う。
地面に膝をついてチラシを集め、ふと目をあげれば片膝を地面につき方膝を立てている乃梨子のミニスカの中に目がいく。
そこに見えるのは、やはりクリスマスサンタ衣装によくにあう、純白のパンツだった。
「ちょ……な、どど、どこ見てるんですかっ!?」
スカートの裾を慌てて抑え、もう片方の手で平手打ち。
乾いた空気の中、乾いた音が響き渡り、色鮮やかなチラシが宙に舞うのであった。

 

<2>

クリスマス。世の中は楽しく浮かれている。小笠原家では、しっとりと静かなイヴが展開されている。
正月だけでなく、クリスマスの日も小笠原家の主人は愛人宅に出向いてしまっているという。
祥子は山百合会メンバーのクリスマスパーティ。
残される清子を思い、祥子はパーティを辞そうとしたが、清子に「大丈夫だから楽しんでらっしゃい」と送り出されていった。
使用人達にもクリスマスを家族や恋人たちと楽しむよう休みを与え、大きな屋敷に一人残される清子。
だけど、寂しくはない。むしろ、待ち望んでいた時間でもある。
祐麒は清子に招待され、花寺の友人達とのパーティを断ってやってきていた。
ささやかな夕食をとり、お喋りに興じた。楽しく、心温まる時間であった。
部屋の扉が開いた。手洗いに中座していた清子が戻ってきたのだろう、祐麒は視線を向ける。
「えっ!? 清子さんっ……!?」思わず立ち上がってしまう祐麒。
「は、恥ずかしいです……そんなに、見ないでください……」
そういう清子は、なんとサンタコスチュームに身を包んでいた。
胸もとは大きく開いて強調するように。足元まで隠すワンピースタイプのロングドレス。スリットが入り足もちらちら見える。
真紅のドレスはスカートの裾部分が白く縁どられ、サンタらしさを出している。帽子とアームウォーマーも同様。
近寄ってきた清子の頬はほんのり赤く。呆然としている祐麒の手をとり、ソファへと誘い並んで腰をおろす。
「おい、黙ってないでなんか言えよ」清子と反対側には、なぜかやはりサンタコスチュームのアンリ。
「……だって、一人では恥ずかしかったから……」疑問に答えるように、清子が言う。要は道連れというわけか。
「とてもよく似合って、綺麗ですよ清子さん。本当です。でも、あの、なんでその格好……それにソファに」
テーブルの上にはまだ飲みかけのワインが置かれているままだ。
「向かい合っているのもいいですけれど、あの、テーブルではこうやって近くで触れられないじゃないですか……」
そっとしなだれかかってくる。薄い化粧の香り、ワインの匂い、そして大人の色香。様々なものが祐麒を包む。
押し付けられてくる清子の胸。反対側からはアンリが体に手をのばしてきていて、逃れることは出来ない。
「祐麒さん。私からのクリスマスプレゼント……いかがでしょう?」
上目づかいで見つめてきながら、清子の手が祐麒のシャツの中に侵入してきて肌を這う。
押し戻そうとした手が、清子の胸に触れた。慌てて離そうとしたところ、逆に清子に手を取られドレスの中に入れられる。
柔肌、沈み込むほどのボリュームと弾力が手の平から伝わってくる。
「今夜の私はただのプレゼント……祐麒さんの好きにしてください……ちゅ」
首筋に清子の唇が触れる。同時に反対側にもアンリの唇、そして下腹部に添えられるアンリの指。
人妻である清子に惹かれ、駄目だと思いとどまってきたけれど。
この状況下では、もはやどうにもならなそうであった……

 

<3>

仕事を終えて帰宅、家の玄関のドアを開け、廊下を歩いて扉をあけると可愛らしく飾り付けられたリビングが出迎えてくれた。
「おー、随分と凄いな」
色紙などを切り貼りして作られた飾りは、子供っぽいけれど愛嬌があるし華やかでもある。
「凄いでしょう、えへへー」
次女の亜優がにこにこと笑いながら出迎えてくれて、鞄を持ってくれた。
三女の由香利はテーブルに並べられた料理をつまみ食いてしている。
「おねーちゃーん、お父さん帰ってきたよー」亜優がとてとてと歩いて隣の部屋に入る。
「ちょ、亜優、引っ張らないでよ」
「もう、いい加減に覚悟決めなって。大体、おねーちゃんが自分でやるって決めたんじゃん」
「そ、そうだけどさぁ……」何やら隣の声から亜優と絆がひそひそと話しているのが聞こえてくる。
「ああ、もうっ。ほらぁ」
「きゃ、ちょ、ちょっと!?」
扉が開いて姿を見せたのは亜優と、亜優に手を引っ張られている長女の絆。
今年、中学二年生になる絆は反抗期なのか、どうも最近態度が素っ気なくて祐麒は寂しい思いをしていたのだが。
「おお、絆、可愛いな!」姿を見せた絆を見て、祐麒は破顔した。
絆は、真っ赤なジャケットにホワイトのファーがついたベスト、そして同じように赤いミニスカート、そして帽子。
いわゆるサンタガールの格好をしていたのだ。
「べべ、別に、お父さんのために着たんじゃないからねっ」
「いや、他にどんな理由があって着るのよ、その服」末っ子の由香利にまで突っ込まれる絆。
照れたように顔を赤くしているが、祐麒に可愛いといわれて顔がにやつきそうになるのを堪えている。
反抗期とはいえ祐麒が嫌いなわけではない。むしろ逆。思春期になり、恋心を知り、だからこそ素直になれない。
「たっだいまーーーー!!」そこへ、玄関から元気な声が響き渡る。
弾むような足取りの足音、リビングの扉を勢いよく開いて姿を見せたのは勿論、三奈子だった。
しかもなぜか、ワンピースタイプのサンタコスで。赤と白だが腰のベルトが黒でアクセントになっている。
ワンピースの上からはポンチョのようなボレロで、これも勿論赤を基調にして白があしらわれている。
チューブトップだが、三奈子の見事な胸でずり落ちる様子もない。
「お母さん……まさか、その格好で帰ってきたの?」愕然としている絆が尋ねると。
「まさか、さすがにそこまではしないわよ。ちゃんとコートを着て傍目には分からないようにしていたから」
即ち、この格好で帰ってきたということだ。母を出しぬくつもりのサンタコスだったのに、斜め上をいかれた。
「あ、絆ちゃん、可愛いっ!! 祐麒くんも嬉しいでしょう、こんな可愛い絆ちゃんと私のサンタさんに囲まれて」
絆に抱きつきながら笑う三奈子。胸が押し付けられて、悔しさに歯噛みする絆。何しろぺったんこだから。
「飾り付けも可愛いね、亜優ちゃん、由香利ちゃんも頑張ったね! あは、楽しいクリスマスだねっ!」
いい年して子供の用にはしゃぐ母親の三奈子を見て、絆は肩を落とすが、祐麒に頭を撫でられて「まあ良いか」と思うのであった。

 

<4>

せっかくのクリスマスイブだというのに、祐麒は風邪をひいて寝込んでいた。
両親は久しぶりにクリスマスデートで宿泊してくるといい、祐巳もリリアンの友人達とクリスマスパーティ。
祐麒は一人で寂しく、ベッドの中で熱を出して唸っているという有り様。
両親も祐巳も気を遣い、予定を取りやめようともしたのだが、申し訳ないのでそれは固辞した。
昼の時点ではそこまで酷くなかったし、何より年に一回の楽しみを奪いたくなかった。
しかし夕方ぐらいから熱が上がり、具合も悪化している。
自分で大丈夫だと言ったのだが、さすがに少し悔やみ始める。布団から出る元気もなく、ただ目を閉じて時間が過ぎるのを待つ。
そして、どれくらい時間が過ぎただろうか。意識もぼんやりとしている中、部屋の扉が開いた気がした。
「……祐巳?」かすれた声を出す。
「あ……起こしちゃった? 大丈夫祐麒、苦しそうだけど……水、飲む?」
祐巳が用意してくれた水差しを飲む。時計を見ると、随分と早い時間だ。
「やっぱ祐麒のことが心配だったからね。お腹、空いてない? ゼリーと果物、持ってきたから」
食欲はなかったがせっかくなのでゼリーを食べ、薬を飲み、汗でぬれた服を着替えて再び眠りにつく。
苦しさはあまり変わらないが、祐巳が帰ってきてくれた安心感で精神的には楽になる。
なんだかんだいって一人で寝込んでいるよりは、誰か家にいてくれるほうがありがたい。祐麒は目を閉じる。
しばらくして、人の気配に目が覚める。
「祐巳?」家にいるのは他に祐巳しかいない。そして薄暗い部屋に立っているのは間違いなく祐巳だった。
どうしたのかと思いつつ祐巳を見る。暗闇に目が慣れてくると、徐々に祐巳の姿が明確になってくる。
「え……ゆ、祐巳…………?」
「へへ……可哀想な祐麒に、せめてものクリスマスプレゼント……かな?」
暗い部屋の中、照れたように笑う祐巳は、可愛らしいサンタクロースの衣装に身を包んでいた。
「な……何がプレゼントだよ。そんなん見せられても、嬉しくもないし……」
反抗心で思っていることと反対のことを口にしてしまう。
「何よもー、せっかく借りてきて、パーティも途中で抜けてきたのに」
「それより……違うプレゼントが……良かったよ」
「風邪を治せって言われても、さすがに無理よ。そこまでの力はないもの」
「…………可愛いサンタの女の子が…………ら、早く治るかも……」
熱に浮かされていたせいだろう。何か変なことを口走ってしまったかもしれない。目を閉じる祐麒。祐巳の姿が視界から消える。
無言。だけど祐巳はまだ部屋の中にいる。熱く息苦しく、もうどうでもいい。荒く熱い呼吸を繰り返す。
薄れゆく意識の中。何か、柔らかくてひんやりとして、素敵なものが--に触れたような気がした。
祐巳の気配が遠ざかる。祐麒の意識も闇に落ちる。そして……
翌日の祐麒は、更に熱が上昇して生死の境を彷徨ったような気がするとかは本人の弁である。

 

<5>

「うぅ、どうしよう……」
令は悩んでいた。
自分自身で作った衣装を目の前にして、もう何時間も唸っている。
「さ、さすがに引かれちゃうよね……でも、喜んでくれるかも? いや、でも私なんか似合わないし……」
作ったのは、サンタのコスチュームだった。
クリスマスの季節、色々な場所で見かけるサンタの格好をした人たち。
デートをしていた祐麒がサンタの格好をした若い女の子を見て可愛いと言っていた。だから、思わず作ってしまった。
オーソドックスと思われるワンピースのサンタドレス。胸のぽんぽんとベルトがアクセントだ。
スカートの丈も膝が出るくらいで、露出度もさほど高いわけでもない。
それでも、果たして自分自身が身に付けて似合うのだろうかと逡巡する。
背が高くて男の子みたいな自分が着たところで……
「せ、せっかく作ったんだし、着てみるだけ……」
自分を納得させるように呟き、とりあえず着てみることにした。
さすがに祐麒に見せるのは恥ずかしいから、この場限りにしよう。
服を脱いで、ワンピースを身に纏っていく。
「あ……あれ、胸がキツイ……おかしいな、サイズは正しいはずなのに……ま、また大きくなったのかな?」
なんとかバストも収め、セットで作った帽子もかぶる。
姿見に映してみると、出来栄えは自分でも納得できるものだった。
いくつかポーズをとったりしてみるが、やっぱり祐麒の前ではとてもじゃないが恥しくて出来ないなと思った。
納得して衣装を脱ごうとする令。
「ちょっと、何脱ごうとしているの令ちゃん!?」
「え、ちょ、由乃っ!?」その時、部屋に飛び込んできたのは由乃だった。
「せっかく作って着たのに、なんで祐麒くんに見せようとしないのよ。馬鹿なの? 死ぬの?」
「そそそ、そんなこと言われても」
「その服で誘惑して迫って、いい加減にえっちに持ち込みなさいよ、したくないの? 付き合い始めてどんだけよ!?」
「そ、そんなことないけどっ! あ、でも、恥ずかしいし、こんな格好で、えと」
「したいのかしたくないのか、ハッキリそこんところ」
「…………し、したいです……」由乃の剣幕におされ、小声ながらも思わず口にする令。
「……だそうよ」にやりと笑う由乃の後ろから顔を見せたのは、祐麒だった。顔を赤くし、バツが悪そうな表情で。
「ゆ、ゆゆゆゆうきくんっ!?」真っ赤になり目を白黒させる令。サンタコス姿を思い出し、あわあわする。
「それじゃあ、どうぞお二人で愛し合って……あ、私のことは気にしないでいいから、遠慮せずにどうぞ」
「よ、よ、由乃ーーーーーーーっ!!!?」
堂々とデバガメしようとする由乃に、令はぷんすかと怒って悲鳴をあげるのであった。

 

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